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2021年1月

2021年1月19日 (火)

地形図を見るサイト-アメリカ合衆国

カナダの地図ユーザが、自国の地形図サイトの使いにくさを嘆きながら、「(それに比べて)USGSのウェブサイトは有用性の見本であり、驚くほどわかりやすい」と記した投稿を見たことがある。

USGSとは、アメリカ合衆国地質調査所 U.S. Geological Survey のことだ。同国の民生用地形図(下注)を所管する内務省の研究機関で、現行図とともに、1884年以来作成してきた膨大な数の旧版図をウェブ上で公開している。確かにそれは、史料の充実度はもとより、明快な操作機能と垢ぬけたデザインという点でも、見本にしたいサイトと言うことができる。

*注 アメリカの地形図については、本ブログ「アメリカ合衆国の地形図-廃止された旧体系 I」「アメリカ合衆国の地形図-新シリーズ「USトポ」」参照。

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絵画のような陰影つき地形図
1:62,500 Strasburg,VA 1947年
 

地図サイトは2種存在し、一つは最新の地形図や空中写真をシームレス画像で提供する「The National Map」、もう一つは旧版から最新版まで区分図の形でダウンロードできる「TopoView」だ。今のアメリカの地理空間を見渡したいなら前者が、特定の地点・地域を時間軸で観察したいなら後者が適している。順に紹介していこう。

(以下の記述は2021年1月現在の仕様に基づく)

The National Map
https://viewer.nationalmap.gov/advanced-viewer/

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初期画面
 

初期画面は、アメリカ合衆国の本土48州の陰影図だ。この地図は「USGS National Map」と呼ばれるベースマップで、拡大していけば、現行の1:24,000区分地形図「USトポ」と同じものが現れる。メニューは画面上部の緑色のバーにまとめられており、Esriシステムにより、表示の一部が日本語対応している。

特定の地域の地図を表示するには、バー右端の検索窓に地名や住所を入力する。同じ地名が多いので、州名(またはその略称)を添えるとよい。試しに「New York」と入力して、右の拡大鏡アイコンをクリックすると、ドロップダウンリストに選択肢が表示された。

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地名による検索結果
 

最上段の「New York, NY, USA(NYはニューヨーク州の略)」を選ぶと、地図画面は一気にニューヨークとその周辺に変わる。左下に縮尺とズームレベルが表示されている。初期画面のアメリカ全図はズームレベル4、ニューヨークの画面は同 10だ。ちなみに等高線が現れるのはレベル14以降で、16が「USGS National Map」の最大縮尺になる。

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選択した候補のエリアを表示
 

地図を拡大縮小するには、画面左上隅の+-を使うほか、地図上をダブルクリックしても一レベルずつ拡大する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。Shiftキーを押しながら地図に矩形を描くと、その範囲が拡大される。

地図を入れ替えるには、バーの「ベースマップ」アイコンから入る。画面右にベースマップギャラリーが現れるので、適宜選択する。ここではさまざまなデジタル地図とともに、空中写真や陰影図なども用意されている。

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ベースマップの切り替え
 

このうち上2段6種類の地図は汎用の世界地図で、全世界の表示が可能だ。「National Geographic」は、ナショナル・ジオグラフィック社が提供する世界地図である MapMaker Interactive を使っている。「OpenStreetMap」や「Street」は先述の「USGS National Map」で表示されないレベル17以降の市街図にも対応している。

一方、下2段6種類はUSGSのオリジナルになる。「USA Topo Maps」は、USGSの印刷版地形図をスキャンし、接合したもので、きれいに見えるレベル(縮尺)は限られている。「USGS Imagery Topo」は写真図(空中写真に道路網など地図の骨格を重ねたもの)、「USGS Imagery Only」は空中写真、「USGS Shaded Relief Only」は陰影図のことだ。

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さまざまなベースマップ
 

背景図の上に重ねる地図レイヤーは、バーの「レイヤー」アイコンから入る。USトポの地形図生成にも用いられている様々なデータがレイヤー化されており、ベースマップに重ね表示することができる。各項目の右にある「…(オプション)」で、透過度の調整やレイヤーの上下関係の変更も可能だ。

