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2024年7月31日 (水)

ドイツの保存鉄道・観光鉄道リスト-北部編

ドイツは、イギリスと並んで保存鉄道活動が盛んな土地柄だ。いつものように観光鉄道や景勝路線を含めて挙げてみると、件数は150を超えた。北部、東部、西部、南部と4分割したリストの中から、主なものを紹介していこう。

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「ヤン・ハルプシュテット」のクリスマス特別列車(2014年)
Photo by Jacek Rużyczka at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

「保存鉄道・観光鉄道リスト-ドイツ北部」
http://map.on.coocan.jp/rail/rail_germanyn.html

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「保存鉄道・観光鉄道リスト-ドイツ北部」画面

北部編には、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州 Schleswig-Holstein、ハンブルク州 Hamburg、ニーダーザクセン州 Niedersachsen、ブレーメン州 Bremen にある路線を含めている。

まず注目したいのは、島の鉄道 Inselbahnen だ。ドイツ本土と北海との間で、平べったい島々が列をなしている。これら北フリジア諸島、東フリジア諸島(下注)と呼ばれる島々は、知られざる小鉄道の宝庫だ。

*注 フリジア Frisia は英語由来の呼称で、ドイツ語ではフリースラント Friesland。

項番3 ハリゲン鉄道 Halligbahnen

ユトランド半島の東側に位置する北フリジア諸島では、ハリゲン鉄道 Halligbahnen(下注)として括られる2本の簡易軌道が、本土と島をつないでいる。

*注 ハリゲン Halligen(複数形。単数はハリッヒ Hallig)とは、潮位が高くなると海中に没してしまうこの地域特有の湿地の島のこと。

一つは、本土の港ダーゲビュル Dagebüll から遠浅のワッデン海を築堤で渡ってオーラント島 Oland とランゲネス島 Langeneß へ行く軌間900mm、長さ9kmのダーゲビュル=オーラント=ランゲネス線 Halligbahn Dagebüll–Oland–Langeneß。

もう一つは、その約15km南で同じようにワッデン海を横断している軌間600mm、長さ3.5kmのリュットモーアジール=ノルトシュトランディッシュモーア線 Halligbahn Lüttmoorsiel–Nordstrandischmoor、通称ローレンバーン Lorenbahn(トロッコ鉄道の意)だ。

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ダーゲビュルの堤防を降りる自家用トロッコ(2023年)
Photo by Whgler at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

その特徴は、州の海岸保護・国立公園・海洋保護局 Landesamtes für Küstenschutz, Nationalpark und Meeresschutz (LKN) が管理している専用線であることだろう。1920~30年代に護岸工事の資材を輸送するために建設され、今もその目的で維持されている。しかし本土との間には道路がないので、島民もこの軌道の日常利用が許されている。

彼らはマイカーならぬマイトロッコを運転して、浅海の上を行き来する。かつてこうしたトロッコは無動力で、帆で風を受けて走っていた。今はドライジーネ Draisine と呼ばれる動力車が普及していて、中には付随車(トレーラー)を伴った「列車」形式も見られる。

軌道は全線単線で、前者の場合、途中に、対向車両を退避するための頭端側線または待避線が計4か所設置してある。見通しがいいので信号機などはなく、優先通行権はまず工事車両に、マイトロッコ同士なら先に「閉塞区間」に入った車両にある。ポイントの切り替えもセルフサービスになっている。

鉄道ファンなら乗ってみたいが、この軌道に定期運行の旅客列車などは存在しない。それどころか、島内の民宿に泊る客を除いて、島民がマイトロッコに一般人を便乗させることも禁じられている。違反すると、運転免許取消の厳しい処分が待ち受けているそうだ。

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ワッデン海の中を3km続く簡易軌道(2003年)
Photo by StFr at wikimedia. License: CC0 1.0
 

項番14 ヴァンガーオーゲ島鉄道 Wangerooger Inselbahn

一方、オランダに近い東フリジア諸島では、4つの島に島内鉄道が存在する。一つは観光用の馬車軌道だが、他の3島は狭軌の普通鉄道で、本土との間を結ぶ航路と連携して、港から中心市街地への交通手段として活用されている。

