« 新線試乗記-相鉄・JR直通線 | トップページ | イギリスの地形図-概要 »

2020年2月 4日 (火)

半額カードで鉄道旅行-オーストリアの場合

個人で行く海外旅行では、交通機関の乗車券をどう調達するかがいつも思案のしどころだ。駅で逐一買い求めるのは時間もかかって面倒なので、おなじみのユーレイルパスや国別パスについ頼ってしまう。

Blog_halffarecard1
オーストリアの半額カード「フォアタイルスカード66」
 

ユーレイルのグローバルパス(フレキシータイプ)の場合、Eurail.com(販売サイト)では3日用が 217ユーロだ(下表参照)。1日当たり 72ユーロ(1ユーロ120円として8,640円)になる。7日用でも1日 48ユーロ(5,760円)かかる。1か国パスはそれより割安だが、たとえばオーストリアの3日用は 146ユーロで、1日 49ユーロ(5,880円)だ。

ちなみに、首都ウィーンからの2等運賃は、リンツまで 37.40ユーロ、ザルツブルクまで 55.60ユーロで、オーストリアの3日用(1日 49ユーロ)ではザルツブルクまで片道300km以上乗らないと元が取れない計算だ。拠点の宿に荷物を置いて、軽装で周辺を回るという旅のスタイルなので、いくら楽でも、毎日5000円以上も交通費にかけるのはどうかと思う。

Blog_halffarecard2
ユーレイルパスと通常運賃の比較
 

もっと安く行ける方法はないのだろうか。それで思い出したのが半額カードだ。これは、事前にそのカードを購入しておき、出札窓口で提示すれば運賃が半額になるというものだ。ドイツやスイスの例は知っていたので、オーストリアにもないかと調べたところ、「フォアタイルスカード Vorteilscard」という名称で売られていた。ドイツ語の Vorteil は英語の advantage、merit に相当することばで、要するに「お得カード」という意味だ。

参考までに、ドイツ語圏3か国の旧 国鉄が発行している半額カードの内容をまとめてみた。

Blog_halffarecard3
ドイツ語圏3か国の「半額カード」比較
 

ドイツ「バーンカード BahnCard」

Bahnはここでは鉄道を意味する。代表的なものは25%引になる「25」、50%引の「50」、フリーパスの「100」の3種(下注)で、有効期間は1年だ。さらに期間を3か月に縮めた「プローベ・バーンカード Probe Bahncard」もある。Probeとはお試しという意味で、1年カードがけっこう高額なため、最初は3か月カードでお試しください、というシステムだ。したがって、継続する場合は自動的に1年カードが送られてくる。

*注 記載の通り割引率はさまざまだが、以下では「半額」カードの呼称で記述する。

■参考サイト
DB (in English) https://www.bahn.com/en/view/index.shtml
> Offers > BahnCard

スイス「ハルプタックス Halbtax」

英語では Half Fare Card、まさに半額カードだ。本来1年有効だが、インバウンドの旅行者向けに1か月有効のカードが用意されている。自国民は購入できないので、SBB公式サイトでは、説明書きが外国人向けページにのみある(下記参考サイト参照)。そこでネット購入が可能だ。

■参考サイト
SBB (in English) https://www.sbb.ch/en/
> Leisure & Holidays > Travel in Switzerland > International guests > Swiss Half Fare Card

オーストリア「フォアタイルスカード Vorteilscard」

「クラシック Classsic」と「66」の2種類があるが、後者はネット専用で、前者に比べて価格を2/3に設定した新商品だ。

ネット専用とは何を意味するのだろうか。一つには、このカード自体がネット経由でしか購入できないということだ。二つには、このカードを使っての乗車券の購入も、駅の窓口ではできず、スマホのアプリ、ウェブサイトまたは駅の券売機(アウトマート Automat)で行わなければならない(下注)。つまりこれは鉄道会社の窓口応対を減らすための企画商品だ。

