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2009年1月

2009年1月29日 (木)

新潮社の日本鉄道旅行地図帳

このブログではヨーロッパの鉄道地図を各種取り上げてきたが、日本でも目下、画期的なシリーズが刊行中だ。昨年(2008年)5月の発刊から9ヶ月、ついに筆者の住む関西編まで揃ったので、ここで少し感想を記しておこう。

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日本鉄道旅行地図帳
関西編2 表紙
 

地図の電子化が進む一方で、アイディアを競うように実用本位の地図帳が書店の棚を賑わせている。このシリーズも、地図出版の傾向と鉄道趣味のブーム化とを追い風に企画されたに違いない。刊行予告の時点では、手を変え品を変えてよく作るものだ、となかば呆れて眺めていたが、第1号を手にとって少なからず驚いた。盛りだくさんの内容とこだわり抜いた編集、まさに日本の鉄道を徹底的に楽しむために作られた、他に類を見ない地図帳だったからだ。

新潮社刊「日本鉄道旅行地図帳」は、エリア別に北から12分冊とし、旧領土・植民地の別巻も予定されている。メインテーマとなる鉄道地図は、現状報告にとどまらず過去と未来にも目を向けているのが新鮮だ。

今を描く「鉄道旅行地図」は、現存鉄道の全線全駅を、数値地図の標高データを用いて地勢を精密に描き出したベースマップ上に図化したものだ。縮尺は各号の中では統一されているが、北海道、東北などは1:800,000、南関東、東海、関西などは1:500,000と、鉄道網の疎密度によって変えている。都市圏は拡大図がある。路線表示についてはJRと私鉄の単線・複線に分類し、信号場や貨物駅、スイッチバックや急勾配区間を注記している。別ページで写真と解説をつけた名駅舎・鉄道保存施設、一口コメントを添えた車窓絶景など、鉄道関連の見どころ紹介も楽しい。

題名に「旅行」と銘打っているとおり、地図には百名山、さくら名所、名城、名湯、その他名所旧跡の記号がプロットされ、地名の傍らに土地の名産品がさりげなく記されている。地図帳が鉄道ファンに限らず、旅好きな層全般に支持されているのも頷ける。

山岳地帯は鉄道にとって建設・運行の難所である一方、旅行者にとっては車窓の変化が列車に乗る楽しみを誘う。地図帳ではそういう地域を選んで、三次元の鳥瞰図で紹介している。これまでの9号から拾うと、狩勝峠、板谷峠、清水トンネル、碓氷峠、箱根富士、立山黒部、大井川と指折りの名所ばかりで、峡谷や山腹を縫う鉄路のかぼそげな様子が臨場感をもって伝わってくる。

関西編では、これが奈良飛鳥と京都近傍の国宝所在地を示す図になっている。発想は大変ユニークだが、遠方になるほど面積がひずむため、一部の注記が集中して錯雑感を招いてしまった。垂直視点にしたほうが分かり易かっただろう。東京の地下鉄立体透視地図も同様で、固定の視点で立体的に見せるには限界があり、表紙にあるような標高地形図に重ねれば十分ではなかったか。

過去を記録するのは「廃線鉄道地図」で、過去帳入りした路線やルート変更の跡を駅名入りで、かつ現役線との接続状況も含めて明らかにしている。幾度も変遷を重ねている路線は、時代別の分図が用意されているし、スイッチバックは消滅したものを含めて解説つきの配線図がある。

全国津々浦々の路面電車、森林鉄道、簡易軌道まで洗いざらい調べ上げ、丹念に書き込んだ執念にはまったく脱帽する。筆者も旧版地形図を渉猟したことがあり、昔どこに鉄道が延びていたかはたいてい知っているつもりだったが、この地図を読めば、こんなところにも、という小鉄道がまだまだ現れる。これまで廃線跡探訪記などで個別の路線図は目にしても、全国規模の一覧図にまとめたものはなく、将来にわたって交通発達史の貴重な資料となるに違いない。

