地形図を見るサイト-ルクセンブルク
ベネルクス三国の一角を成すルクセンブルクでも、充実した公式地図サイトが構築されている。国の測量機関である地籍・地形局 Administration du Cadastre et de la Topographie (ACT) が、最新のデジタル地形図はもとより、旧来の1:5,000~1:250,000地形図、20世紀初頭からの旧版地形図、18世紀の測量原図、そして新旧の空中写真や地質図、それらにオーバーレイできる地図データなど、多様なコンテンツを自ら運営するサイトで提供しているのだ。加えて、ウェブデザインのスマートさと多言語に対応(下注)している点も注目に値する。
*注 公用語であるフランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語に加えて、英語表記もある。
18世紀のフェラーリ図に描かれたルクセンブルク市街 深い渓谷と堅固な堡塁が街を護る |
では、その地図サイト Geoportal(以下、英語読みでジオポータルと表記)の概要を見ていこう。
(記述は2018年2月現在の仕様に基づく)
◆
Geoportal(ジオポータル)
http://map.geoportail.lu/
初期画面 |
上の画像が初期画面だが、以下の説明は英語版で行うので、初めに言語選択をしておきたい。右上の地球を象ったアイコンをクリックして、EN(英語)を選択する。
言語と背景レイヤーの選択 |
デフォルトでは、表示される Background Layer(背景レイヤー)は Road map(道路地図)になっている。背景レイヤーを入れ替えるには、画面左上のリストで、Topographic map B/W(地形図モノクロ版)、Topographic map(地形図カラー版)、Aerial imagery(空中写真)、Hybrid map(ハイブリッド地図)、White background(無地の背景)から選択する。
このうち、ハイブリッド地図というのは、空中写真(オルソフォト)に地名や主要道路網などを加えたものだ。上記以外の地図については、別途レイヤーとして選択して重ね表示できる(詳細後述)。
特定の地域の地図を表示するには、地名、住所、地番(Parcel numberという)で指定するほか、マウスで直接矩形を描いて選択する方法がある。
縮尺を変更するには、拡大縮小(+-)ボタンを使うほか、ダブルクリックでも行える。図上でダブルクリックすると、1段階ずつ拡大する。Shiftキー+ダブルクリックで1段階ずつ縮小する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。
テーマとレイヤーの選択 |
背景レイヤーの上に重ねる地図レイヤーを表示するには、まず地図のテーマを選択する必要がある。デフォルトは「THEME: MAIN」になっている。その右の CHANGE をクリックすると、選択肢(MAIN、TOURISM、ENVIRONMENTなど)が表示される。任意のテーマを選択すると、下位項目が順に表示されていく。
レイヤーリストの操作 |
レイヤーは複数選択でき、そのリストは MY LAYERS タブをクリックして見ることができる。MY LAYERS タブには、レイヤーの重ね順の変更、レイヤーの透明度の調節、レイヤーの追加/削除などの機能がある。
ここではベースマップにもなりうる地図・空中写真に絞って紹介しておこう。
地形図は、MAIN テーマ > GEOGRAPHICAL LOCATION(地理的位置)> Topographical mapsに格納されている。
同様に、空中写真は MAIN テーマ > LAND SURFACE(地表)> Orthophoto-images、
地質図は、MAIN テーマ > ENVIRONMENT, BIOLOGY AND GEOLOGY(環境、生物、地質) > Geology、
土壌図は、MAIN テーマ > ENVIRONMENT, BIOLOGY AND GEOLOGY(環境、生物、地質) > Soil mapsに、それぞれ分類されている。
地形図だけでも縮尺別に9種類のレイヤーがあるが、Automatical Topographical Map(自動地形図)を選ぶと、表示縮尺に応じて自動的にグラフィック(縮尺図)が変化していくので便利だ。そうではなく、グラフィックを固定して拡大縮小したいときは、その下に列挙されている Topographic map 1:250000~1:5000 から見たいものを選択する。
「Regional tourist map 1:20000 R(1:20,000地域別旅行地図)」は、かつて印刷版で刊行されていた旅行情報を付加した地形図で、末尾の R(régionale の頭字)は通常版と区別するための符号だった。Regional Mapsheets(地域図図郭)は、その図郭を表示する機能のことだ。
さらに興味深いのはその下にある Historical Topographical Maps(旧版地形図)という項目で、これを展開すると16種の古地図や旧版地形図のリストが現れる。
最も古い「Ferraris Map 1:20k 1778(1:20,000フェラーリ図、1778年)」は、18世紀後半に作成されたオーストリア領ネーデルラントの美麗な手彩色原図(冒頭画像はそのルクセンブルク旧市街、下注)だ。原図の縮尺は1:11,520だが、2013年の復刻本出版に際して作成された1:20,000の縮小画像が用いられている。
*注 現在のベルギー領部分は、ベルギーのサイト「カルテージウス Cartesius」などで公開されている。「地形図を見るサイト-ベルギー」参照。
次は20世紀に入り、1907年と1927年のJ・ハンゼン Hansen による1:50,000図がある。前者は粗いモノクロ複写だが、後者はカラーで原図の鮮やかさが再現されている。
次の「German War map 1:25k 1939(ドイツ戦時地形図、1939年)」は、第二次世界大戦中にルクセンブルクを占領したドイツが既存図から編集した1:25,000図だ。
そして、戦後の地図の空白期を埋めるために、キュマリー・ウント・フライ社 Kümmerly & Frey による1950年の1:150,000学習用地図が挿入されている。
本格的な地形図の復活は、フランス IGN の協力で作成された1954年の1:20,000で、1966年からは1:50,000も登場し、2000年までおよそ10年間隔で、その時点の最新図が収められている。
一方、空中写真は、戦後1951年撮影のものから利用できる。1994年まではシームレス化されていないので、各カットの撮影範囲を示す矩形が右の地図上に表示される。図上で見たい地点をクリックすると、左に写真のサムネールが現れ、それをクリックすることで実寸の画像ファイルが表示される仕組みだ。
一般操作 |
ジオポータルで使える機能は他にもたくさんある。上の画像で、各アイコンの機能に日本語を添え書きしておいた。詳しくは画面右下にある HELP をご覧いただきたい。
情報表示と印刷 |
たとえば、情報アイコンでは、表示縮尺や座標系を変更したり、カーソルを置いた地点の座標値や標高値の表示ができる。
また、印刷アイコンでは、PNG形式(画像ファイル)またはPDFファイルで地図のダウンロードができる。用紙の向きでは、"landscape" が横長、"portrait" が縦長の形式になる。また、印刷の縮尺では、たとえば1:50,000地形図が印刷対象であるとき、ここで1:50,000を選択すると等倍、1:25,000を選択すると2倍拡大したものが出力される。
なお、ジオポータル内のデータの利用について、利用規約(下注)には、利用者がインターネットを通じて行えることを列挙してあり、その中に「(ルクセンブルク大公国の公的機関を出処とする)地理製品、地理データおよび地理サービスを公開すること publier des géoproduits, géodonnées et géoservices (en provenance des instances officielles qui existent au Grand-Duché de Luxembourg)」も含まれている。
*注 利用規約(フランス語版) https://www.geoportail.lu/fr/propos/mentions-legales/ 引用した文言は 15.1 Généralités にある。
使用した地形図の著作権表示 © 2018 Administration du Cadastre et de la Topographie
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