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2022年8月18日 (木)

イギリスの保存鉄道・観光鉄道リスト-イングランド南部編 II

「保存鉄道・観光鉄道リスト-イングランド南部編」から、前回割愛したサウス・ウェスト South West のデヴォン Devon、コーンウォール Cornwall にある鉄道路線をいくつかピックアップしよう。

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サウス・デヴォン鉄道
リヴァーフォード橋 Riverford Bridge 付近(2015年)
Photo by Geof Sheppard at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

「保存鉄道・観光鉄道リスト-イングランド南部」
http://map.on.coocan.jp/rail/rail_englands.html

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「保存鉄道・観光鉄道リスト-イングランド南部」画面

項番39 ダートマス蒸気鉄道 Dartmouth Steam Railway

高い人気を維持する保存鉄道は、何かしら支持される理由をもっている。規模やアクセスの良さ、ディナー列車やスチーム・ガラ(蒸機まつり)などのイベントの質はもちろんだが、著名な観光地を走る、またはそこへ通じているという地の利も大きい。車窓から見える景色が美しければなおさらだ。

ダートマス蒸気鉄道は、ナショナル・レールのリヴィエラ線(後述)と接続して、ペイントン Paignton ~キングズウェア Kingswear 間10.8kmを走る標準軌の保存鉄道だ。起点があるデヴォン南岸のトーベイ Torbay 一帯は高級保養地で、日照時間が長く、気候が穏やかなことから、「イングランドのリヴィエラ English Riviera」と称えられてきた。

ペイントン駅を出発した列車は、トー湾 Tor Bay の晴れやかなビーチの前を通過した後、海原を見下ろす丘陵地へ上っていく。サミットのトンネルを抜けると、今度は三角江の深い谷の縁に降下する。終点キングズウェア駅はダート川の三角江 Dart Estuary に面し、対岸の港町ダートマス Dartmouth へフェリーが連絡している(下注)。

*注 フェリーが着くダートマスの埠頭には、列車が来ない「駅」が設置されていた。駅舎は保存され、レストランに活用されている。

この片道25分余の鉄道とフェリーでつなぐダートマスは、トーベイの滞在客にとって気軽に行ける行楽地だ。立地の良さを反映して、シーズン中、列車は5往復から、繁忙日には11往復もの設定がある。

蒸気鉄道を運営するのは、ボランティア主体の非営利組織ではなく、事業会社のダート・ヴァレー鉄道会社 Dart Valley Railway Ltd だ。同社およびグループ会社は周辺のバスやフェリー、クルーズ船も運行していて、各種乗り物に有効な周遊乗車券が発売されている。

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ダート川三角江を行く蒸機71000号(2011年)
Photo by Geof Sheppard at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

項番40 サウス・デヴォン鉄道 South Devon Railway

国立公園のダートムーア Dartmoor を水源に、南へ流れ下るダート川 River Dart は、なぜか保存鉄道に縁が深い。河口には上述のダートマス蒸気鉄道が来ているし、中流域のトットネス Totnes とバックファストリー Buckfastleigh の間にも、川筋に沿ってサウス・デヴォン鉄道がある。

地理的に近いだけでなく、2本の路線は1991年まで同じ事業会社に属していて、いわば姉妹鉄道の関係にあった。サウス・デヴォン鉄道は当時ダート・ヴァレー鉄道 Dart Valley Railway という名称だったが、1991年に会社が不採算を理由に手を引いた後(下注)、現在の非営利組織が運行を引き継いだ。

*注 現在、ダートマス蒸気鉄道を運行しているダート・ヴァレー鉄道会社は、もともとサウス・デヴォン鉄道(旧ダート・ヴァレー鉄道)の運営のために設立された会社だった。

ダートマス蒸気鉄道を海線とすれば、サウス・デヴォン鉄道は谷線だ。トットネス発の列車では、川は左側に現れる。緑うるわしい谷あいで、近づいては遠ざかるこの川を眺めながら、バックファストリーまで10.7km、片道30分の旅だ。途中に待避線をもつ信号所があるが、通常ダイヤでは列車交換は行われない。

なお、起点のトットネス・リヴァーサイド Totnes Riverside 駅は、ナショナル・レール、エクセター=プリマス線 Exeter–Plymouth line のトットネス駅の川向う、フットパスの橋を渡って徒歩5~6分のところにある。

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バックファストリー駅に入る蒸気列車(2011年)
Photo by Nilfanion at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

項番46 ボドミン・アンド・ウェンフォード鉄道 Bodmin and Wenford Railway

19世紀前半までコーンウォールは海上交通に多くを依存していた。それで、丘の上の町ボドミン Bodmin に最初に通じた鉄道(下注)は、北岸の河口港ウェードブリッジ Wadebridge からやってきた。1834年のことだ。一方、1859年に開通した幹線鉄道(現 コーンウォール本線 Cornish Main Line)は、町から南東に5km離れた谷の中に通された。この間を結んだのが1887~88年に開通したボドミン・アンド・ウェンフォード鉄道だ。

