地形図

2021年1月19日 (火)

地形図を見るサイト-アメリカ合衆国

カナダの地図ユーザが、自国の地形図サイトの使いにくさを嘆きながら、「(それに比べて)USGSのウェブサイトは有用性の見本であり、驚くほどわかりやすい」と記した投稿を見たことがある。

USGSとは、アメリカ合衆国地質調査所 U.S. Geological Survey のことだ。同国の民生用地形図(下注)を所管する内務省の研究機関で、現行図とともに、1884年以来作成してきた膨大な数の旧版図をウェブ上で公開している。確かにそれは、史料の充実度はもとより、明快な操作機能と垢ぬけたデザインという点でも、見本にしたいサイトと言うことができる。

*注 アメリカの地形図については、本ブログ「アメリカ合衆国の地形図-廃止された旧体系 I」「アメリカ合衆国の地形図-新シリーズ「USトポ」」参照。

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絵画のような陰影つき地形図
1:62,500 Strasburg,VA 1947年
 

地図サイトは2種存在し、一つは最新の地形図や空中写真をシームレス画像で提供する「The National Map」、もう一つは旧版から最新版まで区分図の形でダウンロードできる「TopoView」だ。今のアメリカの地理空間を見渡したいなら前者が、特定の地点・地域を時間軸で観察したいなら後者が適している。順に紹介していこう。

(以下の記述は2021年1月現在の仕様に基づく)

The National Map
https://viewer.nationalmap.gov/advanced-viewer/

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初期画面
 

初期画面は、アメリカ合衆国の本土48州の陰影図だ。この地図は「USGS National Map」と呼ばれるベースマップで、拡大していけば、現行の1:24,000区分地形図「USトポ」と同じものが現れる。メニューは画面上部の緑色のバーにまとめられており、Esriシステムにより、表示の一部が日本語対応している。

特定の地域の地図を表示するには、バー右端の検索窓に地名や住所を入力する。同じ地名が多いので、州名(またはその略称)を添えるとよい。試しに「New York」と入力して、右の拡大鏡アイコンをクリックすると、ドロップダウンリストに選択肢が表示された。

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地名による検索結果
 

最上段の「New York, NY, USA(NYはニューヨーク州の略)」を選ぶと、地図画面は一気にニューヨークとその周辺に変わる。左下に縮尺とズームレベルが表示されている。初期画面のアメリカ全図はズームレベル4、ニューヨークの画面は同 10だ。ちなみに等高線が現れるのはレベル14以降で、16が「USGS National Map」の最大縮尺になる。

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選択した候補のエリアを表示
 

地図を拡大縮小するには、画面左上隅の+-を使うほか、地図上をダブルクリックしても一レベルずつ拡大する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。Shiftキーを押しながら地図に矩形を描くと、その範囲が拡大される。

地図を入れ替えるには、バーの「ベースマップ」アイコンから入る。画面右にベースマップギャラリーが現れるので、適宜選択する。ここではさまざまなデジタル地図とともに、空中写真や陰影図なども用意されている。

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ベースマップの切り替え
 

このうち上2段6種類の地図は汎用の世界地図で、全世界の表示が可能だ。「National Geographic」は、ナショナル・ジオグラフィック社が提供する世界地図である MapMaker Interactive を使っている。「OpenStreetMap」や「Street」は先述の「USGS National Map」で表示されないレベル17以降の市街図にも対応している。

一方、下2段6種類はUSGSのオリジナルになる。「USA Topo Maps」は、USGSの印刷版地形図をスキャンし、接合したもので、きれいに見えるレベル(縮尺)は限られている。「USGS Imagery Topo」は写真図(空中写真に道路網など地図の骨格を重ねたもの)、「USGS Imagery Only」は空中写真、「USGS Shaded Relief Only」は陰影図のことだ。

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さまざまなベースマップ
 

背景図の上に重ねる地図レイヤーは、バーの「レイヤー」アイコンから入る。USトポの地形図生成にも用いられている様々なデータがレイヤー化されており、ベースマップに重ね表示することができる。各項目の右にある「…(オプション)」で、透過度の調整やレイヤーの上下関係の変更も可能だ。

・US Topo Availability:USトポ(地形図)索引図および更新時期
・Hydro Cached:水系図
・Watershed Boundary Dataset:河川流域図
・NLCD Land Cover:土地被覆図(NLCD=全国土地被覆データベース National Land Cover Database)
・3DEP Elevation:高度陰影図(3DEP=三次元高度プログラム 3D Elevation Program)

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レイヤーの追加と調整
 

地図をプリントするときは、バーの「印刷」アイコンから入る。レイアウト(判型、縦長/横長)と書式(JPEG、PDF等のデータ形式)を選択して、印刷ボタンをクリックすると、データファイルが生成されるので、ファイル形式に対応したアプリ(ソフトウェア)で印刷する。

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印刷画面
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生成されたPDFファイル
 

なお、バー左側の「Data Download」は、地形図をはじめとした各種データベースのダウンロードサービスだが、同様の機能は下記「topoView」にもある(取得できるファイルも同じもの)ので、説明は省略する。

USGSが刊行した印刷版の地形図は、実に178,000種を超えるという。これが全国地理空間プログラム National Geospatial Program(NGP)と称するプロジェクトですべてスキャンされ、データベース化された。そして、3年周期で時層化されているデジタル地形図USトポとともに、ウェブサイト「topoView」で無償提供されている。

USGS topoView
https://ngmdb.usgs.gov/topoview/

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topoView 初期画面
ボストン今昔 Boston Now & Then(上記画面右側の説明文)
 下のスライダーを使って、1893年のボストン地域を画面に出してください。旧版地形図コレクションで、ユーザーは自然および文化的な特色が時間とともにどのように変化するのかを調べることができます。地図はとりわけ、特定の場所や地域を研究している科学者、歴史家、系図学者その他の人々に有用です。一定期間にわたって刊行された同じ地域の一連の地図は、開発される前に地域がどんな様子だったのかを示し、時間の経過に伴う変化の詳細を見せてくれます。
 

初期画面には、アメリカの主要都市(画面例ではボストン Boston)の今昔を比較できる鳥瞰地図があしらわれている。初期値は旧市街付近だが、地図をドラッグすれば、東のローガン空港 Logan Airport から西のブルックライン Brookline まで見渡せる。スライダーを右に動かすと、19世紀末のボストンが浮かび上がる。空港一帯はまだ海で、ブルックラインは郊外にある一つの町に過ぎない。サイトでは、このような時代旅行がアメリカ全土にわたって楽しめる。

ではさっそく画面上方の「GET MAPS」か、右の「View and Download」をクリックしてページを進めよう。

次の画面では、ベースマップとしてアメリカ本土48州が表示され、左メニューにベースマップの操作、右パネルには検索・絞り込みの機能が並ぶ。また、地図画面左上の3個並ぶアイコンは、ベースマップを切替えるためのものだ。左がデジタル地形図(Mapbox を使用)、中央が空中写真、右は拡大していくと旧版地形図になる。

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ベースマップと操作パネル
 

ベースマップの拡大縮小操作は「The National Map」と同じだ。画面左上隅の+-ボタン、地図上をダブルクリック(一レベルずつ拡大)、マウスホイール(連続拡大縮小)、またはShiftキーを押しながら地図に矩形を描く。

右パネルには、始め方 Getting Started として三つの方法が列挙されている。すなわち、

1.上の地名検索窓に場所(地名、住所、郵便番号、経緯度(下注)など)を入力して、その場所の地図をすべて見る。
2.単純に地図上の任意の場所をクリック/タップして、その地点の地図をすべて表示する。
3.上の図名検索窓で図名を検索する。

*注 経緯度は緯度、経度(西経はマイナス表示)の順で、小数点付き(例:38.90, -77.04)または度分秒(例:38 54 00, -77 02 24)で入力する。

ここでは1の方法で、地名「san francisco」を検索してみる。候補が2件表示されるので、一つ目を選択する。

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地名による検索結果
 

これで、右パネルにサンフランシスコ旧市街が図郭に入る地形図の一覧が現れる。1895年版から最新の2018年版まで、該当するものが43点あることがわかる。なお、一覧の並び順は、「Name(図名)」「Date(製作年)」「Scale(縮尺)」「State(州名)」と書かれたアイコンで変更できる。

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該当する地形図の一覧
 

次に、製作年で絞り込みしよう。スライドバーを使い、左のポインタ(ピンクの小円)を右へ動かして、1945年にしてみる。すると候補は29件に絞られた。

今度は、縮尺で絞り込みしてみよう。スライドバーの下にカラフルな円が並んでいる。「All」は全縮尺、「250K」は250 Kilo(Kilo=1000)で1:250,000を意味する(下注)。例として「24K」、すなわち1:24,000を見ることにする。ちなみに、右隣にある「HTMC」は旧版図コレクション Historical Topographic Map Collection(=1884~2006年刊行の地形図)、「UST」はUSトポ US Topo(=2009年以降の地形図)のことだ。

*注 近似する縮尺は代表的な縮尺のグループに含めて表示される。例えば「100K」では、1:100,000とともに、1:96,000、1:125,000の地形図も表示される。

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条件の絞り込み
 

絞り込みの結果、第二次大戦後に作成された1:24,000地形図が14点、年代順にリストアップされた。同じ縮尺、同じ製作年のものが複数挙がることもよくあるが、これには増し刷りや刷り直しなどが含まれる。

では実際に地形図を表示させてみよう。例として、最上段にある「1947(年版)」を選択(クリック)すると、この版に関する操作パネルが現れる。「SHOW」アイコンで、左のベースマップ上に地形図の画像が表示される。また、右の地図画像のサムネールをクリックすると、別ウィンドウに単独画像が表示される。

「SHOW」で表示した地形図画像は、透過度バーで透過度を調整できるので、ベースマップとの比較も容易だ。また、複数の地図を表示して、時代による変化を追うこともできる。表示中はパネルに「HIDE」アイコンが出ており、これで地図画像をベースマップから消去できる。

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地形図画像の表示
 

「INFO」アイコンでは、製作に用いた空中写真の撮影時期や編集年、座標系、投影法など地形図の整飾に記載されている事項(メタデータ)が表示される。

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属性情報の表示
 

データダウンロードは、JPEG、KMZ、GeoTIFF、GeoPDFの各形式から選べる。解像度は240~300dpiあるので、拡大して詳細を読み取ることが可能だ。

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ファイルダウンロード
 

最後に、地形図の著作権について。

USGSは、上記サイトで取得した地図データはアメリカ合衆国のパブリックドメイン U.S. Public Domain にあり(=公有物)、制限なく使用できるとしている。ただしその場合、適切なクレジットをつけることを求めている。文例は以下のとおり。

「Credit: U.S. Geological Survey」
または
「Department of the Interior/USGS」
または
「U.S. Geological Survey/photo by Jane Doe(写真家/アーティストがわかっている場合)」

この件の原文は、下記参考サイトにある。

■参考サイト
USGS - Copyrights and Credits
https://www.usgs.gov/information-policies-and-instructions/copyrights-and-credits

使用した地形図の著作権表示 Department of the Interior/USGS

★本ブログ内の関連記事
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 地形図を見るサイト-カナダ

2021年1月12日 (火)

地形図を見るサイト-カナダ

東西9300km、南北4600km、この広大な国土を克明に描写したカナダの地形図は、ウェブ上でも余すところなく楽しめる…。と明快に書きたいところだが、現状を見る限りそうもいかない。なぜなら、データは揃っているものの、サイトへのアクセス、反応速度、見せ方など使い勝手に難があるからだ(下注、以下の記述は2021年1月現在の仕様に基づく)。

*注 カナダの地形図の概要については、本ブログ「カナダの地形図」参照。

下に、カナダ天然資源省 Natural Resources Canada (NRC) が所管する地形図情報のメニュー画像を示す。

Natural Resources Canada - Topographic Information
https://www.nrcan.gc.ca/topographic-information/10785

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天然資源省「地形図情報」のメニュー
 

天然資源省のトップページから入った場合、この画像の上方に記されたように階層を降りていく必要がある。ところが、上層ページの説明文に地形図に関するキーワードがほとんど出現しないため、初見でたどり着くのは容易ではない。

トップページには別途「Maps, tools and publications(地図、ツール及び出版物)」というメニューがあり、そこからもリンクがつながっている。しかし、一見有力そうなこのルートも階層が深く(4階層)、たいてい途中で迷子になる。

以前はジオグラティス GeoGratis というポータルサイトがあったのだが、2017年8月限りで廃止されてしまった。以来、本国でも、迷路に陥るユーザーが少なからずいて、不評を買っているようだ。

現行地形図

現行地形図(デジタル地形図)は「Toporama(トポラマ)」というサイトで閲覧することができる。上記の地形図情報メニューでは、左下にある「Toporama Interactive Map」が入口だが、直接リンクを下に記す。サイトの反応が遅いかもしれないが、すぐに地図画像が現れなかったとしても、お茶でも飲みながら、気長に待っていただきたい。

The Atlas of Canada - Toporama(英語版)
https://atlas.gc.ca/toporama/en/

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Toporama 初期画面
 

初期画面にはカナダ全土のデジタル地図が表示されている。あとは、右端の範囲選択ツール(拡大鏡アイコン)を使って表示範囲を絞るか、左メニューの「Find a Location」に任意の地名、住所、経緯度などを入力して、直接目的の場所を表示させればよい。