未来予想図としては、東京近郊の構想線・夢想線が特集されている。事情通にとってはこの項の監修者である川島令三氏の著書で既知の情報とはいえ、一般の読者は興味津々で眺めることだろう。同じように未来形だったはずが、図らずも過去完了になってしまった国鉄予定線・未成線の一覧図もあり、鉄道に託された見果てぬ夢に思いを馳せることができる。

各号には地域特集として、特徴的なテーマを取り上げたコーナーがある。上述の鳥瞰図や構想線一覧もその一つだが、ほかにも、昭和初期の蛇腹折り鉄道地図を紹介したり(東北編)、蒸機のメッカ、梅小路蒸気機関車館をレポートする(関西編2)など、どこまでも読者を飽きさせない。さらに車両基地一覧、軟券博物館、そして後半には路線と駅の詳細なデータ集等々があり、たかだか50ページ前後の冊子としては、信じられないほどの密度を有する。

諸外国の鉄道地図帳が、おおむね路線あるいは列車データの図化に特化した、いわば専門店であるのに対して、こちらは痒いところに手が届くコンビニのような店づくりになっている。筆者は紹介記事を書こうとして一度ならず読み返したが、そのたびに新たな発見があり、遅々として筆が進まなかった。大仰ではなく、日本の鉄道140年の歴史を地図上に焼き付けた記念碑的労作と言うべきだろう。

ところで、従来、鉄道地図というと、時刻表の索引地図のように、弧状に連なる日本列島を矩形の図郭に収めるため、距離や方位を歪めるのが通例だった。それに対して、この地図帳は正縮尺(1つの図の中で縮尺が一定)を標榜している。

識者の書評で、日本初の正縮尺鉄道地図を謳うのは編集者の不勉強で、1966年に鉄道図書刊行会から「日本鉄道線路図」が出ていると指摘されていた(「鉄道ジャーナル」2008.11 p.142)。興味を覚えていたところ、さっそく刊行元の鉄道誌(「鉄道ピクトリアル」2009.1)に復刻版が掲載された。確かに全国同一縮尺、全線全駅の先駆的な著作だが、白地図に路線を記入しただけの至ってシンプルなものだ。初のタイトルは譲っても、情報量や多様性の点で、今回のシリーズとは比較にならないことを言い添えておきたい。

■参考サイト
新潮社「日本鉄道旅行地図帳」 http://www.shinchosha.co.jp/railmap/

★本ブログ内の関連記事
 日本鉄道旅行地図帳 歴史編成

2009年1月22日 (木)

フランスの1:100,000地形図

フランスの国土の面積は54万平方キロと日本の1.45倍、いうまでもなく西ヨーロッパ最大で、ヨーロッパ全体で見てもロシア、ウクライナに次ぐ広さだ。カバーする地形図の面数も当然多く、1:25,000は日本の地形図4~5面分もある大判の集成図へ図郭が拡張されつつあるとはいえ、なお1,800面近くを数える。4倍の面積を表現できる1:50,000でも、旧来の経緯度区切りのため、1,100面を超える。

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(左)図番53 Grenoble, Mont Blanc 1982年版
(右)図番45 Annecy, Lausanne 2003年版
 

そこで、フランス全土を手軽に図上旅行しようと思えば、次に大きい縮尺である1:100,000に行き着く。フランスの北部から西部にかけては広大な平野となだらかな丘陵地帯が卓越するので、ある程度広いエリアを見渡せる中縮尺図が使いやすい。しかも、これより小さい1:250,000では等高線が表示されなくなるから、最小縮尺の地形図としての役割も担っている。それゆえに(?)、横120cm×縦89cmの大判用紙にもかかわらず、価格は1:50,000の2/3に抑えられている。面数も74面に減って、個人で買い揃えようと決意しても、なんとか手の届く範囲だ。

1:100,000地形図は、1997年まで Série verte(セリ・ヴェルト、すなわちグリーンシリーズ)と呼ばれ、緑色の表紙が目印だった。1998年から順次、Carte topographique au 1:100 000(10万分の1地形図)から取った TOP100 という名称に変わった後、現在の表紙には Carte de promenade(散策地図)と、参考用途が示されている。フランス語のプロムナードは、徒歩に限らず自転車やクルマで行くときにも使うので、広い意味での散策用というメッセージだろう。縮尺から言っても、歩きよりは交通用具で移動する旅に適している。
(上の写真では左がグリーンシリーズ、右がTOP100。下の写真はTOP100の裏表紙に載っている索引図で、グリーンシリーズの時代から全く変化はない)。

