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2022年8月11日 (木)

イギリスの保存鉄道・観光鉄道リスト-イングランド南部編 I

「保存鉄道・観光鉄道リスト-イングランド南部編」では、ロンドン London、サウス・イースト South East、サウス・ウェスト South West の各地方 Regions の路線を取り上げた。地理的にはドーヴァー海峡沿岸からコーンウォール半島まで東西500kmの範囲で、保存鉄道や観光鉄道の密度はかなり高い。

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グロスタシャー・ウォリックシャー蒸気鉄道
ゴザリントン Gotherington 駅(2017年)
Photo by Juan Enrique Gilardi at wikimedia. License: CC BY-SA 2.0
 

「保存鉄道・観光鉄道リスト-イングランド南部」
http://map.on.coocan.jp/rail/rail_englands.html

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「保存鉄道・観光鉄道リスト-イングランド南部」画面

項番9 ブルーベル鉄道 Bluebell Railway

保存運行のパイオニアであり、貴重な蒸機を30両以上も保有するブルーベル鉄道が、イギリスを代表する標準軌の保存鉄道であることを疑う人はいないだろう。

1960年8月開業のブルーベル鉄道は、標準軌では北部のミドルトン鉄道 Middleton Railway に次いで、2番目に古い保存鉄道だ。ただし2か月先んじて始動したミドルトンは、その後9年間貨物輸送に集中していたので、単純には比較できない。それまで狭軌線しか例のなかった鉄道保存の動き(下注)が標準軌の路線に拡がっていく過程で、先導役を担ったのはブルーベルだったはずだ。

*注 保存鉄道化は狭軌線のほうが早く、1951年のタリスリン Talyllyn、1955年のフェスティニオグ Ffestiniog、1960年のレーヴングラス・アンド・エスクデール Ravenglass and Eskdale などの例がある。

運行はまず、南端の拠点シェフィールド・パーク Sheffield Park と、駅のない北側の折返し点との間を往復するところから始まった。その後、ルートは段階的に北へ延伸されていき、1994年にはキングズコート Kingscote に、そして2013年にはついにイースト・グリンステッド East Grinstead に達して、線路は再び全国路線網とつながった。ロンドン中心部からオクステッド線 Oxted line の電車で約1時間と、アクセスも大きく改善された。

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キングズコート駅での列車交換(2013年)
Photo by Peter Trimming at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

美しく整備された客車で行く旅はもとより、さまざまな時代の様式で復元された駅舎にも注目したい。シェフィールド・パークは路線が開通した1880年代を、またホーステッド・キーンズは1920年代、ビッグ・フォー(四大鉄道)の一角だったサザン鉄道 Southern Railway の様式を、それぞれ再現している。建物ばかりか、看板や荷物などさりげなく配置された小道具もノスタルジーを盛り上げる。

路線長は17.7kmあり、片道40~50分を要する。ハイ・ウィールド High Weald と呼ばれる丘陵地を横断していくため、坂道が続くが、それは取りも直さず、蒸機の見せ場が多いことを意味する。高架橋やトンネルなど、目印となる構築物にも事欠かず、乗っても撮っても魅力の尽きない保存鉄道だ。

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看板や小道具にも注目
(左)ホーステッド・キーンズ駅5番線(2019年)
Photo by www.mgaylard.co.uk at wikimedia. License: CC BY 2.0
(右)同 3・4番線(2013年)
Photo by James Petts at wikimedia. License: CC BY-SA 2.0
 

項番5 ケント・アンド・イースト・サセックス鉄道 Kent and East Sussex Railway

同じように南東部の美しい田園地帯を通過していく路線に、ケント・アンド・イースト・サセックス鉄道がある。ブルーベルほど完璧に仕上がっていないかもしれないが、むしろそうしたのどかさが心地よいと思うファンも多いだろう。

路線は、1896年に成立した軽便鉄道法に基づいて建設された支線の跡を利用している。沿線はローザー・レヴェルズ Rother Levels と呼ばれるローザー川の氾濫原だ。低地で線路を通しやすい反面、乾いた丘に立地する集落からは遠かった。利用不振で1961年に路線は廃止され、1974年に保存鉄道として再スタートを切った。

