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2020年1月 4日 (土)

新線試乗記-相鉄・JR直通線

JR武蔵小杉駅の3・4番線ホームに立っていると、さまざまな色と形の列車が次々に入ってきて見飽きることがない。青とクリームのストライプを引いた横須賀線電車や、オレンジと緑の湘南新宿ラインは日常風景だが、ときには伊豆へ向かう「スーパービュー踊り子」や、成田空港行きの「成田エクスプレス」といった特急列車も停車して、人目をさらう。

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武蔵小杉駅に入る相鉄12000系電車
 

ここにもう一つ新顔が現れた。相模鉄道、略して相鉄(そうてつ)の12000系だ。朝9時51分発の海老名(えびな)行きを待っていたら、ちょうどそれがやってきた。光沢を帯びた紺色(ネイビーブルー)を全身にまとい、ボンネット車のラジエーターのような異色のフロント装飾をもつ車両で、その色あいから、関西の人間には一瞬、南海電鉄の特急ラピートを連想させる。個性的な外見に対して、車内はごく普通の通勤電車、というイメージの落差もおもしろい。

2019年11月30日、相鉄線とJR線を連絡するルートが開通して、相互乗入れが開始された。相鉄線の西谷(にしや)から東海道貨物線の横浜羽沢駅構内まで長さ2.7kmの新線(下注)が建設され、これにより、相鉄の12000系とJR東日本のE233系が海老名と新宿(一部延長あり)の間を往復する。

*注 相鉄・JR直通線と呼ばれるが、正式には相鉄新横浜線の一部。

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相鉄路線図にJR線(緑)が加わった
 

ずっと横浜駅をターミナルにしてきた相鉄の電車が都心に進出するという画期的な事件だ。最近では副都心線を介した東急と東武のそれのように、相互乗入れが始まると、見慣れていた鉄道風景が変わり、驚きやときには違和感を覚えるのが常だが、特にこれはふだん東京で見かけない電車だ。関西で例えれば、神戸市内で止まっている神戸電鉄がJR線に乗り入れて、大阪や京都まで直通するようなものだろうか。

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相互に乗入れる相鉄12000系(左)とJR東日本E233系(右)
羽沢横浜国大駅にて
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武蔵小杉駅が分岐駅に
 

発表資料によれば、このルートで上下合わせて92本が運行されるという。従来、相鉄沿線から新宿に出るには、横浜でJRか(副都心線直通の)東急に、または大和や海老名で小田急線に、どのみち一度は乗り換える必要があったから、直通列車出現のインパクトは大きいはずだ(下注)。

*注 ただし、沿線西部は引き続き、JR直通線より小田急経由のほうが、時間的にも運賃上も有利だ。

期待に胸を膨らませて乗り込んだら、客は1両につき数人しかいなかった。10両編成はこの辺では「短い」列車なのだが、それでも持て余すほどの閑散さだ。朝の通勤ラッシュが終わった時間帯、郊外方面行きに加えて、開業からまだ5日目(12月4日)で利用者が定着していないという事情もあるのだろうが。

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海老名行き車内は閑散
 

次の停車駅は、新線上に開設された羽沢横浜国大(はざわよこはまこくだい)だが、なんと18分もかかる(下注)。武蔵小杉を出ると、すぐにポイントを渡って貨物線に移ってしまうからだ。鶴見機関区の側線に並んだ機関車や貨車が、車窓のそばをかすめ去る。新川崎と鶴見の両駅は、貨物線に旅客ホームがないので、あっさりと通過した。旅客列車では小田原直行の「湘南ライナー」などにしか使われていない迂回ルートだが、今後は身近になる。

*注 所要時間は、列車によって15~20分と幅がある。

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(左)JR貨物の鶴見機関区が車窓をかすめる
(右)鶴見線の下で上りの12000系とすれ違い(下り列車から後方を撮影)
 

鶴見駅の後、左から接近してきた京急線と並行するが、こちらはまもなく地下に潜っていき、長いトンネル区間に突入した。再び空が見える頃には、横浜羽沢の貨物ターミナルが近い。減速してポイントを右へ渡り、貨物線をアンダークロスすると、前方に、安全柵が完備された真新しいホームが見えてきた。

羽沢横浜国大駅は、相鉄が管理するJR東日本との境界駅だ。発着ホームは掘割の中にあり、コンコースが地上に面している。開業のニュース映像では人が溢れていた駅も今日は静かで、カメラを構える物見客がぽつりぽつりといるばかりだ。

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羽沢横浜国大駅ホーム
東京方を望む
 

下車して、構内を観察してみた。駅のサインボードは、ネイビーブルーの相鉄仕様で、停車駅案内には、相鉄路線網に緑でJR線が描き加えられている。新宿から先も大宮、川越まで記されているのは、朝の時間帯に、埼京線の始発駅を起終点とする列車があるからだ。稠密ダイヤで、新宿折り返しが難しいらしい。

