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2021年2月21日 (日)

フランスの保存鉄道・観光鉄道リスト-南部編

フランス南部(およそ北緯46度以南)の保存鉄道・観光鉄道リストを作成した。例によって、スペクタクルなルートを走る普通路線や大規模な鉄橋も含めたので、件数は北部編を上回る。その理由は、北部に比べて様相の異なる南部の地勢にあると思う。

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オー・ケルシー観光鉄道
ミランドルの断崖からの眺め(2015年)
Photo by Lieutenant Crowe at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

北部は概して丘陵地だ。東に行くにつれ次第に標高が上がっていくものの、山地は東部のヴォージュ Vosges かスイス国境のジュラ Jura 地方にしかない。対照的に南部は、西岸と南西の内陸に平野や丘陵地が広がるものの、他は山がちだ。中央にその名どおりの中央高地 Massif Central がどっしりと横たわり、南のピレネー Pyrénées、東のアルプス Alpes が衝立のように立ち塞がる。鉄道の建設と運行にとっては大きな障壁だが、その分、車窓はすこぶる変化に富んだものになる。

南部にはどのような鉄道があるのか、リストの中からいくつかピックアップしてみよう。

「保存鉄道・観光鉄道リスト-フランス南部」
http://map.on.coocan.jp/rail/rail_frances.html

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「保存鉄道・観光鉄道リスト-フランス南部」画面

項番1 サン・トロジャン軽便鉄道 P'tit train de Saint-Trojan
項番4 フェレ岬軽便鉄道 Tramway du Cap-Ferret

項番1から4までは大西洋岸かその近くにある観光鉄道だ。西岸には砂浜が200kmも続いていて、点在するビーチリゾート(仏語でプラージュ Plage)に、実用とアトラクションを兼ねたプチ・トラン(小列車)が走っている。

一つは、オレロン島 Île d'Oléron のサン・トロジャン軽便鉄道だ。波静かな内海に面したサン・トロジャン・レ・バン St-Trojan-les-Bains の町裏に乗り場がある。軌間600mmの線路が松林の中を岬に向かって延び、ガッゾー Gatseau、モーミュッソン Maumusson の2か所のビーチへの足となっている。岬周辺は車の乗入れができないので、特に後者は、列車でしか行けないビーチだ。

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サン・トロジャン軽便鉄道
ガッゾービーチ付近(2013年)
Photo by Mutichou at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

フェレ岬軽便鉄道も状況は似ていて、集落や港のあるのは、アルカション湾 Bassin d'Arcachon、すなわち内湾側にあるベリゼール Bélisaire だ。大西洋側のビーチまでは2km弱あり、船で港へ着いた行楽客にとって、鉄道が便利な交通手段になっている。のんびりとトロッコ列車に揺られて海水浴に行けるとは、まことにうらやましい。

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フェレ岬軽便鉄道
ビーチ前に到着(2013年)
Photo by Echtner at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

項番8 オー・ケルシー観光鉄道 Chemin de fer touristique du Haut Quercy
項番30 セヴェンヌ蒸気鉄道 Train à vapeur des Cévennes

保存鉄道はたいてい季節運行だ。冬はクリスマスなどの特別運行を除いて休業し、気候が良くなる5~6月からが活動期になる。中でも7~8月のバカンスシーズンは書き入れ時で、どの路線も繁忙期と位置付けてフルサービスを実施する。この期間に曜日を問わず毎日運転するか、あるいは週末のみかで、その鉄道の人気度も推測できる。

標準軌の蒸気機関車を走らせている鉄道のうち、この2本は繁忙期に毎日運行している。人気の理由は何なのだろうか。

オー・ケルシー観光鉄道は、片道6.5kmと短距離ながら、乗客限定の印象的な光景を売りにしている。それは、起点マルテル Martel 駅から2本目のトンネルを抜けたところにある展望台だ。ミランドルの断崖 Falaise de Mirandol をうがった比高80mの高台で、ドルドーニュ川 La Dordogne が流れる緑の渓谷が一望になる(冒頭写真参照。グーグルマップでは Moulin de Briance(ブリアンスの風車小屋)のピンが立てられている地点)。そこまではトンネルと掘割が続くだけに、車窓の展開は劇的で、列車はしばらく停車し、乗客に眺めを愛でる時間を提供する。

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オー・ケルシー観光鉄道
マルテル駅の機関庫(2015年)
Photo by kitmasterbloke at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

