地形図を見るサイト-ノルウェー
ノルウェーの測量機関カルトヴェルケ Kartverket(以下、地図局と訳す)が設置する地図サイトには、少なくとも二つの特色がある。
一つ目は、印刷図にはないぼかし(陰影)つきの地図画像が見られることだ。測量局は2015年に地形図の刊行を廃止したが、最後まで地勢は等高線だけで表現されていた。しかし、この国のダイナミックかつ千変万化の地形は、立体感を強調した画像で眺めるに限る。
二つ目は陸の地形図だけでなく、海図も併せて公開されていることだ。地図局の業務範囲に海図作成も含まれているので当然かもしれないが、陸上図と同じ操作で海図まで見られる簡便さは、ほかに例を思いつかない。
最北端ノールカップ Nordkapp のラスタ地形図 |
ノルウェーの地形図の概要については、別稿「ノルウェーの地形図」を参照していただくとして、今回はこの地図サイトの使い方を紹介していこう。
(以下の記述は2020年6月現在の仕様に基づく)
◆
現行図を公開しているサイトは、「ノルゲスカルト Norgeskart」と呼ばれる。ノルウェーの地図を意味するとおり、全土をカバーする多彩な地図が収められている。
「ノルゲスカルト Norgeskart」
https://www.norgeskart.no/
「ノルゲスカルト」初期画面 |
初期画面はいたってシンプルだ。左上に検索窓があり、右上に拡大縮小と現在地に同期のボタン、右下に選択できる背景図が並んでいる。これ以外のメニューは、検索窓の左隅にあるメニューアイコンをクリックして初めて現れる。
以下の説明は英語版で行うので、初めに言語選択をしておきたい。表示された左メニューの最下段(スクロールが必要かもしれない)で「English」を選択する。ちなみにその左にあるのは、2種のノルウェー語である Bokmål(ブークモール)と Nynorsk(ニーノシュク)だ。この左メニューは、最上段の×印で畳むことができる。
言語の切り替え |
表示可能な地図は、右下の3種の背景図だけではない。全リストは、左メニューにある「BASE MAP LAYER」の矢印をクリックすれば現れる。
表示可能な地図のリスト |
初期画面に表示されているのは「Topographic map」だが、これを含めて以下の選択肢がある。
Topographic map:ベクトル地形図(デフォルト表示)
Aerial images:空中写真
Raster map:ラスタ地形図(印刷図の原版)
Grey scale map:グレースケール地図
Simplified:簡略図(上記地図のカラー版)
Terrain:高度陰影図
Nautical Charts:海図
Jan Mayen:ヤン・マイエン島のベクトル地形図
Svalbard:スヴァールバル諸島のベクトル地形図
Electronic Nautical Charts:電子海図
Economic chart 1. Edition:経済地図初版
この中で、本土の地形図については4種用意されている。
表示できる各種地形図の例 |
上掲地図画像の最上段「ベクトル地形図 Topographic map」は、ファイルサイズが小さいので初期画面に採用されたと思われるが、地勢のぼかし(陰影)もつき、中縮尺ではラスタ地形図と遜色がない。さらに、スケールバー記載の実長値が「20m」になるまで拡大できる。このレベルでは、もはや個々の建物の屋根の形状さえ確実に読み取れる。
それに対して2段目の「ラスタ地形図 Raster map」は、見慣れた印刷図そのものだ。用紙サイズに制約される印刷図に対して、ここでは国土の隅々までシームレスに眺めることができる。また、旧版地形図のアーカイブ(後述)と経年変化を照合する際に、図式が共通なのは大きなメリットだ。ただし、ノルウェーでは1:25,000図が作成されてこなかった。そのため「ラスタ地形図」では、スケールバー記載の実長値を「1000m」以上にしても、画像が単純拡大されるばかりで、内容に変化はない。また、数値が「100m」になると、ベクトル地形図に置き換わる。
「グレースケール地図」およびそのカラー版である3段目の「簡略図 Simplified」は、ベクトル地形図から地勢(等高線を除く)、市街地、交通網、都市名などを抽出したものだ。さまざまな主題図の背景画に適するように、明度を高めてある。
左メニューにあるとおり、これらの背景図に、property(地籍)や Hiking and outdoor recreation(ハイキング・野外活動)などの情報を付加して Thematic map(主題図)にすることができる。
機能の活用 |
特定の場所を検索するには、検索窓に、地名や主要施設名、座標値(例:59.910785, 10.753625)、経緯度(例:59°54'39 N,10°45'13 E
N,Eは省略可)を入力する。
地図を拡大縮小するには、右上隅の+-ボタンを使うほか、画面をダブルクリックしても一段階ずつ拡大する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。
地図をプリントするには、左メニューの「WHAT DO YOU WANT TO DO?」の下に「PRINT」サブメニューがある。Template type(テンプレート形式)で、用紙大と portrait(縦長)/landscape(横長)を、Scale(縮尺)で適切なものをそれぞれ選択する。
地図上に表示されたオレンジの矩形が実際の印刷範囲で、選択した縮尺に応じて、範囲が変化する。この印刷範囲は、地図をスクロールすることで移動できる。指定が完了したら、Generate print file(印刷ファイルを生成)をクリックすると、印刷データがPDF形式で生成される。
印刷フォーマット指定 |
◆
