オーストラリアの地形図-ノーザンテリトリー
巨大な岩山で知られるウルル Uluru(英語名エアーズ・ロック Ayers Rock)にカタ・ジュタ Kata Tjuta(ジ・オルガズ The Olgas)、原生林と滝と断崖のカカドゥ Kakadu。大自然の中に彫り出された絶景は、オーストラリアの観光スポットとして必ず挙がる名だ。大陸縦断列車「ザ・ガン The Ghan」の運行に伴って、拠点都市ダーウィン Darwin やアリス・スプリングズ Alice Springs の地名を耳にすることも少なくない。これらはみなノーザンテリトリー Northern Territory(北部準州)の域内にある。
ウルル(エアーズ・ロック) 1:100,000特別図 Uluru-Kata Tjuta National Park 第2版 1996年 (×2.0) © Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0 |
ノーザンテリトリーは、大陸中央部の北半分を占めている。連邦直轄地として1911年に領域が確定されたのち、短い南北分割期間を経て、1931年に再合併されて今に至る。1978年に自治権を与えられたが、日本の4倍近い面積に対して人口はわずか24万人だ。
地図作成はインフラストラクチャ・プランニング・ロジスティクス省 Department of Infrastructure, Planning and Logistics の所管とされている。2000年当時の古いデータで恐縮だが、域内の地形図の種類とカバーする範囲は以下の通りだ。
1:1,000,000:連邦 AUSLIG(現 ジオサイエンス Geoscience)所管、全域をカバー
1:250,000:連邦 AUSLIG 所管、全域をカバー
1:100,000:連邦 AUSLIG 所管、全域をカバー、ただし内陸部は編集原図のコピーを提供
1:50,000:連邦 AUSLIG 所管(製作は王立オーストラリア測量隊 Royal Australian Survey Corps)、北岸(主に南緯17度以北)およびスチュアート・ハイウェー Stuart Highway(=南北縦貫道)沿線で作成
他に1:25,000はダーウィン地域 Darwin Area、キャサリン Katherine、アリス・スプリングズおよびマリー川地域 Mary River Region で、1:10,000がダーウィンおよびアリス・スプリングズで作られているとされる。
このうち連邦所管の地形図の多くはネット公開されているので、いつでも図上遊覧ができる。冒頭に挙げた地域を地形図で追ってみよう。
ウルルを描いた1:100,000図は、上に掲げた。この地域では、1:100,000区分図(5047 Mount Olga および 5147 Ayers Rock)が編集原図のコピーで頒布されているが、それとは別に特別図「ウルル=カタ・ジュタ国立公園Uluru-Kata Tjuta National Park」が作られている。掲げた画像はその一部だ。ウルルの山体には濃いめのぼかし(陰影)がかけられ、ボリュームのある形状が浮かび上がる。西麓から頂上へ直登する登山道や、有名な夕景を眺める場所(図の左上に Sunset Viewing Areaと注記)も描かれている。
一方、カタ・ジュタはウルルの西25kmに位置する。36個の岩山から成るといわれ、図上でもかなりの数の閉じた等高線が確認できる。同じ1:100,000特別図の一部だが、こちらは50%縮小で表示しているので、距離感覚にはご注意を。
カタ・ジュタ(ジ・オルガズ) 1:100,000特別図 Uluru-Kata Tjuta National Park 第2版 1996年 © Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0 |
トップ・エンド Top End(下注)にあるカカドゥ国立公園からは、ジム・ジム・フォールズ Jim Jim Falls とツイン・フォールズ Twin Falls の周辺の1:100,000地形図を切り出してみた。図右下はジム・ジム・フォールズの部分を2倍拡大したものだ。この一帯は比高200m前後の断崖が連なり、滝はそれを切り裂くように懸かっている。また、周辺を覆う薄緑のドットパターンは、密度が中程度の植生を表す。掲載範囲外には、植生の平均高2mという注記が見られる。
注:トップ・エンドは、ノーザンテリトリー北端の半島部分を指す。
ジム・ジム・フォールズとツイン・フォールズ 1:100,000 5471 Jim Jim 1990年 © Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0 |
港町ダーウィンはノーザンテリトリーの州都で、最大の都市でもある。1:250,000旧図(1962年編集)では、湾に突き出した旧市街の傍らから、3フィート6インチ(1067mm)軌間のノース・オーストラリア鉄道 North Australia Railway(NAR、1976年休止)が内陸に延びる様子が描かれている。一方、新図(2004年版)の鉄道は、ザ・ガンが走る大陸縦断のアデレード=ダーウィン鉄道 Adelaide - Darwin Railway(図では ALICE SPRINGS DARWIN RLY と注記) だが、ダーウィン駅も通るルートもNARとは全く異なる。この図の範囲では、NARの廃線跡が道路として利用されているようだ。
アウトバックのど真ん中に位置するアリス・スプリングズは、アデレード=ダーウィン鉄道の中継基地であり、ウルル=カタ・ジュタ観光の出発地としても知られる。旧図は1958~62年の編集で、1968年に赤色で訂補が入った版だ。地勢の概観は、等高線を用いずぼかし(陰影)のみで表現されている。鉄道は、かつてアデレードとこの町を結んでいた1067mm軌間の中央オーストラリア鉄道 Central Australia Railway だ。
一方、下の新図(2002年版)の地勢表現は等高線のみなので、旧図とは見かけが大きく異なる。40年の間に市街地は拡大し、アデレード=ダーウィン鉄道(gauge 1435mm と注記)も登場したが、駅の位置は動いていないようだ。
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