・US Topo Availability:USトポ(地形図)索引図および更新時期
・Hydro Cached:水系図
・Watershed Boundary Dataset:河川流域図
・NLCD Land Cover:土地被覆図(NLCD=全国土地被覆データベース National Land Cover Database)
・3DEP Elevation:高度陰影図(3DEP=三次元高度プログラム 3D Elevation Program)

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レイヤーの追加と調整
 

地図をプリントするときは、バーの「印刷」アイコンから入る。レイアウト(判型、縦長/横長)と書式(JPEG、PDF等のデータ形式)を選択して、印刷ボタンをクリックすると、データファイルが生成されるので、ファイル形式に対応したアプリ(ソフトウェア)で印刷する。

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印刷画面
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生成されたPDFファイル
 

なお、バー左側の「Data Download」は、地形図をはじめとした各種データベースのダウンロードサービスだが、同様の機能は下記「topoView」にもある(取得できるファイルも同じもの)ので、説明は省略する。

USGSが刊行した印刷版の地形図は、実に178,000種を超えるという。これが全国地理空間プログラム National Geospatial Program(NGP)と称するプロジェクトですべてスキャンされ、データベース化された。そして、3年周期で時層化されているデジタル地形図USトポとともに、ウェブサイト「topoView」で無償提供されている。

USGS topoView
https://ngmdb.usgs.gov/topoview/

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topoView 初期画面
ボストン今昔 Boston Now & Then(上記画面右側の説明文)
 下のスライダーを使って、1893年のボストン地域を画面に出してください。旧版地形図コレクションで、ユーザーは自然および文化的な特色が時間とともにどのように変化するのかを調べることができます。地図はとりわけ、特定の場所や地域を研究している科学者、歴史家、系図学者その他の人々に有用です。一定期間にわたって刊行された同じ地域の一連の地図は、開発される前に地域がどんな様子だったのかを示し、時間の経過に伴う変化の詳細を見せてくれます。
 

初期画面には、アメリカの主要都市(画面例ではボストン Boston)の今昔を比較できる鳥瞰地図があしらわれている。初期値は旧市街付近だが、地図をドラッグすれば、東のローガン空港 Logan Airport から西のブルックライン Brookline まで見渡せる。スライダーを右に動かすと、19世紀末のボストンが浮かび上がる。空港一帯はまだ海で、ブルックラインは郊外にある一つの町に過ぎない。サイトでは、このような時代旅行がアメリカ全土にわたって楽しめる。

ではさっそく画面上方の「GET MAPS」か、右の「View and Download」をクリックしてページを進めよう。

次の画面では、ベースマップとしてアメリカ本土48州が表示され、左メニューにベースマップの操作、右パネルには検索・絞り込みの機能が並ぶ。また、地図画面左上の3個並ぶアイコンは、ベースマップを切替えるためのものだ。左がデジタル地形図(Mapbox を使用)、中央が空中写真、右は拡大していくと旧版地形図になる。

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ベースマップと操作パネル
 

ベースマップの拡大縮小操作は「The National Map」と同じだ。画面左上隅の+-ボタン、地図上をダブルクリック(一レベルずつ拡大)、マウスホイール(連続拡大縮小)、またはShiftキーを押しながら地図に矩形を描く。

右パネルには、始め方 Getting Started として三つの方法が列挙されている。すなわち、

1.上の地名検索窓に場所(地名、住所、郵便番号、経緯度(下注)など)を入力して、その場所の地図をすべて見る。
2.単純に地図上の任意の場所をクリック/タップして、その地点の地図をすべて表示する。
3.上の図名検索窓で図名を検索する。

*注 経緯度は緯度、経度(西経はマイナス表示)の順で、小数点付き(例:38.90, -77.04)または度分秒(例:38 54 00, -77 02 24)で入力する。

ここでは1の方法で、地名「san francisco」を検索してみる。候補が2件表示されるので、一つ目を選択する。

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地名による検索結果
 

これで、右パネルにサンフランシスコ旧市街が図郭に入る地形図の一覧が現れる。1895年版から最新の2018年版まで、該当するものが43点あることがわかる。なお、一覧の並び順は、「Name(図名)」「Date(製作年)」「Scale(縮尺)」「State(州名)」と書かれたアイコンで変更できる。

