インドの鉄道地図 V-ウェブ版
現地から詳しい地図帳を取寄せるほどでもないという方に、ウェブサイトで見られるインドの鉄道地図をいくつか紹介しておこう。
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まずは、鉄道の公式サイトから。インド国内に広く張り巡らされた鉄道網の大部分を運営するのが、国有鉄道会社であるインド鉄道 Indian Railways(ヒンディー語でバーラティーヤ・レール)だ。お堅い組織らしく、サイトの構成は基本的に部局別で、旅客列車などに関する情報は旅客局 Coaching Directorateのページに集められている。トップページの "Passenger Info" のリンクからも下記の要領でたどっていける。
■参考サイト
インド鉄道 Indian Railways http://www.indianrailways.gov.in/
Passenger Info > Time Table Information > Trains at a Glance
または直接リンク
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/
このページでは、公式時刻表「トレーンズ・アット・ア・グランス Trains at a Glance(略称TAAG)」のPDF版を公開している。画像の直下にある "Table Index" のドロップダウンリストから時刻表の各ページを選択でき、その下の "Content" のくくりで、時刻表の使い方をはじめ、索引や地図を参照できる。「インドの鉄道地図 I」で紹介した添付地図は "Content" の中の "Indian Railways Map" にある。ファイルサイズが大きいのでダウンロードの際は注意されたい。また、同じページに時刻表番号を検索する地図 "Route Map with Table Numbers" もある。路線網の上に記された数字が時刻表番号、赤い線は幹線ルートを示している。
■参考サイト
Indian Railways Map (11.2MB) 直接リンク
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/pdf/IR_Map.pdf
Route Map with Table Numbers (1.25MB) 直接リンク
http://www.indianrailways.gov.in/uploads/directorate/coaching/pdf/Route map.pdf
ちなみに、発着駅を入力して列車を検索するタイプの電子時刻表は、下記にある。
http://erail.in/
インド鉄道のサイトでは、電化路線図 Railway Electrification Map も見つかった。鉄道電化局 Railway Electrification Directorate のページにあり、全国の路線網を、2010年3月31日までに電化済みは赤、工事中が緑、2010~11年度の予定線が青、非電化は灰色に区分している。駅名は一部略称化されている。上記の時刻表地図では電化の有無はわからないので、補完資料になるだろう。おそらく定期的に更新されるから、リンク切れになった場合は下記、鉄道電化局のページで捜していただきたい。
■参考サイト
Railway Electrification Map (620KB) リンク切れご容赦
http://www.indianrailways.gov.in/railwayboard/uploads/directorate/rail_elec/RE Map-2.pdf
鉄道電化局
http://www.indianrailways.gov.in/railwayboard/uploads/directorate/rail_elec/
◆
日本の国土地理院に当たるインド測量局 Survey of India のサイトでは、子供用地図 Geographical Maps for Children と称するダウンロード専用の各種主題図が提供されている。この中に、「インド鉄道および海上ルート India-Railways and Sea Routes」と「インド鉄道地図 Railway Map of India」という2種類の鉄道関連地図が見つかる。
前者は、右肩にページ数が打ってあるので、何かの地図帳に収載された図なのだろう。タイトルのとおり、国内の鉄道路線と国内外の航路を表示した地図だ。縮尺は1:15,000,000(1500万分の1)。鉄道網は、以前の地域鉄道9ゾーンおよびコンカン鉄道で色分けされ、軌間、電化の区別もある。海上ルートには、距離が海里で併記されている。
後者は、国内鉄道網を描いた縮尺1:10,000,000(1000万分の1)の地図だ。「インドの鉄道地図 I」で紹介した測量局刊行の1枚もの鉄道地図の簡略版に相当する。軌間、電化、単線・複線、工事線、改軌(予定?)線などが細かく記号で区分され、地域鉄道は再分割後の16ゾーンおよびコンカン鉄道で色分けされている。
どちらも製作時期はそれほど古くないのだが、原稿となった測量局の地図はそもそも印刷品質が劣り、加えて画像の解像度も高くないので、次に述べる民製図のレベルにはとても対抗できない。
■参考サイト
インド測量局 http://www.surveyofindia.gov.in/
トップページ > Downloads
India-Railways and Sea Routes (2.08MB) 直接リンク
http://www.surveyofindia.gov.in/soi_maps/atlas/p_23_200.pdf
Railway Map of India (1.57MB) 直接リンク
http://www.surveyofindia.gov.in/soi_maps/atlas/rail_100.pdf
◆