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TOP100索引図
 

実用性の強調は、地図記号に反映されている。一般的な地形図に比べて、道路に紅、オレンジ、黄と目立つ色が配され、地点間距離も書き添えられて、道路地図を思わせる。しかし、これは経緯度区切りの旧図時代からの伝統だ(当時の色は赤、黄の2色)。鉄道の駅はグリーンシリーズ以降、旅客営業するものを紅色で塗って、列車で行ける駅を判別できるようにしている。

TOP100になって付加されたのは旅行情報を表すピクトグラムで、教会、博物館、歴史的建造物、案内所、スポーツリゾート、温泉、古城その他28個の記号が設定されている。図上では往々にして、この記号が集落や道路の表示の一部を隠してしまうほどだ。主要なハイキングルートや自転車道も、鮮やかな紅色で加えてある。

少し気になるのは、版を重ねるごとに地形描写が軽んじられる傾向が見えることだ。グリーンシリーズ以前、日本の地形図のように平図で売られていたときの1:100,000は、この国らしい明晰さを湛えた美しい印面が特徴的だった。たとえばアルプスの山々は、濃いぼかし(陰影)と精密な岩肌の表現で、彫りが深く厳然とした表情を帯び、対照的に控えめな薄青色を使った氷河は、陽光に輝いているように見えた。

近年のTOP100の山岳表現は、明らかに同じ版であるにもかかわらず、コピーを繰り返したように線が太く荒くなり、周囲と調和していない。地勢のぼかしは、グリーンシリーズ時代はまだ濃かったが、TOP100では薄めになって立体感が弱まった。カラー印刷の方式がスポットカラー(特色インクを使用)からプロセスカラー(CMYKの4色)に変わって、等高線も鮮明さを減じている。すべての図葉を調べたわけではないが、同じく転換が図られた1:25,000に比べても、1:100,000は美的水準の低下が顕著なように思われる。観賞用ではないにせよ、実用性を追求するあまり、ベースマップの吟味が疎かにならないように願いたいものだ。

フランスの官製地形図はフランス国土地理院 Institut Géographique National(IGN)のオンラインショップで購入できるほか、各国の主要な地図店で扱っている。

【追記 2009.5.17】
2009年3月から1:100,000新シリーズの刊行が始まり、本項で紹介した旧図は廃版となる。詳しくは、本ブログ「フランスの1:100,000地形図、新シリーズ登場」にて。

■参考サイト
フランス国土地理院 http://www.ign.fr/
官製地図を求めて-フランス
http://map.on.coocan.jp/map/map_france.html

★本ブログ内の関連記事
 フランスの1:25,000地形図
 フランスの1:50,000地形図

2009年1月15日 (木)

フランスの鉄道地図 IV-ウェブ版

前回紹介した列車や路線のネットワークを表す鉄道地図に対して、今回は、路線の設備や整備状況を地図で詳述したフランスのウェブサイトを見てみよう。

(記載したURL等は、本稿を全面改稿した2021年2月現在のものである)

SNCFレゾー SNCF Réseau
https://www.sncf-reseau.com/

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1997年、旧フランス国鉄SNCFは、列車運行とインフラ管理を別組織化する、いわゆる上下分離の対象とされた。その際、インフラ保有の受け皿として設立されたのがフランス鉄道線路事業公社 Réseau Ferré de France (RFF) だ。しかし2015年の組織再編で鉄道事業は再びSNCFに一本化され、子会社であるSNCFレゾー(レゾー Réseau はネットワーク、路線網の意)がインフラの管理と保守を担うようになった。

その公式サイトには、RFFから引き継がれた地図のリンク集があり、組織のミッションにふさわしい図面が収められている。特に強調されているのが、鉄道路線網の近代化(更新)Moderniser le réseau だ。改良工事の対象区間をプロットした図 Carte des chantiers が全国および地域圏別に多数提供され、計画の着実な進行をアピールする。

