« オーストラリアの地形図-ビクトリア州 | トップページ | オーストラリアの地形図-西オーストラリア州 »

2017年4月16日 (日)

オーストラリアの地形図-南オーストラリア州

Blog_au_statemap_sa

キャンベラのある首都特別地域は別として、本土のすべての州・準州と境を接しているのは、南オーストラリア州 South Australia だけだそうだ。トリビアが示すとおり、同州は大陸の真ん中にあり、南はグレート・オーストラリア湾 Great Australian Bight に面している。州人口の3/4以上が州都アデレード Adelaide とその周辺に集中し、ほかに小都市は点在するものの、それを除けばいくつかの低山地と乾燥または半乾燥の放牧地がどこまでも続く土地柄だ。

Blog_au_sa_map_detail1
1:50,000図の例
公園緑地に囲まれたアデレード中心街
6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0
 

南オーストラリア州の地形図作成は、環境・水・天然資源省 Department of Environment, Water and Natural Resources (DEWNR) が所管している。官製図の愛称は「マップランド Mapland」で、どこかのテーマパークと間違えそうな響きだ。

Blog_au_sa_map1
1:50,000地形図表紙の変遷
(左)6028-I & PT 6128-IV Lincoln 1981年
(右)6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年
 

連邦ジオサイエンスが1:250,000や1:100,000縮尺図で州全域をカバーしている(下注)ためか、マップランドは作成範囲を絞っている。市販されている地形図は1:50,000のみで、それも主として沿岸部の比較的人口が多いエリアでの刊行にとどまる。手元にある2002年版と2016年版の索引図を比較してもエリア拡張の気配がないから、これはもう確定事項なのだろう。

*注 ただし内陸部(いわゆるレッドラインの内側)の1:100,000は、編集原図のコピーで頒布されている。

1:50,000の図郭は、1:100,000のそれを縦横2等分した経度15分、緯度15分の範囲だ。初版は1970年代後半に遡り、現在は1980年代後半から2000年代前半製作のものが出回っている(下注)。旧版は主として2ツ折りで青表紙がついていた。1990年前後から印刷方式がプロセスカラー(CMYKの4色)になり、3ツ折りで、表紙もカラーの風景写真を配したものに変わった。座標系は2000年を境に、それ以前の版は旧測地系 AGD66またはAGD84、以降は新測地系 GDA94 が適用されている。

*注 同州アンリー Unley の地図商サイトhttp://cartographics.com.au/ の記述による。

Blog_au_sa_map_index
地形図の図郭
中央に数字4桁がある太枠の図郭が1:100,000、
それを縦横2等分した細枠が1:50,000の図郭
 

等高線間隔は10mで、日本の同縮尺図の20mと比べると精度は高い。それなら、対象となる一帯が緩傾斜地ばかりかというとそうでもなく、アデレード・ヒルズ Adelaide Hills を含むマウント・ロフティー山脈 Mount Lofty Ranges やその北に続くフリンダーズ山脈 Flinders Ranges の山腹は、結構な斜度がある。こうした場所は等高線でぎっしりと埋まることになる(下図参照)。

Blog_au_sa_map_detail2
1:50,000図の例
傾動山地の断層崖が続くアデレード・ヒルズの西斜面
アデレード・メトロのブレア線がくねりながら上っていく
6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年
6627-4 & PT 6527-1 Noarlunga 2001年
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0
 

地図記号にはさほど特徴的なものはないが、あえて挙げるとすれば、一つは道路の舗装区分だ。他州では未舗装道に薄赤やオレンジを充てるところ、マップランドは茶色にしているので、妙に実感がある。また、旧版では道路の分類基準が等級別(主要道、地方道等)ではなく車線数で、細線が1車線、太線が2車線以上を表していた。しかし現行図では、他州と同じように等級別に改められている。

Blog_au_sa_map_legend
1:50,000の凡例(2001年)
 
Blog_au_sa_map2
「マウント・ロフティー山脈エマージェンシーサービス・マップブック」表紙
 

上述のように単品の折図は更新中止になっているようだ。しかし別途、主要地域をまとめた地図帳シリーズが、「エマージェンシーサービス・マップブック Emergency Services Map Book」の名称で刊行されており、比較的新しい情報が入手できる。これは以前、CFSマップブック CFS Map Book と呼ばれていたもので、本来、地方消防隊 Country Fire Service (CFS) 、州立災害救助隊 South Australian State Emergency Service (SES) が実施している緊急業務を支援するための内部資料だが、一般にも販売されてきた。

マップランドのサイトによれば、現在8冊刊行されており、沿岸部の地域を1:50,000または1:100,000でカバーしている(ただし、西海岸 West Coast の一部は1:250,000)。例えば、アデレード周辺域は「マウント・ロフティー山脈編 Mount Lofty Ranges Emergency Services Map Book」に収録されており、人気の観光地カンガルー島 Kangaroo Island には「カンガルー島編 Kangaroo Island Emergency Services Map Book」がある。現地価格79豪ドル(1ドル85円として6715円)と少々値は張るが、地形図を1枚ずつ買うよりはずっと経済的だ。

Blog_au_sa_map_detail3
マップブックの図例
from "Mount Lofty Ranges Emergency Services Map Book"
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0
 

マップランドの地形図(オフセット印刷図)は、オーストラリア国内の主要地図商で扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

なお、前回のビクマップと同じく、マップランドでも地形図の閲覧サイトは作られていない。Map Finder というサイトがあるが、これは地図や空中写真の発注(有料)のためのものだ。上記のマップブックや最新地形図(プロッター出力)は、このサイトで入手できる。

■参考サイト
環境・水・天然資源省 Department of Environment, Water and Natural Resources (DEWNR)
http://www.environment.sa.gov.au/
Map Finder
https://apps.environment.sa.gov.au/MapFinder/

★本ブログ内の関連記事
 オーストラリアの地形図-連邦1:100,000
 オーストラリアの地形図-連邦1:250,000
 オーストラリアの地形図-クイーンズランド州
 オーストラリアの地形図-ニューサウスウェールズ州
 オーストラリアの地形図-ビクトリア州
 オーストラリアの地形図-西オーストラリア州
 オーストラリアの地形図-ノーザンテリトリー

« オーストラリアの地形図-ビクトリア州 | トップページ | オーストラリアの地形図-西オーストラリア州 »

オセアニアの地図」カテゴリの記事

地形図」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« オーストラリアの地形図-ビクトリア州 | トップページ | オーストラリアの地形図-西オーストラリア州 »

2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

ACCESS COUNTER

無料ブログはココログ