セヴェンヌ蒸気鉄道もまた、渓谷探索列車の性格を持っている。起点は、セヴェンヌの門 Porte des Cévennes と呼ばれる断崖を背にしたアンデューズ Anduze の町だ。列車はこの天然の門、すなわち山地への入口をトンネルで貫いた後、ゴルドン川(正確にはアンデューズのゴルドン川 Le Gordon d'Anduze)の渓谷をゆっくりと遡る。特に前半は高架橋やトンネルが繰り返し現れ、車窓の変化に事欠かない。

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セヴェンヌ蒸気鉄道
ゴルドン川渓谷を行く(2013年)
Photo by Okki at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

項番14 AGRIVAP レ・トラン・ド・ラ・デクヴェルト(発見列車)AGRIVAP Les trains de la découverte
項番15 オー・フォレ鉄道 Chemin de fer du Haut Forez

フランスではかつて、ルノー Renault 社製のユニークな気動車(オートライユ autorail)が活躍していた。セヴェンヌ線(項番12)やアルプ線(項番23)の花形急行列車に使われたパノラマカー X4200形や、運転台が屋根から突き出した異様な容貌から、シュルレアリスムの画家ピカソ Picasso の名で呼ばれる X3800形などだ。こうした名物車両は今も根強い人気があり、蒸気運転を導入していない保存鉄道ではたいてい主役の座についている。

AGRIVAPは、オーヴェルニュ Auvergne 中央部にある旧線で、その貴重なパノラマカーを動態保存する。本来の走行路線ではないものの、同じような標高1000m級の高原地帯を行くので、現役時代を想い起こすには十分だ。それに加えて、終点の村ラ・シェーズ・デュー La Chaise-Dieu には中世の修道院建築が残っている。帰りの列車時刻まで自由見学できるのもうれしい。

*注 AGRIVAP はもともと蒸気動力の農業機械 matériel agricole à vapeur の保存公開を目的に設置された協会組織で、名称もそれに由来する。

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パノラマカーX4200形(2007年)
Photo by Pedelecs at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

一方、ピカソ形気動車は量産されたので、各地の保存鉄道で見ることができる。AGRIVAP も所有しているし、近隣のオー・フォレ鉄道もそうだ。エスティヴァレイユ Estivareilles~ラ・シェーズ・デュー間を走る後者は、地元自治体が観光振興を目的に所有し、非営利団体が委託を受けて運行している。おもしろいことに、2本の保存鉄道の間で発着時刻が調整されており、ラ・シェーズ・デューで相互乗換えが可能だ。

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オー・フォレ鉄道のピカソ形気動車(2009年)
Photo by X2426 at wikimedia.
 

項番16 ヴレー急行 Velay Express
項番17 ヴィヴァレー鉄道 Chemin de Fer du Vivarais

19世紀後半、公共事業大臣シャルル・ド・フレシネ Charles de Freycinet のいわゆるフレシネ計画 Plan Freycinet により、全土で8800kmの鉄道路線網の整備が進められた。これらはすべて地方路線で、需要がさほど見込めないことから、規格を落として建設されたものが多い。

メーターゲージの蒸気保存鉄道であるヴレー急行とヴィヴァレー鉄道も例外ではない。前者は高原、後者は渓谷が舞台だが、もとはどちらもCFD社(下注)のヴィヴァレー路線網 Réseau du Vivarais に属し、ル・シェラール Le Cheylard 経由で路線がつながっていた。地形図には廃線跡が明瞭に描かれている。

*注:CFD、正式名称 県鉄道会社 Compagnie de chemins de fer départementaux は、「県営」ではなく、各地の地方鉄道網を運営していた民間会社。

ヴレー急行は、標高1000m前後のヴレー高原 Plateau du Velay を走ることからこの名があるが、旧名のヴァレー鉄道 Voies Ferrées du Valais のほうが通りがいいかもしれない。1970年の開業以来、運行区間は、標準軌線(すでに廃止)との接続駅デュニエール Dunières とサンタグレーヴ Saint-Agrève の間だった。しかし2015年に現在のロクール・ブロセット Raucoules-Brossette 以南に短縮され、同時に新たな車庫・整備工場が整備されている。

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ヴレー急行
モンフォーコン Montfaucon 駅にて(2011年)
Photo by Didier Duforest at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
 

