地形図を見るサイト-ベルギー
北部のオランダ語圏と南部のフランス語圏、それに東部にはわずかながらドイツ語圏も存在するベルギーでは、政府組織のウェブサイトも、まず言語を選んでから入るようになっている。測量機関 NGI / IGN(下注)も例外ではない。
*注 オランダ語で Nationaal Geografisch Instituut (NGI)、フランス語で Institut Géographique National (IGN)、直訳すれば国立地理学研究所。
Topomap Viewer で見るブルッヘ(ブルージュ)市街 |
◆
NGI / IGN の作成している地図データは、Topomap Viewer(トポマップ・ビューワー)というサイトで公開されている。ここではデジタル地図や空中写真とともに、旧来の地形図(といっても1990年代に図式は一新されているが)を縮尺別に見ることができ、画像も鮮明だ。
(記述は2018年2月現在の仕様に基づく)
Topomap Viewer(トポマップ・ビューワー)
http://www.ngi.be/topomapviewer/
初期画面で言語を選択 |
初期画面(上の画像)は言語の選択だ。英語版がないので、以下はフランス語版で説明するが、使用言語を宣言する際に利用規約の承諾まで要求されるのは、一般的な閲覧サイトにしてはものものしい。しかもその下には、規約を厳守せよ、特に複写は禁止、違反者には起訴も辞さない、と強い調子の警告文が続く。善良な市民をまるで犯罪予備軍のようにみなす態度には言葉を失う。
利用規約の一部 |
とはいえ、異国から訴えられても困るので、コピーの扱いがどうなっているか、利用規約 Conditions d'utilisation にも目を通しておこう(上の画像)。知的財産権の項を見ると、利用者は参照、印刷、保存(下注)、リンクの第三者配布(=共有)の権利を有すると書かれている。複写には言及がないから、権利が認められていないことは確かだ。
*注 保存に関する原文は、"sauvegarder dans le marque-pages les données de Topomapviewer"(Topomapviewer のデータをブックマークにバックアップする)。しかし、本サイトには地図データのダウンロード機能はない。
一方、禁止条項では、「過度な方法で de manière excessive」複写し、複製することはできないとあって、一切不可という表現にはなっていない。厳密な法解釈はともかく、複写・複製については権利は主張できないものの、「過度でなければ」違反行為とまではいえない、ということかと思う。本稿でも画面のスクリーンショットを使っているので、権利関係は一応押さえておきたいところだ。
さて、この関所を通過すると、ようやくベルギー全図のデフォルト画面が現れる。国土の中央で横一文字に引かれたやや太い薄紫の線が言語境界線になる。
ベルギー全図を表示したデフォルト画面 |
この画面で見えているのは CARTOWEB と称するデジタル地図で、拡大していくと、最終的に住宅が一軒ずつ判別できるまでになる。凡例(地図記号)を知りたければ、左メニュー上方のLEGENDEをクリックする。
左メニューには、表示可能な地図データの一覧がある。最上段の À superposer(オーバーレイ)は背景が透過処理されており、他の地図に重ねて用いるものだ。次の Photographies aériennes(空中写真)は、現在2013~15年撮影の最新オルソフォトのみ提供されている。
3番目の Carte de référence(参考地図)の中の Cartes classiques(直訳すると伝統的な地図)が、印刷版に使われている地形図になる。TOP10MAP(1:10,000)から TOP250MAP(1:250,000)まで4種類用意されている。名称の TOP は Topo(地形の)、10は縮尺1:10,000を意味している。印刷版ではこれ以外に1:20,000がある(下注)が、これは1:10,000図を単純に50%縮小したものなので、メニューにはない。
*注 1:20,000地形図は2016年から、独自のグラフィックを用いた1:25,000に順次置き換えられている。
使われる地図レイヤーは、表示縮尺に応じて自動的に切り替わるが、リストの上部にある"Mode automatique: l'échelle détermine la couche affichée(自動モード:縮尺により表示レイヤーが決まる)"のチェックをはずすと、レイヤーが固定化され、そのレイヤーの拡大縮小ができるようになる。ただし、複数の地形図レイヤーを同時に選択することはできないようだ。
レイヤーの選択を解除したいときは、そのサムネールの上でクリックする。
