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2024年4月11日 (木)

新線試乗記-北陸新幹線、敦賀延伸

朝8時すぎ、京都駅0番線から北陸方面へ行く在来線特急サンダーバード5号に乗り込んだ。発車すると、車内に自動アナウンスが流れる。「停まります駅は、終点敦賀(つるが)です」。そのあと武生、鯖江、福井と耳になじんだ駅の名が続かず、次がもう列車の終点と告げられたことに改めて感慨を覚えた。

2024年3月16日、北陸新幹線が敦賀まで延伸開業して、サンダーバードとしらさぎの運行(下注)を置き換えた。長野~金沢間開業から数えて9年、線路の先端は今や福井県の南半部、嶺南(れいなん)地方に達し、名実ともに北陸を貫通する新幹線になった。

*注 「サンダーバード」は関西と北陸を、「しらさぎ」は東海と北陸を、それぞれ結んでいる在来線の特急列車。

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新規開業区間を行くE7/W7系
トレインパーク白山にて

朝日がまぶしい琵琶湖西岸を滑るように北上して、サンダーバードは滋賀と福井の県境にある長いトンネルを抜ける。谷が開けて敦賀の市街地が見え始めるころ、速度がするすると落ちた。いつもなら右の車窓に上り線(大阪方面)の築堤が続き、左からは小浜線の単線線路が寄り添ってくるのだが、今日は違った。

視点が徐々に上がり、上り線と同じレベルになる。右側は新幹線の車両基地が見え、左は在来線のヤードを斜め上から見下ろす形だ。まもなく列車は、高架を支えるコンクリートの柱の間に入り込んでいき、ほぼ定刻で敦賀駅32番線に滑り込んだ。

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(左)特急の車窓から見下ろす敦賀駅の在来線ヤード
(右)新幹線接続用の新設ホームに到着
 

高架下に広がるこの2本のホームは、新幹線開業に伴い、接続する在来線特急列車のために新設されたものだ。西側(進行方向左側)の31、32番が降車用、東側の33、34番が乗車用になっている。

列車を降り、エスカレーターで上の階に行くと、ヴォールト状の天井に覆われただだっ広いコンコースに出た。随所に配置された誘導員が、次々と上がってくる客を乗換改札のほうに案内している。なにしろ、最大12両つないでいる特急列車の乗客が一斉に動くので、列は延々とぎれない。その人波を受け入れる改札機も、コンコースの横幅いっぱいに並んで壮観だ。

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敦賀駅
(左)混雑する新幹線乗換口
(右)コンコース幅いっぱいの乗換改札
 

ところで北陸新幹線では、主要駅のみ停車の速達便が「かがやき」で、おおむね長野以西で各駅に停まっていく列車は「はくたか」と呼ばれる。それ以外に富山~敦賀間でシャトル運転される「つるぎ」がある(下注)。

*注 「つるぎ」には速達タイプと各停タイプが混在している。また、本稿の範囲外だが、東京~長野間には各停タイプの「あさま」も走っている。

直近で接続する新幹線の列車は、9時11分発のつるぎ6号 富山行だ。サンダーバードの到着が9時03分なので、時刻表記載の乗換標準時分どおり、8分で接続する。一方、富山を越えて東進するのは、9時21分発のかがやき508号 東京行だ。大阪や京都から北陸新幹線経由で東京へ行く人は稀だろうから、富山止まりのつるぎを最短接続で先行させているようだ。

人の流れに従って歩けば、焦らずとも先発に乗継ぎ可能だが、その前に開業したての駅のようすを観察しておこう。

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(左)在来線特急乗り場への誘導サイン
(右)西口の既存駅舎へ向かう長い通路
 

新幹線コンコースと市街に面した西口(まちなみ口)の駅舎との間には、新しい跨線橋が設置された。距離と高低差が大きいため、下りエスカレーター、ムービングウォーク、そしてまた下りエスカレーターと、どこかの地下鉄の通路のような長い動線だ。西口駅舎も、10年ほど前に交流施設を併設する形で改築されたが、在来線ホームへ通じる既存の地下道はほぼ手つかずで、客車列車が走っていた時代の雰囲気をまだ残している。

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(左)一足先に改築された西口
(右)在来線ホーム、奥に地下道への階段がある
 