一方、ヴィヴァレー鉄道は、トラン・ド・ラルデーシュ(アルデーシュの列車)Train de l'Ardèche と称する。終始ローヌ川支流のドゥー川 Le Doux の谷間を走る路線だが、こちらも区間短縮を経験済みだ。以前はトゥルノン Tournon の旧SNCF駅(下注)が起点で、2.2kmの間3線軌条で標準軌線と共有していた。ところが資金難により、2008年から全線で運行ができなくなった。ようやく2013年に再開したものの、運営経費を縮減するために、線路使用料が必要な共有区間の走行を断念したのだ。

標準軌線(ローヌ右岸線 Ligne de la rive droite du Rhône)では1973年から旅客列車が走っておらず、トゥルノン駅で乗換える客がいたわけではない。それで起点をここに維持し続ける必然性はなかった。以来、列車は、専用線上にあるトゥルノン・サン・ジャン Tournon-Saint-Jean 駅から出発している。

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ヴィヴァレー鉄道
コロンビエ・ル・ヴュー Colombier le Vieux 駅のマレー式414号機
(2018年)
Photo by Peter_Glyn at wikimedia. License: CC0 1.0
 

項番11 パノラミック・デ・ドーム Panoramique des Dômes
項番25 トラムウェー・デュ・モン・ブラン(モン・ブラン軌道)Tramway du Mont-Blanc
項番26 モンタンヴェール鉄道 Chemin de fer du Montenvers
項番31 ラ・リューヌ軽便鉄道 Petit Train de la Rhune

フランス国内に残っているラック式登山鉄道は、すべて南部編のエリアにある。ここに掲げた4路線はいずれも電気運転で、ラック方式は平底レールの踏面に歯を加工したシュトループ Strub 式だ(下注)。

*注 このほかリヨン・メトロC線の一部に、索道(ケーブルカー)から転換されたフォン・ロール式のラックレール区間がある。

このうち、パノラミック・デ・ドームは2012年に開業したばかりの新路線だ。中央高地のピュイ・ド・ドーム Puy de Dôme 山頂に上っていた自動車道が、そのまま鉄道に転換された。車で来た旅行者も山麓の駐車場にそれを置いて、電車を利用する必要がある。観光分野におけるモーダルシフトの実践例で、富士山登山鉄道のモデルになるかもしれない。

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パノラミック・デ・ドーム
ピュイ・ド・ドーム山頂付近(2015年)
Photo by Calips at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

トラムウェー・デュ・モン・ブランとモンタンヴェール鉄道は、ともにアルプス最高峰モン・ブラン Mont Blanc の周辺で、氷河の眺望を売りにしている。一帯の観光施設も併せてモン・ブラン社 Compagnie du Mont-Blanc という企業が運営していて、ウェブサイトが共通なのはそのためだ。

前者はトラムウェーと名乗るだけあって、SNCF駅前の起点ル・ファイエ Le Fayet から少しの間、道路上の併用軌道を進む。終点ニ・デーグル Nid d'Aigle は標高2372mで、鉄道で到達できるフランスの最高地点。第一次世界大戦の勃発で延伸計画が頓挫したため、駅舎どころか、線路終端の車止めすらないあっけらかんとした絶景が広がる。

後者は、シャモニー Chamonix の観光名所、メール・ド・グラス氷河 Mer de Glace の展望台へのアクセスとして不動の人気を誇る路線だ。開業当時は終点のすぐ前に文字通り氷の海が広がっていたが、温暖化の影響で、今や氷河にたどり着くには、ゴンドラへの乗り継ぎと長い階段の降下を強いられる。

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トラムウェー・デュ・モン・ブラン
ニ・デーグル Nid d'Aigle の終点で途切れる線路(2019年)
Photo by Florian Pépellin at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
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(左)1984年のモンタンヴェール駅
(右)テラスからメール・ド・グラスの眺望(1984年)
  筆者撮影
 

ラ・リューヌ軽便鉄道は1924年開業の登山鉄道で、ピレネー山脈西端近くにあるラ・リューヌ山に上っていく。山頂は標高わずか900mに過ぎないが、大西洋を見晴らす展望台として人気のスポットだ。電化方式は低電圧の三相交流(3000V 50Hz)で、開通した時代を感じさせる(下注)。

*注 三相交流は初期の電化方式の一つで、スイスのユングフラウ鉄道 Jungfraubahn などにも残っている。

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ラ・リューヌ軽便鉄道
大西洋を見晴らす山上駅
Photo by Smiley.toerist at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

