地形図を見るサイト-カナダ
東西9300km、南北4600km、この広大な国土を克明に描写したカナダの地形図は、ウェブ上でも余すところなく楽しめる…。と明快に書きたいところだが、現状を見る限りそうもいかない。なぜなら、データは揃っているものの、サイトへのアクセス、反応速度、見せ方など使い勝手に難があるからだ(下注、以下の記述は2021年1月現在の仕様に基づく)。
*注 カナダの地形図の概要については、本ブログ「カナダの地形図」参照。
下に、カナダ天然資源省 Natural Resources Canada (NRC) が所管する地形図情報のメニュー画像を示す。
Natural Resources Canada - Topographic Information
https://www.nrcan.gc.ca/topographic-information/10785
天然資源省「地形図情報」のメニュー |
天然資源省のトップページから入った場合、この画像の上方に記されたように階層を降りていく必要がある。ところが、上層ページの説明文に地形図に関するキーワードがほとんど出現しないため、初見でたどり着くのは容易ではない。
トップページには別途「Maps, tools and publications(地図、ツール及び出版物)」というメニューがあり、そこからもリンクがつながっている。しかし、一見有力そうなこのルートも階層が深く(4階層)、たいてい途中で迷子になる。
以前はジオグラティス GeoGratis というポータルサイトがあったのだが、2017年8月限りで廃止されてしまった。以来、本国でも、迷路に陥るユーザーが少なからずいて、不評を買っているようだ。
◆
現行地形図
現行地形図(デジタル地形図)は「Toporama(トポラマ)」というサイトで閲覧することができる。上記の地形図情報メニューでは、左下にある「Toporama Interactive Map」が入口だが、直接リンクを下に記す。サイトの反応が遅いかもしれないが、すぐに地図画像が現れなかったとしても、お茶でも飲みながら、気長に待っていただきたい。
The Atlas of Canada - Toporama(英語版)
https://atlas.gc.ca/toporama/en/
Toporama 初期画面 |
初期画面にはカナダ全土のデジタル地図が表示されている。あとは、右端の範囲選択ツール(拡大鏡アイコン)を使って表示範囲を絞るか、左メニューの「Find a Location」に任意の地名、住所、経緯度などを入力して、直接目的の場所を表示させればよい。
例として、首都オタワ Ottawa の地形図を見ることにしよう。検索窓に「ottawa」と入力すると、候補がドロップダウンリストで表示された。
候補をドロップダウンリストで表示 |
候補から一つ(この例では最上段の候補)選択すると、該当のエリアが表示される。ベースマップの方位が北を指していないので、図郭を表す矩形が傾いて見える。
選択した候補のエリアを表示 |
矩形の部分を拡大したのが下の画像で、オタワ中心部を表している。
地図を拡大 |
このように、表示される地図はシンプルなものだが、いくつかのオプション表示が可能だ。左メニューの「Map Layers and Legend(s)」に、水流の方向、グリッド、起伏を表す陰影(ぼかし)などの選択肢がある。また、スライドバーでその透過度を変えることもできる。なお、「Grids(グリッド)」オプションで表示される紫のグリッド(格子)と「031G05」などの英数字は、1:50,000地形図の図郭と図番を表している。
表示オプション |
旧版地形図
一方、旧版地形図はシームレス画像ではなく、PDFやTIFFなどのファイル形式で1面ずつ保存されている。冒頭に紹介したNRCの地図メニュー「Topographic Information」まで戻って、画面右上の「Geospatial Product Index - HTML」から入ろう。
こちらは比較的早く地図が現れるだろう。使い方は左メニューに書かれている。すなわち、
1.データタイプ(空中写真、ラスタデータなど)を選ぶ
2.表示されたリストの中からコレクション(ラスタデータなら縮尺別)を選ぶ
3.地図を拡大し、見たいエリアをクリックして、地図/データをプレビューさせる
4.現れたリンクをクリックすることで、ダウンロードの手続きが始まる
Geospatial Product Index の初期画面 |
旧版1:50,000地形図のデータを取得する手順を具体的に見ていこう。
左メニュー上部の「Themes(テーマ)」タブを選択すると、その下に Imagery(空中写真)、Raster(ラスタデータ=地図画像)、Vector(ベクトルデータ)、Elevation(高度モデル)の選択肢が表示される。
ここで「Raster」を選択すると、「Digital Topographic Raster Maps - 1:50 000(1:50,000地形図ラスタデータ)」をはじめとして縮尺別のコレクション名が表示される。なお、最終行の「Toporama - 1:50 000」とは、上記「Toporama(トポラマ)」に使われているデジタル地図のことだ。これには整飾(図郭の周囲に記載される図名や凡例など)はついていない。
「Themes」でコレクションを選択 |
最上段の「Digital Topographic Raster Maps - 1:50 000」を選択する。すると画面上部に Loading index... と表示され(少々時間がかかるかもしれないが)、カナダ全土の1:50,000の図郭が黄色で表示される。
地図の左上にある拡大ボタンで地図を拡大していくと、図郭とその中に図番(紫色の英数字6桁)が見えてくるはずだ。ベースマップを参考にしながら、必要な図郭を選択するとよい。例として、上記と同じオタワ図葉を見てみる。
1:50,000の図郭が黄色で表示 |
地図を拡大し、図葉を選択 |
これにより、左メニューに地形図のプレビューが表示される。これでよければ、その下にある「Download link / Lien de téléchargement」をクリックする。
地形図のプレビューを表示 |
と、ここまではユーザーフレンドリーな作り込み画面だったのだが、次は一転、生のディレクトリ表示になる。そればかりかプレビューの地図が1種類だったのに、ファイルは何本か並列表示されている。