こうしたカラフルな地図が幅を利かせるなかで、半ば埋もれるようにして、基本図というべき路線網図がある。メニューからでは探しにくいので、該当ページへの直接リンクを記しておこう。

フランス鉄道路線網図 Carte du réseau ferré en France
https://www.sncf-reseau.com/fr/carte/carte-reseau-ferre-en-france

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ここでは、SNCFの管理下にあるフランス全土の鉄道全線(一部の他社線を含む)が図示される。駅はもとより操車場や待避設備なども詳細に記載され、フランスの鉄道インフラの配置が一目でわかる優れた地図だ。

凡例によると、線の色が路線の性格を表現している。青色は LGV(高速専用線 Ligne à grande vitesse、下注)、紫は旅客・貨物共用の在来線、緑は貨物線、橙は他社線・観光鉄道だ。さらに線の形状で路線の仕様を表す。三重線は3線以上、二重線は複線で、片側に立てた短線は電化線を意味する。また、グレーの破線は休止線だ。

*注 なお、青緑の「他社管理の高速専用線 LGV gérée par un autre gestionnaire d'infrastructure」の記号は、スペインに直通するペルピニャン以南の高速線に適用されるもの。

実はこの仕様は、1940年代からSNCFとIGN(フランス国土地理院)が共同製作していた印刷版鉄道地図の流れを汲むもので、その意味で長い歴史をもつ公式資料だ。2013年に印刷物としても復活を果たしている(「フランスの鉄道地図 V-テリトワール社新刊」で詳述)。

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フランス鉄道路線網図
© 2021 SNCF
 

次のページではそのアトラス(地図帳)Atlas 版も提供されている。

鉄道路線網アトラス L'Atlas du réseau ferré français
https://www.sncf-reseau.com/fr/carte/atlas-reseau-ferre-francais

索引を含めて82ページあり、上記「フランス鉄道路線網図」を区分図化した12面と、主要都市圏の拡大図のほかに、各路線の1日当たりの列車本数を線幅で表現した図や、SNCFの地域支部体制などの主題図も収められている。ページサイズがA4判相当なので、印刷には便利だ。

RAIL21-フランス鉄道網 Le réseau ferré français
https://rail21.pagesperso-orange.fr/Lignes.htm

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これは鉄道地図サイトというより、鉄道のデータ集に地図が使われている例だ。データは線区ごとにまとめられているのだが、その検索方法が二通りある。

一つは駅名を手掛かりにするもので、左メニューの青色で示されたアルファベットのリンクをたどって任意の駅名を選択する。もう一つは茶色で示された "Réseau Est"(東部ネットワーク)などからリンクしている路線図上で選択する。この路線図は、東部 Est、北部 Nord、西部 Ouest、南西部 Sud-Ouest、南東部 Sud-Est の5面あり、別途、高速線 Lignes à grande vitesse の専用図も用意されている。

任意の線区を選択すると、次の画面で3つのボタンが現れる。左の「Caractéristiques(線区の特徴)」は、開業日、複線化開業日をはじめ、最急勾配、最高地点の標高、最小曲線半径、電化方式、電化開業日、信号方式、トンネル・橋梁の名称・長さ、最高速度などの項目が表形式で記載されている。

中央の「Plan de ligne(線路平面図)」は、駅の旅客扱いの有無、電化方式、単線・複線、貨物線などの区分を平面図上で記号化したものだ。右の「Profil en long(線路縦断面図)」では、距離と勾配、トンネル・鉄橋の長さが縦断面図に表されている。

SNCFの地図にはここまで詳しいデータは記載されておらず、その点で、鉄道網の基礎データが得られる貴重なサイトといえるだろう。

(2021年2月25日改稿)

★本ブログ内の関連記事
 フランスの鉄道地図 I-IGN刊行図
 フランスの鉄道地図 II-テリトワール社
 フランスの鉄道地図 III-ウェブ版
 フランスの鉄道地図 V-テリトワール社新刊
 フランスの鉄道地図 VI-シュヴェーアス+ヴァル社