エスカレーターでコンコースに上がる。改札前の列車案内板は、片方が各停新宿行、もう片方が特急海老名行にきれいに分かれていた。この駅を境に列車種別が変わるためだ。相鉄線内ではJRの通勤電車も特急へと、何階級もの特進を遂げるのがおもしろい。

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同 コンコース
 

券売機の上方に、両社の運賃表が掲げられている。JRの運賃表は、実際の停車駅に従い、羽沢横浜国大から武蔵小杉へ線をつなげてあり、運賃は310円だ。ところが、実際の運賃は鶴見経由で計算されるので、鶴見のほうが割安で170円。鶴見線など周辺も軒並み安く、お得感がある。

駅前には市道環状2号線が通っているが、商業施設や宅地は見当たらない。バス停の時刻表にも、新横浜駅と保土ヶ谷駅を結ぶ便が1時間に1本程度あるだけだった。

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同 正面玄関
 

駅の北側には、貨物ターミナルをまたぐ歩道橋が架けられている。ターミナル内の列車の動きが見物できるが、金網のせいで写真は取りづらい。駅名が示すとおり、南方に横浜国立大のキャンパスがあるので、歩道橋は通学路としても使われることになるのだろう。一帯は丘陵地のためアップダウンは避けられないが、相鉄本線の和田町駅から上る坂道ほど険しくはないし、距離も若干短そうだ。

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(左)貨物ターミナルを横断する歩道橋
(右)歩道橋の金網越しに見る荷捌き施設
 

駅に戻り、改めて時刻表を眺める。列車本数は1時間当たり朝夕3~4本、日中は2本で、相鉄の他路線に比べて圧倒的に少ない。地方路線ならいざ知らず、このエリアで次の列車まで30分待ちというのは、頻発ダイヤに慣れた市民には物足りないに違いない。JR側で既存列車との調整を必要とするという事情もあろうが、それより3年後に予定されている東急直通列車のスジを空けてあるというのが本当のところだろう。

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羽沢横浜国大駅の下り時刻表
 

知られているとおり、相鉄の都心直通計画は、今回のJR連絡線と、次にできる東急連絡線との2本立てになっている。後者は、羽沢横浜国大から新横浜を経て、東横線の日吉に至る新線(相鉄新横浜線および東急新横浜線)だ。現在日吉が終点になっている目黒線と相互乗入れを行うので、実質的に目黒線の延伸を意味する。

これが完成すると、新横浜で東海道新幹線と地下鉄ブルーラインに連絡し、目黒線直通の東京メトロ南北線や都営三田線で、永田町や大手町へのルートも開ける。また、日吉~田園調布間で同じホームの東横線に乗り換えれば、JR直通線によって実現した渋谷や、副都心線経由で新宿(三丁目)にも到達できてしまう。

計画では、列車本数が1時間当たり朝ラッシュ時に10~14本、その他時間帯に4~6本とされているから、JR直通よりずっと多い。羽沢横浜国大駅北側にある東急/JRの線路分岐(ポイント)を見ても、前者が直進、後者は速度制限のかかる側方分岐だ。東急方面の運行が主であることを暗に示している。

そして運賃も、より低く設定されることだろう。そもそも距離が短いし、仮に新線に加算運賃が設定されるとしても、東急としては、先行開業したJRに対抗できる水準に抑えるのが営業政策上、必然だからだ。そうなると、相鉄の長年の悲願と言われているJRへの乗入れは、数年後には早くも脇役に後退してしまうのかもしれない。

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(左)羽沢横浜国大駅の東京方分岐
  直進する中央の複線が東急方面、左右の分岐がJR方面
(右)西谷トンネルを行く
 

羽沢横浜国大駅から、今度はE233系に乗って、新線の残り区間を行く。その大半を占める長さ14.5kmの西谷トンネルは、シールド工法による複線トンネルで、かぶりつきで見ていると、けっこう上り下りがある。最後の上りで外の明かりが見えてきて、地上に出るとすぐに西谷だった。

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(左)トンネルの出口で相鉄本線と出会う(下り列車から後方を撮影)
(右)西谷駅に停車中のE233系は海老名行き「特急」
 

JRの電車で相鉄本線の駅に着くということは、いつのまにか横浜より西へ来たわけで、なかなか新鮮な感覚だ。めったに乗らない者でもそうだから、ふだんの利用者にとってはなおさらだろう。西谷は2面4線の駅だが、従来待避線だった外側2線が、直通線に接続された。それで、ホームの進行方向左側が新宿連絡、右側が横浜連絡と明確に分けられている。日中はまだのんびりした空気の漂う左側だが、3年後はどうなるのか今から楽しみだ。

こちらの勝手な夢想をよそに、特急の表示を掲げたE233系は、一路目的地の海老名へ向け、静かに走り去った。

■参考サイト
相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線 http://www.chokutsusen.jp/

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