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該当する地形図の一覧
 

次に、製作年で絞り込みしよう。スライドバーを使い、左のポインタ(ピンクの小円)を右へ動かして、1945年にしてみる。すると候補は29件に絞られた。

今度は、縮尺で絞り込みしてみよう。スライドバーの下にカラフルな円が並んでいる。「All」は全縮尺、「250K」は250 Kilo(Kilo=1000)で1:250,000を意味する(下注)。例として「24K」、すなわち1:24,000を見ることにする。ちなみに、右隣にある「HTMC」は旧版図コレクション Historical Topographic Map Collection(=1884~2006年刊行の地形図)、「UST」はUSトポ US Topo(=2009年以降の地形図)のことだ。

*注 近似する縮尺は代表的な縮尺のグループに含めて表示される。例えば「100K」では、1:100,000とともに、1:96,000、1:125,000の地形図も表示される。

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条件の絞り込み
 

絞り込みの結果、第二次大戦後に作成された1:24,000地形図が14点、年代順にリストアップされた。同じ縮尺、同じ製作年のものが複数挙がることもよくあるが、これには増し刷りや刷り直しなどが含まれる。

では実際に地形図を表示させてみよう。例として、最上段にある「1947(年版)」を選択(クリック)すると、この版に関する操作パネルが現れる。「SHOW」アイコンで、左のベースマップ上に地形図の画像が表示される。また、右の地図画像のサムネールをクリックすると、別ウィンドウに単独画像が表示される。

「SHOW」で表示した地形図画像は、透過度バーで透過度を調整できるので、ベースマップとの比較も容易だ。また、複数の地図を表示して、時代による変化を追うこともできる。表示中はパネルに「HIDE」アイコンが出ており、これで地図画像をベースマップから消去できる。

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地形図画像の表示
 

「INFO」アイコンでは、製作に用いた空中写真の撮影時期や編集年、座標系、投影法など地形図の整飾に記載されている事項(メタデータ)が表示される。

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属性情報の表示
 

データダウンロードは、JPEG、KMZ、GeoTIFF、GeoPDFの各形式から選べる。解像度は240~300dpiあるので、拡大して詳細を読み取ることが可能だ。

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ファイルダウンロード
 

最後に、地形図の著作権について。

USGSは、上記サイトで取得した地図データはアメリカ合衆国のパブリックドメイン U.S. Public Domain にあり(=公有物)、制限なく使用できるとしている。ただしその場合、適切なクレジットをつけることを求めている。文例は以下のとおり。

「Credit: U.S. Geological Survey」
または
「Department of the Interior/USGS」
または
「U.S. Geological Survey/photo by Jane Doe(写真家/アーティストがわかっている場合)」

この件の原文は、下記参考サイトにある。

■参考サイト
USGS - Copyrights and Credits
https://www.usgs.gov/information-policies-and-instructions/copyrights-and-credits

使用した地形図の著作権表示 Department of the Interior/USGS

★本ブログ内の関連記事
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 アメリカ合衆国のハイキング地図-ナショナル・ジオグラフィック
 アラスカの地図

 地形図を見るサイト-カナダ

2021年1月12日 (火)

地形図を見るサイト-カナダ

東西9300km、南北4600km、この広大な国土を克明に描写したカナダの地形図は、ウェブ上でも余すところなく楽しめる…。と明快に書きたいところだが、現状を見る限りそうもいかない。なぜなら、データは揃っているものの、サイトへのアクセス、反応速度、見せ方など使い勝手に難があるからだ(下注、以下の記述は2021年1月現在の仕様に基づく)。

*注 カナダの地形図の概要については、本ブログ「カナダの地形図」参照。

下に、カナダ天然資源省 Natural Resources Canada (NRC) が所管する地形図情報のメニュー画像を示す。

Natural Resources Canada - Topographic Information
https://www.nrcan.gc.ca/topographic-information/10785

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天然資源省「地形図情報」のメニュー
 

天然資源省のトップページから入った場合、この画像の上方に記されたように階層を降りていく必要がある。ところが、上層ページの説明文に地形図に関するキーワードがほとんど出現しないため、初見でたどり着くのは容易ではない。

トップページには別途「Maps, tools and publications(地図、ツール及び出版物)」というメニューがあり、そこからもリンクがつながっている。しかし、一見有力そうなこのルートも階層が深く(4階層)、たいてい途中で迷子になる。