 フランスの鉄道時刻表

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 イギリスの鉄道地図 V-ウェブ版
 ベルギーの鉄道地図
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 スイスの鉄道地図 IV-ウェブ版
 イタリアの鉄道地図 III-ウェブ版
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版

2009年1月 8日 (木)

フランスの鉄道地図 III-ウェブ版

ウェブサイトで公開されているフランスの鉄道地図は、なかなか充実したラインナップだ。テーマとしては、列車や運行系統のネットワークを表現したものと路線の設備を詳述するものの2種類に大別できるだろう。量が多いので、2回に分けて紹介したい。

(掲載のURLや画像は、本稿を全面改稿した2021年2月現在のものである)

前者の鉄道地図は以下のサイトで見ることができる。

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フランス国鉄 SNCF 旅行サイト
https://www.oui.sncf/

全土で列車運行を担っているフランス国鉄SNCFの旅行サイト OUI.sncf に、TGVやインターシティの運行系統を表した路線図がある。説明するまでもなく、TGV(テージェーヴェー)は高速専用線を経由する特急列車、インターシティ(フランス語でアンテルシテ Intercités)は在来線特急だ。

 

TGVとインターシティの路線図(運行系統図、PDF形式)
https://www.oui.sncf/ext/editorial/guide-voyageur/carte-destinations.pdf
(トップページからの階層が深かったり、メニューからはたどりにくかったりするので、直接リンクで記す。リンク切れご容赦)

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SNCF特急路線図(部分)
© 2021 SNCF
 

路線図の赤い線はTGV国内線、紫色は国境を越える国際列車(TGV、THALYS、TGV Lylia)、黄緑色はインターシティ、黄色は夜行インターシティ(同 アンテルシテ・ド・ニュイ Intercités de nuit)を表している。首都パリを中心として特急列車網の骨格を形成するTGVと、それを補完するインターシティという関係だ。

また、SNCF本体のサイト www.sncf.com には、TGVと国際特急の運行系統だけを抽出した路線図がある。高速線から在来線への積極的な乗り入れで、きめ細かい交通網を確立していることがよくわかる。同じようにインターシティだけの路線図も用意されているが、TGVへの転換が進んだ結果、事実上、高速専用線が未整備のルートを表すものになってしまった。

SNCF - TGV路線図(PDF)
http://medias.sncf.com/sncfcom/pdf/destinations/Carte_ReseauTGV.pdf

同 インターシティ路線図(PDF)
http://medias.sncf.com/sncfcom/pdf/cartes/IC/carte_intercites.pdf

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SNCFインターシティ路線図(部分)
© 2021 SNCF

こうした長距離優等列車以外に、鉄道旅行ではローカル列車を利用する機会もあるだろう。このタイプの列車群は TER(テーウーエル、下注)と呼ばれ、フランスの州に相当する行政単位である地域圏 Région ごとに運営されている。そのため、TERに関するSNCFのサイト構成は地域圏別で、路線図や時刻表も同様だ。困ったことに、各地域圏ページは細部の構成が統一されておらず(かつフランス語のみ)、路線図(へのリンク)も決まった場所にあるわけではない。

*注 地域圏急行輸送 Transport express régional の頭字語。

SNCF - TER
https://www.ter.sncf.com/

トップページにあるフランス本土全図のクリッカブルマップか、その下のドロップダウンリスト(下図参照)で見たい地域圏を選択する。

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トップページでの地域圏選択
(クリッカブルマップまたはドロップダウンリスト)
 

地域圏別ページでは、左メニューの "Services & gares(サービスと駅)" のサブメニューから、"Plan des lignes(路線図)"、"Carte du réseau(ネットワーク地図)" などのキーワードが含まれる記述を探す。

下図はノルマンディー地域圏の例だが、"Services & gares" メニューの中に、"Carte du réseau NOMAD TRAIN" というサブメニューがある(NOMAD はノルマンディーのTERの愛称)。そのページに飛ぶと、路線図のインタラクティブマップとともに、PDF地図のダウンロードアイコンが見つかる。

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地域圏別ページで
"Services & gares" のサブメニューにあるキーワードを探す
 