新幹線開業に合わせて反対側に東口(やまなみ口)が新設されたと聞いたので、そちらにも行ってみた。新幹線乗換改札のすぐ横、死角になるような位置にその改札がある。エスカレーターで直接1階に降りることができるが、外へ出ても、タクシーがぽつんと停まっているだけで、がらんとしてひと気がなかった。東側はもともと在来線のヤードが広がっていて、通路も改札口もない場所だった。しかし、国道8号バイパスが近くを通っているから、クルマで来るなら利用価値がありそうだ。なお、駅の東西をつなぐ改札外の自由通路はないので要注意。

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(左)新設された東口
(右)広いが、がらんとした空間
 

さて、そろそろサンダーバードからつるぎへの乗継大移動も収まったようだ。乗換改札を入ろう。高さ21m、ビル7~8階相当という階上の新幹線ホームは2面2線で、西側が11、12番、東側が13、14番だ。既存区間で見慣れたE7/W7系が停車している。

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(左)列車案内板に東京の文字が
(右)床が木目調の新幹線ホーム
 

この後は金沢まで、新規区間を初乗りしながら、中間各駅のようすも見ていきたい。

敦賀駅をゆるゆると出ると、列車の左車窓には市街地と、その先に一筋の青い海(敦賀湾)が見える。しかしそれもつかの間、短いトンネルに続いて、長さ19,760mの新北陸トンネルに突入する。在来線で陸上最長を誇る北陸トンネル(13,870m)の、さらに1.4倍もある長大トンネルだが、ものの5~6分であっさり通過してしまった(下注)。

*注 新北陸トンネルと次の脇本トンネル(1027m)の間はシェルターで覆われているため、車窓からは一続きのように意識する。


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敦賀駅を後にして北に向かう列車
 

日野川の河原を渡り、武生トンネル(2399m)を抜けると、最初の中間駅、越前たけふだ。開業区間で唯一の新幹線単独駅で、町の東の田園地帯に造られた。在来線(下注)の武生(たけふ)駅とは直線距離で2.7kmしか離れていないが、間に腰を据える村国山の山かげになり、見通すことはできない。

*注 新幹線開業に伴い、並行在来線となる福井県区間は、第三セクター鉄道の「ハピライン福井」に転換された。

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越前たけふ駅西口
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(左)下りホーム
(右)伝統工芸品をあしらった内装が目を引く
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(左)越前和紙の造花
(右)和紙をはめこんだ待合室の壁面
 

こうした新設駅は、列車の到着時を除けば森閑としているのが常だ。ところが、駅前に出てみるとBGMが流れ、人やクルマの動きもけっこうある。というのも、隣接地に道の駅が開設されているのだ。国道8号バイパスや北陸道の武生ICが近接しているので、立地条件は確かに良好だ。新幹線を利用する地元の人も、駅までは自家用車で来るだろうから、こうしたオアシスを置くのは理にかなっている。

方や、市街地との間の公共交通は新設のシャトルバスが担っているようだ。とはいえ、たかだか5kmの走行距離で1乗車500円は高いように思う。武生へは、在来線でも福井や敦賀から20~30分で着いてしまうので、利用率を控えめに見込んでいるのだろうか。

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新幹線駅舎に隣接する道の駅
 

越前たけふを後にすると、列車は北陸自動車道を斜めに横切り、田園地帯を驀進していく。左手に、巨大な土瓶のような鯖江(さばえ)のイベント施設、サンドーム福井が目を引く。トンネルを2本抜け(下注)、再び北陸道と交差すると、速度が落ちて、市街地が広がってくる。赤白のテレビ塔が立つ足羽山(あすわやま)が、山脚を長く伸ばしている。足羽川を渡り、在来線の架線ビームが視界に入ってくれば、まもなく福井駅だ。

*注 実際は敦賀方から第2鯖江、第1鯖江、第2福井、第1福井の4本のトンネルがあるが、いずれも第2と第1の間はシェルターでつながっている。

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(左)テレビ塔が立つ足羽山
(右)足羽川を渡る
 

列車がホームに着くと、降りる人と入れ違いに、けっこうな人数が乗り込んでいく。平日とあってスーツ姿のビジネスマンが目立った。これまで米原や金沢で列車を乗り継ぐ必要があったことを思えば、東京直通のインパクトは大きいに違いない。