列車は現在、テンターデン・タウン Tenterden Town 駅とボディアム Bodiam 駅の間16.2kmを走る。シーズン中は週3~4日、8月はほぼ毎日の運行で、蒸気列車または気動車が3~5往復している。

かつて旧線はボディアムからさらに西へ進み、ロバーツブリッジ Robertsbridge 駅でナショナル・レール(旧国鉄)のヘースティングズ線 Hastings line に接続していた。目下、このミッシングリンクを埋める作業が進行中だ(下注)。完成するとブルーベルのように、電車から直接乗り換えが可能になるとともに、総延長は21.7kmと、イギリスの保存鉄道で十指に入る長さになる。

*注 ロバーツブリッジ駅のホームや配線は完成し、試験列車も運行されているが、駅間の廃線跡は農地に転用されており、買収交渉が進められている段階。

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テンターデン・タウン駅(2015年)
Photo by Train Photos at wikimedia. License: CC BY-SA 2.0
 

項番17 ワイト島蒸気鉄道 Isle of Wight Steam Railway

ポーツマス Portsmouth から、フェリーで海峡を渡ってワイト島 Isle of Wight、ライド Ryde の港へ。さらに桟橋からアイランド線 Island line の電車に乗って約10分。到着したささやかな片面ホームが、蒸気鉄道への乗換駅だ。

スモールブルック・ジャンクション Smallbrook Junction と呼ばれるこの駅は乗換専用で、周りに公道がなく外に出られない。それでアイランド線の電車も、保存鉄道の運行時間帯に限って停車するという特殊な扱いになっている。

島の主要な観光資源に数えられているワイト島蒸気鉄道は、ここから西9kmのウートン Wootton まで、鄙びた田園地帯の中を行く路線だ。中間のヘーヴンストリート Havenstreet 駅に機関庫があり、列車はそこを起点に、ルートの両端で折り返し、またヘーヴンストリートに戻る形で運行されている。1往復の所要時間は50~60分だ。

鉄道は、19世紀生まれのヴィンテージ機関車や客車に出会えることでも知られている。かつて島の路線は新車を購入する余裕がなく、本土からもたらされる中古車両に依存していた。そのため、廃止後に残されたのも、こうした古い世代のものだった。島の苦しい台所事情が、今では保存鉄道の価値を高めるのに一役買っている。

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1891年生まれの蒸機W24「カルボーン Calbourne」
ウートン駅にて(2014年)
Photo by ARG_Flickr at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

項番18 グロスタシャー・ウォリックシャー蒸気鉄道 Gloucestershire Warwickshire Steam Railway

コッツウォルズ Cotswolds は、波打つ草の丘と蜂蜜色をした石壁の村の風景で、高い人気を保つ観光エリアだ。その一角を、グロスタシャー・ウォリックシャー蒸気鉄道の列車が走っている。名称にコッツウォルズの名こそ入っていないが、地域の観光アトラクションとしてよく知られた存在だ。

鉄道の拠点は、ルートの中間、トディントン Toddington 駅にある。1984年開業時の走行線は、この駅から1マイル(1.6km)南の停留所までのささやかなものだった。その後、線路は南へ北へと延伸されて、今や、チェルトナム競馬場 Cheltenham Racecourse からブロードウェー Broadway まで、23kmに及ぶ保存鉄道界有数の長距離路線に成長している。

ルートは、コッツウォルド丘陵の西麓に沿っている。北に向かうと、右手に森に覆われた丘の斜面が、左手にはイヴシャム谷 Vale of Evesham ののびやかな牧野の眺めがどこまでも続く。片道55~60分だが、1日5~6往復運行されているので、途中下車して、駅周辺の散策も楽しんでみたい。トディントンの駅前には、2フィート(610mm)軌間の軽便鉄道(下注)という別の見どころもある。

*注 蒸気鉄道とは別の団体が、トディントン狭軌鉄道 Toddington Narrow Gauge Railway の名で運行している。走行線の長さは約800m。

なお、どの駅もナショナル・レールとは接続しておらず、公共交通機関で行こうとすると、路線バスの利用が必須だ。

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トディントン駅に入線(2017年)
Photo by Juan Enrique Gilardi at wikimedia. License: CC BY-SA 2.0
 