*注 券売機では、購入手続の途中でカード所持の有無を問う画面が出てくるので、半額カードを所持していると答えればよい。この段階では自主申告になるが、列車内の検札で通常、乗車券とともに半額カードの提示を求められる。

こうしたカードは、(旧)国鉄路線の運賃が割引かれるだけでなく、私鉄、路線バス、市内交通でも何らかの割引が効くことが多い。また、国際列車の乗車券では、国外区間についても、各国の国鉄が締結している RAILPLUS協定により、一律15%引になる(下注)。

*注 従来25%引だったが、2016年から割引率が見直された。

なお、カードの解約(自動継続の解除)については、注意が必要だ。表の欄外に各国のルールを記したが、ドイツと、スイスの1年用は解約手続きをとらないと自動継続となり、登録したクレジットカードから料金が引き落とされ続ける。一方、スイスの外国人向け1か月用は1回限り(解約手続不要)。オーストリアも継続する旨の書面を提出しなければ、1回限りだ。

比較表で明らかなように、オーストリアの半額カードはかなりお得だ。ドイツのプローベ50は3か月有効で80ユーロ(9,600円)、スイスの外国人向けは1か月で109ユーロ(120スイスフラン、13,080円)するが、オーストリアは「クラシック」でも年間99ユーロ、「66」ならわずか66ユーロ(7,920円)で済む。

これで乗車券がすべて半額になるのなら、使わない手はないだろう。さっそくÖBB(オーストリア連邦鉄道)のサイトで「66」を申し込むことにした。

■参考サイト
ÖBB (in English) https://www.oebb.at/en/
> Tickets & Customer Cards > ÖBB Customer Cards > ÖBB Vorteilscard

Blog_halffarecard4
ÖBBの半額カード紹介ページ(英語版)
 

新規の場合、まずアカウントを作る画面が現れる。メールアドレスやパスワード、氏名などを登録する。続いて、生年月日や決済用のクレジットカード情報を入力する。

Blog_halffarecard5
アカウントの作成
 

こうして購入手続きが完了すると、メールが送られてきた。メールの添付ファイルの中に、「This is your preliminary ÖBB Vorteilscard(これがあなたの暫定フォアタイルスカードです)」と記されたPDF文書があった(下の画像)。半額カードは購入日の翌日から有効なのだが、プラスチック製の生カードはウィーンから郵送されてくるので、届くのに時間を要する(日本へは1週間前後)。それまでは、自分でプリントした暫定カードで代用できるのだ(ただし暫定カードの有効期間は2週間)。

私は、旅行出発の前日に慌てて購入手続をしたので、とうてい間に合わない。それでこれをプリントして旅先に持っていき、車内検札で提示した。生カードも、留守宅にちゃんと届いていた(冒頭写真)。

Blog_halffarecard6
暫定カード
 

次の課題は、このカードでどうやって切符を購入するかだ。駅の券売機で紙の乗車券を買ってもいいのだが、今回はスマホでモバイル乗車券を購入する方法を実践してみた。最近注目されている MaaS(マース、下注)の機能を有するシステムだ。

*注 MaaS (Mobility as a Service) は、情報通信技術を活用して移動手段をシームレス化する次世代交通システム。後述するとおり、ÖBBのシステムは、鉄道、バスなど公共交通機関を組み合わせたルート検索や乗車券購入が可能。

ÖBBはユーザサービス用のアプリを提供している。アプリストアで「Oebb(下注)」を検索し【画像1】、これをインストールした。詳細は省略するが、画面の指示どおり、さきほど登録したアカウントを入力すると、アプリに情報がセットされる。半額カードの番号も登録される。

*注 「Oe」は「Ö(オー・ウムラウト)」の代用文字。

Blog_halffarecard7
【画像1】専用アプリを検索
【2】初期画面はドイツ語、左上メニューから…
【3】アカウント情報の変更画面へ
 

アプリを起動すると、初期画面【画像2】はドイツ語だ。このままでは心もとないので、画面左上のメニュー > Mein Konto (My Account) 【画像3】から、 Deutsch(ドイツ語)【画像4】を English にした【画像5】。初期画面に戻ると、「Tickets and Services」と、表示が英語に変わっている【画像6】。

