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2009年7月23日 (木)

オランダの鉄道地図 II-ウェブ版

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ウェブサイトで見られるオランダの鉄道地図にはどんなものがあるだろうか。

(以下の記述は、改稿した2021年8月時点の状況に基づいている。)

オランダの旅客輸送の大半を担っているオランダ鉄道 Nederlandse Spoorwegen (NS) のサイトでは、「Voorwaarden en folders(利用規約およびパンフレット)」のページに、2種の鉄道地図が挙がっている。

■参考サイト
オランダ鉄道-利用規約 https://www.ns.nl/voorwaarden.html
または、トップページ(オランダ語版)最下段のメニューから "Voorwaarden en folders" を選択

列挙されているカテゴリーを下へ見ていくと、
"Informatie(情報)" の段に「Spoorkaart van Nederland(オランダ鉄道地図)」
"Tariefkaarten(運賃地図)" の段に「Tariefeenhedenkaart van Nederland(オランダ運賃単位地図)」
のリンクが見つかる。

NS オランダ鉄道地図 Spoorkaart van Nederland

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NS オランダ鉄道地図 2021年版 凡例部分
© 2021 N.V. Nederlandse Spoorwegen
 

これは旅客列車の運行系統と頻度を図示した地図で、毎年更新されている。もとはプライベートな路線図として Treinreiziger.nl のサイトで紹介されていたものだが、NSが権利を購入して、2018年から公式地図に位置づけられた。

現行版では省かれているが、2009年版では「鉄道地図をどのように使うか Hoe werkt de Spoorkaart?」という説明文があった。それによると、

「この地図では、線の色を追うことによって、列車系統がどこを走るかを容易に確かめることができる。線が、ある駅で途切れていればその系統の起終点であり、駅を通り抜けていれば経由地である。線の太さで、その列車系統の運行頻度(月~金曜、およそ7~19時の間など)がわかる。

夜間や週末には列車数が削減されることがある。すなわち、ラントスタット Randstad(4大都市圏、下注)の頻発区間では30分、ラントスタット圏外の、本数がより少ない区間では少なくとも1時間毎になる。この地図では発着時刻を示していないので、時刻表の代用にはならない。旅行計画にはNSなどのサイトを参照されたい」。

*注 ラントスタットは、アムステルダム Amsterdam、ロッテルダム Rotterdam、ハーグ(デン・ハーフ Den Haag)、ユトレヒト Utrecht の4大都市を結んだエリア。

色で運行系統を表すのは日本の鉄道地図でもおなじみだが、オランダの場合、かなり複雑だ。それでもなお、明確な色使いにより、それらの列車がどこから来てどこへ向かうのか、途中どの駅に停まるのか、さらには、どれくらいの頻度で来るのかが無理なく読み取れるようになっている。

NS オランダ運賃単位地図 Tariefeenhedenkaart van Nederland

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NS オランダ運賃単位地図 2021年版 凡例部分
© 2021 N.V. Nederlandse Spoorwegen
 

一方、こちらは路線ごとの運行事業者と運賃単位を表示した地図だ。

かつてはNSが独占運行していたオランダの近郊・長距離鉄道網だが、近隣諸国と同様、オープンアクセス(参入自由化)政策の遂行によって様相が流動化している。とりわけ地方路線では、国際交通企業の進出が著しい。北部や西部の運行はおおむねアリーヴァ Arriva に置き換わっていることが、この地図からわかる。

一方、運賃単位 Tariefeenheid というのは基本的には営業キロ数のことだ。ただし若干補正があるらしく、より正確に言うなら運賃計算キロになるだろう。地図上の各駅間に書かれた数字がそれを表している。

なお、ラントスタットの白枠で囲まれたエリアには「裏面を見よ Zie achterzijde」という注記があるが、公開されているPDFファイルには裏面(2ページ目のこと?)がない。同様に、南リンブルフの「拡大図 Uitvergroting」も見当たらない。

このほか、NSのサイトでは、テーブル形式の時刻表(PDFファイル)のダウンロードページに、時刻表番号を記載した索引地図がある。

■参考サイト
オランダ鉄道-時刻表ダウンロード
https://www.ns.nl/reisinformatie/download-dienstregeling
トップページ(オランダ語版)上部メニューの Reisinformatie > Meer > Spoorboekje downloaden

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NS 時刻表索引地図 2021年版
© 2021 N.V. Nederlandse Spoorwegen
 

このページで、「Trajecten A t/m G」はインターシティ(都市間特急)の時刻表、「Trajectnummers 1 t/m 129」は、その他の列車(国際列車を含む)の時刻表だ。それぞれクリックすると、次の画面に出てくるカテゴリーの末尾に「Spoorkaart trajecten(列車ルート地図)」のリンクが見つかる。

地図は基本的に、紙の時刻表の時代を踏襲したデザインだ。インターシティの図は低彩度のいたって地味な図柄だが、その他の列車のほうは、先ほどの「運賃単位地図」のように、運行事業者別に色を変えてカラフルに仕上げている(上図参照)。

