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2010年12月23日 (木)

カナダの鉄道地図 III-ウェブ版

カナダの鉄道を描いた地図はウェブサイトでも見ることができるが、貨物主体という鉄道輸送の実態を反映して、鉄道路線のネットワークを表現したものがほとんどだ。まず、全国の鉄道網を包括的に表示したものから紹介しよう。

Blog_canada_railmap_hp1

カナダのナショナルアトラス(国勢地図帳)である「アトラス・オブ・カナダ The Atlas of Canada」が、全面的にウェブ公開されている。その中の交通運輸 Transportation の項に、「鉄道輸送インフラ地図 Rail Transportation Infrastructure Map」というインタラクティブマップがある。

初期画面は、一見何の変哲もない全国の鉄道路線図だが、ちょっとした仕掛けが隠されている。右側のメニューにあるラジオボタンの操作で、会社ごとの路線表示に切替えられるのだ。デフォルト表示の路線はすべて赤色だが、選択した会社あるいはカテゴリーに該当する路線だけ、他の色に変わるようになっている。内容は、カナダ鉄道協会(RAC)刊行の地図帳を基礎資料としたものだ。地図は上側のメニューを使ってズームアップできるほか、ウィンドウも4段階に拡げることができる。

■参考サイト
アトラス・オブ・カナダ http://atlas.nrcan.gc.ca/
 英語版トップページ > Economy > Transportation > Rail Transportation Infrastructure Map
同 「鉄道輸送インフラ地図」(英語版)の直接リンク
http://atlas.nrcan.gc.ca/site/english/maps/economic/transportation/pm_r

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インタラクティブマップの操作がまだるっこしいとお思いの方は、カナダ鉄道協会とカナダ地方自治体連合(FCM)の共同サイト(下記)にある州別の鉄道網概観図(PDF)を利用されるとよい。前回紹介したように、これは、上記地図が準拠するカナダ鉄道協会の鉄道地図帳の一部を抽出したものだ。

■参考サイト
「鉄道・自治体近接問題情報ベース」の鉄道地図のページ
http://www.proximityissues.ca/english/maps1.cfm

ウェブ版「アトラス・オブ・カナダ」の画期的な点は、過去の版まで含めて画像ファイル化されていることだ。初版は1904年まで遡り、以後1978~95年の第5版まで、すべての版に全国鉄道路線図が見つかる。

カナダでは、鉄道の建設ブームが第1次大戦前後まで続いていて、たとえば初版の刊行時点では、カナディアンロッキーを横断する鉄道のうち、現在カナディアン・ナショナル鉄道 Canadian National Railway (CN) となっているイエローヘッド峠越えはまだ建設されていなかった。20世紀の同国路線網の変遷を知るうえで、この地図群は貴重な資料になるだろう。

地図は、左メニューにある「地図アーカイブ Map Archives」からたどれるアトラス各版のページにあるが、上記「鉄道輸送インフラ地図」の概要Abstractページに、鉄道地図のリンクがまとめてある。このインタラクティブマップは反応が遅めなので、各ページ下部にあるJPEGかPDFのファイルをダウンロードしたほうがいいかもしれない。

■参考サイト
アトラス・オブ・カナダ「地図アーカイブ」(英語版)
http://atlas.nrcan.gc.ca/site/english/maps/archives
アトラス・オブ・カナダ「鉄道輸送施設設備地図」概要
http://atlas.nrcan.gc.ca/site/english/maps/economic/transportation/pm_r/1
 ページ下部の Related Maps(関連地図)の項に、各年代の鉄道地図へのリンクがある。

次に、各鉄道会社はどんな鉄道地図を作っているだろうか。

Blog_canada_railmap_hp3

もと国鉄であるカナディアン・ナショナル鉄道(CN)のサイト(下記)は、鉄道地図が比較的充実していて、興味深い。

「鉄道駅とターミナル Rail Stations and Terminals」は路線網と駅を示している。オリジナルの路線図ではなく、グーグルマップの機能を利用しているので、縮尺の拡大縮小が自在だ。円の記号はインターモーダルステーション(自動車など他の輸送機関との結節点)、三角形は(貨物)駅を表す。

CN線は赤色で最も目立つが、カナディアン・パシフィック(CPR)、BNSF鉄道、ユニオン・パシフィック(UP)など他の一級鉄道も、色を変えて表示される。ただ、ライバルのCPRだけ、地図を拡大表示していくと途中で表示が消えるのはなぜだろう。