例として、首都オタワ Ottawa の地形図を見ることにしよう。検索窓に「ottawa」と入力すると、候補がドロップダウンリストで表示された。

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候補をドロップダウンリストで表示

候補から一つ(この例では最上段の候補)選択すると、該当のエリアが表示される。ベースマップの方位が北を指していないので、図郭を表す矩形が傾いて見える。

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選択した候補のエリアを表示

矩形の部分を拡大したのが下の画像で、オタワ中心部を表している。

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地図を拡大
 

このように、表示される地図はシンプルなものだが、いくつかのオプション表示が可能だ。左メニューの「Map Layers and Legend(s)」に、水流の方向、グリッド、起伏を表す陰影(ぼかし)などの選択肢がある。また、スライドバーでその透過度を変えることもできる。なお、「Grids(グリッド)」オプションで表示される紫のグリッド(格子)と「031G05」などの英数字は、1:50,000地形図の図郭と図番を表している。

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表示オプション
 

旧版地形図

一方、旧版地形図はシームレス画像ではなく、PDFやTIFFなどのファイル形式で1面ずつ保存されている。冒頭に紹介したNRCの地図メニュー「Topographic Information」まで戻って、画面右上の「Geospatial Product Index - HTML」から入ろう。

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こちらは比較的早く地図が現れるだろう。使い方は左メニューに書かれている。すなわち、

1.データタイプ(空中写真、ラスタデータなど)を選ぶ
2.表示されたリストの中からコレクション(ラスタデータなら縮尺別)を選ぶ
3.地図を拡大し、見たいエリアをクリックして、地図/データをプレビューさせる
4.現れたリンクをクリックすることで、ダウンロードの手続きが始まる

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Geospatial Product Index の初期画面
 

旧版1:50,000地形図のデータを取得する手順を具体的に見ていこう。

左メニュー上部の「Themes(テーマ)」タブを選択すると、その下に Imagery(空中写真)、Raster(ラスタデータ=地図画像)、Vector(ベクトルデータ)、Elevation(高度モデル)の選択肢が表示される。

ここで「Raster」を選択すると、「Digital Topographic Raster Maps - 1:50 000(1:50,000地形図ラスタデータ)」をはじめとして縮尺別のコレクション名が表示される。なお、最終行の「Toporama - 1:50 000」とは、上記「Toporama(トポラマ)」に使われているデジタル地図のことだ。これには整飾(図郭の周囲に記載される図名や凡例など)はついていない。

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「Themes」でコレクションを選択
 

最上段の「Digital Topographic Raster Maps - 1:50 000」を選択する。すると画面上部に Loading index... と表示され(少々時間がかかるかもしれないが)、カナダ全土の1:50,000の図郭が黄色で表示される。

地図の左上にある拡大ボタンで地図を拡大していくと、図郭とその中に図番(紫色の英数字6桁)が見えてくるはずだ。ベースマップを参考にしながら、必要な図郭を選択するとよい。例として、上記と同じオタワ図葉を見てみる。

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1:50,000の図郭が黄色で表示
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地図を拡大し、図葉を選択
 

これにより、左メニューに地形図のプレビューが表示される。これでよければ、その下にある「Download link / Lien de téléchargement」をクリックする。

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地形図のプレビューを表示
 

と、ここまではユーザーフレンドリーな作り込み画面だったのだが、次は一転、生のディレクトリ表示になる。そればかりかプレビューの地図が1種類だったのに、ファイルは何本か並列表示されている。

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ダウンロードファイルを選択
(説明を赤字で加筆)
 

見分けるポイントはファイル名の末尾にあるので、URLのフル表示(リンク上にカーソルを置くと、通常、ブラウザの最下段に表示される)を確かめるほかない。

上の画面例では、1段目のファイルの名称が 031g05_1100_canmatrix_geotiff.zip で、おそらく geotiff形式(地理参照型TIFF)のデータが入った圧縮ファイルだろうと推測できる。同様に2段目はファイル名末尾が prtpdf.zip で印刷用PDF(印刷用とは通常の印刷に耐えうる解像度という意味だろう)、3段目は prttif.zip で印刷用TIFFのようだ。地図を見たり印刷したりするだけなら、2段目のPDFで十分だ。

リンクをクリックするとダウンロードのポップアップ画面(「名前を付けて保存」)が現れるので、任意の場所に保存した後、解凍する。実際に prtpdf.zip で試してみると、下画像のようなPDFファイルが取得できた。1:50,000オタワ Ottawa 図葉の1998年版で、解像度は300dpi程度だ。

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PDFを取得
1:50,000オタワ図葉 1998年版(縮小画像)
 

この手順で、1:25,000から1:1,000,000(100万分の1)までさまざまな縮尺の地形図画像ファイルが入手できる。残念ながら地図画像は1図郭につき1種類だけだ。より古い版も存在するはずだが、それらはカナダ国立図書館・文書館 Library and Archives Canada (LAC) に移管されており、調べた限りでは、地図画像のネット公開は行われていない。

これとは別に、オタワやトロントなどの主要都市を擁するオンタリオ州には、州域の旧版地形図を公開するウェブサイトがある。オンタリオ大学図書館協議会 Ontario Council of University Libraries (OCUL) が開設しているもので、天然資源省のサイトにはない20世紀初期から中期にかけての1:25,000および1:63,360図(下注)を見ることができる。

*注 1:63,360図は、実長1マイルを図上1インチで表す地形図。通称 1-inch map(ワンインチマップ)。メートル法の普及に伴い、1:50,000に置き換えられた。

OCUL Historical Topographic Map Digitization Project
(OCUL旧版地形図デジタル化プロジェクト)
https://ocul.on.ca/topomaps/

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OCUL 旧版地形図デジタル化プロジェクト
初期画面
 

トップページにもサンプル画像がいくつか掲載されているが、それ以外のものを見るには、左メニューの「Full Collection」から入る。

下の画面に表示されている「1:63 360 Index Navigation」「1:25 000 Index Navigation」は、地図上で特定したいときの選択肢だ。地名がわかるのなら、検索窓やその下に続く地名一覧を使ってアクセスすることもできる。ここでは、「1:63 360 Index Navigation」から1:63,360(1インチ図)のコレクションを探すことにしよう。

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「Full Collection」のメニュー
 

「1:63 360 Index Navigation」をクリックすると、Scholars GeoPortal というサイトに移行する(そのため、ブラウザの戻るボタンではOCULのサイトに戻れないので注意)。最初に表示されるのは、1:63,360シリーズの概要だ。画面右のカナダ全図に図郭が表示されるので、スケールバーで拡大する。

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1:63,360旧版地形図シリーズの概要
右の地図は索引図
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地図を拡大
 

背景に表示されているベースマップを参考にしながら、見たい図郭を選択すると、画面左に年代順の候補図リストが表示される。例としてトロント図葉を選択しよう。

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図葉を選択、左欄は候補図リスト
 

各候補のボックスにある「View」ボタンで、地図画面にプレビューが表示される(複数表示可)。これは「Zoom」ボタンやスケールバーで任意の拡大表示が可能なので、ダウンロードしなくても細部を確認することができる。プレビューを解除したいときは「Remove」をクリックする。

また、「Download」ボタンにより、TIFF形式の画像ファイルを含む圧縮ファイルがダウンロードできる。高解像度のため、ファイルは100MB前後あるので要注意。

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「View」ボタンでプレビュー(拡大可能)を表示
複数の地図の重複表示も可能
 

左メニューの上部に並んでいるタブのうち「Map」には、地図に表示中のレイヤー数が括弧内に記されている。索引図(図郭と図番)も1と数えるので、地形図を1面表示させると (2) になる。このタブでは、表示中の各レイヤーの一覧が見られる。レイヤーごとに透過度の調整が可能で、ベースマップや複数表示させた地形図を比較するのに有用だ。

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「Map」タブで各レイヤーの詳細を表示
 

最後に、カナダの地形図の著作権について。

NRC製作のカナダ地形図は、現行図を含めてオープンガバメントライセンス Open Government Licence のもとに置かれており、商用・非商用を問わず無償で、「合法的な目的においてあらゆる媒体、モードまたは形式でコピー、変更、公開、翻訳、適合、配布またはその他の方法で使用することができる」とされている。この場合、情報の帰属記述 "© Department of Natural Resources Canada. All rights reserved." を付し、可能な場合にはこのライセンスへのリンクを記載しなければならない。

■参考サイト
Open Government Licence - Canada
https://open.canada.ca/en/open-government-licence-canada

使用した地形図の著作権表示 © 2021 Department of Natural Resources Canada. All rights reserved. Open Government Licence - Canada

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2021年1月 4日 (月)

御即位記念1:10,000地形図「京都」

天皇の代が替わり、元号が改まるごとに、国土地理院は1:10,000の縮尺で記念地図を製作してきた。平成の初めには、皇居を図郭の中心に置いた「東京中心部」の日本語版と英語版が作られ、即位の礼当日の1990(平成2)年11月12日に発行された。令和でも、ほぼ同じ図郭、同じ体裁で今上天皇の即位礼(2019(令和元)年10月22日)に合わせて発行された。

時代を遡れば大正および昭和初期にも、参謀本部陸地測量部が製作した同じ趣旨の記念地図が存在する。ただし、描かれた土地は、後の2期とは異なり、京都の市街地とその周辺だ。即位礼が当時、京都御所で執り行われたことにちなむものだという。

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大正御即位記念地図
1:10,000「京都近傍図」東北部(縮小画像)
 

しかしこの京都図は刊行から約100年が経過しており、今では目にする機会がほとんどない(下注1)。それどころか、国土地理院にも現物が残されていないと聞く。それがこのたびの改元を機に、個人コレクションから写真復刻され、桐箱入り四代記念地図一式の形で日本地図センターから発売された(下注2)。地図関連の企画展などにも展示されて、ようやく内容が知れ渡るようになった。

*注1 2000年代にジュンク堂書店が大正版を写真復刻したことがある。
*注2 桐箱入りはめっぽう高価なため、GeoTIFF形式の画像データを収めたDVD版(税別3000円)も発売されている。

今回は、この御即位記念1:10,000地形図「京都」2種を概観してみたい。

大正版、昭和版とも見た目はよく似ている。適用図式が異なるものの(下注)、昭和版は大正版をベースにして作られたからだ。

*注 大正版は明治42年図式、昭和版は大正6年図式による。

両者とも市街を縦横各2分割してあり、東北部、東南部、西北部、西南部の4面(下注)で1セットだ。西南部図幅には「一般図」の名で広域図がインセットされている。図郭寸法は横45.5cm×縦76cmで、4面貼り合わせると東西9.1km×南北15.2kmの範囲をカバーする【図2】。図枠には大正版が「京都近傍図」、昭和版は「京都近郊」のヘッダーがつき、それぞれ1915(大正4)年10月10日と1928(昭和3)年9月10日の刊行日が記載されている。

*注 分割位置は、1:25,000地形図などの汎用図(北緯35度、東経135度45分)と異なる。

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【図2】一般図(広域図)に示された4面の図郭
 

慶事の記念とあって仕様も特別だ。通常の1:10,000が主として朱・茶・緑・青・黒の5色刷(下注)であるのに対して、こちらは、朱色に代えて上品な深紅色を用いる。さらに、水田や空地・畑地には特色の面塗りを施すなど、7色の版を駆使して美麗に仕上げている。

*注 地域や製作時期によって黒1色刷、黒・青の2色刷、朱・緑・黒の3色刷、朱・茶・青・黒の4色刷のものもある。

地形表現には、標準的な10m間隔の等高線に加えて、ケバを用いる【図3】。ケバはブラシのような短線で斜面の向きや斜度を表現する方式だが、日本では1:100,000以下の小縮尺図が主で、こうした大縮尺図で採用されるのはあまり例がない。

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【図3】等高線とケバを併用した地形表現
 

このように手数をかけていることは確かなのだが、地図の精度が高いかどうかはまた別の話だ。というのも、大正版は新たな測量成果によるものではなく、既存の1:20,000地形図を基にした編集図だからだ。京都市街の正式1:20,000は1909(明治42)年に測図されており、これを2倍拡大して用いたと言われる。

もちろん大正版は1:20,000の忠実なコピーではなく、縮尺の大きさを生かして施設名や電停名などの注記が追加されている。また、1:20,000測図以降の数年間に生じた景観の変化も反映されている。気づいたものを挙げておこう。

1.京都駅前後の線路移転【図4】

1877(明治10)年に開業した東海道本線のルートと初代駅舎は今より北側にあったが、1914(大正3)年8月に現位置に移転した。初代の状況が描かれた1:20,000に対して、大正版では2代目駅舎と新線が描かれ、旧駅構内は駅前広場に、前後の線路跡は空地になっている。

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【図4】
(上)1:20,000「京都南部」明治42年測図(2倍拡大)
  初代京都駅と旧線が描かれる
(下)同じエリアの大正版では南へ移転
  参考までに旧線の位置を薄緑で加筆した
 

2.京都市電の開業【図5】

京都には1895(明治28)年以来、京都電気鉄道(京電)が運行する軌道線が存在したが、1912~13(明治45~大正2)年に、京都市三大事業の一つとして、道路拡幅と市営電車路線網の建設(第一期)が実施された。大正版にはこれが描かれている。

また、鉄道会社を色で区別していて、京電(京鐵線の注記も混在)には黒、市電(市営線の注記)には緑、嵐電には青、京阪電鉄には茶色、京津電鉄には赤を当てている。ただし、下図のとおり市電の緑が濃いため、京電との判別は難しい。なお、軌間1067mmの京電と軌間1435mの市電が重複する区間は3線軌条化されており、図上では両者の記号を交互に並べて表現している。