以前はジオグラティス GeoGratis というポータルサイトがあったのだが、2017年8月限りで廃止されてしまった。以来、本国でも、迷路に陥るユーザーが少なからずいて、不評を買っているようだ。

現行地形図

現行地形図(デジタル地形図)は「Toporama(トポラマ)」というサイトで閲覧することができる。上記の地形図情報メニューでは、左下にある「Toporama Interactive Map」が入口だが、直接リンクを下に記す。サイトの反応が遅いかもしれないが、すぐに地図画像が現れなかったとしても、お茶でも飲みながら、気長に待っていただきたい。

The Atlas of Canada - Toporama(英語版)
https://atlas.gc.ca/toporama/en/

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Toporama 初期画面
 

初期画面にはカナダ全土のデジタル地図が表示されている。あとは、右端の範囲選択ツール(拡大鏡アイコン)を使って表示範囲を絞るか、左メニューの「Find a Location」に任意の地名、住所、経緯度などを入力して、直接目的の場所を表示させればよい。

例として、首都オタワ Ottawa の地形図を見ることにしよう。検索窓に「ottawa」と入力すると、候補がドロップダウンリストで表示された。

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候補をドロップダウンリストで表示

候補から一つ(この例では最上段の候補)選択すると、該当のエリアが表示される。ベースマップの方位が北を指していないので、図郭を表す矩形が傾いて見える。

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選択した候補のエリアを表示

矩形の部分を拡大したのが下の画像で、オタワ中心部を表している。

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地図を拡大
 

このように、表示される地図はシンプルなものだが、いくつかのオプション表示が可能だ。左メニューの「Map Layers and Legend(s)」に、水流の方向、グリッド、起伏を表す陰影(ぼかし)などの選択肢がある。また、スライドバーでその透過度を変えることもできる。なお、「Grids(グリッド)」オプションで表示される紫のグリッド(格子)と「031G05」などの英数字は、1:50,000地形図の図郭と図番を表している。

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表示オプション
 

旧版地形図

一方、旧版地形図はシームレス画像ではなく、PDFやTIFFなどのファイル形式で1面ずつ保存されている。冒頭に紹介したNRCの地図メニュー「Topographic Information」まで戻って、画面右上の「Geospatial Product Index - HTML」から入ろう。

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こちらは比較的早く地図が現れるだろう。使い方は左メニューに書かれている。すなわち、

1.データタイプ(空中写真、ラスタデータなど)を選ぶ
2.表示されたリストの中からコレクション(ラスタデータなら縮尺別)を選ぶ
3.地図を拡大し、見たいエリアをクリックして、地図/データをプレビューさせる
4.現れたリンクをクリックすることで、ダウンロードの手続きが始まる

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Geospatial Product Index の初期画面
 

旧版1:50,000地形図のデータを取得する手順を具体的に見ていこう。

左メニュー上部の「Themes(テーマ)」タブを選択すると、その下に Imagery(空中写真)、Raster(ラスタデータ=地図画像)、Vector(ベクトルデータ)、Elevation(高度モデル)の選択肢が表示される。

ここで「Raster」を選択すると、「Digital Topographic Raster Maps - 1:50 000(1:50,000地形図ラスタデータ)」をはじめとして縮尺別のコレクション名が表示される。なお、最終行の「Toporama - 1:50 000」とは、上記「Toporama(トポラマ)」に使われているデジタル地図のことだ。これには整飾(図郭の周囲に記載される図名や凡例など)はついていない。

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「Themes」でコレクションを選択
 

最上段の「Digital Topographic Raster Maps - 1:50 000」を選択する。すると画面上部に Loading index... と表示され(少々時間がかかるかもしれないが)、カナダ全土の1:50,000の図郭が黄色で表示される。

地図の左上にある拡大ボタンで地図を拡大していくと、図郭とその中に図番(紫色の英数字6桁)が見えてくるはずだ。ベースマップを参考にしながら、必要な図郭を選択するとよい。例として、上記と同じオタワ図葉を見てみる。

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1:50,000の図郭が黄色で表示
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地図を拡大し、図葉を選択
 

これにより、左メニューに地形図のプレビューが表示される。これでよければ、その下にある「Download link / Lien de téléchargement」をクリックする。