例:ノルマンディー Normandie 地域圏の路線図(直接リンク)
https://sncf-ter.latitude-cartagene.com/assets/normandie/carte_region.pdf

これ以外の路線図はファイル名に作業用の通番などを含んでおり、データ更新によってリンク切れになる可能性が高いので、直接リンクの記載は割愛する。

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ノルマンディー地域圏路線図(部分)
© 2021 SNCF
 

なお、本土とコルシカ島を合わせて13ある地域圏(2016年以降)のうち、首都パリ Paris を中心とするイル・ド・フランス Île-de-France 地域圏の路線網は「トランシリアン Transilien」と呼ばれ、TERの範疇に含まれない(トランシリアンについては下記参照)。また、コルシカ島の路線網は、SNCFではなくコルシカ鉄道 Chemin de Fer de la Corse (CFC) が運営している。

SNCFトランシリアン Transilien
http://www.transilien.com/

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SNCFがイル・ド・フランスで行なっている近郊旅客輸送サービス、トランシリアン Transilien のサイトにも、交通地図へのリンクを集めたページがある。

 

トランシリアン -路線図 Les plans du réseau
https://www.transilien.com/fr/page-deplacements/les-plans-du-reseau

ここでは4種のカテゴリーに分類されている。

・Les plans du réseau francilien(フランシリアン(下注)路線図)
 イル・ド・フランスの全路線図、メトロ路線図など

・Les plans du réseau noctilien(ノクティリアン路線図)
 0時~5時台に運行される深夜バス、ノクティリアンの路線図

・Plan des lignes(運行系統図)
 車内壁面で見かけるような運行系統ごとの路線図

・Les plans des aéroports de Paris(パリの空港図)

*注 フランシリアン francilien は、名詞として「イル・ド・フランス人」、形容詞として「イル・ド・フランスの」を表す新語

最初のカテゴリー「フランシリアン路線図」のページにある "Le plan général du réseau francilien"(フランシリアン総合路線図)が、トランシリアンとメトロの路線網の全体図になっている。RERとトランシリアンは極太線、イル・ド・フランスの運賃ゾーン外のトランシリアンは破線、メトロは太線、トラムは二重線、バスは細線(下注)で表され、駅・停留所、系統番号、運賃ゾーンも図示されている。イル・ド・フランスの公共交通ネットワークが一望できる地図だ。

*注 バス路線のうち、T Zen は、トラムを模したデザインの、鉄道網と接続する新型低床バス路線、Mobilien(モビリアン)は、サービス改善のための新政策で導入されたバス路線のこと。

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STIF フランシリアン路線図(部分)
© 2021 © Île-de-France Mobilités/LATITUDE-CARTAGÈNE

各地域の鉄道会社や運輸連合もさまざまな交通地図を公開している。イル・ド・フランス Île-de-France(=首都圏)の例で見てみよう。

パリ交通公団 Régie Autonome des Transports Parisiens, RATP

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RATPメトロ路線図
https://www.ratp.fr/plans

画面に見えている路線図は、パリ市内のメトロ Métro(地下鉄)、RER(エルウーエル:地域急行鉄道網)、Tramway(トラム)を示している。これらの路線網は上記「フランシリアン総合路線図」にも描かれているものだ。

それ以外にこのページの下方に、興味深く、かつ実用的な路線図へのリンクがある。

・Plans de quartier(地区図)
 汎用のインタラクティブ市街図にRER、メトロ、バスなどの駅の位置を表示する。レンタサイクル「ヴェリブ Vélib (Vélos en libre-service)」のステーションを表示する機能もある。

・Plans de secteur(区分図)
 これは、均一な縮尺(いわゆる正縮尺)の市街図に駅・バス停や走行ルートを書き加えたものだ。これまで見てきた多くの路線図のような、路線網を水平、垂直および斜め45度の直線に単純化したスキマティックマップ(位相図)に対して、駅の地理的な位置や周辺の道路網などがわかるので重宝する。

イル・ド・フランス・モビリテ Île-de-France Mobilités(旧 STIF)

ダウンロード版路線図 Plans à télécharger
https://www.iledefrance-mobilites.fr/le-reseau/plans