インドの鉄道愛好家団体であるインド鉄道ファンクラブ Indian Railways Fan Club (IRFCA) が運営するサイトは、この国の鉄道に関する情報の宝庫だ。「鉄道地図および地理資料 Railway Maps and Geographic Resources」のページに、鉄道地図も豊富に収載されている。
■参考サイト
IRFCA-鉄道地図および地理資料 Railway Maps and Geographic Resources
http://irfca.org/docs/maps.html
最初に掲げられている「一目でわかるインド鉄道網 Indian Railways Network At-A-Glance」は、本ブログ「インドの鉄道地図 III」「インドの鉄道地図 IV」で紹介したサミット・ロイチャウドリー Samit Roychoudhury 氏が2003年に作成したものだ。地域鉄道16ゾーン+コンカン鉄道を色分けし、軌間と単線・複線、電化線を表示する。解像度が低いため、駅名などの詳細は読み取れないが、この地図は、地勢の背景をつけて、ロイチャウドリー著「インド鉄道大地図帳」の表紙見返しにあるインド全図に再利用されているので、必要ならそちらを参照されたい。
次の「インド鉄道網スキマティックマップ IR Network Schematic Map」は、地図デザイナー、アラン・ガネッシュ Arun Ganesh 氏が2006年に発表した鉄道地図だ。路線網を水平、垂直および斜め45度の直線に単純化した、いわゆるスキマティックマップ(位相図)を試みたところが目新しい。国内路線は電化幹線、(非電化)幹線、その他の線区、改軌中、狭軌の区別があり、地域鉄道のゾーンは線の色ではなく、ベースマップの塗りで表現する。主要区間の所要時間がこまめに表示されているのもユニークだ。
複雑なインドの路線網をスマートに図化した点は大いに評価したいが、幹線に白抜き、地方線に赤い太線を充てた記号デザインには違和感がぬぐえない。地方線が妙に強調されて見える結果、路線網の骨格がすっきり浮かび上がってこないように感じる。視覚上の効果を今少し整理する必要があるだろう。なお、この地図はウィキメディアにも収録されている。
■参考サイト
Wikimedia - Railway Network Map of India - Schematic
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/28/Railway_network_schematic_map.png
3番目の「インド鉄道ルートマップ IR Route Maps」は、1番目と同じくロイチャウドリー氏の作品だ。「長い間、私は地図や地図作成と同じように列車にも関心を抱いてきた。民間の機関と同様、鉄道当局によって製作された一般向けの地図は、詳細を欠いていたり、期待を下回っていると感じる。変革への強い思いから、私は(現存する地図や時刻表、進行中の計画の詳細といった)情報の収集に着手し、2001年前半に最初の鉄道地図を製作した。」(「インド鉄道大地図帳」巻頭言より) それがこの地図で、いわば処女作に当たる。
リンク先のページにある地図画像はクリッカブルマップになっていて、各地域の拡大図に飛べる。また、親ページで1段下げて並んでいる "New Delhi and points north" ほか12の項目も、拡大図への直接リンクだ。
地域鉄道を色分けし、軌間、単線・複線、電化線を区別していくのは、氏の作品に共通する仕様だが、この構成は、実はインド測量局の鉄道地図(上記および「インドの鉄道地図 I」で紹介した大判図)を踏襲したものだ。40年間進歩のない官製図に失望していた氏が、現代の技法を用いて一から描き直したと考えればいい。データは2001年8月現在のため、旧区分9ゾーン+コンカン鉄道で、縮尺の制限から駅数も1200駅に絞られているが、いまだに、ウェブ上で公開されているものとしては最も詳しい。これを原点に、2003年の「一目でわかるインド鉄道網」、2005年の地図帳初版、そして2010年の地図帳第2版と、地図表現の改良の足跡をたどるのも一興だ。
■参考サイト
ロイチャウドリー氏の個人サイトは現在工事中だが、同じ鉄道地図は残っている。
http://samit.org/irmap/
IRFCAの「鉄道地図および地理資料」のページは、さらに大都市周辺を中心にした各地域の鉄道地図、そして歴史地図の紹介へと続いている。ロイチャウドリー氏やガネッシュ氏のシリーズを始め、さまざまな路線図が並ぶ。別のページ「配線図と地図 Layouts and Maps」では、各種の配線図もサムネールつきで紹介されている。
■参考サイト
IRFCA 配線図と地図 http://www.irfca.org/gallery/Layouts/
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コメントありがとうございます。
インドの鉄道地図は確かにロイチャウドリー氏のが決定版ですね。
ロビンソン氏の著書は全18巻という途方もない企画らしいですが、
最初の2巻でアフリカ、中東という情報の少ない地域をカバーしてくれたのはありがたいです。
投稿: homipage | 2011年4月 6日 (水) 22時59分
いつもながらの詳細な調査に敬服します。ロイチャウドリー氏の地図帳は当方も2冊所有しておりますが、ご説明の通りの充実ぶりに感嘆していたものでした。今回、氏の前作にあたる地図がウェブ上に公開されていたことを知り、改めて興味を惹かれました。
いわゆる第三世界についてはなかなか情報が少なかったのですが、ご紹介された他にも Neil Robinson氏の World Rail Atlas and historical summery (現在第7巻、8巻のみ刊行)などを見ると、同好の士はいるものだと心強くなります。
投稿: M.ITO | 2011年4月 6日 (水) 06時30分