項番23 ブリストル・ハーバー鉄道 Bristol Harbour Railway

今では少なくなってしまったが、かつて港の埠頭や、周辺に立地する工場、倉庫に多数の貨物線が張り巡らされていた。ブリストル・ハーバー鉄道は、こうした臨海線の一部を保存活用した観光鉄道で、イギリスではここでしか見られない。

ブリストルの臨海鉄道はもと8kmの路線網を持っていた。しかし、港の機能がエーヴォン Avon 川河口の外港に移ったことで需要が減退し、1964年に全廃されてしまった。1978年にこのうち2km強の線路を使い、ブリストル工業博物館 Bristol Industrial Museum が産業遺産の動態展示として蒸気列車を走らせたのが、ハーバー鉄道の始まりだ。工業博物館は2011年に拡張されて、エム・シェッド博物館 M Shed Museum と改称されたが、鉄道も新博物館に引き継がれた。

使われているタンク機関車が地元ブリストル製ということも手伝ってか、鉄道はすっかり旧港の名物になっている。乗り場は博物館前で、同じく動態展示物として残されている荷揚げクレーンの建ち並ぶ一角にある。列車は観光客がそぞろ歩く埠頭をゆっくりと通り抜けた後、裏手のエーヴォン川沿いに出ていく。

ルートは2017年に若干短縮され、ヴォクソール橋 Vauxhall Bridge のたもとを終端とする約1.2kmになった。列車はここで折返して、乗り場に戻る。乗車時間は約15分だ。

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埠頭を行く蒸気列車(2011年)
Photo by Geof Sheppard at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

項番27 スワニッジ鉄道 Swanage Railway

スワニッジ鉄道は、ドーセット Dorset の南岸に向かっていた旧線を復活させた蒸気保存鉄道だ。旧線の終点だったスワニッジ Swanage に拠点があり、列車は、約9km内陸に戻ったノーデン Norden 駅まで、25分かけて進む。

シーズン中、鉄道はほぼ毎日運行されている。しかも蒸機で5往復、繁忙日にはディーゼルの増便により9往復が走っている。「保存鉄道ベスト」の一つにも挙げられるほどの人気の理由は何だろう。

スワニッジは港町で、英仏海峡に面してビーチがあり、西側は世界遺産にも登録されたジュラシック・コースト Jurassic Coast の海食崖が続いている。サセックスの海岸ほど混んではおらず、小ぢんまりとした心地のいい町だ。また、鉄道沿線の丘の上にはコーフ城 Corfe Castle という中世の城跡があり、ハイキングの適地になっている。町を訪れた観光客にとって、鉄道はアトラクションの一つであるとともに、名所旧跡への足としても機能しているのだ。

なお、保存鉄道の線路はナショナル・レールのウェアラム Wareham 駅までつながっているのだが、専用ホームがないため、特別行事を除いて接続輸送は実施されていない。

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コーフ城を背にして(2015年)
Photo by Twosugars47040 at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

項番28 ウェスト・サマセット鉄道 West Somerset Railway

イングランドで最も長い距離を走る保存鉄道が、ウェスト・サマセット鉄道だ。自社線の長さは22マイル3/4、メートル法に換算すると36.61kmになる。これはナショナル・レールとの分岐点(駅はない)と、ブリストル海峡に面した終点マインヘッド Minehead の間の距離だ。

しかし、ナショナル・レール(下注1)の常時走行は線路容量その他の関係で難しく、列車は通常、自社線内の最初の駅ビショップス・リディアード Bishops Lydeard とマインヘッドの間で運行されている。走行距離は20マイル半(33.0km)に縮まるが、それでもなお走破に80~90分を要する(下注2)。

*注1 幹線格のブリストル=エクセター線 Bristol–Exeter line。
*注2 長距離第2位は北部のウェンズリーデール鉄道 Wensleydale Railway で22マイル(35.4km)だが、こちらも通常は全線運行していない。

このような長い支線がまるごと保存されたのは、1971年の営業廃止と前後して、地元で独自運行の検討が始まり、自治体が鉄道資産の一括取得に動いたからだ。保存鉄道会社は、これをリースして列車を走らせている。