*注 東フリジア諸島の島内鉄道の概要については「北海の島のナロー I-概要」参照。

そのうち、最も東に位置するのがヴァンガーオーゲ島鉄道だ。軌間は1000mm(メーターゲージ)、航路ともどもドイツ鉄道 Deutsche Bahn (DB) グループによる運営で、今やDB唯一のナローゲージ路線になっている。

この鉄道の特徴は、運行ダイヤが毎日変わることだ。というのも、本土と島の間は遠浅の海で、潮が引くと広大な干潟が現れる。フェリーは、本土の川から続いている溝状の水路、いわゆる澪(みお)に沿って運航されるが、ヴァンガーオーゲの場合、それが浅く、潮位が高いときしか通れないのだ。船がそうなら、接続列車も合わさざるをえない。DBサイトには、本土側の連絡バスを含む1年間の運行ダイヤが一覧表で掲載されている。

フェリーが着くのは、島の南西端に突き出た埠頭だ。数両の客車がその岸壁で乗客を待っている。発車時刻は明示されておらず、全員が乗り込み、シェーマ・ロコ(下注1)が前に連結されれば、出発だ。列車は、海鳥たちの繁殖地にもなっている塩性湿地 Salzmarschen の上を時速20kmでゆっくりと横断し、約15分かけて町の玄関駅にすべり込む。

*注1 シェーマ Schöma(クリストフ・シェットラー機械製造会社 Christoph Schöttler Maschinenfabrik GmbH)社製の小型ディーゼル機関車。
*注2 鉄道の詳細は「北海の島のナロー V-ヴァンガーオーゲ島鉄道 前編」「同 VI-後編」参照。

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塩性湿地を横断する列車(2018年)
筆者撮影
 

項番17 ボルクム軽便鉄道 Borkumer Kleinbahn

ボルクム島 Insel Borkum は東フリジア諸島の西端にあって、面積、人口とも諸島最大だ。ドイツ本土より距離が近いオランダからの定期航路もあり、レーデ Reede(投錨地の意)と呼ばれる埠頭は常に賑わっている。

ボルクム軽便鉄道は、その埠頭から7kmほど離れたボルクムの市街地まで、旅行者や用務客を運んでいる狭軌鉄道だ。メーターゲージの他の3島と異なり、軌間は前身の馬車軌道に由来する900mm。しかし、複線のまっすぐな線路を、10両編成で疾走する列車をひとたび目にすれば、鉄道需要の規模の差を実感する。

ボルクム駅までは17分。公式時刻表では、埠頭の発時刻が、船の遅延も見込んで ca.(およそ)何時何分と書かれているのがユニークだ。それに加えて、時刻表にない列車もたびたび走る。フェリーの乗客が多かったり、発着が重なったりして、1本の定期列車では運びきれないと判断された場合、混雑緩和列車 Entlastungszug と称して臨時便が手配されるのだ。

列車を牽くのはここでもシェーマ・ロコだが、ボルクム駅の車庫には、蒸気機関車やヴィスマール・レールバスといった旧型車両も保存されていて、週末などに特別運行が実施される。実用一辺倒でなく、観光要素にも配慮しているところが、島の交通を預かる鉄道の心意気だろう。

*注 鉄道の詳細は「北海の島のナロー II-ボルクム軽便鉄道 前編」「同 III-後編」参照。

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埠頭の駅で発車を待つ(2018年)
筆者撮影
 

項番9 ドイツ簡易軌道・軽便鉄道博物館 Deutsches Feld- und Kleinbahnmuseum
項番10 ブルクジッテンゼン湿原鉄道 Moorbahn Burgsittensen
項番11 アーレンモーア湿原鉄道 Moorbahn Ahlenmoor

北部の知られざる小鉄道は北海の島にとどまらない。ニーダーザクセン州中西部に広範囲に分布している低地湿原(モーア Moor)もその舞台だ。農地化などで面積が縮小して、湿原の多くは保護区として開発が制限されているが、かつては肥料や燃料にするために、泥炭の採掘が盛んに行われた。それを加工場まで運搬していたのが、湿原鉄道 Moorbahn、泥炭鉄道 Torfbahn などと呼ばれる600mm軌間の簡易軌道 Feldbahn(下注)だ。