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【図5】
大正版を1.5倍拡大、京電線/市営線を青字で加筆
この図の範囲における重複区間は、寺町丸太町~烏丸丸太町~烏丸下立売
 

3.岡崎の博覧会施設整備【図6】

大正4(1915)年に大典記念京都博覧会が開催された。大正版には、市街東部の岡崎公園域に「大典記念博覧会場」の注記があり、竣工間もない京都市勧業館などの施設が描かれている。また、交通網では京津電鉄線(三条通の北を迂回する旧ルート、1912(大正元)年開通)や、東山通および市電東山線(1913(大正2)年)の記載がある。

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【図6】
(左)1:20,000「京都北部」明治42年測図(2倍拡大)
  岡崎公園西側はまだ空地のまま  
(右)同じエリアの大正版
  空地が勧業館などの建物で埋まる
 

4.軍用地設置に伴う道路整備【図7】

1908(明治41)年の陸軍第16師団設置に伴い、京都と伏見の旧市街の間に広大な軍用地が確保された。その東側には師団街道が建設され(1911(明治44)年竣工)、西側では竹田街道(地図の注記は大和街道)が直線化された。1:20,000でもすでに軍用地が描かれているが、竹田街道とそれに沿う京電伏見線は旧来の状態だ。大正版には直線的な新道および線路が登場する。

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【図7】
(左)1:20,000「京都南部」明治42年測図 を2倍拡大
  竹田街道(大和街道)の旧道が描かれる  
(右)大正版では直線道路となり京電線も移設
 

5.桃山陵墓地の造営と桃山駅前の整備【図8】

明治天皇の崩御で、1912(大正元)年、かつての伏見城本丸跡地に御陵が造営された。大正版には、明治天皇陵、昭憲皇太后陵(下注)とそのアクセス道路が、さらに最寄り駅となった奈良線桃山駅の北側にも並木を伴う広い駅前道路が描かれる。ちなみにこの道路は後に廃止され、現在は森に戻されている。

*注 現行地形図の注記は、伏見桃山陵、伏見桃山東陵。

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【図8】大正版には陵墓とアクセス道路、
  図左端に桃山駅と駅前道路が描かれる

では次に、昭和版を見よう。

こちらは図枠の左肩に「昭和三年測図」(昭和3年=1928年)と記されている。とはいえ、新たな測量を意味するものではなく、大正版をベースにしていることは明白だ。大正版と異なるのは、私鉄記号の会社別色分けがなくなり、土地利用の面塗りの配色が見直されたことだ。また、皇室関係施設の注記に英訳が付され【図9】、その関連でか、東北部図幅が修学院離宮を入れるために部分延伸されている。

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【図9】皇室関係の施設に英訳が付される
 

大正版とは13年の開きしかないが、この間に資料となる地図事情は大きく改善した。1922(大正11)年に京都市の1:3,000都市計画基本図が完成したからだ。1929(昭和4)年にはその修正版も出ている(下注)。修正版は京都図昭和版より後の刊行だが、両者を照合すると内容に一致点が多く、編集段階で資料が提供されたことを推測させる。

*注 1:3,000都市計画基本図は、立命館大学アート・リサーチセンター「近代京都オーバーレイマップ」で閲覧できる。
https://www.arc.ritsumei.ac.jp/archive01/theater/html/ModernKyoto/

高精度の資料が入手可能になったことで、たとえば大谷大学の構内、嵐電のルートなど、1:20,000図にはなく大正版編集の過程で追加された項目は、描き直されて位置がより正確になった【図10】(大谷大学は図11参照)。

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【図10】昭和版では嵐電のルートが修正されている
 (上)大正版 (下)昭和版
 

記載内容の変化を見ると、烏丸通の今出川以北や河原町通など、市街地の道路拡幅と、市電の路線網拡充が進行している【図11】。また1918年(大正7年)の京都市による京電買収に伴い、一部の並行路線が整理されたことがわかる(木屋町通、二条通など)【図12】。

東海道本線は1921(大正10)年に東山トンネルを経由する新線に切り替えられ、同時に奈良線が稲荷駅経由に変更された【図13】。さらに、京阪電鉄の五条~三条間が延伸(1915(大正4)年)【図12の右端】、出町柳を起点とする叡山電鉄が開業(1925(大正14)年)している。

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【図11】
(左)大正版では、大谷大学と師範学校を水田が取り囲む
(右)昭和版では、烏丸通と市電が開通し、周辺が市街化
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【図12】
(左)大正版では、木屋町通と二条通を京電線が走る
(右)昭和版では、河原町通と市電が開通、京電線は撤去
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【図13】
(左)大正版では、東海道本線が京都駅から南下(現 奈良線のルート)
(下)昭和版では新線が開通、今熊野の切通しを経て東山トンネルへ
 

また、大正版ではまだ一面の田園が広がっていたエリアに、碁盤の街路網と総描家屋や大規模建物の記号が進出しつつあるのが確認できる。北部の鞍馬口通以北、東部の白川周辺、山陰本線の西側、京都駅南側など旧市街周縁の多くがそうだ【図14】。

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【図14】
(左)大正版では、京都駅南側にまだ水田が多い
(右)昭和版では、工場が多数進出し市街化が進行
 

全国的に見れば、1:10,000地形図はすでに明治20年代から、各地の要塞地帯を対象に製作が進められていたが、これらは秘図で非公開だった。明治末期になると、東京をはじめとする都市部で、汎用図(市販品)としての刊行が始まり、従来の基本縮尺1:20,000(1910(明治43)年から1:25,000)では表現しきれない市街地の詳細が記録されていく。

しかし、京都市域にその網が及ぶのは昭和10年代まで待たなければならない。大正期は、周辺自治体の編入もあって京都市の人口が急増する時代だ。この2種の御即位記念地図は、市街地の拡大や近代交通網の発達など、変貌著しい京都の姿を記した貴重な図化資料と言える。

掲載の地図は、陸地測量部発行の1万分の1「京都近傍図」(大正4年10月10日発行)、同「京都近郊」(昭和3年測図)、2万分の1「京都北部」「京都南部」(いずれも明治42年測図)を使用したものである。

★本ブログ内の関連記事
 国土地理院の集成図「京都」

2020年6月21日 (日)

地形図を見るサイト-ノルウェー

ノルウェーの測量機関カルトヴェルケ Kartverket(以下、地図局と訳す)が設置する地図サイトには、少なくとも二つの特色がある。

一つ目は、印刷図にはないぼかし(陰影)つきの地図画像が見られることだ。測量局は2015年に地形図の刊行を廃止したが、最後まで地勢は等高線だけで表現されていた。しかし、この国のダイナミックかつ千変万化の地形は、立体感を強調した画像で眺めるに限る。

二つ目は陸の地形図だけでなく、海図も併せて公開されていることだ。地図局の業務範囲に海図作成も含まれているので当然かもしれないが、陸上図と同じ操作で海図まで見られる簡便さは、ほかに例を思いつかない。

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最北端ノールカップ Nordkapp のラスタ地形図
 

ノルウェーの地形図の概要については、別稿「ノルウェーの地形図」を参照していただくとして、今回はこの地図サイトの使い方を紹介していこう。

(以下の記述は2020年6月現在の仕様に基づく)

現行図を公開しているサイトは、「ノルゲスカルト Norgeskart」と呼ばれる。ノルウェーの地図を意味するとおり、全土をカバーする多彩な地図が収められている。

ノルゲスカルト Norgeskart
https://www.norgeskart.no/

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「ノルゲスカルト」初期画面
 

初期画面はいたってシンプルだ。左上に検索窓があり、右上に拡大縮小と現在地に同期のボタン、右下に選択できる背景図が並んでいる。これ以外のメニューは、検索窓の左隅にあるメニューアイコンをクリックして初めて現れる。

以下の説明は英語版で行うので、初めに言語選択をしておきたい。表示された左メニューの最下段(スクロールが必要かもしれない)で「English」を選択する。ちなみにその左にあるのは、2種のノルウェー語である Bokmål(ブークモール)と Nynorsk(ニーノシュク)だ。この左メニューは、最上段の×印で畳むことができる。

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言語の切り替え
 

表示可能な地図は、右下の3種の背景図だけではない。全リストは、左メニューにある「BASE MAP LAYER」の矢印をクリックすれば現れる。

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表示可能な地図のリスト
 

初期画面に表示されているのは「Topographic map」だが、これを含めて以下の選択肢がある。

Topographic map:ベクトル地形図(デフォルト表示)
Aerial images:空中写真
Raster map:ラスタ地形図(印刷図の原版)

Grey scale map:グレースケール地図
Simplified:簡略図(上記地図のカラー版)
Terrain:高度陰影図

Nautical Charts:海図
Jan Mayen:ヤン・マイエン島のベクトル地形図
Svalbard:スヴァールバル諸島のベクトル地形図
Electronic Nautical Charts:電子海図

Economic chart 1. Edition:経済地図初版

この中で、本土の地形図については4種用意されている。

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表示できる各種地形図の例
 

上掲地図画像の最上段「ベクトル地形図 Topographic map」は、ファイルサイズが小さいので初期画面に採用されたと思われるが、地勢のぼかし(陰影)もつき、中縮尺ではラスタ地形図と遜色がない。さらに、スケールバー記載の実長値が「20m」になるまで拡大できる。このレベルでは、もはや個々の建物の屋根の形状さえ確実に読み取れる。

それに対して2段目の「ラスタ地形図 Raster map」は、見慣れた印刷図そのものだ。用紙サイズに制約される印刷図に対して、ここでは国土の隅々までシームレスに眺めることができる。また、旧版地形図のアーカイブ(後述)と経年変化を照合する際に、図式が共通なのは大きなメリットだ。ただし、ノルウェーでは1:25,000図が作成されてこなかった。そのため「ラスタ地形図」では、スケールバー記載の実長値を「1000m」以上にしても、画像が単純拡大されるばかりで、内容に変化はない。また、数値が「100m」になると、ベクトル地形図に置き換わる。

「グレースケール地図」およびそのカラー版である3段目の「簡略図 Simplified」は、ベクトル地形図から地勢(等高線を除く)、市街地、交通網、都市名などを抽出したものだ。さまざまな主題図の背景画に適するように、明度を高めてある。

左メニューにあるとおり、これらの背景図に、property(地籍)や Hiking and outdoor recreation(ハイキング・野外活動)などの情報を付加して Thematic map(主題図)にすることができる。

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機能の活用
 

特定の場所を検索するには、検索窓に、地名や主要施設名、座標値(例:59.910785, 10.753625)、経緯度(例:59°54'39 N,10°45'13 E
 N,Eは省略可)を入力する。

地図を拡大縮小するには、右上隅の+-ボタンを使うほか、画面をダブルクリックしても一段階ずつ拡大する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

地図をプリントするには、左メニューの「WHAT DO YOU WANT TO DO?」の下に「PRINT」サブメニューがある。Template type(テンプレート形式)で、用紙大と portrait(縦長)/landscape(横長)を、Scale(縮尺)で適切なものをそれぞれ選択する。

地図上に表示されたオレンジの矩形が実際の印刷範囲で、選択した縮尺に応じて、範囲が変化する。この印刷範囲は、地図をスクロールすることで移動できる。指定が完了したら、Generate print file(印刷ファイルを生成)をクリックすると、印刷データがPDF形式で生成される。

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印刷フォーマット指定

旧版地図については、別サイト「歴史地図 Historiske kart」で画像ファイルをダウンロードできる。

歴史地図 Historiske kart
https://www.kartverket.no/Kart/Historiske-kart/

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「歴史地図」初期画面
 

画面右上に英語版への切り替えが用意されているが、今のところクリックしても「英語の情報は限られている」というメッセージが表示され、本文が英語表示にならない。そのため、ノルウェー語(ブークモール)画面のスクリーンショットに適宜和訳を付記しておいた。

このアーカイブは、旧版地形図と測量原図だけでなく、近代測量以前の古地図も含まれており、質量ともに充実した内容だ。ところが、土地鑑のない者にとっては大きな障害がある。図名や、地図に含まれる地名で検索する手段がないのだ。

候補を絞り込むには、県名、地図シリーズ名、製作年代の三つの条件で検索をかけることになっている。2020年の自治体再編により県の数は現在11になっているが、画面には、以前の18県時代のドロップダウンリストが現れる。

例えばベルゲン Bergen の旧版地形図を見ようとすると、ベルゲンが以前何県に属していたかを知る必要がある。調べるのが面倒なら、県名を全選択(リスト最上段に選択ボックスあり)してしまうことも可能だが、当然おびただしい数の候補がリストアップされてくる。この関門を突破できれば、見たい地図シリーズと年代を選択して、検索をかければよい。

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検索対象の絞り込み
 

地図シリーズにはかなりの選択肢がある。主なものは以下のとおり。

経緯度区分図 Gradteigskart
 1893~1955年の間刊行された、経緯度区分図(後述)の後継シリーズで、縮尺は1:100,000。

経緯度区分図の測量原図 Gradteigsmålinger
 経緯度区分図のための原図で、縮尺1:50,000~1:100,000。

1:50,000(M711)地形図 Norge 1:50 000/M711
 1952年から刊行が始まった全国をカバーする地形図シリーズ。2015年に刊行終了。

矩形図 Rektangelkart
 1869~1942年の間、刊行されたノルウェー最初の地形図シリーズで、縮尺は1:100,000。1893年以降、経緯度区分図に置き換えられていったため、国土の南部を一部カバーしたにとどまる。