項番10 ル・カピュサン・ケーブルカー Funiculaire du Capucin
項番33 ピック・デュ・ジェール・ケーブルカー Funiculaire du Pic du Jer
項番21 サンティレール・デュ・トゥヴェ・ケーブルカー Funiculaire de Saint-Hilaire-du-Touvet

登山鉄道の一環で、クラシックな外観を保つケーブルカーもいくつか挙げた。

ル・カピュサン・ケーブルカーは、オーヴェルニュの温泉町モン・ドール Mont-Dore にあり、1898年に開業した延長488mの路線だ。電気運転のケーブルカーではフランスで最も古く、設備全体が文化財に指定されている。

方や、ピック・デュ・ジェール・ケーブルカーは、カトリックの主要巡礼地ルルド Lourdes の郊外にある延長1100mの路線で、1900年から稼働している。いずれも著名な観光地近くの見晴らし台に上っていく索道であり、レトロな景観を保存する点が共通している。

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(左)ル・カピュサンに上っていく車両(2014年)
Photo by Tangopaso at wikimedia. License: public domain
(右)山麓駅の出札ホール、正面が乗り場(2022年)
Photo by Pymouss at wikimedia. License: CC BY-SA 4.0
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ピック・デュ・ジェール・ケーブルカーの山麓駅舎
Photo by Père Igor at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

対するサンティレール・デュ・トゥヴェ・ケーブルカーは、高地の療養所への交通手段として造られたもので、谷底と、断崖の上に載るプティット・ロッシュ高原 Plateau des Petites Roches を結んでいる。830‰と世界有数の急勾配で、わが国で最も急な高尾山ケーブルカーの608‰と比べても、険しさが際立つ。その分、イゼール川 L'Isère の谷を見下ろす車窓風景はすばらしく、ぜひ車端のオープンデッキに出て楽しみたい。

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サンティレール・デュ・トゥヴェ・ケーブルカー
急勾配を上る車両
Photo by Ragnhild&Neil Crawford at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

項番24 SNCF サン・ジェルヴェ・レ・バン・ル・ファイエ=ヴァロルシーヌ線 
Ligne de Saint-Gervais-les-Bains-Le Fayet à Vallorcine
項番35 ル・トラン・ジョーヌ(黄列車、SNCFセルダーニュ線)Le Train Jaune (Ligne de Cerdagne)

サン・ジェルヴェ・レ・バン・ル・ファイエ=ヴァロルシーヌ線(以下、シャモニー線)がアルプスのシャモニー谷 Vallée de Chamonix を貫くのに対し、ル・トラン・ジョーヌ(以下、セルダーニュ線)はピレネーのセルダーニュ高原 Plateau de Cerdagne に上っていく。二者は東西に遠く離れた位置関係にあるが、実は双子のように共通項が多い。すなわち、

・メーターゲージ(1000mm軌間)
・直流電化かつ給電用レールから集電する第三軌条方式(電圧は前者800V、後者850V)
・急勾配を粘着運転(最急勾配は前者90‰、後者60‰)
・終点が国境に接近(前者はスイス側と直結、後者はスペイン国境駅が終点)
・SNCFが直営

さらに、沿線人口が多くないため、分類としては一般路線ながら、観光客輸送に軸足を置いている点も同じだ。

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シャモニー線
レズーシュ Les Houches 駅にて
Photo by Florian Pépellin at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

歴史的にはシャモニー線が先輩で、パリ=リヨン=地中海鉄道会社 Compagnie des chemins de fer de Paris à Lyon et à la Méditerranée (PLM) の手で1901~1908年に開業した。セルダーニュ線は、ミディ(南部)鉄道会社 Compagnie des chemins de fer du Midi が1910年以降に建設した路線だ。

その設計にあたって、地形的な共通点などから、先行するシャモニー線の技術仕様が参考とされたのは確かだろう。しかし、沿線にはセジュルネ橋やジスクラール橋といった独自のシンボリックな橋梁があり、ミディ社の担当技師の、単なる模倣を超えようとする強い主張のようなものも感じられる。

*注 ル・トラン・ジョーヌの詳細は「セルダーニュ線 I-ピレネーを越える黄列車」「同 II-ルートを追って」参照。

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セルダーニュ線
セジュルネ橋を渡る黄列車
Photo by Thierry Llansades at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