旧版地図については、別サイト「歴史地図 Historiske kart」で画像ファイルをダウンロードできる。
「歴史地図 Historiske kart」
https://www.kartverket.no/Kart/Historiske-kart/
「歴史地図」初期画面 |
画面右上に英語版への切り替えが用意されているが、今のところクリックしても「英語の情報は限られている」というメッセージが表示され、本文が英語表示にならない。そのため、ノルウェー語(ブークモール)画面のスクリーンショットに適宜和訳を付記しておいた。
このアーカイブは、旧版地形図と測量原図だけでなく、近代測量以前の古地図も含まれており、質量ともに充実した内容だ。ところが、土地鑑のない者にとっては大きな障害がある。図名や、地図に含まれる地名で検索する手段がないのだ。
候補を絞り込むには、県名、地図シリーズ名、製作年代の三つの条件で検索をかけることになっている。2020年の自治体再編により県の数は現在11になっているが、画面には、以前の18県時代のドロップダウンリストが現れる。
例えばベルゲン Bergen の旧版地形図を見ようとすると、ベルゲンが以前何県に属していたかを知る必要がある。調べるのが面倒なら、県名を全選択(リスト最上段に選択ボックスあり)してしまうことも可能だが、当然おびただしい数の候補がリストアップされてくる。この関門を突破できれば、見たい地図シリーズと年代を選択して、検索をかければよい。
検索対象の絞り込み |
地図シリーズにはかなりの選択肢がある。主なものは以下のとおり。
・経緯度区分図 Gradteigskart
1893~1955年の間刊行された、経緯度区分図(後述)の後継シリーズで、縮尺は1:100,000。
・経緯度区分図の測量原図 Gradteigsmålinger
経緯度区分図のための原図で、縮尺1:50,000~1:100,000。
・1:50,000(M711)地形図 Norge 1:50 000/M711
1952年から刊行が始まった全国をカバーする地形図シリーズ。2015年に刊行終了。
・矩形図 Rektangelkart
1869~1942年の間、刊行されたノルウェー最初の地形図シリーズで、縮尺は1:100,000。1893年以降、経緯度区分図に置き換えられていったため、国土の南部を一部カバーしたにとどまる。
・矩形図の測量原図 Rektangelmålinger
矩形図のための手描き測量図で、縮尺1:10,000。
・旅行地図 Turkart
1:100,000などの縮尺による旅行地図。印刷図はこれまでかなりの点数が出版されてきたが、民間会社に版権が移されたためか、ここにはほとんど収録されていない。
オスロが図郭に入る1:50,000地形図で、 1950~1990年刊行の図を検索する |
これで候補が表示される。見たい地図のサムネール画像をクリックして選択する。
ダウンロードに際して、ファイルの解像度を選べるようになっているのは親切だ。高解像度(300dpi)は、プリントしてもジャギーが目立たない。画面で確認するだけなら、中解像度(100dpi)で十分だ。
候補表示画面 |
そのうちの一点を選択 |
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これらの地図データの二次利用については、利用規約に記載がある。ご参考までに、以下に英語版の抜粋(和訳)を掲げる。全文は、https://www.kartverket.no/en/data/Terms-of-use/ を参照されたい。
無償製品のライセンス License for our free products
地図局の無償製品は、クリエイティブ・コモンズ属性4.0国際 Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) に基づいてライセンスされている。これはこれらの製品または抽出物が使用されるあらゆる状況で、地図局の名称が次のように表示されることを意味する。© Kartverket。また、可能な場合は地図局のウェブサイトにリンクも張るべきである。地図のスクリーンショット Screenshot of map
©Kartverket または ©kartverket/norgeskart.no のクレジット記載と引き換えに、norgeskart.no のほとんどの地図のスクリーンショットを自由に使用できる。しかし、十分にズームアップさせると、地図局が一部または全部の権限を持たない地図を得ることになる。これらを使用するには、ライセンス所有者から許可を得る必要がある。URLのどこかに「zoom =」の語句があり、その後に1~20の数字が続く。ズームレベル12~20には許可が必要である。空中写真のスクリーンショット Screenshot of aerial photos
norgeskart.no および norgeibilder.no の空中写真はライセンス製品であり、ライセンス所有者から許可を得る必要がある。古地図(旧版地図)Historical maps
古地図の場合、以下の内容を複製物に含める必要がある。
「原図の場所(Kartverket)、図名/図番、製作者名、年」
クレジットの例:
「Kartverket: Rectangle measurement: 1:50,000, 19A-1, Ltn. C. Lund, 1847」
100年を超える古地図はパブリックドメインと見なされる。利用者はこれらの作品について、製作者を尊重して適切なクレジットを付与していただきたい。
使用した地形図の著作権表示 © 2020 Kartverket
■参考サイト
ノルウェー地図局 https://www.kartverket.no/
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