*注 Feld は英語の field に相当する。軽量で、敷設・撤去が容易なことから軍用や産業用として広く用いられた。

シュターデ Stade 近郊、旧DBダインステ Deinste 駅の構内にあるドイツ簡易軌道・軽便鉄道博物館は、泥炭工場をはじめ鉱山、林業などで使われた小型機関車や客車・貨車を多数収集・保存している。コレクションを走らせる軌道も、畑を区切る並木を縫って約1.6kmの間延びていて、開館日のシャトル運行は訪問客の大きな楽しみだ。

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原状回復が図られるティステ農業湿原(2013年)
Photo by Dieter Matthe at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

また、実際に湿原に敷かれた簡易軌道を保存して、観光と学びに活用しているところもある。ブルクジッテンゼン湿原鉄道は、ハンブルクとブレーメンの中間にある自然保護区「ティステ農業湿原 Tister Bauernmoor」の中を走る簡易軌道だ。

ここでは1999年まで泥炭が採掘されていたが、事業廃止後、自然保護区に指定されて湿原の回復が図られた。それとともに、残された軌道を活用して、湿原と野鳥の見学ツアーを開催している。ガイド付きツアーの参加者は、シェーマ・ロコが牽くトロッコ客車に乗り、約1.4km離れた湿原展望台まで行く(下注)。自然と触れ合う往復1時間30分の小旅行だ。

*注 途中、上下線が別ルートになっているので、総延長は約4kmある。

クックスハーフェン Cuxhaven の南にあるアーレンモーア湿原鉄道も同様で、広さ40平方kmのアーレン湿原 Ahlenmoor に張り巡らされた旧 泥炭軌道を利用している。こちらのツアーはより大規模で、全長5.7kmの周回ルートを走り、所要2時間15分。乗り場になっているビジターセンターも、かつての泥炭工場を改修したものだ。

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アーレン湿原の見学列車(2014年)
Photo by Ra Boe at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0 DE
 

項番22 ブルッフハウゼン・フィルゼン=アーゼンドルフ保存鉄道 Museumseisenbahn Bruchhausen-Vilsen – Asendorf

次は、「ふつうの」保存鉄道をいくつか挙げよう。

ヴェーザー川とその支流が潤すブレーメン Bremen 周辺の田園地帯には活動中の路線がいくつもあるが、中でも筆頭は、ブルッフハウゼン・フィルゼン=アーゼンドルフ保存鉄道だろう。メーターゲージ(1000mm軌間)ながら、1966年7月に運行を開始した、ドイツで最初の保存鉄道だからだ。

運営主体は、その2年前に愛好家により設立されたドイツ鉄道協会 Deutsche Eisenbahn-Verein e. V. (DEV) 。まだ全線は走れず、列車構成も、1900年の路線開通時からいる同線オリジナルの小型蒸機「ブルッフハウゼン Bruchhausen」と客車1両というささやかなものだった(下注)。

*注 ブルッフハウゼン号は後に引退し、今はブルッフハウゼン・フィルゼン駅前のロータリーに記念碑として置かれている。

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駅前に据え付けられたブルッフハウゼン号(2009年)
Photo by Syker Fotograf at wikimedia. GNU General Public License
 

運行区間は1970年に延伸され、現在のブルッフハウゼン・フィルゼン Bruchhausen-Vilsen ~アーゼンドルフ Asendorf 間7.8kmになった。メーターゲージの孤立路線だが、昔は本線格のジーケ Syke ~ブルッフハウゼン・フィルゼン~ホーヤ Hoya 間とともに狭軌の軽便鉄道網の一部をなしていた。それで、路線の後半に見られるいわゆる道端軌道の風景も本線とよく似ている。こうした軽規格のローカル線は1950年代までドイツの田舎の至るところで見られたが、今ではほとんど残っていない。