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地形図のプレビューを表示
 

と、ここまではユーザーフレンドリーな作り込み画面だったのだが、次は一転、生のディレクトリ表示になる。そればかりかプレビューの地図が1種類だったのに、ファイルは何本か並列表示されている。

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ダウンロードファイルを選択
(説明を赤字で加筆)
 

見分けるポイントはファイル名の末尾にあるので、URLのフル表示(リンク上にカーソルを置くと、通常、ブラウザの最下段に表示される)を確かめるほかない。

上の画面例では、1段目のファイルの名称が 031g05_1100_canmatrix_geotiff.zip で、おそらく geotiff形式(地理参照型TIFF)のデータが入った圧縮ファイルだろうと推測できる。同様に2段目はファイル名末尾が prtpdf.zip で印刷用PDF(印刷用とは通常の印刷に耐えうる解像度という意味だろう)、3段目は prttif.zip で印刷用TIFFのようだ。地図を見たり印刷したりするだけなら、2段目のPDFで十分だ。

リンクをクリックするとダウンロードのポップアップ画面(「名前を付けて保存」)が現れるので、任意の場所に保存した後、解凍する。実際に prtpdf.zip で試してみると、下画像のようなPDFファイルが取得できた。1:50,000オタワ Ottawa 図葉の1998年版で、解像度は300dpi程度だ。

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PDFを取得
1:50,000オタワ図葉 1998年版(縮小画像)
 

この手順で、1:25,000から1:1,000,000(100万分の1)までさまざまな縮尺の地形図画像ファイルが入手できる。残念ながら地図画像は1図郭につき1種類だけだ。より古い版も存在するはずだが、それらはカナダ国立図書館・文書館 Library and Archives Canada (LAC) に移管されており、調べた限りでは、地図画像のネット公開は行われていない。

これとは別に、オタワやトロントなどの主要都市を擁するオンタリオ州には、州域の旧版地形図を公開するウェブサイトがある。オンタリオ大学図書館協議会 Ontario Council of University Libraries (OCUL) が開設しているもので、天然資源省のサイトにはない20世紀初期から中期にかけての1:25,000および1:63,360図(下注)を見ることができる。

*注 1:63,360図は、実長1マイルを図上1インチで表す地形図。通称 1-inch map(ワンインチマップ)。メートル法の普及に伴い、1:50,000に置き換えられた。

OCUL Historical Topographic Map Digitization Project
(OCUL旧版地形図デジタル化プロジェクト)
https://ocul.on.ca/topomaps/

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OCUL 旧版地形図デジタル化プロジェクト
初期画面
 

トップページにもサンプル画像がいくつか掲載されているが、それ以外のものを見るには、左メニューの「Full Collection」から入る。

下の画面に表示されている「1:63 360 Index Navigation」「1:25 000 Index Navigation」は、地図上で特定したいときの選択肢だ。地名がわかるのなら、検索窓やその下に続く地名一覧を使ってアクセスすることもできる。ここでは、「1:63 360 Index Navigation」から1:63,360(1インチ図)のコレクションを探すことにしよう。

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「Full Collection」のメニュー
 

「1:63 360 Index Navigation」をクリックすると、Scholars GeoPortal というサイトに移行する(そのため、ブラウザの戻るボタンではOCULのサイトに戻れないので注意)。最初に表示されるのは、1:63,360シリーズの概要だ。画面右のカナダ全図に図郭が表示されるので、スケールバーで拡大する。

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1:63,360旧版地形図シリーズの概要
右の地図は索引図
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地図を拡大
 

背景に表示されているベースマップを参考にしながら、見たい図郭を選択すると、画面左に年代順の候補図リストが表示される。例としてトロント図葉を選択しよう。

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図葉を選択、左欄は候補図リスト
 

各候補のボックスにある「View」ボタンで、地図画面にプレビューが表示される(複数表示可)。これは「Zoom」ボタンやスケールバーで任意の拡大表示が可能なので、ダウンロードしなくても細部を確認することができる。プレビューを解除したいときは「Remove」をクリックする。

また、「Download」ボタンにより、TIFF形式の画像ファイルを含む圧縮ファイルがダウンロードできる。高解像度のため、ファイルは100MB前後あるので要注意。