矩形図の測量原図 Rektangelmålinger
 矩形図のための手描き測量図で、縮尺1:10,000。

旅行地図 Turkart
 1:100,000などの縮尺による旅行地図。印刷図はこれまでかなりの点数が出版されてきたが、民間会社に版権が移されたためか、ここにはほとんど収録されていない。

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オスロが図郭に入る1:50,000地形図で、
1950~1990年刊行の図を検索する
 

これで候補が表示される。見たい地図のサムネール画像をクリックして選択する。

ダウンロードに際して、ファイルの解像度を選べるようになっているのは親切だ。高解像度(300dpi)は、プリントしてもジャギーが目立たない。画面で確認するだけなら、中解像度(100dpi)で十分だ。

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候補表示画面
 
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そのうちの一点を選択

これらの地図データの二次利用については、利用規約に記載がある。ご参考までに、以下に英語版の抜粋(和訳)を掲げる。全文は、https://www.kartverket.no/en/data/Terms-of-use/ を参照されたい。

無償製品のライセンス License for our free products
地図局の無償製品は、クリエイティブ・コモンズ属性4.0国際 Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) に基づいてライセンスされている。これはこれらの製品または抽出物が使用されるあらゆる状況で、地図局の名称が次のように表示されることを意味する。© Kartverket。また、可能な場合は地図局のウェブサイトにリンクも張るべきである。

地図のスクリーンショット Screenshot of map
©Kartverket または ©kartverket/norgeskart.no のクレジット記載と引き換えに、norgeskart.no のほとんどの地図のスクリーンショットを自由に使用できる。しかし、十分にズームアップさせると、地図局が一部または全部の権限を持たない地図を得ることになる。これらを使用するには、ライセンス所有者から許可を得る必要がある。URLのどこかに「zoom =」の語句があり、その後に1~20の数字が続く。ズームレベル12~20には許可が必要である。

空中写真のスクリーンショット Screenshot of aerial photos
norgeskart.no および norgeibilder.no の空中写真はライセンス製品であり、ライセンス所有者から許可を得る必要がある。

古地図(旧版地図)Historical maps
古地図の場合、以下の内容を複製物に含める必要がある。
「原図の場所(Kartverket)、図名/図番、製作者名、年」
クレジットの例:
「Kartverket: Rectangle measurement: 1:50,000, 19A-1, Ltn. C. Lund, 1847」
100年を超える古地図はパブリックドメインと見なされる。利用者はこれらの作品について、製作者を尊重して適切なクレジットを付与していただきたい。

使用した地形図の著作権表示  © 2020 Kartverket

■参考サイト
ノルウェー地図局 https://www.kartverket.no/

★本ブログ内の関連記事
 ノルウェーの地形図
 ノルウェーの旅行地図
 ノルウェーの道路地図
 スヴァールバル諸島の地形図

 地形図を見るサイト-スウェーデン
 地形図を見るサイト-デンマーク

2020年5月24日 (日)

地形図を見るサイト-スウェーデン

2008年に紙地図の印刷方式を、オフセットから少量多品種の生産に適したデジタル方式に切り替えたスウェーデンだが、2018年6月限りでついに紙地図の刊行自体を止めてしまった。これに代える形で、国の測量機関であるラントメーテリエト Lantmäteriet(以下「国土測量庁」と訳す)が、専用サイトで閲覧・ダウンロードのサービスを提供している(下注)。まずはそれを見ていこう。

*注 スウェーデンの地形図の概要については、本ブログ「スウェーデンの地形図」参照。

(以下の記述は2020年5月現在の仕様に基づく)

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ゴットランド島 ヴィスビュー Visby, Gotland
のデジタル地形図(高度陰影図)
 

国土測量庁の地形図サイトは複数ある(下注)が、どれも似たり寄ったりの基本機能で、表示される地図も同じものだ。本稿では「私の地図 Min karta」と呼ばれるサイトの使い方を説明する。

*注 現行地形図データが見られるものでは、「私の地図」のほかに、
 ・1世代前の「地図検索と地名 Kartsök och ortnamn
 ・地図印刷に特化した「地図印刷 Kartutskrift
 ・地図のエラーを投稿する「地図改良 Förbättra kartan
 の各サイトが存在する。

 

「私の地図 Min karta」
https://minkarta.lantmateriet.se/

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「私の地図」初期画面
 

初期画面にはスカンジナビアの小縮尺図が表示され、使用言語はもちろんスウェーデン語だ。下部には、クッキー使用に関するメッセージが出ている。右下のチェックボックスで答を返せば、メッセージは消える。ヘビーユーザーでない限り、設定を保存する必要性は低いので、「同意しない」で問題はない。

使用言語に関しては、トップメニューに切り替えボタンがある。画面左に並ぶボタンの中の「トップメニューを表示/非表示」をクリックすると、最上部にメニューが現れる。ここで英語(English)を選択する。このメニューは、「トップメニューを表示/非表示」を再度クリックすれば消える。

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言語の切り替え
 

画面左のボタンメニューの意味は、下の画像に示したとおりだ。また、「ボタンの説明を表示/非表示」をクリックすれば、英語の説明が表示される。

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ボタンメニュー
 

デフォルト表示されている地図は「地形図」だが、これを拡大していくと、黒い線がぎっしり詰まった異様な図になるだろう。これは地籍界と地籍(住居)番号を描いたレイヤーが、重ね表示されている状態だ。レイヤーを消すには、左の「背景図を選択」ボタンをクリックして、サブウィンドウにある「Show property boundaries」のチェックをはずす必要がある。

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(左)デフォルトでは、地籍界レイヤーを重ね表示
(中)地籍界レイヤーを非表示に
(右)空中写真や高度陰影図への切り替えができる
 

また、このサブウィンドウでは、表示地図の切り替えができる。表示可能な地図・空中写真は以下のとおり。

Map:地形図
Aerial photo:最新の空中写真(オルソフォト=正射写真)
Elevation map:高度陰影図
Aerial photo ca. 1960:1960年ごろの空中写真
Aerial photo ca. 1975:1975年ごろの空中写真

それぞれに、先述の地籍界 property boundaries レイヤーを重ねることができる。これは紙地図の「土地区画図 Fastighetskartan」に相当する機能だ。

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表示される地図・空中写真の例
 

また、ノルウェーと国境を接する山岳地帯では、紙地図「山岳地図 Fjällkartan」の仕様で表示される。夏場と冬場のトレッキングルートをはじめ、キャンプサイト、避難小屋など野外活動に関する情報が盛り込まれている。

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山岳地図の表示仕様
 

地図を拡大縮小するには、左上隅の+-ボタンを使うほか、画面をダブルクリックしても一段階ずつ拡大する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

地名で検索するには、左の検索ボタンを使う。経緯度やUTM座標値による検索ができない代わりに、地名検索は精密で、地番(住居番号)単位まで可能だ。ところが、Stockholm(ストックホルム)といった都市名などで検索しようとすると、市内にある小地名がすべて候補として表示されてしまい、使い勝手がよくない。

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地名検索
 

任意の地点の位置情報を知りたいときは、画面上でクリックすると、住所(地番)、UTM座標値、標高値が表示される。

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任意の地点の位置情報を表示
 

地図をプリントするには、まずPDFファイルを作成してPCにダウンロードし、それを印刷するという手順を踏む。

左メニューにあるPDFへの書き出しボタンをクリックすると、サブウィンドウが表示されるので、フォーマット(用紙大と縦長/横長)を選択する。地図画面でハイライトされているエリアが、印刷範囲になる。これは、画面をドラッグすることで移動させることができる。印刷範囲がこれでよければ、サブウィンドウの「Export to PDF」をクリックする。これでPC上にダウンロードのメッセージが表示されるだろう。

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PDFへの書き出しフォーマット指定

旧版地図はどうだろうか。ウェブサイトで見られるものとしては、1:100,000「参謀本部地図 Generalstabskartan」(北部内陸では1:200,000)の地形図のほか、1:20,000~1:50,000「郡経済地図 Häradsekonomiska kartan」、1:10,000~1:20,000「経済地図 Ekonomiska kartan」などに限られる。戦後の「4色地図」や色名ブランドのシリーズ(グリーンマップなど)は一切含まれておらず、提供体制も現行データに比べれば貧弱だ。

公式サイトではないが、刊行停止直前の地形図ラスタデータを公開している奇特なサイトがあった。1:50,000のデータは紙地図の図郭単位に切り出されていて、使いやすい。GPSアプリで使うことが想定されているようだが、適宜プリントすれば、紙地図の代用にもなる。なお、本稿末尾に記載するとおり、これらのデータはすでにオープン化され、著作権も放棄されているため、二次利用に制限はない。

Svenska kartor för nedladdning(スウェーデン地図のダウンロード)
http://bengt.nolang.se/kartor/

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初期画面

国土測量庁には、「歴史地図 Historiskakartor」という名の旧版地図サイトがある(以下、英語版で説明)。しかし、シームレスな地図画像が用意されているわけではなく、スキャンされた刊行図葉の画像を個々に表示する方式だ。そのため、まず検索対象の絞り込みが必要になる。

「歴史地図 Historiskakartor」
https://historiskakartor.lantmateriet.se/

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「歴史地図」初期画面 英語版
 

初期画面で提示されているのは、地図上でエリアを選択する方法だが、これは相当ピンポイントまで指定しないと、「選択した範囲が広すぎる(=ヒット件数が多すぎる)」というメッセージが出て、先へ進めない。そのため、効率的に検索するには、「Advanced search(高度な検索)」を利用するとよい。

高度な検索では、アーカイブを選択しなければならない。4つ挙げられているうち、「参謀本部地図」は3番目の「Geographical Survey Archive(総合地図製作所 Rikets allmänna kartverk アーカイブ)」に含まれる。

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アーカイブの選択
 

後は、Map Series(地図シリーズ)、County(県 Län)をドロップダウンリストで選ぶと、Page(図葉)のリストに、候補となる図番・図葉名が表示されている(下図上)。この中から選んで、「Search」ボタンをクリックすると、適合する地図ファイルへのリンクが現れる(下図下)。

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(上)その他の項目を選択
(下)検索結果の表示
 

画像圧縮方式は、DjVu方式とPNG方式が選べるが、画面で見るだけなら DjVu がよいだろう。PNGはダウンロードできるが、解像度が低く、細部は読み取れない。なお、精細印刷に用いる高解像度のTIFFファイルや印刷サービスは有償になっている。

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DjVu方式で表示

同様の地図コレクションサイトを、ストックホルム大学も開設している。こちらは画面表示される画像はなく、TIFF形式のZIP圧縮ファイルを直接ダウンロードする形だ。図番や図郭(収録範囲)は、同じページで公開されている索引図で調べることができる。しかし、このZIPファイルはサイズが300MB前後あり、ダウンロードには相当の時間を覚悟しなければならない。

ストックホルム大学-地図の部屋 Stockholms universitet - Kartrummet
https://kartavdelningen.sub.su.se/kartrummet/

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「地図の部屋」初期画面
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図番を選んでTIFFダウンロード

参謀本部地図だけなら、イェヴレ Gävle にある鉄道博物館 Järnvägsmuseet のコレクションの中にも見つかる。こちらは10MBまでのJPEGファイルで表示されるが、150dpi程度の解像度があり、細部を読み取ることも難しくない。ただし、オリジナル図に加刷や書き込みが入っている。

鉄道博物館コレクション Järnvägsmuseets Samlingar - Samlingsportalen
http://www.samlingsportalen.se/all/digitala_biblioteket_vag_generalstaben.html

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鉄道博物館コレクション
参謀本部地図一覧
図名の後の数字は同じ図葉が複数あることを表す

スウェーデン国土測量庁が作成した地図のうち、1:50,000とそれより小縮尺のものは無償開放されており、商用/非商用を問わず自由に使用できる。閲覧サイトでは、画面に表示される縮尺の値が「200m以上」のものがこれに該当する。2017年9月1日からは、これらに CC0ライセンスが適用された。これはパブリックドメインに配置されるとともに、著作権が放棄されたことを意味する。二次利用の場合、出典の明示は推奨されているが、義務ではない。

それ以外の大縮尺図は著作権で保護されており、二次利用には国土測量庁の許可を要する。

Contains data from Lantmäteriet, Sweden

■参考サイト
国土測量庁 Lantmäteriet http://www.lantmateriet.se/

★本ブログ内の関連記事
 スウェーデンの地形図
 スウェーデンの山岳地図
 スウェーデンの道路・旅行地図と地形図地図帳

 地形図を見るサイト-デンマーク
 地形図を見るサイト-ノルウェー

2020年4月26日 (日)

地形図を見るサイト-デンマーク

世界に先駆けて2002年に紙地図の更新を廃止したデンマークだが、その後2013年に、国が作成する地理データを、過去のものを含めてすべて無償開放した。商用と非商用を問わず、複写、配布、公開、変更、他の素材との合成が、出典を明示するだけで(下注)無制限に可能となった。国土の状況を記録した地理データは公共インフラの一部であり、誰でも必要な時に容易に利用できるようにすることが、社会価値の創造に貢献するという考え方に基づいた措置だ。

*注 出典の記述形式については本稿末尾に記載。

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リレベルト Lillebælt(小ベルト海峡)付近の
1:25,000地形図(4cm地図)
 