拠点のブルッフハウゼン・フィルゼンへは、DB線のジーケ駅から路線バスが出ている。また、運行日は限られるが、ジーケ~ブルッフハウゼン・フィルゼン~アイストループ Eystrup 間にカフキーカー Kaffkieker(項番21)という気動車の観光列車も走っている。一部に田舎道の併用軌道さえある興味深い路線なので、機会があれば併せて乗ってみたい。

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観光列車カフキーカー、ブルッフハウゼン駅にて(2010年)
Photo by Corradox at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

項番4 アンゲルン蒸気鉄道 Angelner Dampfeisenbahn

ブルッフハウゼンに刺激されてか、1970年代に入ると、北部でも保存鉄道の開業が相次ぐ。フレンスブルク鉄道交通友の会 Freunde des Schienenverkehrs Flensburg e. V. によって1979年に開業したアンゲルン蒸気鉄道(下注)もその一つで、ドイツ最北の保存鉄道として今も運行を続けている。

*注 アンゲルン Angeln は、路線がある半島の名。ちなみに、この地からグレートブリテン島に移住した民族が英語で Angles(アングル人)と呼ばれ、アングロ・サクソンやイングランド(アングル人の土地の意)の名の語源になっている。

ルートとなった路線は、もともと主要都市シュレースヴィヒ Schleswig を起点とする地方鉄道だった。保存鉄道ではその東半分、DBキール=フレンスブルク線 Bahnstrecke Kiel–Flensburg のジューダーブラループ Süderbrarup 駅と港町カペルン Kappeln の間14.6kmが使われている。

この鉄道の最大の特徴は、車両コレクションの多くを北欧に求めていることだ。2017年まで主力機だったタンク蒸機F形はもとデンマーク国鉄 DSB のものだし、バトンを引き継いだテンダー蒸機S1形も、側壁の SJ の文字が示すように、スウェーデン国鉄の最後の形式だ(下注)。客車群もまたデンマークやノルウェーから到来している。

*注 2024年現在、修理のために就役していない。

鉄道の終点カペルン駅は、港のすぐ前だ。内陸に40km以上も入り込むシュライ湾 Schlei と呼ばれる細長い水路に面した港では、昔からニシンの水揚げが盛んだった。昇天日に合わせて開催されるニシン祭 Heringstage は町一番の年中行事で、鉄道もその一部に協力する。

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カペルン駅の旧SJ蒸機S1 1916(2018年)
Photo by Matthias Süßen at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

項番5 シェーンベルガー・シュトラント保存鉄道 Museumsbahnen Schönberger Strand

この蒸気保存鉄道は1976年に開業している。シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州の州都キール Kiel から、バルト海沿岸の保養地シェーンベルガー・シュトラント Schönberger Strand(シェーンベルク海岸の意)まで延びる休止中の標準軌支線がその舞台だ。

1975年の一般旅客輸送の廃止を受けて、ハンブルク Hamburg で設立された交通愛好家・保存鉄道協会 Verein Verkehrsamateure und Museumsbahn e. V. (VVM) が末端部の線路3.5kmを取得した。以来、保存列車は基本的にその区間を往復している(下注1)が、支線全線が走行可能な状態に保たれているので、イベントなどでは列車がキール市内まで遠征する(下注2)。

*注1 今年(2024年)は、協会管理外のシェーンベルク Schönberg ~シェーンキルヘン Schönkirchen 間で運行されている。
*注2 根元区間のオッペンドルフ Oppendorf までは、2017年以来、キール中央駅からの一般旅客輸送が復活している。

活動拠点になっているのはシェーンベルガー・シュトラント旧駅だが、ここには別の楽しみもある。それは、協会が1993年から手掛けている路面電車の動態保存だ。ベルリン、ハンブルク、キールほか北ドイツ各都市の旧型車両が収集されていて、構内には終端ループを伴う1周500mほどの走行線が敷かれている。

ベルリンなどは標準軌(1435mm)だが、キールとリューベック Lübeck の市電は珍しい1100mm軌間だった。それで構内線もデュアルゲージ対応の3線軌条だ。

