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2010年10月28日 (木)

マカオの地形図

マカオ(澳門)Macau / Macao は、香港中心街から西へ60km、珠江の河口をはさんだ対岸に位置し、広州、香港などが立地する珠江デルタ(三角州)の一角を占めている。古くからの市街は、中国本土と地続きのマカオ半島 Península de Macau にある。南の沖合に浮かぶタイパ島(氹仔島)Ilha de Taipa とコロアネ島(路環島)Ilha de Coloane は、近年急速に開発が進んだところで、2島を隔てていた海が陸地化されて、実態は1つの島と化している。面積29.5平方km(2009年現在)という小さなマカオだが、世界遺産に登録された旧市街、音に聞こえたカジノなど、今や全域が観光地だ。

ここは長らくポルトガルの植民地だったが、1999年に中国に返還され、香港とともに50年間一定の自治が認められる特別行政区となった(下注)。官製地形図も、公開が制限されている本土と違って、外国人でさえ自由に購入することができる。作成している機関は、中国語で地圖繪製暨地籍局(暨は及びの意)、ポルトガル語で Direcção dos Serviços de Cartografia e Cadastro(略称DSCC)といい、測量・図化と地籍管理を行う部局だ。地形図はすでにデジタル化が完了し、発注すると、デジタルプリントしたうえ、エンボスのスタンプを押して送ってくれる。

*注 正式名は、中国語で澳門特別行政區(現地では香港同様、繁体字を使用)、ポルトガル語で Região Administrativa Especial de Macau。英語では Macao Special Administrative Region。

■参考サイト
地圖繪製暨地籍局(DSCC) http://www.dscc.gov.mo/
 英語版の場合、地形図リストは、トップページ > Services and Cost > Providing topography map

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1:20,000地形図
 

小規模なエリアとあって、縮尺1:20,000の地形図1面で全域をカバーする。上記の3地区は南北に並んでいるので、A0判用紙が縦長に使われている。1:20,000の地図記号はとてもシンプルだ。凡例を見ると、市街地は街道(道路)以外に、樓宇(建物)、木屋/棚屋(簡易建物)、興建中樓宇(建設中の建物)、公園/草地の区別しかない。注記も大通りや緑地、大きな施設などに限られていて、あくまで都市計画のベースマップといった仕様だ。

等高線は20m間隔とこの縮尺にしては粗いが、ていねいに段彩がかけられているので、地勢を明瞭に読み取ることができる。マカオ半島は元来、いくつかの小島が砂州によって大陸側と連結されたいわゆる陸繋島だった。核となった島は、市街地の随所に小高い丘となって残存している。また、タイパ島とコロアネ島には砂浜以外、平地がほとんどなかった(タイパ島は2つの島に分かれていた)。今から100年前には、マカオの面積はわずか11.6平方km、現在の4割ほどしかなかったのだ。山や丘が強調されたこの地図から、かつての原風景を想像してみたい(下注)。

*注 土地の拡張ぶりは、DSCCが製作した "The Evolution of the 20th century of Macao SAR(マカオ特別行政区の20世紀の発展)" に詳しく図示されている。この図はプリントの発注も可能。
http://www.dscc.gov.mo/dscc/engl/newthematic1.htm
また、DSCCのサイトで、1912年の実測図を含む古地図が閲覧できる。
http://www.dscc.gov.mo/dscc/engl/newoldmap.htm

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1:20,000地形図の一部
(c) 2010 Direcção dos Serviços de Cartografia e Cadastro
 

縮尺1:10,000、1:5,000は各地区1面ずつに分かれ、3面で域内をカバーする。等高線は10m間隔になるが、段彩は省かれている。市街地の描写は1:20,000と比べて格段に細かくなり、おそらく街路はすべて記載されているようだ。しかし、建物名称はせいぜい役所や大規模な公共施設が表示されるにとどまり、相変わらず街案内の用はなさない(下注)。

*注 この稿を読まれる方は先刻ご承知だと思うが、地形図に町歩きのガイドを期待するのは無理がある。商店や観光スポットの位置を調べるなら、その目的でデザインされた市販の旅行地図を用意したほうがよい。ちなみに筆者は、「地球の歩き方」マカオ編の添付地図が大変詳しいので気に入っている。

DSCCが開設するサイトを見ていたら、これら地形図シリーズのほかに、縮尺1:45,000の特別図が紹介されているのに気づいた。名称は「澳門特別行政區與周邊地區地圖(マカオ特別行政区及び周辺地区地図)」。英語サイトで "Macao Special Administrative Region, Zhuhai and Zhongshan city(マカオ特別行政区、珠海市及び中山市)"と表記されているとおり、隣接する本土の2市域を図郭に含めた大判(横77×縦105cm)のフルカラー地図だ。DSCCと広東省国土資源庁の合同編集、広東省地図出版社の刊行とクレジットされている。

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1:45,000 澳門特別行政區與周邊地區地圖
 

特筆すべきは繊細なぼかし(陰影)を用いた地勢表現で、山地をまるで立体視しているような感覚を味わえる。また、マカオの区域は、等高線や市街地も上記1:20,000と同レベルの描写が施されて、詳しさが際立っている。片や本土の表現はより粗く、段彩はつけられているものの、等高線は50m間隔だ。主要街路が太く描かれ、道路番号も添えられているところを見ると、道路地図からの転用だろう。とはいえ、先述した官製地形図は中国本土をほとんどシルエット程度にしか扱っていないので、マカオとその後背地域との位置関係や交通網を知るには格好の地図だ。

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1:45,000 澳門特別行政區與周邊地區地圖の一部
(c) 2010 Direcção dos Serviços de Cartografia e Cadastro
 

ちなみに、香港の測量局が刊行している1:300,000「香港與其鄰近地區」にも、マカオとその周辺が含まれている。珠江デルタの地理をより広範囲に把握したいと思う方には、こちらもお薦めしたい。

マカオの測量局に関する情報は、「官製地図を求めて」を読まれた方からご提供いただいた。この場を借りて感謝申し上げたい。

■参考サイト
「官製地図を求めて-マカオ」
http://map.on.coocan.jp/map/map_macao.html

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