項番37 プロヴァンス鉄道 Chemins de fer de Provence
項番40 コルシカ鉄道 Chemins de fer de la Corse

メーターゲージの山岳鉄道では、長距離で乗り甲斐のある路線群も忘れてはいけない。

プロヴァンス鉄道は、地中海岸の主要都市ニース Nice からプロヴァンス内陸部のディーニュ・レ・バン Digne-les-Bains に至る延長150kmの非電化路線だ。沿線は総じて険しい山岳地帯で、3か所の峠越えがあり、標高1023mまで上り詰める。

現在、終点まで完走する列車は1日4往復のみで、所要時間は約3時間20分。一方、ニース近郊では等時隔ダイヤの通勤輸送が行われているほか、山岳区間では夏のシーズンに、「トラン・デ・ピーニュ(松ぼっくり列車)」の名を冠した蒸気機関車による観光列車(項番38)が運行され、人気を博している。

*注 鉄道の詳細は「プロヴァンス鉄道 I-トラン・デ・ピーニュの来歴」「同 II-ルートを追って」参照。

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ピュジェ・テニエ駅の気動車AMP800形(2014年)
Photo by G CHP at wikimedia. License: CC BY-SA 2.5
 

コルシカ鉄道は、地中海に浮かぶコルシカ島(フランス語ではコルス Corse)の主要路線だ。

本線の起終点バスティア Bastia、アジャクシオ Ajaccio はともに主要な港町だが、中間部にはやはり山岳地帯が立ちはだかる。そのため、峠の下を抜ける長さ3916mのヴィザヴォーナトンネル Tunnel de Vizzavona をはじめ、高架橋「ポン・デュ・ヴェッキオ Pont du Vecchio」、2か所のオメガループなど、ルートには見どころが多い。

本線の完走列車は1日4往復で、所要3時間25分。カルヴィ Calvi 支線はバスティア~カルヴィ間で途中乗継ぎを含めて2往復。ほかに近郊区間便が多数あり、活用のされ方もプロヴァンス鉄道と似ている。

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ヴィヴァリオ Vivario 駅での貨物列車との交換(2000年)
Photo by Didier Duforest at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

項番12 セヴェンヌ線 Ligne des Cévennes
項番39 タンド線 Ligne de Tende

最後に、標準軌の山岳路線を2本挙げておこう。セヴェンヌ線は、クレルモン・フェラン Clermont-Ferrand から中央高地 Massif Central を縦断して地中海側のニーム Nîmes に至る準幹線(下注)だ。

*注 本来は、このうち山岳区間のランジャック Langeac ~アレス Alès 間154kmを指すとされるが、現在のプロモーションサイト ligne-des-cevennes.com は、クレルモン・フェラン~ニーム間全線を扱っている。

前半はアリエ川 L'Allier の谷を延々と遡る峡谷ルートで、夏の数日間、アリエ峡谷観光鉄道 Train Touristique des Gorges de l'Allier(項番13)の名で観光列車も走る。標高1025mのサミットに達した後は、山地の地中海斜面を大小無数のトンネルで縫いながら降下していく。この区間にも、半円を描く長さ384mのシャンボリゴー高架橋 Viaduc de Chamborigaud など見どころが点在する。

かつてはパリとマルセイユを直通するセヴノル号 Le Cévenol がこのルートを経由していたが、現在はTER(地域内列車)のみだ。完走するのは乗継便を含め1日3~4往復で、5時間半ほどかかる。

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コライユ車両を連ねてシャンボリゴー高架橋を渡る(2009年)
Photo by Budotradan at wikimedia. License: public domain
 

タンド線は、アルプス最南部でフランスとイタリアの国境を横断する。地中海岸のヴェンティミーリア Ventimiglia またはニース Nice からタンド峠 Col de Tende のトンネルまでの高低差は、実に1000m。これを許容勾配25‰で克服するために、狭い谷間でスパイラル(西斜面3か所、東斜面1か所)やオメガループを繰り返す驚異の路線だ。

原計画の時点では、イタリア国内で完結するはずだったが、中間地域がフランスに割譲されたことで、ニースを発してブレイユ・シュル・ロワイヤ Breil-sur-Roya で前者に接続するルートが追加され、運行の重心もこちらに移った。今もニース~ブレイユ間の旅客列車(TER)は11往復あり、一部はタンドまで延長運転されている。

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ブレイユ・シュル・ロワイヤ駅での列車交換(2013年)
Photo by Gilles tagada at wikimedia. License: CC BY-SA 3.0
 

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