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「View」ボタンでプレビュー(拡大可能)を表示
複数の地図の重複表示も可能
 

左メニューの上部に並んでいるタブのうち「Map」には、地図に表示中のレイヤー数が括弧内に記されている。索引図(図郭と図番)も1と数えるので、地形図を1面表示させると (2) になる。このタブでは、表示中の各レイヤーの一覧が見られる。レイヤーごとに透過度の調整が可能で、ベースマップや複数表示させた地形図を比較するのに有用だ。

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「Map」タブで各レイヤーの詳細を表示
 

最後に、カナダの地形図の著作権について。

NRC製作のカナダ地形図は、現行図を含めてオープンガバメントライセンス Open Government Licence のもとに置かれており、商用・非商用を問わず無償で、「合法的な目的においてあらゆる媒体、モードまたは形式でコピー、変更、公開、翻訳、適合、配布またはその他の方法で使用することができる」とされている。この場合、情報の帰属記述 "© Department of Natural Resources Canada. All rights reserved." を付し、可能な場合にはこのライセンスへのリンクを記載しなければならない。

■参考サイト
Open Government Licence - Canada
https://open.canada.ca/en/open-government-licence-canada

使用した地形図の著作権表示 © 2021 Department of Natural Resources Canada. All rights reserved. Open Government Licence - Canada

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2021年1月 4日 (月)

御即位記念1:10,000地形図「京都」

天皇の代が替わり、元号が改まるごとに、国土地理院は1:10,000の縮尺で記念地図を製作してきた。平成の初めには、皇居を図郭の中心に置いた「東京中心部」の日本語版と英語版が作られ、即位の礼当日の1990(平成2)年11月12日に発行された。令和でも、ほぼ同じ図郭、同じ体裁で今上天皇の即位礼(2019(令和元)年10月22日)に合わせて発行された。

時代を遡れば大正および昭和初期にも、参謀本部陸地測量部が製作した同じ趣旨の記念地図が存在する。ただし、描かれた土地は、後の2期とは異なり、京都の市街地とその周辺だ。即位礼が当時、京都御所で執り行われたことにちなむものだという。

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大正御即位記念地図
1:10,000「京都近傍図」東北部(縮小画像)
 

しかしこの京都図は刊行から約100年が経過しており、今では目にする機会がほとんどない(下注1)。それどころか、国土地理院にも現物が残されていないと聞く。それがこのたびの改元を機に、個人コレクションから写真復刻され、桐箱入り四代記念地図一式の形で日本地図センターから発売された(下注2)。地図関連の企画展などにも展示されて、ようやく内容が知れ渡るようになった。

*注1 2000年代にジュンク堂書店が大正版を写真復刻したことがある。
*注2 桐箱入りはめっぽう高価なため、GeoTIFF形式の画像データを収めたDVD版(税別3000円)も発売されている。

今回は、この御即位記念1:10,000地形図「京都」2種を概観してみたい。

大正版、昭和版とも見た目はよく似ている。適用図式が異なるものの(下注)、昭和版は大正版をベースにして作られたからだ。

*注 大正版は明治42年図式、昭和版は大正6年図式による。

両者とも市街を縦横各2分割してあり、東北部、東南部、西北部、西南部の4面(下注)で1セットだ。西南部図幅には「一般図」の名で広域図がインセットされている。図郭寸法は横45.5cm×縦76cmで、4面貼り合わせると東西9.1km×南北15.2kmの範囲をカバーする【図2】。図枠には大正版が「京都近傍図」、昭和版は「京都近郊」のヘッダーがつき、それぞれ1915(大正4)年10月10日と1928(昭和3)年9月10日の刊行日が記載されている。

*注 分割位置は、1:25,000地形図などの汎用図(北緯35度、東経135度45分)と異なる。

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【図2】一般図(広域図)に示された4面の図郭
 

慶事の記念とあって仕様も特別だ。通常の1:10,000が主として朱・茶・緑・青・黒の5色刷(下注)であるのに対して、こちらは、朱色に代えて上品な深紅色を用いる。さらに、水田や空地・畑地には特色の面塗りを施すなど、7色の版を駆使して美麗に仕上げている。