現在、デジタル地図は言うに及ばず、紙ベースの旧版図(下注)も高精度のスキャニングによりデータ化され、専用サイトで公開されており、国外からもアクセスできる。今回はその状況を紹介しよう。

*注 デンマークの地形図の概要については、本ブログ「デンマークの地形図」参照。

(記述は2020年4月現在の仕様に基づく)

SDFE地図ビューアー SDFE kortviser

地図作成を担当する政府機関、データ供給・効率化局 Styrelsen for Dataforsyning og Effektivisering (SDFE) は、国土の地理データを公開する「SDFE地図ビューアー SDFE kortviser」というサイトを運営している。表記がデンマーク語のみであるのが惜しいが、現行図とともに19世紀中盤以降に作成された1:20,000~1;25,000図も見ることができ、利用価値は高い。

SDFE kortviser
https://sdfekort.dk/

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初期画面
 

初期画面では、左側に提供されている地理データのカテゴリーの一覧があり、上部に操作ツールが並んでいる。操作ツールのうち、印刷、検索などを選択するとドロップダウンリストが出てくる。その意味するところは下の画像のとおりだ。

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上部メニュー
 

左メニューに見えるデータのカテゴリーに、さまざまな地図データが包含されている。そのうち地形図類は、下の2行、「Historiske baggrundskort(旧版ベースマップ)」と「Baggrundskort(ベースマップ)」にある。前者は過去データ、後者は最新のデータだ。それぞれ内容を簡単に記しておこう。

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左メニュー
 

旧版ベースマップ Historiske baggrundskort

オルソフォト Orto(foto)
 正射写真、すなわち地表の高度差や、写真の中心からの距離によって生じる歪みを修整した空中写真で、1999年から2008年にかけて3年間隔で撮影されたものがシームレス画像で見られる。

地形図 Topografisk kort
 1953年から紙地図の最後となった2001年までに更新された1:25,000全国地形図(「デンマーク地形図 Danmarks Topografiske Kortværk」、略称 DTK)のシームレス画像(下注)。20世紀後半の国土の状況を表している。

*注 画面に記された期間は、地図の刊行年 Publication year ではなく、更新年 Revision year を示している。以下も同じ。

平板測量図 Målebordsblade
 地上測量(平板測量)の成果に基づく1:20,000地形図。19世紀中盤から20世紀前半にかけての国土の状況を表している。なお、南ユラン(南ユトランド)Sønderjylland は1865~1920年の間プロイセン領だったため、同国が作成した1:100,000地形図が別項目(プロイセン平板測量図 Preussiske målebordsblade 1877-1920)として立てられている。

(現行)ベースマップ Baggrundskort

オンライン地図 Skærmkort
 各種主題図の背景図に用いるために設計された簡易仕様のデジタル地図。Skærmkort(スケアムコート)は画面地図を意味する。なお、SDFE地図ビューアーの初期画面でも、このデータで透明度を上げたもの(Skærmkort dæmpet)を使っている。

ジオデンマーク GeoDanmark
 デンマークの地理データベースの3本柱の一つで、地名 Stednavne、標高モデル Højdemodel 以外の地理データを扱う。

デジタル地図 DTK
 紙地図(地形図 Topografisk kort)の後継である現行の地形図ラスタデータで、Kort25(1:25,000)から Kort500(1:500,000)までの5段階の縮尺図が見られる。なお、1:25,000は紙地図の図式に従ったデータ(Kort25 klassisk)が用いられている。

地理データは、それぞれのメニューの右端にあるスイッチアイコンをクリックすると表示される(アイコンは緑色に変わる)。複数の地理データを選択することは可能だが、画面に表示されるのは最上段にあるものだけだ。ワンタッチでレイヤーを切り替える機能はないようだ。

したがって、下位の地理データが見えるようにするには、上位の地理データを閉じる(=再度クリックしてアイコンをグレーに変える)か、レイヤーの上下を入れ替える(=項目ごとドラッグアンドドロップする)必要がある。

下の画像では、不要なカテゴリーを畳んで、見たいカテゴリーを展開し(画面左)、次にデフォルト表示されている Skærmkort dæmpet を閉じ(画面中)、見たい DTK50/Kort50 を開く操作をしている(画面右)。

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カテゴリーから地図を選択
 

これでDTK50/Kort50(現行デジタル地図1:50,000)が表示される。

地図を拡大縮小するには、+-ボタンを使うほか、ダブルクリックでも行える。図上でダブルクリックすると、1段階ずつ拡大する。Shiftキー+ダブルクリックで1段階ずつ縮小する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

地名で検索する場合は、右上の検索窓に入力すると、候補が表示される。例として、フュン島の中心都市オーゼンセ(オーデンセ)Odense を検索しよう。ドロップダウンリストの中から「Odense kommune(オーゼンセ自治体)」を選択する。

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地名検索画面
 

該当のエリア(オーゼンセ市域)が、赤色で面塗りされた形で現れる。

面塗り(選択表示)を消去するには、上部メニューにある消しゴムアイコンを選択してから、地図上の面塗り部分をクリックする。このアイコンはこうした画面で選択したものを解除する場合に使うものだ。

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地図表示画面
 

現行地形図だけでなく、旧版地形図も同じ要領で表示が可能だ。時代順に選択していくと、市街地や交通網が発展するようすをつぶさに追うことができて興味深い。

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後期平板測量図に切替えた例
 

地図をプリントするには、上部メニューの「Udskriv(印刷)」をクリックする。すると、印刷形式を指定するウィンドウが表示される。印刷フォーマットは、「A4 liggende(A4ヨコ)」がデフォルトになっている。タテ形にするなら「stående」と記されているものを選択する。またこのとき、印刷範囲 Udskriftsområde が地図画面に赤枠で表示されるので、マウスで位置を調整することができる。印刷形式の指定が終わったら、「Udskriv(印刷)」ボタンをクリックする。

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印刷手順
 

下の画像のようなポップアップブロック Popup blokeret の警告が出るかもしれない。続行するなら、「Hent(ダウンロード)」ボタンを選択する。中止する場合は「Luk(閉じる)」だ。印刷データはPDF形式で生成される。

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ポップアップブロック

歴史地図オンライン Historiske kort på Nettet

シームレス画像を扱うSDFE地図ビューアーに対して、もとになった地形図単体のスキャン画像を提供するサイトが「歴史地図オンライン Historiske kort på Nettet」だ。ここにはビューアーにはない各図葉の改訂版が網羅されているほか、18世紀の王立科学協会地図も取得できる。

Historiske kort på Nettet
https://hkpn.gst.dk/

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初期画面
 

初期画面には、地図のカテゴリー別タブが並んでいる。全国地形図は左から3番目の「Topografiske kort - landsdækkende」にある。

タブをクリックすると、ドロップダウンリストが現れる。名称だけでは区別がつかないので、下の画面画像には各地図群の作成期間を添えている。

科学協会 Videnskabernes selskab(1766-1841)
 同国の近代測量の先駆けとなるデンマーク王立科学協会 Kongelige Dansk Videnskabernes Selskab の平板測量図。18世紀後半から19世紀前半にかけて銅版印刷により刊行された縮尺1:120,000図および1:360,000等の広域図。

平板測量図等 Målebordsblade o.l.(1842-1971)
 上記「SDFE地図ビューアー」の項参照。19世紀後半から20世紀前半にかけて刊行された1:20,000図。

センチメートル地図 Centimeterkort(1953-2001)
 上記「SDFE地図ビューアー」で「地形図 Topografisk kort」と称されているものと同じで、20世紀後半に刊行された1:25,000図(=4cm地図)。なお、センチメートル地図の呼び名は、縮尺を実長1kmが図上何cmになるかで表すことに由来する。

見たい時代のものを選択すると、次に地名選択のドロップダウンリストが現れる。

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地図の種類と地名の選択
 

一例として、同じように「Odense(オーゼンセ)」を選択すると、該当する図葉の一覧が現れる。下の画像では、1:20,000の図番3616 Odense図葉が9種所蔵されていることがわかる。最初の測量は1863年だが、地表の経年変化を反映させながら1970年まで何度も更新されている。このリストで見たい図葉があれば、左端の「Vis(見る)」リンクをクリックする。

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所蔵図葉表示画面
 

別タブに地図画像が表示される。ここにも簡単な操作メニューがあり、「Metadata(メタデータ)」は当該地図の属性データ、「Kopi(コピー)」はファイルのダウンロード機能だ。

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地図表示画面
 

ダウンロード形式はPDFかJPEGで、さらに後者は、選択範囲を指定する方法と地図画像全体を対象とする方法の二択になっている。選択範囲を指定する場合、「Vælg udsnit(範囲を選択)」ボタンをクリックする。これで、地図上に表示された印刷範囲を示す赤枠がマウスで移動できるようになる。画面に「Ønsker du at forsætte?(続けますか?)」とメッセージが表示されるので、続行するならOKボタンをクリックする。

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印刷手順
 

このほかにデータ供給・効率化局は、ポータルサイト「地図サービス Kortforsyningen」を設けている。ここから各種地図データをダウンロードできる。上記サイトで扱っていないフェロー諸島やグリーンランドの地図もある。ただし、実行するにはユーザ登録(無料)が必要だ。

Kortforsyningen - download
https://download.kortforsyningen.dk/
 初期画面 > Topografiske kort(地形図)

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初期画面
 

グリーンランドの地形図は、初期画面の上位にリンク(Grønlandske data と表示)があるが、フェロー諸島は初期画面に見当たらない。まず「Topografiske kort(地形図)」を選択し、次画面左上にある Korttype(地図形式)のドロップダウンリストで「Færøerne(フェロー諸島)」を選択する必要がある。

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地図形式の選択
 

冒頭に記したように、これらのデータはパブリックドメインに位置付けられており、無償で二次利用が可能だ。ただしその場合、以下の文言により出典を明示しなければならない。

「Contains data from Styrelsen for Dataforsyning og Effektivisering(データ供給・効率化局からのデータを含むの意)、データセットの名称、データセットを当サイトから取得した年月またはデータサービス名」

記述例
「Contains data from Styrelsen for dataforsyning og effektivisering, "Kort 25", April 2020」
(データ供給・効率化局からのデータを含む、「Kort 25」(1:25,000図)、2020年4月)
「Contains data from Geodatastyrelsen, Matrikel kort, WMS Service」
(データ供給・効率化局からのデータを含む、地籍図、WMSサービス)

使用した地形図の著作権表示
Contains data from Styrelsen for dataforsyning og effektivisering, "Kort 25" and "Lave Målebordsblade", April 2020

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 デンマークのサイクリング地図
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 グリーンランドの地形図

 地形図を見るサイト-スウェーデン
 地形図を見るサイト-ノルウェー
 地形図を見るサイト-オランダ
 地形図を見るサイト-イギリス

2020年4月19日 (日)

地形図を見るサイト-イギリス

イギリスの国土測量を担っているオードナンス・サーヴェイ Ordnance Survey(OS、英国陸地測量部)は、地形図を公開するウェブサイトを設置していない。旧版図を含めて、地形図の提供を原則有償としているためだ。かつては地図を通販する「Get-a-map」という自局サイトで地形図データが使われていたが、今は別仕様のデジタル地図に切り替えられてしまっている。

しかし、OSの許諾を得たいくつかの民間サイトで、現行地形図(下注)の閲覧が可能だ。また、旧版図についても、刊行後50年を経過した時点でパブリックドメインに移行するため、まとまった量を公開しているサイトが存在する。その中から主なものを紹介しよう。

*注 OSの刊行する地形図については、本ブログ「イギリスの地形図-概要」参照。

(記述は2020年4月現在の仕様に基づく)

現行地形図

チャールズ・クロース協会 Charles Close Society

現行地形図がみられるサイトの多くは、1:50,000(ブランド名:ランドレンジャー Landranger)とそれ以下の小縮尺図の公開にとどまっている。OS図を研究対象としているチャールズ・クロース協会のサイトもその一つだ。

Charles Close Society - Modern OS Mapping On-line
http://www.charlesclosesociety.org/OSMap

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初期画面
© Crown copyright 2020
 

初期画面はロンドン市内の1:50,000だが、この地図画像が現れるまでに少し時間がかかるかもしれない。操作機能は単純で、地図画像の移動、拡大縮小、地名または郵便番号による検索のみだ。

地図の拡大縮小は、画面左上のスケールバーで行う。拡大すると、残念ながら1:25,000地形図ではなく、等高線なしの市街図になる。縮小すると、OS 1:250,000図、次いでOS 1:550,000図が現れる。

地名による検索は、初め少々とまどうだろう。画面左上の "enter a place/postcode(場所/郵便番号を入力)" と表示のあるボックスに地名や郵便番号を入力して、その下の "Find(検索)" ボタンをクリックするのだが、ボックスの表示がすぐに "enter a place/postcode" に戻ってしまうからだ。よく見るとその下に "Select a place(場所を選択)" と書かれたボックスが現れている。その右端のVマークをクリックすると、候補の地名一覧が表示される。ここから、見たい場所を選択する。

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地名による検索手順
 

このサイトには、他の地形図公開サイトを列挙した広範なリンク集もあり、たいへん参考になる。この画面の上部にある、"For Historic OS mapping online see HERE" または、左メニューの "Online Resources" から、リンク集に移れる。