地図の拡大縮小は、地図画面左上のスケールバーを上下させる方法や、マウスホイールを使う方法がある。また、範囲を指定して拡大縮小するときは、上のメニューにある専用のボタンをクリックして行うほか、Shiftキーを押しながらマウスで矩形を描くのも可能だ。
また、上のメニューには「<」(前の画面、すなわち「元に戻す」)、「>」(後の画面)というボタンがある。閲覧サイトでは珍しい機能だが、前の画像をもう一度見たいと思うときはあるもので、覚えておくと重宝する。
◆
これまで見てきたフランスやオランダのサイトとは違って、IGNのサイトはあくまで最新図が対象であって、旧版図の画像は用意されていない。どこかにないものかと探したところ、次のサイトが見つかった。
Cartesius(カルテージウス)
http://www.cartesius.be/CartesiusPortal/
「カルテージウス」初期画面 |
これはベルギーと(ベルギーの植民地があった)中央アフリカの古地図、旧版地図、空中写真の膨大なコレクションを一挙公開するという意欲的なサイトで、NGI / IGN、王立図書館 Bibliothèque royale、国立古文書館 Archives de l’Etat、王立中央アフリカ博物館 Musée royal de l’Afrique centrale が共同で開設したものだ。近代測量以前の古地図はもとより、1770年代のフェラーリ図 Cartes de Ferraris(下注)から最近の地形図に至るまで、各時代の地図資料が見られる。
*注 フェラーリ伯により1770~78年に作成されたオーストリア領ネーデルラントの彩色地図。手描きの原図は縮尺1:11,520で275面あるが、それをカッシーニ図に合わせて1:86,400、25面に編集した銅版刷りの普及版も作られた。このサイトで表示されるのは、ベルギー王立図書館所蔵の1:11,520原図を1:20,000に縮小した画像。フェラーリ図の索引図は http://www.ngi.be/FerrarisKBR/ にある。
以下、英語版で説明するが、初期画面(上の画面)には Search と MyCartesuis の2つの入り口がある。前者では、膨大なコレクションから目的のコンテンツを地図上、あるいはキーワードで検索する。後者は、検索で見つけたコンテンツを利用者がいつでも呼び出せるように保存し、メモをつけたり、グループ化したり、公開したりできる(ユーザー登録が必要)。
操作マニュアルは40ページ以上もあって、本稿ではとうていフォローできないが、まずはSearch(検索)機能を使って、旧版地図を探し出すところまでを説明しよう。
検索画面 |
Search をクリックして中に入ると、左に地図、右にキーワードを入力する画面が現れる。キーワードだけで検索するとヒット件数が多すぎる場合は、地図でエリア範囲を絞り込める。スケールバーで拡大縮小してもいいが、Shiftキーを押しながらマウスで範囲選択するほうが早い。
検索範囲や語句、属性を入力 |
このとき、Intersection(左の地図に部分的にでも含まれる地図を検索)か、Overlapping(同 完全に含まれる地図を検索)か、Everywhere(全範囲を検索)かを選択できる。
例として、キーワードを"Carte topographique(仏語で地形図の意)" にし、縮尺で"Part of province, City and surrounding area(州、都市と周辺の一部)" を選んだ。これで縮尺が1:10,000~1:75,000の範囲になる。地図を Brussel / Bruxelles(ブリュッセル)周辺まで拡大しておき、検索ボタンをクリックした。
検索結果 |
サムネールの展開 |
結果は201件がヒットした。これで希望のものが見つかればよし、そうでなく検索結果を消去して条件設定をやり直すときは Filter Empty、検索条件を追加してさらに絞り込む場合は Extended filterをクリックする。
右下に表示されている検索結果のサムネールにカーソルを当てると、その範囲が左の地図に黄色で表示される。サムネールのテキストをクリックすると、解説が表示される。その "See map" を選択するか、サムネールの画像部分をクリックすると、MyCartesuis の画面に移って、高精度の地図画像が表示される。
地図画像の表示 |
なお、英語版で上記の手順を実行したところ、いっこうに地図画像が現れなかったのだが、フランス語版で再試行すると短時間で表示された。もし英語版でサイトの反応が鈍いようなら、他の言語で試していただきたい。
使用した地形図の著作権表示 © 2018 IGN Topomapviewer
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