Blog_halffarecard8
【4】Deutsch(ドイツ語)を…
【5】Englishに変更、左上矢印から…
【6】初期画面に戻ると英語版に
 

では、試しに乗車券を買ってみよう。まず、乗車日とおよその時刻を入力する【画像7】。現在の時刻が表示されているので、これでよければこのまま、別の日時ならそのように修正する【画像8】。入力したら右上の DONE をタップする。

次に、出発駅と到着駅を入力する【画像9】。タイピングしていくと駅名の選択肢が表示される。この例は、ザンクト・ペルテン St. Pölten からキーンベルク・ガーミング Kienberg-Gaming という場所(バス停)まで、保存鉄道(イプスタール鉄道山線 Bergstrecke Ybbsthalbahn)に乗りに行ったときのものだが、このように鉄道だけでなく、路線バスの停留所も検索できる。

Blog_halffarecard9
【7】乗車日と時刻を入力
【8】入力したらDONEをタップ
【9】出発駅と到着駅を入力
 
Blog_halffarecard10
【10】切符の種類を選択
【11】旅程を選択
【12】切符のオプションを選択(ウィーン~リンツ間の例)
 

駅名を入力し終えると、この画面【画像10】になった。赤が片道乗車券、青は定期券、グレーは乗車券をすでに持っていて、座席指定だけする場合に使う。

片道乗車券をタップすると、候補となる旅程が複数表示される【画像11】。目的地は田舎につき、2時間間隔のローカル便(鉄道から路線バスに乗継)しかないが、主要幹線を経由するときはレールジェット(特急)などの優等列車も複数表示される。今回は、現実的な選択肢が8時05分発しかないから、これを選択しよう。

タップすると、次は切符のオプションを選択する画面になる(下注)。旅程に優等列車が含まれている場合、1等席へのアップグレードや座席指定ができる(座席番号は指定できない)【画像12】。目的地の市内交通乗車券なども一緒に買える。

*注 この時点で乗継時刻など行程の詳細を知りたいときは、画面下の「Journey Preview」をタップすると表示される。

2等の座席指定は本来3ユーロかかるが、半額カードのおかげでなんと1ユーロ(120円)だ。通常満席にはならないから自由席で十分とはいえ、日や時間帯によっては混雑する列車もありうる。その場合、画面に「座席指定を推奨します」と親切な注意書きが表示されるので、1ユーロを惜しまないようにしたい。

Blog_halffarecard11
半額カードと正規運賃の比較
【13】ザンクト・ペルテン~キーンベルク間
【14】ウィーン~ザルツブルク間
 

次はいよいよ決済だが、その前に、提示されている8.90ユーロはほんとうに半額なのか、というさもしい疑問がふと脳裏をかすめた。後で確かめてみると、ザンクト・ペルテン~キーンベルク間は、アプリの 8.90ユーロに対して、ÖBBサイトで検索した通常運賃は 14.90ユーロだった【画像13】。1-8.90÷14.90=0.403、約4割引で、半額には届かない。ただし、この旅程はローカル線と田舎のバス路線を乗り継ぐため、割引率が異なる可能性がある。

よりメジャーな区間で試すと、ウィーン~ザルツブルク間はアプリで 27.80ユーロ、ÖBBサイトでは 55.60ユーロだった。まさに半額だ【画像14】。他の区間でも調べてみたが、ローカルルートでは半額に達しないケースがあるものの、幹線系では看板に偽りはなかった。

Blog_halffarecard12
【15】乗車券を買う。買物かごに入れて
【16】支払ボタンをタップ
【17】購入完了
 

納得したところで、乗車券を購入しよう。右上の「Add to Basket(買物かごに加える)」をタップし【画像15】、次の画面で、「Pay now(今支払う)」をタップすると【画像16】、「Thanks for buying from us!(ご購入ありがとうございます)」と表示され、これで購入完了だ【画像17】。代金は、登録したクレジットカードから引き落とされる。乗車券は【画像17】の円で囲んだ矢印をタップすると表示されるが、もし間違って買ってしまったというときは、3分以内なら「Undo purchase(購入を取消す)」でキャンセルできる。