ビショップス・リディアードを出た列車は、まず上り坂に挑む。次の駅クロークーム・ヒースフィールド Crowcombe Heathfield がサミットだ。その後、坂を下り、ウォチェット Watchet 駅の手前とブルー・アンカー Blue Anchor 駅付近では一時的に海が見える。沿線の駅はどれも地方線の素朴な風情をよく保存しているし、内部を博物館にしている駅舎もあって、途中下車の誘惑に抗いがたい。

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ウォチェット東方(2011年)
Photo by Geof Sheppard at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

項番2 ロムニー・ハイス・アンド・ディムチャーチ鉄道 Romney, Hythe and Dymchurch Railway

ブルーベルが標準軌の代表格なら、狭軌ではロムニー・ハイス・アンド・ディムチャーチ鉄道を挙げないわけにはいかない。

15インチ(381mm)軌間のミニマムゲージながら、ハイス Hythe(下注)からダンジネス Dungeness まで、路線長は実に21.7kmもある。イングランドの狭軌保存鉄道ではもちろん最長で、標準軌を含めても十指に入る長さだ。しかも前半の13kmは複線化されている。

*注 "Hythe" には「ハイス」の表記が定着しているが、実際の発音は「ハイズ [haɪð]」。

歴史も古くて、1927~28年の開通だ。鉄道のオーナーになることを夢見る大金持ちのレーシングドライバーがいて、既存の狭軌鉄道を買収しようとしたがうまくいかない。それなら自分で新しい路線を造ろうと決心して、見つけた場所がここだった、という建設の経緯が伝えられている。しかし彼は、遊覧鉄道ではなく軽便鉄道令に基づく「公共鉄道 public railway」として、これを建設した。すっかり観光化された今でも、公共交通網の一翼を担うという法的位置づけは変わっていない(下注)。

*注 今でこそ孤立線だが、1967年まではニュー・ロムニーで標準軌線との接続があった。

起点のハイス駅は、町の西はずれに位置する。列車は、低湿地帯ロムニー・マーシュ Romney Marsh を縁取る砂州に沿って南下していく。鉄道名とは違い、停車はハイス、ディムチャーチ Dymchurch、それからニュー・ロムニー New Romney の順だ。この後、線路は単線になって、ダンジネス岬の旧灯台前まで行く。終端は機回しが不要なバルーンループ(ラケット状ループ線)になっていて、その途中にダンジネス駅がある。片道約60分。

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5月ガラの一シーン、ハイス駅にて(2017年)
Photo by Peter Trimming at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

項番11 ヴォルクの電気鉄道 Volk's Electric Railway

南東岸のトップリゾート、ブライトン Brighton のビーチを名物トラムが走っている。車体に書かれたVRまたはVERのイニシャルが示すとおり、名称を「ヴォルクの電気鉄道 Volk's Electric Railway」という。ヴォルクというのは、これを建設し、最初に運行した発明家マグナス・ヴォルク Magnus Volk のことだ。

開業したのは1883年、すでにロシアやドイツで実用化されていたとはいえ、イギリスでは初の電気動力による鉄道だった。先行例がすべて廃止された今では、世界最古の電気鉄道としてギネスブックにも載る貴重な存在になっている(下注)。

*注 ギネス世界記録の表記は、「今も運行している最初の公共電気鉄道 First public electric railway still in operation」。

鉄道は市営で、軌間2フィート8インチ半(825mm)。直流110Vで電化され、走行レールの間に設置されたサードレール(第3軌条)から集電している。

1990年に東端の区間が若干短縮されたため、現在の路線長は1.64kmだ。西の乗り場はビーチの中心、パレス・ピア(宮殿桟橋)Palace Pierの近くにある。そこから東へ、海岸道路とビーチの間にフェンスで囲まれた単線のか細い線路が延びている。ルートの中央に待避線のある駅があり、通常はそこで東行と西行が行き違いする。潮風を浴びながら東端まで10分ほどだ。

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1971年の電気軌道
Photo by wilford peloquin at wikimedia. License: CC BY-SA 2.0
 

項番6 イースト・ヒル・クリフ鉄道(ヘースティングズ)East Hill Cliff Railway, Hastings
項番7 ウェスト・ヒル・クリフ鉄道(ヘースティングズ)West Hill Cliff Railway, Hastings