*注 地域や製作時期によって黒1色刷、黒・青の2色刷、朱・緑・黒の3色刷、朱・茶・青・黒の4色刷のものもある。

地形表現には、標準的な10m間隔の等高線に加えて、ケバを用いる【図3】。ケバはブラシのような短線で斜面の向きや斜度を表現する方式だが、日本では1:100,000以下の小縮尺図が主で、こうした大縮尺図で採用されるのはあまり例がない。

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【図3】等高線とケバを併用した地形表現
 

このように手数をかけていることは確かなのだが、地図の精度が高いかどうかはまた別の話だ。というのも、大正版は新たな測量成果によるものではなく、既存の1:20,000地形図を基にした編集図だからだ。京都市街の正式1:20,000は1909(明治42)年に測図されており、これを2倍拡大して用いたと言われる。

もちろん大正版は1:20,000の忠実なコピーではなく、縮尺の大きさを生かして施設名や電停名などの注記が追加されている。また、1:20,000測図以降の数年間に生じた景観の変化も反映されている。気づいたものを挙げておこう。

1.京都駅前後の線路移転【図4】

1877(明治10)年に開業した東海道本線のルートと初代駅舎は今より北側にあったが、1914(大正3)年8月に現位置に移転した。初代の状況が描かれた1:20,000に対して、大正版では2代目駅舎と新線が描かれ、旧駅構内は駅前広場に、前後の線路跡は空地になっている。

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【図4】
(上)1:20,000「京都南部」明治42年測図(2倍拡大)
  初代京都駅と旧線が描かれる
(下)同じエリアの大正版では南へ移転
  参考までに旧線の位置を薄緑で加筆した
 

2.京都市電の開業【図5】

京都には1895(明治28)年以来、京都電気鉄道(京電)が運行する軌道線が存在したが、1912~13(明治45~大正2)年に、京都市三大事業の一つとして、道路拡幅と市営電車路線網の建設(第一期)が実施された。大正版にはこれが描かれている。

また、鉄道会社を色で区別していて、京電(京鐵線の注記も混在)には黒、市電(市営線の注記)には緑、嵐電には青、京阪電鉄には茶色、京津電鉄には赤を当てている。ただし、下図のとおり市電の緑が濃いため、京電との判別は難しい。なお、軌間1067mmの京電と軌間1435mの市電が重複する区間は3線軌条化されており、図上では両者の記号を交互に並べて表現している。

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【図5】
大正版を1.5倍拡大、京電線/市営線を青字で加筆
この図の範囲における重複区間は、寺町丸太町~烏丸丸太町~烏丸下立売
 

3.岡崎の博覧会施設整備【図6】

大正4(1915)年に大典記念京都博覧会が開催された。大正版には、市街東部の岡崎公園域に「大典記念博覧会場」の注記があり、竣工間もない京都市勧業館などの施設が描かれている。また、交通網では京津電鉄線(三条通の北を迂回する旧ルート、1912(大正元)年開通)や、東山通および市電東山線(1913(大正2)年)の記載がある。

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【図6】
(左)1:20,000「京都北部」明治42年測図(2倍拡大)
  岡崎公園西側はまだ空地のまま  
(右)同じエリアの大正版
  空地が勧業館などの建物で埋まる
 

4.軍用地設置に伴う道路整備【図7】

1908(明治41)年の陸軍第16師団設置に伴い、京都と伏見の旧市街の間に広大な軍用地が確保された。その東側には師団街道が建設され(1911(明治44)年竣工)、西側では竹田街道(地図の注記は大和街道)が直線化された。1:20,000でもすでに軍用地が描かれているが、竹田街道とそれに沿う京電伏見線は旧来の状態だ。大正版には直線的な新道および線路が登場する。

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【図7】
(左)1:20,000「京都南部」明治42年測図 を2倍拡大
  竹田街道(大和街道)の旧道が描かれる  
(右)大正版では直線道路となり京電線も移設
 

5.桃山陵墓地の造営と桃山駅前の整備【図8】

明治天皇の崩御で、1912(大正元)年、かつての伏見城本丸跡地に御陵が造営された。大正版には、明治天皇陵、昭憲皇太后陵(下注)とそのアクセス道路が、さらに最寄り駅となった奈良線桃山駅の北側にも並木を伴う広い駅前道路が描かれる。ちなみにこの道路は後に廃止され、現在は森に戻されている。