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リンク集
 

Streetmap.co.uk

1:50,000図のサイトがいくつかあるのに対して、1:25,000図が見られるサイトは(OSとの契約料が高額(?)なためか)、Streetmap.co.uk ぐらいだろう。賑やかな広告が画面の余白を埋め尽くし、いささか目障りだが、1:25,000図の詳細がわかる貴重な存在になっている。

http://www.streetmap.co.uk/

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初期画面
 

初期画面には地図画像はなく、見たい場所の地名や郵便番号をまず入力しなければならない。ここでは街路名、経緯度、ナショナルグリッドの値などでも検索が可能だ。試しに "London" と入れてみると、60件以上の地名がヒットした。

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地名による検索手順
 

見たい地名を選択すると、ようやく1:50,000図が現れる。右下のスケールバー(Zoom Control)で一段階拡大させると、1:25,000図になる。さらに拡大するとA-Z図風の市街図になる。縮小側では1:100,000、続いて1:200,000と表示されるが、データはOSの1:250,000図を用いている。どの縮尺も紙地図に比べればかなり拡大表示されており、細部まではっきり読み取れる。

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地図表示画面
© Crown copyright 2020
 

なお、図上にホテルの位置を示すアイコンなどが表示される場合があるが、これはOSの地図記号ではないので、地図の右上にある "Icons off" をクリックして消すことができる。

地図の表示枠を拡げるには、右下の "Map Size" アイコンで、大きいほうのタイルイメージを選択する。

地図をプリントするときは、"Print" アイコンをクリックすると、印刷プレビュー画面が現れる。プレビュー画面でも、右下にある+-ボタンで地図の縮尺を変更できる。また、"Portrait" ボタンで縦長に、"Landscape" ボタンで横長に切替えられる。ただし、プリンタ側でもそれに合わせて縦/横の設定を変更する必要があるのはいうまでもない。

旧版地形図

スコットランド国立図書館 National Library of Scotland (NLS) 

イギリスの旧版地形図をウェブ上で見るなら、迷わずスコットランド国立図書館 NLS の公式サイトを訪れるべきだ。ここでは、16世紀から1960年代までのスコットランドに関する膨大な地図画像が無償公開されている。OS図については、収録範囲がイングランド及びウェールズにも及んでおり、充実度では間違いなくイギリス随一だ。

National Library of Scotland - Map Images
http://maps.nls.uk/

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初期画面
 

初期画面には、地図データへの多様なアプローチが提示されているが、左の項目列にあるテーマ別索引がわかりやすい。"Maps of Scotland" ではスコットランドの地図が年代順に、"County maps" ではカウンティ(郡)別にまとめられている。また、"Ordnance Survey maps" にはOS図のシリーズ(旧エディション)別リンクがある。

その "Ordnance Survey maps" へ進んで、次の画面で "1:25,000 maps of Great Britain - 1937-1961" を選んでみた。これは「暫定版Provisional Edition」と呼ばれた最初の1:25,000図シリーズだ(下注)。

*注 1:25,000のシリーズについては「イギリスの1:25,000地形図 I」参照。

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操作選択画面
 

こうしたシリーズものは、区分図の単体画像と、隣接図を貼り合わせたシームレス画像の2種が用意されている。単体画像は "graphic index"、シームレス画像は "seamless layer on a Google maps" からリンクしている。また、図番がわかっている場合は、その下の "Browse list by sheet number" で直接選択できる。

単体画像の場合は、図郭の選択画面が現れるので、左上のボタンで拡大して、見たい図郭を選択する。

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図郭選択画面
 

選択した図郭に応じて、右側に候補となる図葉のサムネールが表示されるので、必要なものを選択する。

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図葉選択画面
 
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図葉表示画面
 

シームレス画像の場合は、縮小画像が表示されるので、必要に応じて画面左上の+ボタンで拡大する。また、背景レイヤーをたとえば空中写真などに変更して、地表のようすを地形図と照合することもできる。この際、透明度は左メニューのスライドバーで調整する。

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シームレス画像表示
 

さらに、画面上部にある "Full Screen/Draw" でフルスクリーン化、"Spy" で背景レイヤーの上に拡大鏡風に重ねる方法、"Side by Side" で、2枚のレイヤーを左右に並べる方法も選択できる。

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Side by Side(並列表示)の例
reproduced with the permission of the National Library of Scotland https://maps.nls.uk/
 

このようにNLSのサイトは、単なる地図画像の表示にとどまらず、よりわかりやすく見せようという工夫が各所に施されており、使い慣れれば地図の世界を自由自在に回遊できるようになるだろう。

惜しいことに、スコットランド政府の予算で運営されているためか、イングランド及びウェールズに関するOS図のコレクションは不完全だ。それでも、イングランドにもウェールズにもこれに比肩するような地図画像公開サイトは未だ構築されていない。

A Vision of Britain

上記のNLSが公開するイングランド及びウェールズの1インチ図は、19世紀から20世紀への変わり目に刊行された「改訂ニューシリーズ Revised New Series」が最も古い。それ以前、19世紀前半に作られた最初の1インチ図「オールドシリーズ Old Series」を公開しているのが、「A Vision of Britain」だ。

A Vision of Britain - Historical Maps
http://www.visionofbritain.org.uk/maps/

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初期画面
 

これはポーツマス大学地理学部 Department of Geography of the University of Portsmouth による広範な歴史資料サイトだが、"Historical Maps" のページに、照会できる地図のリストがある。

1行目の "Ordnance Survey First Series 1:63360" が、1インチ図オールドシリーズのことだ。4行目、8行目、10行目にも1インチ図(1:63360)シリーズの名があるが、これらは上記NLSのコレクションにも含まれている。

それでは、1インチ図オールドシリーズを選択するとしよう。次の画面では、湖水地方 Lake District の北辺付近の図が現れるだろう。

 

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地図表示画面
 

これはシームレス画像になっており、マウスドラッグで移動できる。また画面の下方には、シームレス画像に該当する区分図の情報とともに、サムネールが表示されている。ここからデータのダウンロード(zip圧縮、5MB程度)も可能だ。ただし実行前に、許諾条件の承認と簡単な問いに対する回答が必要になる。

どういうわけか、地名による検索はこの画面ではできず、「A Vision of Britain」のトップページに戻る必要がある。そうでなければ、地図画面右下に表示されている位置図の赤枠を地道に動かしていくしかないようだ。

現行および旧版地形図を公開しているサイトは他にもある。「官製地図を求めて-イギリス」の「地図閲覧」の項を参照されたい。

なお、OS図は、刊行後50年を超えた時点でパブリックドメインに移行するので、各公開サイトの許諾条件(商用不可、引用元の明示など)に従い、二次利用が可能になっている。

★本ブログ内の関連記事
 イギリスの地形図-概要
 イギリスの地形図略史 I-黎明期
 イギリスの地形図略史 II-1インチ図の展開
 イギリスの地形図略史 III-戦後の1インチ図
 イギリスの地形図略史 IV-旅行地図の系譜
 イギリスの1:25,000地形図 I
 イギリスの1:25,000地形図 II
 イギリスの1:50,000地形図
 イギリスの1:100,000地形図ほか
 イギリスの1:250,000地形図 I-概要
 イギリスの1:250,000地形図 II-歴史

 地形図を見るサイト-フランス
 地形図を見るサイト-ベルギー
 地形図を見るサイト-オランダ
 地形図を見るサイト-デンマーク

2020年4月 5日 (日)

イギリスの1:50,000地形図

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戦後の1インチ~1:50,000シリーズの変遷
 

イギリス陸地測量部 Ordnance Survey (OS) が刊行する1:50,000地形図には、当初「第1シリーズ」と「第2シリーズ」の区別があった。その後、販売促進のためにブランド名がつけられ、今ではその「ランドレンジャー Landranger」の名で知られている。各シリーズの成立過程と特色を見ていこう。

第1シリーズ First Series

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第1シリーズ表紙
 

1マイル1インチ図(1:63,360、以下1インチ図という。下注)から1:50,000図への転換は、イギリス地形図史上、エポックメイキングな出来事の一つだった。長い歴史をもつ1インチ図は地図ユーザーに深く浸透しており、切替えの期間中、隣り合う図葉が異なる縮尺になっては、実用上著しい不便が生じる。そのため、切替えの手順は慎重に計画された。

*注 転換前の1インチ図については「イギリスの地形図略史 III-戦後の1インチ図」参照。

具体的には、1:50,000全204面をイングランド北部のランカスター Lancaster を通るラインで南北に分け、南の103面は1974年3月、北の101面は1976年2月にそれぞれ一斉に刊行することとされた。

大量の地形図を短期間で準備するために、新たな描画はせず、1インチ図第7シリーズ Seventh Series の最終版を写真拡大し、新しい図郭に合わせて切り貼りするという方法が取られた。全面改訂されたのは18面で、他の図葉は部分改訂にとどめられた。これらは「第1シリーズ First Series」と呼ばれたが、実態は、正式図である第2シリーズが揃うまでの暫定版の位置づけだった。

表紙は、1インチ図の赤をマゼンタに置き換えただけで、デザインに変化はない。図名の下にあった「One-Inch Map」の語句は、「1:50 000 First Series」に改められている。

1インチ図と1:50,000を同じエリアで比べてみよう(下の画像参照)。1インチ図に比べて、縮尺1:50,000の図では地物が1.27倍大きく描かれる。いわゆる「でか字版」と同じで、読み取りが楽になる反面、1インチ図を見慣れた目に大味に映るのはやむを得ない。

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同じエリアの1インチ図(左)と1:50,000第1シリーズ(右)
市街地、等高線、2級道路の色が置換えられ、森林の記号が省かれた
1-inch 158 Oxford & Newbury 1967年
1:50,000 164 Oxford 1974年
© Crown copyright 2020
 

図式は1インチ図のままだが、配色が変更されているので、ずいぶんと明るく開放的に感じる。最も目立つのが市街地(総描家屋)の塗りで、アミの色が黒からオレンジに置き換えられた。等高線と2級道路 Secondary road の塗りも、茶色をやめてこのオレンジを使っている。一方、高速道路 Motorway の塗り色は、水系で使われている青になり、赤で塗られた幹線道路 Trunk road や主要道路 Main road(一級道路)と区別された。1km間隔のグリッド(格子)と図郭外に記された値も、黒から青に変えられている。

色のほかにも見直しが多少ある。森林は、1インチ図で範囲を表す塗りの上に、針葉樹か広葉樹かを示す樹木を象った記号を置いていたが、1:50,000では完全に省かれた。そのため、樹相が判断できなくなった。

等高線は、1インチ図の50フィート間隔のままで、数値のみメートルに換算表記されている(下の画像)。そのため、付された値は低い方から15m、30m、46m、61mと来て、76mが最初の計曲線だ。次が91mになるが、参考資料によれば、61や91は逆さにすると19、16と誤読される恐れがあるため、南向きの斜面にのみ(つまり正位置で)記されているという。

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同じエリアの1インチ図(左)と1:50,000第1シリーズ(右)
標高点、等高線の数値はメートル換算に
北向きの斜面(右図の左上)には61mと91mの記載がない
1-inch 28 Inverness 1961年
1:50,000 26 Inverness 1976年
© Crown copyright 2020
 

図郭は、1インチ図の縦45km×横40km(実寸は縦約71cm×横約64cm)に対して、1:50,000は40km四方(実寸80cm四方)をカバーしている。縮尺が大きい分、用紙も一回り大きくなり、従来図の下にあった凡例などの整飾は、図の右側に移された。

下図は1974年現在の1:50,000索引図だ。左端に注釈が追加されており、「(中央の破線より北側では)1976年に1:50,000が刊行されるまでの間、1インチ図の入手が可能」とある。このように1976年には、北半分の第1シリーズの一斉刊行が予定されていた。しかしその間にも次の第2シリーズの図葉の製作が進んでおり、初めから第2の仕様で刊行された図葉が半数近くの44面にのぼった。

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第1シリーズ索引図
 

第2シリーズ Second Series

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第2シリーズ表紙
 

1インチ図の拡大版だった第1シリーズに対して、「第2シリーズ Second Series」は、各種資料に基づいて新たに編集・描画された1:50,000オリジナルの地図群だ。刊行開始は1974年、すなわち第1シリーズと時を同じくする。というのは、第1を一斉に刊行しておき、第2は完成したものから順次刊行して第1を置き換えていくという計画だったからだ。

そのため、最初に完成した図番176、177のロンドン市街と図番115のスノードン Snowdon は、第1なしで初めから第2での刊行となった。なお、表紙デザインには変化がなく、図名の下の記載が「1:50,000 Second Series」である以外、前シリーズと見分けがつかない。

1:50,000用の図式が適用されたことで、1インチ図式のままだった前シリーズとはいくつかの点で異同がある。

まず、注記のフォントだ(下の画像)。前シリーズはギル・サン Gill Sans の斜体やローマン Roman を使っていたが、イメージを一新すべく、サンセリフのユニヴァース Universe に統一が図られた。等高線は、1:10,000の再測量の成果を使って10m刻みで描かれ、メートル化を完了した。さらに国際化に対応して、凡例の一部に、フランス語とドイツ語の訳がつけられている。