北部のスカーバラ Scarborough や南部のボーンマス Bournemouth と並び、高台と崖下を結ぶケーブルカー、いわゆるクリフ(崖)鉄道が複数残っている町が、南東岸の海浜リゾート、ヘースティングズ Hastings だ。旧市街をはさんで東と西に1本ずつあり、どちらも、架台の上に平床の車体を載せた小型車両で運行されている。

イースト・ヒル・クリフ鉄道は、ヘースティングズの旧市街 Old Town の東を限るイースト・ヒル East Hill に上っていく。1902年の開通で、長さ81m、高低差約50mで、勾配は780‰と険しく、イギリスで最も急勾配の鉄道とされる。

線路は、砂岩の層をなす崖に張り付くように設置されている。それで乗車中も、ビーチにある漁船団の本拠地ザ・ステード The Stade や英仏海峡の、晴れやかな眺めが楽しめる。頂部にある芝生の公園からは海景の大パノラマが広がるが、休憩施設などはない。

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(左)イースト・ヒル・クリフ鉄道再開の日(2010年)
Photo by Oast House Archive at wikimedia. License: CC BY-SA 2.0
(右)山上駅の車内からの眺め(2010年)
Photo by Les Chatfield at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

対するウェスト・ヒル・クリフ鉄道は歴史がより古く、1889年の開通だ。長さ150m、高さ52m、路線長が長い分、勾配は330‰に緩和される。

ウェスト・ヒル West Hill は、ナショナル・レールの駅がある中心街と、古くからの旧市街とを隔てている標高50~60mの丘で、頂部には海を見下ろす古城の廃墟がある。しかしクリフ鉄道そのものは、切通しの後、ずっとトンネルが続くため、山上駅を出るまで、外の景色はおあずけだ。

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(左)ウェスト・ヒル・クリフ鉄道下部駅入口(2010年)
Photo by Les Chatfield at wikimedia. License: CC BY 2.0
(右)ルートの大半はトンネル(2010年)
Photo by Les Chatfield at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

上記2本のクリフ鉄道の下部駅は、500mほど離れている。それで、間隙を埋めるようにビーチを走る10インチ1/4(260mm)軌間のヘースティングズ・ミニチュア鉄道 Hastings Miniature Railway に乗るのもいいだろう。1948年の開業で、蒸機に似せたディーゼル機関車がオープン客車を牽いて走っている。

項番29 リントン・アンド・リンマス・クリフ鉄道 Lynton and Lynmouth Cliff Railway

リントン Lynton は、ブリストル海峡 Bristol Channel に面した断崖上にある町だ。背後はエクスムーア Exmoor と呼ばれる山深い土地のため、かつては貨物も旅客も海路に依存していた。船は崖下のリンマス Lynmouth 港に着く。貨物はそこで荷馬車に積み替えられて、リンマスまで高度差150mの急坂を上っていた。

この険路を解消すべく、1890 年に完成したのがクリフ鉄道だ。長さ263m、高低差152m。動力はウォーターバラスト(水の重り)で、上部駅にいる車両の床下タンクに水を注入し、下部駅の車両との質量の差で、坂を上下させる仕組みだ。

貨物輸送が主体だった鉄道も、道路の整備が進んだ1960年代以降は、観光客が利用の中心になった。この間に各地のクリフ鉄道はほとんど電気動力に転換されたが、リントンでは昔と変わらず、水の重りを利用している。乗車時間は2分余り、車両の海側のオープンデッキに立てば、海峡とそそり立つ断崖の迫力ある景観に目を奪われる。

なお、リントンには、バーンスタプル Barnstaple から軽便鉄道が通じていた時代があったが、現在はごく一部が保存鉄道(下注)として運行されているだけだ。町への公共交通機関は路線バスしかない。

*注 名称は商業運行時代と同じ、リントン・アンド・バーンスタプル鉄道 Lynton and Barnstaple Railway だが、わずか1.4kmの小規模路線。

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(左)上部駅の車両(2018年)
Photo by Steven Manning at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
(右)車両デッキからの眺望(2014年)
Photo by Velvet at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

南西部のデヴォンとコーンウォールにも、注目すべき保存鉄道・観光鉄道が多数ある。続きは次回

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