いうまでもなく、ここは速達列車も停車する県の代表駅だ。しかし、在来線とえちぜん鉄道の駅にはさまれた窮屈な場所にあるため、1面2線、島式ホーム1本ですべての列車をさばいている。全国的に見ても、島式1本の新幹線駅は三島駅とここしかないという(下注)。コンコースからホームに上がるエスカレーターも東京方面、敦賀方面の区別がないのが、かえって新鮮だ。

*注 ただし三島駅は、ホームに接する線路(副本線)のそれぞれ外側に通過線(本線)がある。

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福井駅
(左)駅名標と開業記念のポスター
(右)在来線乗換口、右の階段で新幹線の島式ホームへ
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北陸本線(在来線)はハピラインふくいに移管
 

前回福井に来た2018年には、えちぜん鉄道の福井駅がまだ工事中で、勝山や三国港行きの電車が現在の新幹線駅の構造を借りた仮設ホームに発着していた。線路の上部構造はすっかり更新されて当時の面影は消えているが、北側に見通せる景色はおそらく変わっていない。

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現 新幹線駅の位置に仮設されていたえちぜん鉄道福井駅
(左)駅に到着する電車
(右)駅の南方は工事中だった
(いずれも2018年6月撮影)
 

ところで、福井駅でおもしろいのは、周辺に地元ゆかりの恐竜が多数たむろしていることだ。以前から正面(西口)の駅前広場に大恐竜フクイティタンやフクイサウルスが生息しているのは知っていたが、東口でもフクイラプトルの骨格標本や子どもの恐竜を見かけた。さらに帰りの列車でぼんやり外を見ていたら、東口の階上にもいるではないか。しかし、恐竜の追っかけを始めたら、時間が足りない。次へ進もう。

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西口広場に生息するフクイティタン
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(左)東口に置かれた骨格標本
(右)子恐竜と戯れる
 

福井を出ると、左が在来線、右がえちぜん鉄道と、高架での珍しい三者並走区間を経て、単独ルートに移る。まもなく渡る九頭竜川(くずりゅうがわ)橋梁は、県道30号福井丸岡線との併用橋だ。新幹線の紹介記事によく取り上げられているので、期待していたが、防音壁に遮られて、車窓からはせいぜい走るトラックの荷台の天板程度しか見えなかった。

防音壁といえば、最近の新幹線はどこも壁が高くて車窓の楽しみはそがれがちだ。しかし今回の開通区間は、田園地帯を多く通るからか、全体として視界が開ける時間が長いように感じた。再び在来線が接近してくると、次は芦原温泉(あわらおんせん)駅に停車する。

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芦原温泉駅
 

この駅の構造は、敦賀駅パターンの亜種だ。在来線ホームへの通路(地下道ではなく跨線橋)はもとのままで、北側に新幹線駅直結の跨線橋が新設されている。ただし、改札内ではなく自由通路になっていて、以前はなかった裏側(東側)への通り抜けが可能だ。

駅名になっている芦原温泉は、西に約4km離れている。この間を結んでいた国鉄三国線(下注)は1972年に廃止され、跡地は道路に転用されてしまった。もし存続していたら、新幹線から芦原温泉や東尋坊への観光ルートとして活用できたのかもしれないが、今となっては夢物語だ。

*注 金津(現 芦原温泉)~三国港間9.8km。このうち芦原(現 あわら湯のまち)~三国港間はえちぜん鉄道の路線として存続している。

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(左)西口、自由通路の跨線橋で新幹線駅に直結
(右)南側に在来線の跨線橋も残る
 

芦原温泉のあとは福井、石川の県境を成す低山地を越える。長さ5460mの加賀トンネルをはじめ、大小のトンネルが断続している。長い闇を抜けると大聖寺(だいしょうじ)の市街地をかすめ、右にカーブして加賀温泉駅に近づく。

加賀温泉という温泉地が実在しないというのは、知られた話だ。加賀三湯と総称される山中、山代、片山津の各温泉には、かつて大聖寺と動橋(いぶりはし)から私鉄(下注)が延びていた。それらが一斉にバス転換された時代、北陸本線の特急をどちらに停車させるかを巡って、ダイヤ改正のたびに両者の間で争奪戦が繰り広げられた。

*注 大聖寺起点の北陸鉄道山中線と、動橋起点の同 山城線および片山津線。1965~71年廃止。このほか粟津(あわづ)駅から粟津温泉、那谷寺へ向かう粟津線(1962年廃止)もあった。