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同じエリアの第1シリーズ(上)と第2シリーズ(下、注)
注記フォントがユニヴァースに統一された
1:50,000 26 Inverness 1976年
*注 ランドレンジャー図で代用
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鉄道記号では、複線と単線の区別が廃止され、鉄道発祥の国というのに、堂々たる幹線も心細げなローカル線も一括りに扱われるようになった。利用者にとって図示するほどの重要性はないという判断だろうか。同時に、狭軌鉄道の記号も見直され、1インチ図式の梯子形から、日本の私鉄複線に似た細い実線に短線2本を頻繁に交差させる記号に変わった。また、踏切には LC(Level crossing の略)の注記が付された。イギリスでは立体交差が主流であり、少数派かつ危険を伴う平面交差は伝統的に目立つ描き方がされている。

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第1シリーズ(上)と第2シリーズ(下)の地図記号
鉄道の単複線・軌間の区別が廃され、踏切の記号が改訂された
 

描画の自動化を進めるために、手描きの記号は廃止されるか、パターンに置き換えられた。たとえば砂丘、泥や小石交じりの浜、藪、ヒース、荒れ地、汀線など土地の状況を表すものがそうだ。また、伝統的な教区界 Parish border も記載されなくなった。

一方で、追加された記号もある。インフォメーションセンター、駐車場、展望地、キャンプ場など、レジャー関連の情報を示す記号だ。OSは地形図をベースにしてこうした情報を記載した旅行地図 Tourist map を、1インチの時代から多数製作してきた(下注)。しかし、汎用図に盛り込むようになったのはこのときからだ。記号の種類は図式改正のたびに増やされ、地図の性格をより余暇を楽しむ人に応えるものにしていった。

*注 1インチ旅行地図については「イギリスの地形図略史 IV-旅行地図の系譜」参照。

ランドレンジャーシリーズ Landranger Series

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現行ランドレンジャーシリーズ表紙
 

「ランドレンジャー Landranger」は造語で、土地を歩き回る者といった意味がある。OSではすでに1:25,000の旅行地図「アウトドアレジャー Outdoor Leisure」(1972年~)や、1:250,000の「ルートマスター Routemaster」(1978年~)など、マーケティング戦略の一環で縮尺別のブランド名付与を試みていた。

1979年からこれが本格的に実行され、1:50,000図には「ランドレンジャー Landranger」の名が与えられた。また、1985年には、表紙に風景写真が配されるようになり、店頭での訴求力がいっそう高まった。シリーズ名は変更されたものの、図郭変更や主要な図式改正を伴っておらず、従来のシリーズ区分の定義には合わない。そのため、愛称がついただけで、第2シリーズはまだ終わっていないという見方もある。

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ランドレンジャーシリーズ表紙の変遷
 

1970年代の第2シリーズと最新のランドレンジャーシリーズを、同じエリアで比べてみると(下の画像)、40年間の経年変化は別として、後者はずいぶん賑やかに見える。特に、中央に横たわっている森、エッピング・フォレスト Epping Forest で顕著だ。要因の一つは、いったん廃止された樹種を表す記号(図では広葉樹林)が復活したことだろう。面積当たりの記号の密度も、日本の地形図より高い。

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同じエリアの第2シリーズ(左)とランドレンジャーシリーズ(右)
森林の記号が復活し、レジャー情報も多数追加
177 East London 1974年及び2016年
© Crown copyright 2020
 

もう一つの要因は、駐車場(白抜きの P )やナショナルトレール(赤のダイヤ)といったレジャー情報関連の記号や注記が加わったことだ。レジャー情報はすでに第2シリーズで盛り込まれていたが、記号の種類は当時に比べて倍増している。ビジターセンターやパークアンドライドを示す記号が新設され、展望台には180度と360度の区別さえされた。トレールやサイクリングのルート上に赤や緑の目立つ記号が並び、アクセスランド Access land が薄紫の境界線で囲まれた。

こうしたデータに埋め尽くされて、近年のランドレンジャーはかなり濃密な図面になっている。第2シリーズの初期はまだスポットカラーの6色刷だったが、1978年からプロセスカラー(CMYKの4色)印刷が採用され、色数の制限がなくなったことも影響しているだろう。

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現行のランドレンジャーシリーズ索引図
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最後に、参考資料に記されていたおもしろい話題を一つ紹介しておこう。これは図番196に描かれたワイト島 Isle of Wight の海岸線だが、崖の記号に紛れて人名らしきものが読みとれるというのだ。Birse、Mike、Bill など、これだけ並ぶと単なる空似とは言えないだろう。地図作成に携わったスタッフの名を記念に書き留めたものだろうか。

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ワイト島の断崖に隠された人名?
上図左から REV(TREV ?), BIRSE, ROB
下図左から MIKE, BILL と読める
196 The Solent & Isle of Wight 2016年
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次回は、1:100,000以下の小縮尺図について。

本稿は、Tim Owen and Elaine Pilbeam, 'Ordnance Survey: map makers to Britain since 1791', Ordnance Survey, 1992; Chris Higley, "Old Series to Explorer - A Field Guide to the Ordnance Map" The Charles Close Society, 2011; Richard Oliver, 'Ordnance Survey maps: a concise guide for historians' Third Edition, The Charles Close Society, 2013 および参考サイトに挙げたウェブサイトを参照して記述した。

■参考サイト
Ordnance Survey http://www.ordnancesurvey.co.uk/
The Charles Close Society https://www.charlesclosesociety.org/
FieldenMaps.info http://www.fieldenmaps.info/info/
 各縮尺図の歴史とともに地形図表紙の変遷が見られる

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 イギリスの1:25,000地形図 I
 イギリスの1:25,000地形図 II
 イギリスの1:100,000地形図ほか
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 イギリスの1:250,000地形図 II-歴史

2020年3月29日 (日)

イギリスの1:25,000地形図 II

「パスファインダー Pathfinder」の名を冠した1:25,000の第2シリーズは、1989年に全国(下注)をカバーした。1:50,000よりも明らかに詳細な情報が得られるようになったが、期待に反して、シリーズの販売数はいっこうに伸びなかった。他方、同じ縮尺でも利用者から好評を博していた商品群がある。それが「アウトドアレジャーシリーズ Outdoor Leisure Series」だ。

*注 ここでいう全国とは、OSの担当範囲であるイングランド、ウェールズ、スコットランドを指す。

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パスファインダーに比べ、アウトドアレジャーは
道路区分が着色され、レジャー情報(案内所、駐車場など)も充実
(上)第2シリーズ(パスファインダー)
  1067 Winchcombe & Stow-on-the-Wold 1990年
(下)アウトドアレジャー
  OL45 Cotswolds 1998年
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アウトドアレジャーシリーズ Outdoor Leisure Series

前回も触れたように、これは第二次大戦以前からある縮尺1マイル1インチ(1:63,360)の旅行地図 Tourist map(下注) を、より大縮尺の1:25,000でも実現しようという意図から生まれたものだ。

*注 1インチ旅行地図については、「イギリスの地形図略史 IV-旅行地図の系譜」で詳述。

1:25,000図は詳しい分、収録範囲が狭い。そのため、旅行では何枚も用意しなければならず、利用者に敬遠されがちだった。そこでアウトドアレジャーシリーズは、できるだけ少ない面数でカバーできるよう、特大の図郭を採用した。そのうえで部分改訂を施し、1インチ旅行地図のようにレジャー情報を追加した。さらにアピールのために、利用目的を想起させるブランド名を初めてつけた。

最初の図葉は1972年刊行の、イングランド中部、ピーク・ディストリクト Peak District の中心部を描いた「ダーク・ピーク Dark Peak」だ。第1シリーズ6面を集成したもので、図郭は縦20km×横26kmと、第1シリーズ(縦横とも10km)の5倍以上ある。表紙には、黄土色の地色に、ハリー・ティットコム Harry Titcombe が描いた山野を背景に野鳥が舞う彩色画があしらわれた。

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野鳥のイラストをあしらった初期のアウトドアレジャー表紙
(左)黄土色の表紙は、第1シリーズをベース(基図)とする
(右)レモン色は、第2シリーズがベース
photo from www.charlesclosesociety.org
 

追加されたレジャー情報はまだ少なく、ピクトグラム記号ではキャンプサイト、ユースホステルなど10数個だ。観光の見どころは注記部分に青のマーカーが引かれ、公共通行権 Public rights of way とともに、代表的なフットパスや国立公園界などが緑で記されている。

この企画は当たり、15,000部が売れたという。それを受けて翌年以降、ヨークシャーのスリー・ピークス Three Peaks、スコットランドのケアンゴームズ Cairngorms などと続刊された。当初、ベースの地図は第1シリーズだったが、第2シリーズが利用できるようになると、それに移行していった。両者は表紙の色で区別でき、前者は黄土色、後者はレモン色だ。

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アウトドアレジャー図の例
Brecon Beacons National Park Eastern area 1976年
© Crown copyright 2020

1984年からは、表紙が風景写真に変わり、個々の図葉に図番も振られた。付番方式に特別な法則はなく、単に他の図葉と区別するための番号だ。地図印刷がプロセスカラー(CMYKの4色)方式になったことで、道路区分など、色による表現が豊かになった。この頃の図はまた、陸地部分に地色として、表紙のそれを薄めたような黄色が塗られているのが特徴だ。

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表紙は風景写真になり、図番も記載
 

1インチ図の場合、旅行地図と汎用図は用途が異なるとして、最後まで並行して販売されていた。1:25,000も同じ扱いだったが、1986年に、アウトドアレジャーと図郭が完全に重複するパスファインダー(第2シリーズ)の図葉は廃刊とされた。前者の影で売れ行きが鈍く、維持するのが困難と判断されたからだ。

1998年時点の索引図(下の画像)を見ると、アウトドアレジャーの図番は1から45まで振られている。ただし、欠番が3つあるので、実際の刊行は42点ということになる。おそらくこれがシリーズの最終到達点だろう。このあと2002年3月に、後述するエクスプローラーブランドに統合され、30年続いたシリーズは消滅した。

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アウトドアレジャー索引図(1998年)
エクスプローラー(オレンジ色のエリア)がすでに南部をカバーしている
 

エクスプローラーシリーズ Explorer Series

現在1:25,000図には、「エクスプローラーシリーズ Explorer Series」の名が定着している。刊行中のすべての1:25,000図が、このブランドを象徴するオレンジ色の表紙をまとっている。シリーズの刊行開始は1994年3月のことだが、当時OSの担当者は、将来これが全国をカバーするようになるとは考えてもいなかっただろう。

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エクスプローラーの表紙はオレンジ色
 

アウトドアレジャーシリーズの商業的成功は、図郭の大型化と、旅行情報を重視した編集の有効性を実証した。これは国立公園とそれに準じる著名観光地が対象だったが、同じスキームを他の旅行適地にも拡大しようとしたのが、エクスプローラーシリーズだった。

最初に刊行されたのは、イングランド最北の貯水池キールダー・ウォーター Kielder Water、ロンドン北西郊のチルターン・ヒルズ Chiltern Hills(南北2面に分割)、サマセット州のメンディップ・ヒルズ Mendip Hills(東西2面)の計5面、続いてランズ・エンド Land's End やボドミン・ムーア Bodmin Moor など、知られたエリアの図葉が刊行されていった。

地図の仕様はアウトドアレジャーに準じており、地色の薄黄色が省かれたほかに大きな違いは見られない。基本は片面刷りだが、両面刷りの図葉もあった。図郭の大きさはパスファインダー(第2シリーズ)の約3倍で、完全に重複するパスファインダーは置き換えられ、廃刊とされた。

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(上)アウトドアレジャー、陸地に地色あり
  OL17 Snowdonia 1996年
(下)エクスプローラー、地色以外に仕様の違いはない
  108 Lower Tamar Valley 1997年
© Crown copyright 2020
 

こうして1:25,000は、レモン色のアウトドアレジャー、オレンジ色のエクスプローラー、緑色のパスファインダーのシリーズ3本立てになったのだが、併存した期間は短かった。市場のさらなる開拓と商品管理の効率化を目的として、1996年後半に、パスファインダーをエクスプローラーに置き換えていく方針が決定したからだ。

全国をカバーするのに、前者では1372面が必要なところ、大型図郭を採用する後者であれば415面と、7割もカットできる(下注1)。これは管理上有利なだけでなく、利用者にとっても価格差(下注2)を超える経済的なメリットがあった。方針に沿って、刊行のペースは1997年半ばから加速された。

*注1 パスファインダー1372面のうち、一部の図葉はアウトドアレジャーシリーズで代用されたため、未刊行のままとなった。エクスプローラー415面には、アウトドアレジャーからの転籍45面を含む(2003年現在)。
*注2 1995年の価格表による1面あたりの価格は、パスファインダー3.95ポンド、エクスプローラー4.50ポンド、アウトドアレジャー5.25ポンド。

エクスプローラーの図郭は、ナショナル・グリッドにとらわれず、旅行適地や市街地が極力複数の図葉に分割されないように設定されている。そのため、図郭の大きさは一定でなく、隣接図葉との間に重複を持たせたものも多い。図郭の重なりは、先行する1:50,000ランドレンジャーシリーズと同じ考え方だが、索引図を見る限り、より不規則で複雑だ。

図番は、国土の南西端、シリー諸島 Isles of Scilly を101とした昇順で、シェトランド諸島 Shetland Islands の北東端が470になる。付番方式が、北東端を1とするパスファインダーやランドレンジャーと真逆なのは、エクスプローラーの整備がイングランド南部から段階的に進められたことによる。

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現在のエクスプローラー索引図(2016年)
© Crown copyright 2020
 