*注 ボドミン・アンド・ウェードブリッジ鉄道 Bodmin and Wadebridge Railway という。このボドミン駅は町の北西にあり、後に、ジェネラル駅と区別するためにボドミン・ノース Bodmin North に改称。

ボドミンのターミナル駅は、最初の鉄道とは市街を隔てた反対側に設けられ、ボドミン・ジェネラル(総合駅)Bodmin General と称した。頭端式の構造で、到着した列車はここで進行方向を変えて出発する。1986年に活動を開始した保存鉄道も、この駅が拠点だ。東はコーンウォール本線と接続するボドミン・パークウェー Bodmin Parkway、西はボスカーン・ジャンクション Boscarne Junction(下注)の間10.5kmのルートで走っている。

*注 旧ボドミン・アンド・ウェードブリッジ鉄道との接続点に位置する。

丘の上の駅から見れば、東も西も25‰勾配のある険しい下り坂だ。それでボドミンへの帰り道では、タンク機関車に坂道での力闘が求められる。所要時間は東が20分、西が14分、ボドミン・ジェネラルを交互に発着する形でダイヤが組まれている。

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(左)ボドミン・ジェネラル駅(2017年)
Photo by The Basingstoker at wikimedia. License: CC BY-SA 2.0
(右)ボスカーン・ジャンクション駅(2015年)
Photo by Andrew at flickr.com. License: CC BY 2.0
 

デヴォンやコーンウォールでは、一般路線にも見どころが多い。

項番37 リヴィエラ線 Riviera Line

北部のセトル=カーライル線 Settle–Carlisle line などとともに、イギリスの絶景列車を紹介するサイトで常に最上位を争っているのが、リヴィエラ線だ。線名は、先述の「イングランドのリヴィエラ English Riviera」に由来している。列車は、エクセター Exeter(セント・デーヴィッズ St Davids 駅)~ニュートン・アボット Newton Abbot ~ペイントン Paignton の45kmを直通する(下注)。

*注 このうち、エクセター・セント・デーヴィッズ~ニュートン・アボット間はエクセター=プリマス線との共有区間。

リヴィエラ線最大の見せ場が、ドーリッシュ・ウォレン Dawlish Warren からテインマス Teignmouth の手前までの約6kmだ。イングランド南西部は三角江が深く入り込み、海岸線には断崖が続く。そのため、幹線鉄道の大半は内陸に通されているのだが、ここでは珍しく、断崖直下の波打ち際を列車が通過する。海が荒れると波しぶきをかぶるような場所で、過去に何度も護岸が流失して不通になったことがある。

しかし穏やかな日なら、車窓には英仏海峡の青い水平線が一文字に延び、乗客の目をいやおうなしに奪う。本家リヴィエラのような断崖を貫く連続トンネルも、憎いアクセントだ。護岸の上は遊歩道に開放されているので、途中下車して、海原と列車を眺めながらのハイキングもいい選択だろう。

海岸区間だけでなく、その前後も見過ごせない。線路はエクス川 River Exe とテイン川 River Teign の三角江に沿っていて、外海とは対照的に、波静かな水面(干潮時は干潟)を存分に眺めることができる。これらを含めれば、約21kmにわたって水辺の景色が断続する特異な路線だ。

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ドーリッシュの海岸線を行くHST(2015年)
Photo by Kabelleger / David Gubler at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

項番43 テーマー・ヴァレー線 Tamar Valley Line

海辺を走るリヴィエラ線に対して、テーマー・ヴァレー線は内陸を拓く支線だ。港湾都市プリマス Plymouth から北へ23km、ガニスレーク Gunnislake という町のはずれの小さな駅まで行く。沿線に目立った観光地もなく、実際に存続しているのが奇跡なくらいのローカル線だ。

鉄道がたどるテーマー川の谷 Tamar Valley は、幅の広い三角江が奥まで続いている。そのため、代替ルートになる道路橋がないという理由で、これまで廃線を免れてきた。それだけに橋梁は路線のアドバンテージで、かつ車窓景観上も重要なポイントになっている。

列車は、名橋ロイヤル・アルバート橋 Royal Albert Bridge の下をくぐった後、自らも長さ453m、17スパンのテーヴィー橋 Tavy Bridge で三角江を渡る。ビア・オールストン Bere Alston でスイッチバックした後は、長さ約270m、高さ37m、12のアーチを連ねるカルストック高架橋 Calstock Viaduct の上からの壮大な眺望が待っている。

ガニスレークまで45分。合間に見えるテーマー川の、蛇行する谷と丘の織り成す景色も美しく、単純往復でも訪ねる価値のある路線だ。

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テーマー川をまたぐカルストック高架橋(2005年)
Photo by Ben Harris at wikimedia. License: public domain
 

