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2009年5月 7日 (木)

フランスの道路地図帳-ブレー・フォルデクス社とIGN

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フランスの道路地図帳 Atlas routier France がミシュランの独占ではない証拠に、もう2社紹介しておきたい。一つは、ブレー・フォルデクス社 Blay Foldex だ。このブランドでは、道路地図よりもオレンジと黄色の表紙をもつフランス諸都市の市街図(プラノランジュ Plan orange、写真)のほうが馴染みがある。もともと道路地図を作っていたのはレクタ・フォルデクス社 Recta Foldex で、市街図のブレーBlayとは別の会社だったのだが、1993年に両社が合併して、地図出版のレンジが一挙に拡大した。

道路地図帳に関しては前回紹介したミシュランのライバルだが、こちらの品揃えはわかりやすい。最も薄手なのは縮尺1:1,000,000(100万分の1)のフランス全国版で、普通紙版と合成紙版 plastifié の2種がある。より詳しい1:250,000はフランス、ベルギー、ルクセンブルクを収録し、A4判ハードカバー(右下写真)と、各ページを折畳んでコンパクトにしたスパイラル綴じ版 à spirale、それに合成紙版の3種が用意されている。

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1:1,000,000シリーズならコンパクトで、4.50~4.95ユーロという価格もお手頃だ。しかし、フランス全体(コルシカ島を除く)が1m四方の用紙に収まるような縮尺なので、詳しさの点で物足りず、せいぜい主要道路網や都市の位置関係をつかむ程度の利用法だろう。

実際にドライブに携行するのなら、やはり後者のシリーズが必要になる。それでもハードカバーなら288ページが8.50ユーロで、現在のレートで約1100円に過ぎない。フランス語圏がかかる隣接2国も含まれて、情報量から見たコストパフォーマンスは非常にいい。ミシュランの「レサンシエル」(前回記事参照)も、後述するIGNの地図帳も、価格設定でフォルデクスの激安版を意識しているのは間違いない。

地図の仕様をミシュランと比較してみよう。道路網や集落、区間距離、道路番号など主要な図式はほぼ同じだが、インターチェンジだけはミシュランが取付道路を平面図で描いているのに対して、フォルデクスは円を4等分した記号で表している。実物風に描いたところで、縮尺が小さくては読み取りにくいはずだ。

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ブレー・フォルデクス社道路地図の例
シャモニー付近(前回ミシュラン社の例とほぼ同じエリア)
© 2009 Blay Foldex
 

森林は薄い緑の塗りで表してはいるが、地勢表現を省略しているので、山岳地域か平原なのか、わからないのが残念だ。地図デザインで何を優先するかは常に難題で、道路地図に土地の起伏を描き加えるのは、雰囲気づくりの効用はあっても必須事項ではない。むしろ、この措置によって観光情報が判読しやすくなっていることは確かだ。張り巡らされた grande randonnée, GR(長距離歩道)は赤の点線で容易に追えるし、旗竿形の鉄道記号の中で緑色で区別された観光路線がよく目につく。

ちなみに青色の旗竿も随所に見られるが、これは運河の記号だ。内陸の大量輸送手段としてまず運河が造られ、鉄道がその後を追ったという発達過程を念頭に置けば、理屈に合った設定なのだが、鉄道ファンはその意外性につい混乱してしまう。

巻末には郵便番号つき(ミシュランは県コードのみ)の地名索引も完備されて、実用性においてはミシュランと互角の勝負をしている。価格差も考慮するなら、選択は大いに迷うところだ。

■参考サイト
ブレー・フォルデクス社 http://www.blayfoldex.com/
 道路地図帳は、Nos produits > Atlas

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フランスの国土地理院 IGNも1:250,000道路地図帳を刊行している。写真のスパイラル綴じ(15.90ユーロ)とは別に、「格安 Prix Mini」と称して市街図などのページを省いたペーパーバック版(9.95ユーロ)がある。

フランス旧来の地形図体系では1:100,000の次に小さいのがこの縮尺だったが、全16面あった区分図シリーズは、地方別の道路地図20面に姿を変えた。それを集成したのがこの地図帳だ。しかし、長い時をかけて磨かれたミシュランやフォルデクスを前にすると、道路地図としてのデザインにまだ工夫の余地があると思う。例を挙げれば、他社に比べて道路区分に色数を使い過ぎているし、大きめの注記文字が図上に散乱して、スマートさに欠ける。地勢のぼかし(陰影)の質は区分図時代より落ちて、赤みがかった色といい、立体感の乏しい描き方といい、フォルデクスのように潔く省略することを勧めたくなる。

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IGN道路地図の例
© 2009 IGN
 

その中で観光情報だけは赤の斜体文字が見やすく、量的にも他社より充実していて、旅行地図の分野で民間会社を凌駕するIGNの本領が発揮されている。営業上は routier(道路の)を名乗るほうが訴求効果が高いかもしれないが、優れた民製図が存在するのにあえて同じ分野に参入しても成功はおぼつかない。表紙の隅に遠慮がちに添えてある touristique(旅行の)を強調した編集に切り替えて、差別化を図るべきだと思う。

■参考サイト
IGN http://www.ign.fr/
 道路地図帳は、Boutique loisirs > Cartes et Guides > Cartes routières et Atlas

上記地図は、アマゾン、紀伊國屋BookWeb、自社サイトなどで購入できる。なお、日本のサイトは送料が安い代わり、品切れも多い。

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