パスファインダーの置き換えがかなり進行していた2002年3月、最終的な体系整理が実行に移された。それがアウトドアレジャーの、エクスプローラーシリーズへの統合だ。後者の図番はすでに確定しており、付け直しは利用者の混乱を招くため、旧アウトドアレジャー図葉は、接頭辞OLをつけたうえで、もとの図番が維持された(例:OL10)。表紙は橙色に統一されたが、右肩にある図番の背景色には今もオリジナルのレモン色が残されている。

2003年3月、パスファインダー最後の図葉がエクスプローラーの新刊に置き換えられて、1:25,000は単一のシリーズ「エクスプローラー」への集約を完了した。

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統合後の表紙
図番(表紙右肩)に「OL」がつくのが旧アウトドアレジャー図葉
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モバイルダウンロードサービスが導入された最新の表紙
 

次回は、1:50,000について。

本稿は、Tim Owen and Elaine Pilbeam, 'Ordnance Survey: map makers to Britain since 1791', Ordnance Survey, 1992; Chris Higley, "Old Series to Explorer - A Field Guide to the Ordnance Map" The Charles Close Society, 2011; Richard Oliver, 'Ordnance Survey maps: a concise guide for historians' Third Edition, The Charles Close Society, 2013 および参考サイトに挙げたウェブサイトを参照して記述した。

■参考サイト
Ordnance Survey http://www.ordnancesurvey.co.uk/
The Charles Close Society https://www.charlesclosesociety.org/
FieldenMaps.info http://www.fieldenmaps.info/info/

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2020年3月22日 (日)

イギリスの1:25,000地形図 I

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1:25,000シリーズの変遷
 

イギリスの1:25,000地形図は、さまざまなレジャー情報が多数盛り込まれていて、旅行地図指向の編集方針が前面に出ている。だが、その起源はやはり軍用地図だ。

19世紀、フランスに代わり軍事大国として台頭したドイツは、早くから1:25,000を全国地図の基本縮尺に位置づけていた。それに対してイギリスの既存体系は、6インチ図(1:10,560)の次が1インチ図(1:63,360)で、中間がない。実長1kmが図上9.5cmにもなる6インチ図では、1日の行軍に何面も必要で実用的とは言えず、かといって1インチ図(同 約1.6cm)は、野戦計画に用いるには精度が足りなかった。

1914年、第1次世界大戦の開戦に際して陸軍省 War Office の要請で、イースト・アングリア East Anglia を対象に縮尺1マイル2インチ半(1:25,334)の地図が作成された。これが、イギリスでの1:25,000のルーツと言えるもので、戦時中、範囲がイングランド東部各州に拡張された。戦間期には、フランス式の1:20,000による GSGS2748軍用図シリーズも刊行された。

1:25,000が軍用図の標準縮尺に採用されたのは、1931年のことだ。それに基づき1940年から、GSGS 3906軍用図シリーズの作成が始まった。地図は既存の6インチ図を写真縮小し、1kmグリッドを付したもので、第二次世界大戦中にイギリスとアイルランド全域の図葉が作成された。

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GSGS 3906軍用図シリーズの例
44/66 NW 1941年
ベリック・アポン・トゥイード Berwick upon Tweed
6インチ図を約42%縮小しているため、地物も注記も読めないほど細かい
等高線は茶色の線で上書きされている
reproduced with the permission of the National Library of Scotland https://maps.nls.uk/
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上図と同範囲の1:25,000暫定版
岩礁の描き方が6インチ図とよく似ている
NT95 1954年
reproduced with the permission of the National Library of Scotland https://maps.nls.uk/
 

暫定版 Provisional Edition

すでに1938年に、オードナンス・サーヴェイ Ordnance Survey (OS) の将来を検討するデーヴィッドソン委員会 Davidson Committee が1:25,000の民生化を提唱していた。しかし、実際の刊行は、戦争終結後の1945年11月になる。

これは、1インチ図用に収集した情報で改訂しているものの、ベースは戦前の6インチ図であるところから、「暫定版 Provisional Edition」と呼ばれた。南岸ボーンマス Bournemouth とプール Poole の一部をカバーする図番40/09が、最初の1面だ。

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暫定版初刊 40/09の全体画像
 

図郭はナショナル・グリッドの縦10km×横10kmで、図番の左2桁は図葉が属するグリッドの参照値を示している。右2桁は図葉を含む100kmグリッドの参照値だが、後にアルファベットに置き換えられたので、40/09は SZ09という表記になった。

製作コストを抑えるために当初、黒、青、茶色の3色刷だったが、まもなく灰色を加えて4色刷とされた。灰色は総描建物の面塗り、地籍界、樹種を表す記号、公園域のアミなどに使われ、見栄えにも貢献している。マイルとヤードの縮尺が図の外枠につけられたが、用紙の節約を理由に、凡例(記号一覧)は省かれ、別刷りで配布する形が取られた。

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第1シリーズの索引図
100kmグリッドをアルファベット2文字
その中の10kmグリッドを数字2桁で表す
SZ09は、グリッドSZの左上隅に位置する
 

暫定版1:25,000図の特徴は、描写の繊細さだろう。土地の所有区分を表す地籍界が記載されており、耕地や放牧地の境界だけでなく、市街地の各住戸に付属する庭の敷地まで読み取ることが可能だ。帝国単位(ヤード・ポンド法)に基づく6インチ図から編集しているため、等高線は25フィート(7.62m)間隔で、図郭の外側に記される到達距離もマイル表記のみとなっている。

用紙は普通紙と、耐久性の高いリネン紙(1954年まで)の2種が用意され、平図または厚紙の表紙がついた折図で販売された。メートル尺に慣れない利用者のために、表紙には About 2 1/2 inches to One Mile(1マイル約2インチ半)の記載が見られる。

*注 リネン紙版は、表紙にClothなどと表示されている。

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暫定版表紙
(左)1940年代はもみ皮色の厚紙を使用
(右)1950年代半ばからは索引図なしに
 

暫定版は、1956年11月までに計2,207面が刊行された。これでイングランド、ウェールズ、スコットランドのローランド Lowland 地方、そしてハイランド Highland の沿岸まで、OSの担当範囲の約80%がカバーされたが、残るハイランドと島嶼の大半、計605面は間に合わず、次の第2シリーズに完成が持ち越された。

第1シリーズ First Series

1インチ図の第7シリーズ Seventh Series 刊行に取り組んでいた当時のOSにとって、1:25,000の整備は最優先事項ではなかった。加えて、安定した需要のある1インチ図に比べて、新参の1:25,000は売れ行きも芳しくなかった。

ようやく1956年に、デヴォン州南西部の11面が「正規版 Regular Edition」として試験刊行される。暫定版との違いは、森林域を塗る緑の版が加えられて、5色刷になったことだ。1インチ図の改訂資料を使い、新市街地などの経年変化が組み込まれたが、図郭には変更はなく、再描画も行われなかった。

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正規版5色刷の例、森林に緑のアミがかかる
SX46
image from https://ooc.openstreetmap.org/
 

1965年からは後述する新シリーズの刊行が始まるが、予算不足で進捗は遅かった。そのため、置き換えまでの間、暫定版と正規版が最小限の改訂を加えて印刷され続けた。1968年に、これらを「第1シリーズ First Series」、仕様の異なる新シリーズを「第2シリーズ Second Series」と呼び分けることになった。

表紙も頻繁に変更されている。1インチ図の赤色に対して、青基調を維持しながらも、1965年から斬新な拡大鏡のイラストが登場した。拡大モデルにされたのは、架空の地名に置き換えられているものの、デヴォン州のベリー・ポマロイ Berry Pomeroy という村だ。タイトルが1:25,000ではなく、敢えて 2 1/2 inch map(2インチ半図)と書かれているのが興味深い。

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第1シリーズ表紙
(左)拡大鏡イラストのデザイン
(右)飾り気のない一体型青表紙
 

しかしこれはコストカットのために早々と見直され、1970年から地図用紙の裏面に表紙部分を印刷する形に変わった。デザインも、イラストが姿を消し、ライトブルーで塗りつぶしただけの無粋なものだ。表紙の面には、索引図やナショナル・グリッド、参照系の説明とともに、初めて凡例も記載されている。この一体型表紙の地図は、透明ケースに入れて販売された。

「第1シリーズ」は数を徐々に減らしながらも残り続け、1986年6月に刊行された3面の改訂版が最後となる。

第2シリーズ Second Series(パスファインダーシリーズ Pathfinder Series)

1インチ図の図郭の実寸約71cm×63cmに比べ、「第1シリーズ」の図郭は実寸40cm四方で、1/3程度しかない。学校の教材としては机に広げられるちょうどいい大きさだが、徒歩旅行のルートは1面で収まらないことが多く、利用者の不評を買っていた。

そこで図郭を、「第1」の縦横10kmから縦15km×横20kmに拡大したシリーズの刊行が発表された。図番も北から南へ連番で付与され、977面でグレートブリテン島をカバーする計画だった。1960年に、図番856のイルフラクーム及びランディ Ilfracombe & Lundy 図葉が試験刊行されたが、後が続かなかった。縦15kmは、100kmグリッドの付番方式に合わず、使いにくいとされたのだ。

再検討の結果、図郭は、「第1」のそれを東西方向に2面つなげた縦10km×横20kmに変更することになり、1965年12月に第1弾が刊行された。これが「第2シリーズ Second Series」で、図番は NT27/37 のような形式をとる。

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第2シリーズの索引図の例(地図表紙を拡大)
第1シリーズの東西2面分を一つの図郭に
 

当初はまだ6インチ図から編集されていたので、等高線も25フィート間隔だ。しかし、1969年から大縮尺図がメートル尺(1:1,250、1:2,500、1:10,000)で測量・描画されるようになり、それを資料として等高線が5m間隔で描かれるようになった。一方、色版は、「第1」で使われていたグレーが黒のアミで代用され、黒、青、茶、緑の4色刷りだ。そのため、市街地などでは錯雑感が生じており、この点は「第1」のほうに分がある。

「第1シリーズ」の図面が、ヴィクトリア朝らしい装飾的な雰囲気を残していたのに対して、「第2」のデザインはよりシンプルで現代風だ。それには、注記のフォントが、代表的なセリフ体であるローマン Roman からサンセリフ体のギル・サン Gill sans に切り換えられたことが大きく影響している。

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第1シリーズと第2シリーズの違い
(上)第1シリーズ(暫定版)
SE65, SE55 1954年
reproduced with the permission of the National Library of Scotland https://maps.nls.uk/
(下)第2シリーズ(パスファインダー)
664 York (West) 1991年、665 York (East) 1989年
© Crown copyright 2020
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(上)第1シリーズ
SP12 Stow-on-the-Wold 1950年
(下)第2シリーズ(パスファインダー)
1067 Winchcombe & Stow-on-the-Wold 1990年
© Crown copyright 2020
 

表紙は緑色になり、「第1」との区別を明確にした。6インチ図から編集されていた時期はまだ拡大鏡のデザインだった(下画像右)が、メートル尺への完全切替え後は、表紙に索引図が現れた(下画像左)。必ずしもわかりやすい図ではないとはいえ、ともかくこれで図郭の範囲や隣接図の図番を確かめることができた。

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第2シリーズ表紙
(左)初期は拡大鏡デザイン、地図のモデルは別の村に
     photo from www.charlesclosesociety.org
(右)緑地に索引図が入る
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第2シリーズ(パスファインダー)表紙
(左)第2シリーズの語句が消え、索引図に1:625,000図を背景に使用
(右)索引図の単純化、新図番の強調
 

1979年に、1:25,000に対して「パスファインダー Pathfinder」というブランド名が与えられた。直訳すれば、小道(あるいは進路)を見つけるものだが、その意図はおそらく、公共通行権 Public right of way の記載開始を告知することにあっただろう。汎用図として設計されていた1:25,000の、旅行地図へ傾斜していくきっかけがここに見られる。

図番にも変化があった。1986年から、北から南へ通しで振られた新しい図番が、従来のグリッド図番と併記されるようになったのだ。初期の表紙デザインでは、まだ従来図番のほうが目立つが、最終形では主客が逆転し、索引図も含めて通し番号が強調されている。

大縮尺の再測量が遅れたため、1970年の時点で完成していたのは、全国約1400面のうち78面に過ぎなかった。1989年12月に、最後の欠番となっていたSX54/64(Pathfinder 1362)ニュートン・フェラーズ及びサールストン Newton Ferrers & Thurlestone 図葉が刊行され、「第2シリーズ」は、初刊から24年を経てようやく完結した。

ただし、国立公園その他の旅行適地を対象に、図郭を拡大した1:25,000旅行地図「アウトドアレジャー図 Outdoor Leisure map」が1972年から別途作成されており、それらがカバーするエリアでは、区分図の「パスファインダー」は刊行されないままとなった。

一応の完成を見た1:25,000図の体系だが、2000年代に入ると、マーケティング指向の事業改革がそのラインナップを再び一変させることになる。続きは次回に。

本稿は、Tim Owen and Elaine Pilbeam, 'Ordnance Survey: map makers to Britain since 1791', Ordnance Survey, 1992; Chris Higley, "Old Series to Explorer - A Field Guide to the Ordnance Map" The Charles Close Society, 2011; Richard Oliver, 'Ordnance Survey maps: a concise guide for historians' Third Edition, The Charles Close Society, 2013 および参考サイトに挙げたウェブサイトを参照して記述した。

■参考サイト
Ordnance Survey http://www.ordnancesurvey.co.uk/
The Charles Close Society https://www.charlesclosesociety.org/
FieldenMaps.info http://www.fieldenmaps.info/info/

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