ダウンロードファイルを選択 (説明を赤字で加筆) |
見分けるポイントはファイル名の末尾にあるので、URLのフル表示(リンク上にカーソルを置くと、通常、ブラウザの最下段に表示される)を確かめるほかない。
上の画面例では、1段目のファイルの名称が 031g05_1100_canmatrix_geotiff.zip で、おそらく geotiff形式(地理参照型TIFF)のデータが入った圧縮ファイルだろうと推測できる。同様に2段目はファイル名末尾が prtpdf.zip で印刷用PDF(印刷用とは通常の印刷に耐えうる解像度という意味だろう)、3段目は prttif.zip で印刷用TIFFのようだ。地図を見たり印刷したりするだけなら、2段目のPDFで十分だ。
リンクをクリックするとダウンロードのポップアップ画面(「名前を付けて保存」)が現れるので、任意の場所に保存した後、解凍する。実際に prtpdf.zip で試してみると、下画像のようなPDFファイルが取得できた。1:50,000オタワ Ottawa 図葉の1998年版で、解像度は300dpi程度だ。
PDFを取得 1:50,000オタワ図葉 1998年版(縮小画像) |
この手順で、1:25,000から1:1,000,000(100万分の1)までさまざまな縮尺の地形図画像ファイルが入手できる。残念ながら地図画像は1図郭につき1種類だけだ。より古い版も存在するはずだが、それらはカナダ国立図書館・文書館 Library and Archives Canada (LAC) に移管されており、調べた限りでは、地図画像のネット公開は行われていない。
◆
これとは別に、オタワやトロントなどの主要都市を擁するオンタリオ州には、州域の旧版地形図を公開するウェブサイトがある。オンタリオ大学図書館協議会 Ontario Council of University Libraries (OCUL) が開設しているもので、天然資源省のサイトにはない20世紀初期から中期にかけての1:25,000および1:63,360図(下注)を見ることができる。
*注 1:63,360図は、実長1マイルを図上1インチで表す地形図。通称 1-inch map(ワンインチマップ)。メートル法の普及に伴い、1:50,000に置き換えられた。
OCUL Historical Topographic Map Digitization Project
(OCUL旧版地形図デジタル化プロジェクト)
https://ocul.on.ca/topomaps/
OCUL 旧版地形図デジタル化プロジェクト 初期画面 |
トップページにもサンプル画像がいくつか掲載されているが、それ以外のものを見るには、左メニューの「Full Collection」から入る。
下の画面に表示されている「1:63 360 Index Navigation」「1:25 000 Index Navigation」は、地図上で特定したいときの選択肢だ。地名がわかるのなら、検索窓やその下に続く地名一覧を使ってアクセスすることもできる。ここでは、「1:63 360 Index Navigation」から1:63,360(1インチ図)のコレクションを探すことにしよう。
「Full Collection」のメニュー |
「1:63 360 Index Navigation」をクリックすると、Scholars GeoPortal というサイトに移行する(そのため、ブラウザの戻るボタンではOCULのサイトに戻れないので注意)。最初に表示されるのは、1:63,360シリーズの概要だ。画面右のカナダ全図に図郭が表示されるので、スケールバーで拡大する。
1:63,360旧版地形図シリーズの概要 右の地図は索引図 |
地図を拡大 |
背景に表示されているベースマップを参考にしながら、見たい図郭を選択すると、画面左に年代順の候補図リストが表示される。例としてトロント図葉を選択しよう。
図葉を選択、左欄は候補図リスト |
各候補のボックスにある「View」ボタンで、地図画面にプレビューが表示される(複数表示可)。これは「Zoom」ボタンやスケールバーで任意の拡大表示が可能なので、ダウンロードしなくても細部を確認することができる。プレビューを解除したいときは「Remove」をクリックする。
また、「Download」ボタンにより、TIFF形式の画像ファイルを含む圧縮ファイルがダウンロードできる。高解像度のため、ファイルは100MB前後あるので要注意。
「View」ボタンでプレビュー(拡大可能)を表示 複数の地図の重複表示も可能 |
左メニューの上部に並んでいるタブのうち「Map」には、地図に表示中のレイヤー数が括弧内に記されている。索引図(図郭と図番)も1と数えるので、地形図を1面表示させると (2) になる。このタブでは、表示中の各レイヤーの一覧が見られる。レイヤーごとに透過度の調整が可能で、ベースマップや複数表示させた地形図を比較するのに有用だ。
「Map」タブで各レイヤーの詳細を表示 |
◆
最後に、カナダの地形図の著作権について。
NRC製作のカナダ地形図は、現行図を含めてオープンガバメントライセンス Open Government Licence のもとに置かれており、商用・非商用を問わず無償で、「合法的な目的においてあらゆる媒体、モードまたは形式でコピー、変更、公開、翻訳、適合、配布またはその他の方法で使用することができる」とされている。この場合、情報の帰属記述 "© Department of Natural Resources Canada. All rights reserved." を付し、可能な場合にはこのライセンスへのリンクを記載しなければならない。
■参考サイト
Open Government Licence - Canada
https://open.canada.ca/en/open-government-licence-canada
使用した地形図の著作権表示 © 2021 Department of Natural Resources Canada. All rights reserved. Open Government Licence - Canada
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