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2010年11月18日 (木)

カナダの旅行地図-バックロード・マップブックス

Blog_canada_touristatlas1
シリーズの1点
カナディアンロッキー 表紙
 

アメリカのデローム DeLorme やベンチマーク・マップス Benchmark Maps のような地勢のわかる道路地図帳が、カナダにもないものか、と探したことがある。数年前までは見当たらなかったが、嬉しいことに今は存在する。マッシオ・ベンチャーズ Mussio Ventures という会社が刊行している「バックロード・マップブックス Backroad Mapbooks」というシリーズだ。カナダ南部の多くの地域をカバーして、2010年のカタログでは21種が出ている。

Back Roadを辞書で引くと、裏道、田舎道などと訳されているが、これを日本でいう抜け道地図だろうと早合点してはいけない。会社のサイトにある沿革の記述から少し引用しよう。

「(探検好きの創立者マッシオ兄弟は、)ブリティッシュコロンビア British Columbia 州南部ハリソン湖 Harrison Lake 周辺にある、迷路のような林道を通り抜けるために、本と地図をいくつか持ってきた。道を探そうとして、兄弟は大いに失望を味わっていた。地域には実際、何百もの道があるにもかかわらず、どの資料にも幹線道路しか示されていなかった。(中略)『なぜ全部の道路を記したガイドブックを作る人がいないのか。』 そう考えた野心家の兄弟はブレーンストーミングを開始し、その結果、バックロード・マップブックのアイデアが生まれた。」(下注)

*注 デローム社 DeLorme の州別地図帳も同じような体験から生まれた。本ブログ「アメリカ合衆国の州別地図帳-デローム社」参照。

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凡例図
(左)道路 (右)旅行情報
 

つまり、新大陸でバックカントリー Backcountry と呼ばれるような田舎や未開地の、細かい道まですべて記載した地図帳というのが、タイトルの意味するところだ。事実、自動車道路の種別はフリーウェー(高速道路)、ハイウェー(幹線道路)から林道、四輪駆動向きの難路まで、色や線で10段階に区分される。トレール(小道)もトランスカナダトレール Trans Canada Trail を含めて6段階、さらにフェリーや外輪船の航路、トレッキングの目印となる送電線やパイプラインまで、線状のものならなんでも取り込む勢いだ。

旅行情報の記号は、主に暗緑地に白抜きのピクトグラムが使われている。キャンプサイト(設備別)のほか、クロスカントリースキー、ダウンヒルスキー、サイクリング、ダイビング、フィッシング、ゴルフコース、ハイキング、パドリング(カヌー、カヤック)など15種を超えるアクティビティの適地が確認できる。

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サンプル図
from Backroad Mapbooks: Vancouver, Coast and Mountains
© 1993-2011 Backroad Mapbooks

 

加えて、筆者が感心するのは地勢表現だ。冒頭に掲げたデローム社の地図帳は、等高線も陰影(ぼかし)もかなり粗っぽかった(近刊は改良)。ベンチマーク社は陰影と、高度に応じて連続的に変化する彩色がとても美しいが、等高線は入っていない。対してバックロード・マップブックスの地図は、等高線、陰影、連続彩色の3要素がうまく組合わされ、立体感の表現が実にみごとだ。

等高線は100m間隔なので、平野部では精度的に十分とはいえないが、ロッキー山脈のような険しい山岳部のページを眺めると、あたかも空を飛んでいるような錯覚に陥る。等高線の色を通常の地形図より控えめにして、売り物である細かい道路網の読取りに支障がないよう配慮してあるのもいい。

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プリンス・エドワード島 表紙
 

地図帳の後半は、地図を補完するレクリエーション・スポットの説明に充てられている。1か所につき数行から十数行、特色やデータが文章で綴られ、地図索引とピクトグラムが添えられているので、地図との照合も容易だ。兄弟の目指したのがただの道路地図ではなく、森の中へ何冊も運ばなくても済むような、ガイドブックと地図を兼ねた本だということが、この構成からわかる。サイズがA4判に近い横21.5cm ×縦28cmと、デローム地図帳の半分強のサイズなのも、野外での使用を考えてのことだろう。

1993年に始まったシリーズは、現在、会社の本拠地ブリティッシュコロンビア州のほか、アルバータ Alberta、マニトバ Manitoba、オンタリオ Ontario、ニューブランズウィック New Brunswick、ノヴァスコシア Nova Scotia 各州の全域をカバーするまでに拡大した。

ほかにも、サスカチュワン Saskatchewan 州南部、ケベック Québec 州の2点、それにプリンス・エドワード島 Prince Edward Island(州も同名)がカタログに上がっているが、これは、2005年までに刊行された地勢表現がない白地図ベースのバージョンだ。表紙が、南洋の島の地図と見間違えそうな派手なデザイン(右上写真)なので、すぐに区別がつく。会社の目標は、数年以内にカナダ全土を地図化することで、ゆくゆくは国際舞台への進出も夢に描いているそうだ。

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同社は、このほかにもいくつかの地図シリーズを製作している。一つは、この美しい地図データベースを転用した1枚ものの旅行地図だ。人気の旅行地については、「野外レクリエーション地図 Outdoor Recreation Map」(右写真左側)と銘打って、現在7点を一般の販売ルートに乗せている。耐水紙に両面印刷され、縮尺は地図帳より大きめ(図を単純拡大)なので、細部まで読取りやすくなっているのが特徴だ。

また、オンデマンド印刷サービスは「トポマップ Topo Map」(右写真右側)と称し、自社のショッピングサイトで扱っている。地図帳の1ページ分を2倍強(面積は4倍強)に拡大してくれるものだが、さすがに等高線や主要道路が太くなりすぎるきらいがある。

地図帳のデジタルデータ版もCD-ROMで提供されているので、専らモニター画面で見たいという人はこちらを利用するとよい。バックロード・マップブックスは日本のアマゾンでも入手可能だが、1枚ものは自社サイトに拠るしかない。

■参考サイト
バックロード・マップブックス http://www.backroadmapbooks.com/
 トップページ > Products > Backroad Mapbooks
 各巻のDetailsボタンから、サンプル図や内容見本が見られる。このサイトで直接購入も可能だが、送料が大変高いので、アマゾンを利用するほうがいいだろう。

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