さて、オランダの鉄道網は旅客輸送とともに、貨物輸送の面でも重要な役割を果たしている。多くが国際輸送で、とりわけドイツの有力な産業集積地ルール地方 Ruhrgebiet とヨーロッパ最大の貿易港ロッテルダム港とを結ぶルートは、ライン川の水運を補完する基幹鉄道軸だ。

しかし、旅客列車の運行頻度も高いため、輸送力のさらなる向上には限界がある。そこで、既存ルートをバイパスして港湾に直結する、新たな貨物専用路線が計画された。これが、2007年6月に開通した延長160kmのベーテュウェルート Betuweroute(下注)だ。ドイツ国境のゼフェナール Zevenaar からロッテルダム近郊のケイフック操車場 Rangeerterrein Kijfhoek を経て北海沿岸まで、国土を東西に貫いている。

*注 ベーテュウェ(ベートゥヴェ)Betuwe はバタヴィア Batavia のことで、ライン川 Rijn およびマース川 Maas の下流域を指す歴史的名称。

旅客列車が走らないため、上述の鉄道地図には描かれておらず、いわば幻の新線だ。しかし鉄道地図の中には、貨物輸送をテーマにしたものやインフラ管理の観点から作成されたものもある。そこでは、ベーテュウェルートが物流の動脈として、主役のごとく遇されている。

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ベーテュウェルートを走る貨物列車(2019年)
Photo by Rob Dammers at wikimedia. License: CC BY 2.0

オランダの新鉄道地図 Nieuwe spoorkaart van Nederland

鉄道による貨物輸送を促進するために設立されたオランダ・鉄道貨物情報財団 Rail Cargo Information Netherlands Foundation が以前、貨物輸送に関する鉄道地図をウェブサイトで公開していた。

この地図では、道路と水部で構成された単色のベースマップの上に、赤や緑の実線で鉄道路線を描いている。タイトルを見る限り何の変哲もなさそうだが、凡例に目を通せばユニークな地図であることは明らかだ。

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オランダの新鉄道地図
© 2009 railcargo.nl
 

赤い線は、オープンアクセス鉄道網 Open access rail network と説明されている(オランダ語の凡例では単に鉄道線 Spoorljin)。オープンアクセスとは、EC指令で示された目標に沿って、加盟各国が上下分離と併せて鉄道事業に適用した政策で、対価を払って線路使用権を得た事業者が列車を運行する。

それに対して緑の線は、貨物専用線 Dedicated freight railway line だ。ところが、ベーテュウェルートはそのどちらでもなく、緑の二重線の記号が与えられ、かつ凡例の最上段に置かれている。地図上でも、ウァール川 Waal に沿った独自のコースを走っていて目を引く。この地図は2006年ごろのものなので、ベーテュウェルートの開通に絡めて発表されたのかもしれない。

残念ながらこの地図は、後年サイトがリニューアルされた際にリンクが失われてしまい、ネット上で見ることができなくなった。

■参考サイト
鉄道貨物情報財団 http://www.railcargo.nl/

プロレール オランダ鉄道地図 ProRail Spoorkaart Nederland

鉄道事業の上下分離で、オランダの鉄道インフラの管理運営は、従来のNS(オランダ鉄道)から、2003年に設立されたプロレール社 ProRail の手に移された。そのウェブサイトでは、鉄道インフラの大要が概観できる鉄道地図が提供されている。

■参考サイト
プロレール社-鉄道地図 https://www.prorail.nl/reizen/spoorkaart
または、トップページ上部メニューの Reizen > Spoorkaart

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プロレール オランダ鉄道地図
© 2021 ProRail
 

縮尺は1:300,000で、ベースマップには同国の官製1:250,000図を縮小使用している。道路、集落、水部、植生、行政界などが詳細に書き込まれており、地図の見栄えでも他と一線を画している。

どのような内容が盛り込まれているかは、凡例にある地図記号を見ていくのが手っ取り早いだろう。表記がすべてオランダ語なので、参考までに和訳を付した。

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同 凡例
 

地図記号では、赤色が旅客および貨物線、茶色が貨物専用線で、それぞれ太さで単線複線等を区別する。プロレールの所管かどうかは別として、保存鉄道やライトレールまで網羅しているのが興味深い。くだんのベーテュウェルートは地図上で、複線・貨物輸送を意味する茶色の太線で描かれている。周囲が赤色の路線ばかりなので、異色の存在だ。

記号はほかにも、駅の種類や運行機能など、鉄道施設に関するさまざまなデータを包括的に表示していて、前回紹介したNSの列車系統図と併用すれば、オランダ鉄道網への理解がいっそう深まるに違いない。図の左上隅には、折図を想定して「オランダ鉄道地図 Spoorkaart Nederland」と記した表紙部分が配置されているが、印刷版の配布サービスがないのが惜しまれる。

(2021年8月13日改稿)

★本ブログ内の関連記事
 オランダの鉄道地図 I
 オランダの鉄道時刻表

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 ベルギーの鉄道地図
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版

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