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2009年7月19日 (日)

オランダの鉄道地図 I

オランダの列車と聞けば、ドッグノーズ、ドッグヘッドなどと呼ばれた黄色の電車が思い浮かぶ。丸く膨らんだ前面の形状が犬の顔立ちを思わせるのでそのあだ名がついたのだが、一世を風靡したこの形式(下注)も、スマートな新車に押されてもはや現役を退いたようだ。

*注 Mat '54形と後継の Mat '64形がある。両者とも「犬の頭 Hondekop」と呼ばれるほか、後者は区別のために「猿の頭 Apekop」の愛称もあった。

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ドッグノーズなどと呼ばれたMat' 54形電車(2008年)
Photo by Rob Dammers at wikimedia. License: CC BY 2.0
 

しかし注目すべきは顔の形ではなく、これが動力分散型の電車だという点だ。日本では特急でも電車が用いられるが、ヨーロッパの郊外列車や急行列車は、電気機関車が動力を持たない客車を牽引するスタイル(動力集中型)をとることが多い。その役を敢えて電車に担わせているのは、日本のように短距離高頻度の列車ダイヤが組まれていることの証しだろう。

事実、オランダは、ヨーロッパで最も鉄道が利用されている国だ。単位面積当りの路線の密度はベルギーやドイツに及ばないものの、旅客輸送密度では鉄道王国スイスをも凌ぐ。発車時刻が等間隔のいわゆるパターンダイヤが採用され、国内のインターシティは特別料金が不要であるなど、気軽に使える交通機関の役回りが強く意識されている。

これから2回にわたり、そのオランダの鉄道路線を描いた鉄道地図(オランダ語でスポールカールト Spoorkaart)を見ていくことにしよう。

(以下の記述は、改稿した2021年8月時点の状況に基づいている。)

単独の印刷物では、「オランダ鉄道地図 Spoorwegkaart van Nederland」と題された1枚ものの大判地図が手元にある。縮尺は1:400,000。NS(オランダ国鉄)高等職業学校 Hogere Bedrijfsschool の編集とクレジットされており、製作時期はかなり古くて、1965年9月現在だ。

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オランダ鉄道地図 1965年版
 

地図は、河川や海域などの水系と国境だけを置いた基図の上に、全路線と駅を手描きした古風なスタイルだ。使われている記号も単純明快で、単線は実線、複線は二重線、貨物専用は破線で表される。電化区間は赤で塗られ、これが結果的に路線網の骨格を浮かび上がらせている。駅も機能で分類され、旅客・貨物、旅客のみ、貨物のみを扱うものがそれぞれ記号で示される。

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同 一部を拡大
ラントスタット周辺
 

昨今のようにデジタル化が進む前は、こうした特大判の印刷地図が公式の路線図として各国国鉄で作成されていた。しかしこれらはあくまで業務用で、専門家や愛好家はともかく、一般市民が旅行に携行するようなものではない。その用途なら、鉄道時刻表 Spoorboekje (下注)の添付地図が十分に役を果たしただろう。

*注 NSオリジナルの冊子時刻表は2010年を最後に廃刊となり、現在は民間組織により刊行されている。本ブログ「オランダの鉄道時刻表」参照。

オランダの公式時刻表の場合、表紙の直後に折りたたんだ鉄道地図がはさんであり、拡げると本のサイズの数倍の大きさになった(下写真は1988年版)。地図は、路線網が水平、垂直および斜め45度の直線に単純化された、いわゆるスキマティックマップ(位相図)だ。オランダ鉄道のシンボルカラーというべき濃い黄色の地の上に旅客用の全線全駅が表示され、路線ごとの時刻表番号が添えられている。

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公式時刻表 1988/89年版 添付地図
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同 一部を拡大
© 2021 N.V. Nederlandse Spoorwegen

上の1988/89年版ではまだ日本の時刻表地図と同じような「路線図」だが、下の2000/01年版になると運行系統ごとに線が引かれ、列車のルートがわかりやすくなった。

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公式時刻表 2000/01年版
添付地図の一部を拡大
© 2021 N.V. Nederlandse Spoorwegen

私的サイトに、過去の時刻表添付地図のフル画像ファイルがある。日付は2004年9月になっているので、上述のものより新しい。印刷物のスキャニングではなく、印刷用のデータファイルから直接PDF化したものらしく、拡大しても鮮明な画像が得られる。トップページからのリンクで紹介すべきだが、リンクが見つからないので、やむをえずPDF(131KB)の直接リンクを記すことにする(リンク切れご容赦)。

■参考サイト
http://www.astro.rug.nl/~islands/spoorkaart.pdf

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このほか、地図製作会社のカルト・スタジオ Carto Studio とべンヤミン出版社 Benjaminse Uitgeverij が2011年版として刊行した「オランダ鉄道地図 Spoorkaart Nederland」(右写真は刊行元サイトから)がある。オランダ全図のほか、アムステルダムおよびロッテルダム周辺のメトロ路線網を含む詳細図、近隣諸国を含む広域図が収載されている。下記サイトに紹介がある。

■参考サイト
Carto Studio - Bestellen
https://www.cartostudio.nl/bestellen/
なお、カルト・スタジオ社は2021年3月末に解散したため、このサイトも閉鎖される可能性がある。

Benjaminse Uitgeverij - Spoorkaart Nederland
https://www.cyclingeurope.nl/routes/spoorkaart/

次回はウェブサイトで見られる鉄道地図を紹介する。

(2021年8月11日改稿)

★本ブログ内の関連記事
 オランダの鉄道地図 II-ウェブ版
 オランダの鉄道時刻表

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 ベルギーの鉄道地図
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版

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