*注 現行地形図の注記は、伏見桃山陵、伏見桃山東陵。

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【図8】大正版には陵墓とアクセス道路、
  図左端に桃山駅と駅前道路が描かれる

では次に、昭和版を見よう。

こちらは図枠の左肩に「昭和三年測図」(昭和3年=1928年)と記されている。とはいえ、新たな測量を意味するものではなく、大正版をベースにしていることは明白だ。大正版と異なるのは、私鉄記号の会社別色分けがなくなり、土地利用の面塗りの配色が見直されたことだ。また、皇室関係施設の注記に英訳が付され【図9】、その関連でか、東北部図幅が修学院離宮を入れるために部分延伸されている。

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【図9】皇室関係の施設に英訳が付される
 

大正版とは13年の開きしかないが、この間に資料となる地図事情は大きく改善した。1922(大正11)年に京都市の1:3,000都市計画基本図が完成したからだ。1929(昭和4)年にはその修正版も出ている(下注)。修正版は京都図昭和版より後の刊行だが、両者を照合すると内容に一致点が多く、編集段階で資料が提供されたことを推測させる。

*注 1:3,000都市計画基本図は、立命館大学アート・リサーチセンター「近代京都オーバーレイマップ」で閲覧できる。
https://www.arc.ritsumei.ac.jp/archive01/theater/html/ModernKyoto/

高精度の資料が入手可能になったことで、たとえば大谷大学の構内、嵐電のルートなど、1:20,000図にはなく大正版編集の過程で追加された項目は、描き直されて位置がより正確になった【図10】(大谷大学は図11参照)。

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【図10】昭和版では嵐電のルートが修正されている
 (上)大正版 (下)昭和版
 

記載内容の変化を見ると、烏丸通の今出川以北や河原町通など、市街地の道路拡幅と、市電の路線網拡充が進行している【図11】。また1918年(大正7年)の京都市による京電買収に伴い、一部の並行路線が整理されたことがわかる(木屋町通、二条通など)【図12】。

東海道本線は1921(大正10)年に東山トンネルを経由する新線に切り替えられ、同時に奈良線が稲荷駅経由に変更された【図13】。さらに、京阪電鉄の五条~三条間が延伸(1915(大正4)年)【図12の右端】、出町柳を起点とする叡山電鉄が開業(1925(大正14)年)している。

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【図11】
(左)大正版では、大谷大学と師範学校を水田が取り囲む
(右)昭和版では、烏丸通と市電が開通し、周辺が市街化
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【図12】
(左)大正版では、木屋町通と二条通を京電線が走る
(右)昭和版では、河原町通と市電が開通、京電線は撤去
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【図13】
(左)大正版では、東海道本線が京都駅から南下(現 奈良線のルート)
(下)昭和版では新線が開通、今熊野の切通しを経て東山トンネルへ
 

また、大正版ではまだ一面の田園が広がっていたエリアに、碁盤の街路網と総描家屋や大規模建物の記号が進出しつつあるのが確認できる。北部の鞍馬口通以北、東部の白川周辺、山陰本線の西側、京都駅南側など旧市街周縁の多くがそうだ【図14】。

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【図14】
(左)大正版では、京都駅南側にまだ水田が多い
(右)昭和版では、工場が多数進出し市街化が進行
 

全国的に見れば、1:10,000地形図はすでに明治20年代から、各地の要塞地帯を対象に製作が進められていたが、これらは秘図で非公開だった。明治末期になると、東京をはじめとする都市部で、汎用図(市販品)としての刊行が始まり、従来の基本縮尺1:20,000(1910(明治43)年から1:25,000)では表現しきれない市街地の詳細が記録されていく。

しかし、京都市域にその網が及ぶのは昭和10年代まで待たなければならない。大正期は、周辺自治体の編入もあって京都市の人口が急増する時代だ。この2種の御即位記念地図は、市街地の拡大や近代交通網の発達など、変貌著しい京都の姿を記した貴重な図化資料と言える。

掲載の地図は、陸地測量部発行の1万分の1「京都近傍図」(大正4年10月10日発行)、同「京都近郊」(昭和3年測図)、2万分の1「京都北部」「京都南部」(いずれも明治42年測図)を使用したものである。

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