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イル・ド・フランスの運輸連合 Syndicat des transports であるイル・ド・フランス・モビリテのサイトにも、同様の路線図をダウンロードできるページが設けられている。

首都圏以外の地域でも、運輸連合などからさまざまな路線図が公開されている。多くはフランス語表記だが、Plan du réseau(ネットワーク図)、Plan de lignes(路線図)、Horaire(時刻表)、télécharger(ダウンロードする)などの単語を手掛かりに情報を引き出すことができるだろう。

最後に、個人サイトの力作を紹介しておこう。

Ferrocarta.net フランス編

フランス語版 http://ferrocarta.net/france/france_fr.html
英語版 http://ferrocarta.net/france/france_en.html

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路線図では、列車のルートを種別や系統ごとに描き分け、同時に主な駅間の所要時間や運行頻度を表示している。画像はJPEGファイルだが、小さな文字が問題なく読めるし、地図の縁にある矢印で隣接図にジャンプできるのも親切だ。

フランス編は、全国が18面に分割されており、夜行列車は別途1面にまとめてある。列車種別や系統によって配色を変えて、同じ路線を TGV、インターシティ、TER が共有している状況を表現する。また、高速専用線 Ligne à grande vitesse, LGV は破線で区別している。

所要時間は 1h30 のように表記し、運行頻度(ただし、地方線における平日の列車本数)は列車種別と同じ色の数字で示す。地勢表現はないものの、NASAが提供する衛星画像を下敷きにしているので、山地と平野が(拡大図では森林が)うっすらと見えている。

主要都市については拡大図が用意されている。そこには地下鉄やLRTの路線網と全駅が示され、さらに欄外に各鉄道事業者サイトや幹線時刻表へのリンク集がある。フランス語版と英語版の両建て、頻繁な更新と、内容の充実度は注目に値する。

同サイトでは、フランスのほかに、ブラジル、カナダ、アメリカ合衆国の路線図も提供されている。

次回は、鉄道インフラをテーマにした地図を紹介する。

(2021年2月24日改稿)

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 フランスの鉄道地図 IV-ウェブ版
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 フランスの鉄道地図 VI-シュヴェーアス+ヴァル社

 フランスの鉄道時刻表

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 イギリスの鉄道地図 V-ウェブ版
 ベルギーの鉄道地図
 ドイツの鉄道地図 IV-ウェブ版
 スイスの鉄道地図 IV-ウェブ版
 イタリアの鉄道地図 III-ウェブ版
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版

2009年1月 1日 (木)

ヨーロッパの鉄道地図 I-ボール鉄道地図帳

鉄道利用の旅行者によく知られているトーマス・クックのヨーロッパ鉄道地図の紹介は後回しにして、今回はマイク・G・ボール Mike G. Ball 氏の編纂する「ヨーロッパ鉄道地図帳 European Railway Atlas」を取り上げたい。

というのも、ヨーロッパ全域をカバーする鉄道地図の中で鉄道愛好家向けのものとしては唯一であり、久しぶりに復刊されたからだ。氏の労作は1990年代にイアン・アラン出版社 Ian Allan Publishing から5分冊の詳細版(イギリス諸島 British Isles 編、フランス・オランダ・ベルギー・ルクセンブルク編、デンマーク・ドイツ・オーストリア・スイス編、スカンジナビア・東ヨーロッパ編、スペイン・ポルトガル・イタリア・ギリシャ編)、ついでポケットサイズの1冊にまとめた抄録版が刊行されたが、その後は長らく廃刊のままだった。

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 ボール氏の旧著は下記で紹介している。
 イギリスの鉄道地図 III-ボール鉄道地図帳

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ヨーロッパ鉄道地図帳
(左)フランス・オランダ・ベルギー・ルクセンブルク編 1994年改訂版
(右)デンマーク・ドイツ・オーストリア・スイス編 1998年第2版
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ヨーロッパ鉄道地図帳 抄録版 1997年
(左)表紙 (右)裏表紙
 