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シェーンベルガー・シュトラント駅(2017年)
Photo by Christian Alexander Tietgen at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 
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シェーンベルガー・シュトラント駅の路面軌道を走る旧ハンブルク市電(2018年)
Photo by Hammi8 at wikimedia/flickr. License: CC BY-SA 4.0
 

項番28 ヴェーザーベルクラント蒸気鉄道 Dampfeisenbahn Weserbergland

ヴェーザー川中流、ミンデンMinden(下注)の東に、リンテルン=シュタットハーゲン線 Bahnstrecke Rinteln–Stadthagen という半ば休止線が通っている。1974年以来、愛好家団体ヴェーザーベルクラント蒸気鉄道 Dampfeisenbahn Weserbergland (DEW) が保存列車を走らせているルートだ。

*注 ノルトライン・ヴェストファーレン州北部の都市。

列車は、先輪1軸、動輪5軸の大型機関車DR 52.80形と客車6両(食堂車と半荷物車を含む)で構成されている。いずれも出自は旧 東ドイツ国鉄 DR で、第二次世界大戦前または戦中に製造された車両を戦後、抜本的に改良したいわゆるレコ機関車 Reko-Lokomotive、レコ客車 Rekowagen だ(下注)。

*注 レコは改造 Rekonstruktion を意味する。なお、この蒸機は2023年10月の踏切事故で損傷し、当面、運行できなくなった。

DB線の駅に近いリンテルン北駅 Rinteln Nord を出た列車は、ヴェーザー山脈 Wesergebirge という背骨のように東西に横たわる低山地の鞍部を越えていく。あとは、山麓のなだらかな農地や林を縫って北西へ進み、約1時間でDBハノーファー=ミンデン線 Bahnstrecke Hannover–Minden のシュタットハーゲン Stadthagen 駅に到着する。やたらとカーブの多い路線だが、のんびり走る保存鉄道には何の問題もない。

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リンテルン東方を行くレコ蒸機52 8038(2008年)
Photo by Vogelsteller at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

項番18 ブレーメン路面軌道博物館 Bremer Straßenbahnmuseum "Das Depot"

最後は路面電車の保存運行を一つ。

ブレーメン Bremen には、旧市街から郊外まで広がる延長115kmものトラムの路線網がある。他都市と同様、低床の連節車がさっそうと行き交うなか、日曜日になると昔懐かしい単車のトラムも姿を見せる。ブレーメン路面軌道友の会 Verein Freunde der Bremer Straßenbahn が運営するブレーメン路面軌道博物館の市内ツアーだ。

車庫を意味する「ダス・デポー Das Depot」の愛称が示すとおり、博物館は、市内西部ゼーバルツブリュック車庫 Betriebshof Sebaldsbrück  の建物の奥に居を構えている。ここは現役トラムの運行基地であり、そのなかに居候している形だ。毎月第2日曜日が公開日で、1900年製の49号「モリー Molly」をはじめとする貴重な保存車両や鉄道資料が見学できる。

市内ツアーが行われるのも同じ日だ。9系統博物館線 Museumslinie 9 と呼ばれ、車庫前を出発した保存車両が、市内中心部を約1時間巡って戻ってくる。車内で切符を売るスタッフはガイドを兼ねていて、車窓の見どころを次々と案内してくれる。乗降は車庫前のほか、中央駅 Hauptbahnhof と旧市街の大聖堂前 Domsheide でも可能だ。

これとは別に、中心部のみを巡回するツアーもある。

15系統市内周遊 Linie 15 - Stadtrundfahrt は運行日限定で、北はビュルガー公園 Bürgerpark、西はヴェーザー河港、南は空港までカバーする市内大回り。もう一つの16系統環状線 Linie 16 - Ringlinie は、シーズンの第4日曜に運行される早回りだ。こちらは、旧市街ルートと新市街ルート(いずれも所要20分)が交互に運行される。

旧市街のゴシック調の都市景観に、レトロな風貌のトラムはよく似合う。街角で見かけて、思わずカメラを向ける人も少なくない。

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中央駅前の16系統環状線ツアートラム(2010年)
Photo by Jacek Rużyczka at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

次回は、東部各州にある主な保存・観光鉄道について見ていこう。

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