「ネットワーク地図:CNは北米の鉄道 Network Map: CN is North America's Railroad」は、大西洋、太平洋に加えてメキシコ湾にも積出し港を持ち、メキシコの鉄道とも連絡運輸を行うという、目覚ましい拡張ぶりをアピールした地図(JPEG画像)だ。別の地図「太平洋・大西洋横断輸送 Trans-Pacific and Trans-Atlantic shipping」によれば、CNがヨーロッパだけでなく、中国にも事務所を数か所構えていることがわかる。カナダにとって中国は、すでに合衆国に次ぐ貿易相手国だという。

「CNと一級鉄道 CN and Class 1 Railroads」は、自社の鉄道網と、カナダおよびアメリカの一級鉄道の路線群を比較したものだ。会社別に路線の表示・非表示を変えられるので、どの会社がどの地域にネットワークを張っているかが一目でわかる。北米の鉄道網理解の入門編にいいだろう。

「線路荷重-重量制限 Rail Capacity - Weight Limitations」は、自社路線の線路荷重を分類したPDF地図だ。ポンド(lbs.)別5段階に路線を色分けし、管理区分 subdivision 名を記載していて、CN鉄道網の詳細図としても使える。

■参考サイト
カナディアンナショナル鉄道  http://www.cn.ca/
Maps  http://www.cn.ca/en/shipping-maps.htm
ネットワーク地図
http://www.cn.ca/documents/Investor-Factbook-current/System-Map.pdf

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もう一つの一級鉄道、カナディアン・パシフィック鉄道 Canadian Pacific Railway(略称CPRまたはCP、日本語の正式社名は「カナダ太平洋鉄道」)のサイトには、ささやかな「路線網地図 Network Map」しか見当たらなかった。

これもインタラクティブマップで、初期画面は、カナダからメキシコにかけての広域図に、自社路線(赤い線)と連絡運輸路線が表示されている。上部にある「Make a Selection(選択する)」のドロップダウンリストをクリックすると、合衆国との連絡ルート、インターモーダルターミナルや積替え施設の配置などが現れる。

■参考サイト
カナディアン・パシフィック鉄道  http://www.cpr.ca/
 トップページ > Customers > New Customers > Where We Ship
Network Map 直接リンク
http://www8.cpr.ca/cms/English/Customers/New+Customers/Where+We+Ship/default.htm

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旅客鉄道専業のVIA(ヴィア)レール VIA Rail は、公式サイトのトップページに運行路線図(クリッカブルマップ)へのリンクを掲げている。クリックすると拡大図が表示される。ルート別に色分けされた地図は、貨物鉄道のそれに比べ大きくて、好感が持てる。図上でルートにマウスを載せると、車両や等級、時刻表などの列車情報に、また、駅の位置にマウスを載せると、グーグルを利用した周辺地図を含む駅の情報にリンクする。

■参考サイト
VIAレール  http://www.viarail.ca/
 トップページのWelcomeから入り、最初のページで右肩に運行路線図がある。または、そのページのメニュー Trainsを選択。
PDF版の時刻表(英語版)
http://www.viarail.ca/en/useful-info/printable-timetables

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最後にもう一つ、興味深いサイトを紹介しておきたい。「アルバータ州鉄道地図帳 Atlas of Alberta Railways」と称するサイトだ。ロッキー山脈の東側に位置するアルバータ州の鉄道史を、廃止路線を含めて一つずつていねいに紹介している。

記事には、当時の写真とともに詳細な鉄道地図が添えられているが、その中には、等高線やぼかし(陰影)で地勢を表現した本格的な地形図も含まれている。驚くことに、どれも旧版地形図のコピーではなく、個人の地図製作者によるオリジナルの作品だという。

アルバータ州と西隣のブリティッシュコロンビア州との境界で、西海岸へ向かう鉄道がロッキーの大陸分水嶺を越えていく。この3つの峠道、南から順に、クローズネスト峠 Crowsnest Pass、キッキングホース峠 Kicking Horse Pass、イエローヘッド峠 Yellowhead Pass のいずれの線路も、勾配や曲線半径などデータも交えながら完璧に描かれているのには、感心する。

大容量のファイルが多いため、フラッシュインターフェースを使用しているが、別途ダウンロード用ファイルが用意されているのも親切だ。

■参考サイト
アルバータ州鉄道地図帳
http://railways-atlas.tapor.ualberta.ca/cocoon/atlas/
 Main Linesは幹線鉄道の記述、Alberta Networkはその他の小鉄道の記述、Before the Railwaysはアルバータの地歴概説と鉄道前史、Railway Maniaは建設史。上部メニューのMapsで地図の一覧ページに飛べる。

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