項番45 ルー・ヴァレー線 Looe Valley Line

内陸を通る幹線からは、河口の港町へ向けて支線がいくつか建設されてきた。ルー・ヴァレー線もその一つで、コーンウォール本線 Cornish Main Line のリスカード Liskeard からイースト・ルー川 East Looe River の谷を通って河口のルー Looe まで14kmを、気動車が約30分で結んでいる。

もともとこの路線はコーンウォール本線とは関係がなく、ボドミン・ムーア Bodmin Moor の採石場からルーの港へ直接、花崗岩を運び出す貨物鉄道だった。後に旅客輸送の便を図って、クーム・ジャンクション Coombe Junction とリスカードの間に連絡線が建設された。両駅間は、距離こそ1km未満だが、高度差は60mを超えるため、オメガループとスイッチバックを駆使してアクロバティックにつなげたところが見ものだ。

クーム・ジャンクションで進行方向を変えた列車は、イースト・ルー川の狭い谷をゆっくり下っていく。潮位が高い時間帯なら、ルー駅到着の数分前から右手の谷に水が満ちてくるはずだ。この三角江の感潮域を眺めているうち、前方にルーの市街地が近づいてくる。

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ルー川三角江の築堤(2019年)
Photo by Steve Edge at flickr.com. License: CC BY-NC 2.0
 

項番49 セント・アイヴズ・ベイ線 St Ives Bay Line

一般路線では、コーンウォール半島の先端近くにあるセント・アイヴズ・ベイ線も忘れるわけにはいかない。コーンウォール本線のセント・アース St Erth から、北海岸のリゾート地セント・アイヴズ St Ives に至る支線だ。わずか6.8kmの短い路線だが、リヴィエラ線と同様、車窓風景には定評がある。

列車はセント・アースから、最初ヘイル川 River Hayle の三角江のへりをたどって、河口に出る。それから海岸線に沿って、崖の上の緩斜面を西へ向かう。一つ目の岬を回ると、カービス・ベイ Carbis Bay のビーチが視界に入ってくる。リヴィエラ線よりかなり高所を走るので、俯瞰形のパノラマがすばらしい。もう一度岬を回れば、早や終点が近づく。

観光エリアは駐車場が混むことから、セント・アース駅前に車を置いて列車でセント・アイヴズに移動するパーク・アンド・ライド利用者も多い。そのため、列車は日中30分間隔で発車する。ところが、中間に待避線がないため、1編成でのシャトル運行だ。片道12分かかるので、両端駅では到着の3分後に、さっさと折り返さなくてはならない。絶景車窓もさることながら、イングランド最西端の支線がこれほど忙しいとは予想外だ。

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カービス・ベイのビーチを見下ろす(2018年)
Photo by www.sykescottages.co.uk. License: CC BY 2.0
 

項番35 シートン軌道 Seaton Tramway

イングランド編の締めくくりに紹介するのは、デヴォン東部の海沿いの町シートン Seaton を走っているユニークなトラム(路面電車)の観光鉄道だ。どこがユニークかというと、使われているトラムが、実際に市内で使われたオリジナルではなく、それを1/2から2/3にリサイズした複製品なのだ。

保有する車両は、スランディドノのダブルデッカーやブラックプールのボートトラムなど15両に上る。どれも本物と見分けがつかないほど精巧に造られていて、人の背丈と比べなければ縮小寸法であることさえ気づかないかもしれない。

もともとこれは、小型自動車メーカーのオーナーだったクロード・レーン Claude Lane が、第二次大戦後間もないころから趣味で手造りしていたものだ。彼は、走らせる場所を探して各地を転々とした後、最終的にシートンにあった標準軌の廃線跡を買い取った。そして2フィート9インチ(838mm)軌間で線路を敷き直し、駅や車庫を建てていった。1970年開業のこの軌道で、運行会社は主亡き後も操業を続けている。

ルートは、海岸にほど近いシートンのターミナルから、車庫のあるリヴァーサイド Riverside を経て、内陸のコリトン Colyton までの4.8kmだ。リヴァーサイドから先は旧線跡で、自然保護区に指定されたアックス川 River Axe の三角江と湿地帯をほぼ直線で貫いていく。終点まで25分前後かかる。

なにぶん車内は狭く、乗れる人数には限りがある。それでトラムは20分ごとに次々と出ていく。天気が良ければ、野鳥観察ができるというダブルデッカーの2階席がお薦めだ。

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アックス川三角江のへりを行くリサイズトラム(2010年)
Photo by Markus Schroeder at flickr.com. License: CC BY-NC-ND 2.0
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(左)トラム2階席からの眺め(2005年)
Photo by David P Howard at wikimedia. License: CC BY-SA 2.0
(右)リヴァーサイド車庫(2021年)
Photo by Chris j wood at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

次回は、ウェールズの保存鉄道・観光鉄道について。

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