昨年あたりから国・地域別の分割版が提供され始め、全域の完成が待たれていたが、2008年12月、ついに完全版の出来が発表された。表紙とも180ページ、地図は122面ある。1ページ1面で割り付けられており、残りのページは索引と後述する資料集だ。先行してPDFファイルがCD収録の形で有償配布されており、印刷本は追って刊行される。公式の紹介ページ(下記参考サイト)に、各国版1ページずつのサンプル図が掲載されている。筆者はまだ完全版を実見していないが、手元にあるフランス編とハンガリー編を参考にして内容を見てみよう。

■参考サイト
ヨーロッパ鉄道地図帳 http://www.europeanrailwayatlas.com/

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ヨーロッパ鉄道地図帳 国・地域別
(左)フランス編 (右)ハンガリー編
 

地図の縮尺は国・地域ごとに異なっている。数値を明示していないのでスケールバーから測ると、フランス編は本土1:1,800,000(180万分の1)、ハンガリー編は1:1,200,000(120万分の1)程度だ。残念ながらこの縮尺では全駅表示は不可能で、路線網の表現にとどまる。

だし、フランス編では、パリ Paris、リール Lille、リヨン Lyon 周辺について拡大図が用意されているので、RERのような近郊路線も省かれてはいない。また、コルシカ島 Corse の図はサルデーニャ島 Sardegna を含んでおり、本来はイタリア編に属するものだ。国別とはいえ、隣国の路線も簡略化されつつ描かれているので、国際路線を追跡するのに不自由はない。

凡例はフランス編が英、仏、独語、ハンガリー編にはハンガリー語が加わり、全域版ではEUの公用語数に匹敵するほどの言語が並んでいるのだろう。地図記号も多彩だ。線の形状で区別するものでは、標準軌でICが走る幹線、支線、貨物線(いずれも複線、単線の別あり)、休止線、それに狭軌の複線、単線、休止線などがある。フルカラーを生かした色による区別は、主に電化方式の違いを示していて、結果的に国ごとに支配的な配色が変わるので効果的だ。建設予定線と保存鉄道も色で判別できる。

しかし、労作に水を差すようだが、記号の設定のしかたには少々疑問がある。直線が複線を表し、直線の上にドットを並べて(だんごの串刺しに似た形状)単線を表すというのは、必ずしもわかりやすいとはいえない(下の画像参照)。そのつど凡例を参照しなくて済むように、たとえば複線は二重線、単線は一重線というような簡明な表現にすべきだろう。ついでに国境の記号も、色は赤ながら同じような直線にドットの串刺しで表現されていて、まぎらわしい。

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同 凡例の一部
 

それはさておき、この地図帳のコンテンツは鉄道地図だけにとどまらない。「ヨーロッパの鉄道への総合案内 A Comprehensive Guide to Europe's Railways」を標榜するのも故なるかな、地図帳につきものの地名索引のほかに、保存鉄道の一覧、鉄道と列車予約の取扱サイト、愛好家向けサイトなどが紹介されていて、調べものには重宝する。

全域版が上梓された後も、国・地域別版は並行して提供されるようだ。オーストリア、ベネルクス三国、イギリスとアイルランド、東欧諸国、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、北欧諸国、ポーランド、スロバキアとチェコ、南東欧諸国とトルコ、スペインとポルトガル、スイスの14分冊があり、上記公式サイトで発注すると、オンデマンド印刷、簡易製本で送られてくる。国によってはこれより詳細な鉄道地図が存在する場合もあるが、ヨーロッパ全域を統一された基準で網羅した意義は大きく、調査研究の基礎資料として利用価値は高い。

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ヨーロッパ全域版 表紙
 

【追記 2009.4.3】

全域版の印刷本が提供され始めたので、表紙の画像を掲げる。国・地域別版と同じオンデマンド印刷で、スパイラル綴じにされている。

次回はトーマス・クック社の鉄道地図について。

★本ブログ内の関連記事
 ヨーロッパの鉄道地図 II-トーマス・クック社
 ヨーロッパの鉄道地図 III-折図いろいろ
 ヨーロッパの鉄道地図 IV-キュマリー・ウント・フライ社
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版
 ヨーロッパの鉄道地図 VI-シュヴェーアス+ヴァル社

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