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加賀温泉駅
(左)副本線に接するホーム
(右)記念写真が撮れる花のベンチ
 

その調停策とされたのが、両者の中間にあった小駅、作見(さくみ)の再開発だ。2面4線の構内と駅前広場、連絡道路が整備され、1970年に駅名を加賀温泉と改称のうえ、オープンした。無名の小駅からついに今般、新幹線停車駅にまで登り詰めたとはいえ、在来線側はさほど手が加えられていない。ホームに通じる地下道は改装されたが、狭い間口はそのままだ。西側にあったはずの南北自由通路はまだ工事中で、閉鎖されていた。

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(左)在来線ホームへの地下道
(右)IRいしかわ鉄道に転換された在来線
 

表口である南口は、新幹線駅が立ち上がったことで風景が一変した。広場の東側に面したアビオシティは以前からあるショッピングモールだが、周囲に商店街がないので重宝する存在だ。1階でみやげものになる特産品も多数扱っている。

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駅正面(南口)に隣接するアビオシティ
 

さて、加賀温泉駅を出発したら、右側の車窓に注目したい。遠く南東方向に主峰の白山(はくさん)をはじめ、この時期なら雪を頂く加越山地の山並みが見渡せる。金沢までもうトンネルはないので、ところどころの防音壁を除けばこの荘厳な眺めが途切れることはない。

少し行くと手前に、内陸に残された潟湖、木場潟(きばがた)の穏やかな水面が広がってくる。在来線では家並みの隙間から断片的にしか見えないが、新幹線はすぐ近くを通り、また高架なので眺望はほしいままだ。朝は逆光だが、午後になると、水郷の背後に連なる山々が日差しに映えて、なかなかの絶景になる。

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木場潟のほとりを行く新幹線
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木場潟西岸から白山の眺め
 

小松駅では在来線も高架に載り、1階を、自由通路を兼ねた広いコンコースが貫いている。券売機に長蛇の列ができていた。開業して間もないので試乗客も多いのだろう。

表口である西口もさることながら、東口は見違えるほどきれいになった。かつて小松製作所の工場が広がっていた場所が、こまつの杜(もり)という名の体験型施設に再生されているのだ。海外の鉱山で稼働しているという超大型のパワーショベルとダンプの屋外展示がまず目を引く。後ろには会社の歴史展示館などがあり、北側は里山を復元した公園になっている。私もここのあずまやに腰を下ろして昼食にした。

なお、表口の北には以前から、ボンネット型特急車両の489形を静態保存する土居原ボンネット広場がある。こまつの杜の北端からも近いので、ついでに訪ねてみるといい。

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小松駅
(左)市街地に面する西口
(右)こまつの杜に面する東口
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(左)開業を告げる垂れ幕
(右)里山が透ける市松模様の壁面
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土居原ボンネット広場の489形
 

小松駅を後にすれば、次はもう金沢だ。列車は、手取川が造った広大な扇状地を横断していく。国道8号の橋の向こうにフィッシュランドの観覧車を眺めながら川を渡ると、左から在来線の線路が寄り添ってくる。この先はずっと在来線に沿っていくが、片や高架、片や地上なので、車窓ではあまり意識されないかもしれない。

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手取川を渡る
 

W7系の基地である白山総合車両所の建物とヤードの横を通過するのは、ほんの数秒の間だ。しかし、沿線探訪の旅をするなら、隣接地に開設されたばかりのトレインパーク白山は外せない。白山市が運営するこの施設のセールスポイントは、車両整備場の内部がいつでも観察できることと、階上に新幹線を展望するスペースを備えていることだ。

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トレインパーク白山
(左)施設全景
(右)車両整備場の見学デッキ
 

整備工場とは、施設の4階から渡り廊下でつながっている。場内に入るとガラス張りの見学デッキがあり、検査線で作業中の2編成が見えた。奥の番線にも別の2編成がいるようだが、残念ながら半透明のパネル越しだ。

5階はガラス張りの展望室になっていて、すぐ下を通る新幹線の金沢方がすっきりと見通せる(冒頭写真参照)。同じフロアの屋外デッキに出ると、今度は敦賀方が一望になる。東側は、広い田園地帯と加越山地で、晴れた日なら爽快なパノラマが楽しめるだろう。また、1階には、新幹線車両に関する部品とパネルの展示が、3階にはこども向けの遊具コーナーがある。5階の展望室以外は有料だ。