Blog_halffarecard13
【18】乗車券。下の方にアズテックコード(画像を加工)がある
【19】座席指定した場合の乗車券
【20】指定席券
 

乗車券はドイツ語表記で、英語版はない。下へスワイプしていくと、QRコードのようなもの(名称はアズテックコード AztecCode)が見える【画像18】。車内検札ではこれを見せると、車掌が手持ちのタブレットで読み取ってくれる。

座席指定も選択した場合は、乗車券画面の右上に1/2と表示されており【画像19】、2/2が指定券になっている【画像20】。指定券の列車番号、車両番号、座席番号(Fenster=窓側、Gang=通路側)を確認して、席につこう。

Blog_halffarecard14
【21】購入後の初期画面。購入済みの切符の情報が表示される
【22】旅程の詳細表示
 

購入した切符の情報は、アプリを立ち上げたときの初期画面にも表示されている【画像21】。それで「発車まで12分、ホームは6番C-D」という表示を気にしながら、駅へ向かうことになる。これをタップすれば、乗継ぎや発着ホーム、さらには遅延状況など旅程の詳細も確認できる【画像22】。また、万一予定の列車に乗り遅れた場合でも、2時間以内に発車する列車であれば、乗車券は有効だ。

このアプリの長所は、ルート選択と乗車券購入がリンクしており、しかも半額割引が自動で適用されるという点だ。また、レールパスでは対象外の、市内交通(地下鉄・トラム・バス)や地方の路線バスにも対応している。これなら間違った切符を買ってしまうリスクはまずないし、宿にいるうちに購入手続を完了しておけば、列車の発車時刻を見計らって宿を出ればよい。窓口や券売機の前に並ぶ時間を見込まなくていいのは、大きなメリットだ。

ただし、乗車券の情報はすべてスマホに格納されているから、当然のことだがスマホの紛失や破損、そうでなくても電池切れには要注意だ。また、山間部では通信圏外、繁忙期にはÖBBサイトの混雑という可能性もあるので、乗車中は、不意にやってくる検札に備えて、乗車券画面を裏画面で立ち上げたままにしておくのが望ましい。

最後に、半額カード利用の総決算をご報告しておきたい。本当にお得だったのかどうかの検証結果だ。

Blog_halffarecard15
半額カード利用の総決算
 

今回、主としてオーストリアと周辺国を正味13日間旅したが、ÖBBに支払った金額は、カード購入費用 66ユーロと運賃 327ユーロで、計 393ユーロだ。正規運賃を計算すると 557.50ユーロになるので、差引 164.50ユーロ、円換算で約2万円節約できたことになる。支払運賃が正規の半額に届かないのは、割引率が異なる国際列車の乗車券や市内交通の乗車券などもこれで購入したからだ。

ちなみにユーレイルの国別パスを使ったとすると、少なくとも10日分、519ユーロ必要になるので、半額カードによる支払額を超える。加えてバス・トラムや国際列車の国外区間などは別途支払うことになるから、正規運賃の 557ユーロをも上回ってしまうことは確実だ。

このように、一括前払い型のレールパスほどの簡便さはないものの、コストパフォーマンスの点で半額カードは圧倒的だ。また、毎回乗車券を購入するという面倒な手続きも、モバイル乗車券というツールを使うことでかなり軽減されることがわかった。旅費の節約をお考えなら、試してみる価値はあると思う。

« 新線試乗記-相鉄・JR直通線 | トップページ | イギリスの地形図-概要 »

西ヨーロッパの鉄道」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 新線試乗記-相鉄・JR直通線 | トップページ | イギリスの地形図-概要 »

2020年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

BLOG PARTS

無料ブログはココログ