トレインパーク白山へは、在来線の加賀笠間駅から約1.1km、徒歩で15分以内だが、シャトルバスも出ている。休日は子供連れが多いので、時間制のネット予約をしておくといい。

■参考サイト
トレインパーク白山 https://train-park.com/

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見学デッキから見た車両整備風景
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展望デッキで列車を見送る
 

新幹線の車内に話を戻そう。総合車両所を見送れば、周囲は住宅や店舗に埋め尽くされるようになり、まもなく金沢到着の予告放送が流れる。速度が落ち、高いビルに囲まれた犀川(さいがわ)を渡れば、駅のホームが見えてくる。

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(左)犀川を渡る
(右)金沢駅に到着

敦賀から金沢まで「かがやき」で42~43分、サンダーバードならまだ芦原温泉あたりを走っている時間だから、確かに速い。各駅停車の「はくたか」「つるぎ」でも1時間弱で、北陸エリア内の移動は便利になった。一方で、敦賀での乗換えはやはり面倒だ。関西方面から往復する場合、往路よりも、仕事帰りで疲れている復路のほうが、その感は強い。

敦賀から新大阪への延伸ルートについては、複数の案が出るなか、小浜(おばま)・京都経由とすることが2016~17年に決定している。とはいえ、小浜と京都の間はすべて山地のため、おそらく長さ50~60kmにも及ぶ長大トンネルを通す必要がある。また、京都では、市街地の地下深くに2面4線の大きな地下駅を建設しなければならない。

素人目には、米原で東海道新幹線に乗り入れれば、建設費が格段に少なくて済むし(下注)、名古屋方面との接続もスムーズだと思う。しかし、両者の運行システムの違いが技術的に克服できたとしても、各地域の利益代表者が抱くさまざまな思惑が絡んで、そう単純には行かないらしい。

*注 敦賀~米原間の直線距離はわずか40km。県境の山地を越えた後は、琵琶湖東岸の平野部を通過するので、トンネルの延長も短くできる可能性がある。

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福井駅に入る下り列車
 

もちろん現時点で、東海道新幹線の過密ダイヤに北陸方面の列車をさらに割り込ませることは難しい。しかし、リニア中央新幹線が新大阪まで全線開業した後、現 新幹線の旅客需要はまちがいなく縮小する。リニアが素通りする京都へも、所要時間から見て、リニアで新大阪まで行き、在来線に乗換える客が多くなるのではないか。

というのも現在、東京~京都間は「のぞみ」で132分(2時間12分)だが、こうした速達型はリニアで代替されてしまうからだ。東海道新幹線の運行の中心が、途中数駅に停車する「ひかり」型になれば、所要時間は150分(2時間30分)前後まで延びるだろう。

東京~京都間をリニア経由で移動するなら、品川~新大阪間67分と両端の在来線8分+24分(下注)に、乗継ぎ時間を加えても120分程度で、時間的な優位性が高い。今、敦賀駅で経験しているように乗換えは面倒だが、観光客はともかくビジネス客にとって時は金なりだ。同じくリニアが通らない横浜でも、同様のことが起きるのではないだろうか。

*注 東京~品川間、東海道線で8分、新大阪~京都間、新快速で24分。

そうなれば、東海道新幹線にダイヤの余裕が生じ、米原から北陸新幹線の列車を乗り入れることが可能になる。既存の新幹線京都駅を有効活用できるし、東海道新幹線の採算悪化を少なからず埋め合わせることができる。さらに言えば、米原~新大阪間をJR東海からJR西日本に移管してもいいぐらいだ(並行在来線ならぬ並行新幹線?)。

とはいえ、品川~名古屋間のリニア開業でさえ、着工の遅延で2034年以降と予想されているぐらいだから、北陸新幹線の次なる延伸が実現するまでには、まだ長い時間と紆余曲折があるのだろう。そのうちに、不満噴出の敦賀での乗換えも、慣れて当たり前の光景になっていくような気がする。

■参考サイト
鉄道・運輸機構-北陸新幹線 https://www.jrtt.go.jp/project/hokuriku.html

★本ブログ内の関連記事
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