新線試乗記-横浜地下鉄グリーンライン
新横浜からJR横浜線に乗って、中山駅のホームに降りてみると、従来の橋上駅舎とは別に、東神奈川方に地下鉄への連絡口が出現していた。階段を下ってまだ真新しいJRの改札を抜け、もう1階分降りるとすぐに地下鉄の改札がある。そこからのエスカレータは案外長く、郊外の駅にしては深い位置にホームが作られている。
横浜市営地下鉄グリーンラインは、日暮里・舎人ライナーと同じ2008年3月30日に開業した日吉~中山間13.0kmの新線だ。正式には4号線なのだが、1号線(関内~湘南台)と3号線(関内~あざみ野)は一本の路線として運行しているので、見た目は2本目の地下鉄線ということになる。先輩の湘南台~あざみ野間は、今回ブルーラインと称して区別することになった。
![]() 路線図 |
ホームには胸の高さのホームドアが設置されていて、すでに日吉行きが入線していた。編成の短さに気づいて数えると4両しかない。それに車両自体もコンパクトだ。資料によれば、10000形の車体長は15m(先頭車は15.6m)、幅2490mmで、JRの20m車はもとより、ブルーラインの18m(先頭車は18.5m)、幅2760mmと比べても、一回り小さい。需要が高まれば中間2両を増結するそうだが、東横線に連絡する地下鉄という漠然と抱いていた亜幹線のイメージとは、ちょっと違う。
電車は、今や小断面地下鉄の定番となったリニア駆動で、集電方式も、ブルーラインの第3軌条に対して、こちらは天井にパンタグラフがある。なんでも、メーカーは神戸の川崎重工業で、神戸市営地下鉄海岸線を走る5000形と同じ規格なのだそうだ。東西の代表的な港町で、同系統の電車が走り出すというのはおもしろい。
![]() 10000形、停車中 (日吉駅にて撮影) |
きょうは金曜日、午後4時。帰宅時刻にはまだ間があるが、それでも座席が埋まり、立ち客もちらほらいる。利用実績は計画に満たないそうだが、京都の市内線を見慣れた目で見れば、結構乗っていると思う。ラッシュ時にはどれくらいになるのだろうか。
電車は中山駅を出ると、まもなく体感できるほどの急な上り勾配(58‰)にさしかかり、奈落からせり上がるように地上に出ていく。急勾配に強いというリニアの威力を見せつける場面だ。トラス橋で鶴見川を渡ると、川和町駅はもう高架上にある。このあたりはまだ、純農村だったときの風情をいくらか残しているが、ここからは造成されたニュータウンのエリアに入る。
グリーンラインが貫通する港北ニュータウンは、横浜市北部の丘陵地帯に広がる大規模な都市開発地区だ。事業は1970年代に始まったが、当初から鉄道用地が確保されていたので、この区間の線路は何度か地上に顔を出す。川和町を出るとトンネルだが、次の都筑ふれあいの丘駅の間にも明かり区間がある。ただし、高い擁壁に側面をふさがれているので、見通しは全く利かない。
再びトンネルに潜っているうちに、東から来たブルーラインといつのまにか交差する。センター南駅に到着したときには、北に向かって左側にブルーライン、右側にグリーンラインという配置になっている。両線の間は橋上のコンコースを介して往来するのだが、赤坂見附やJR御茶ノ水のように同一ホームで乗換えできるように造れなかったのか、という疑問がふと湧いた。前後の線路構造だけ見れば可能のようだが、素人にはわからない技術面または費用面の制約があったのかもしれない。
![]() センター南駅から北望 |
グリーンラインのホーム北端は、壁で遮られるブルーラインと違って、写真撮影の適地だ。両線がセンター北駅までの間、高架で仲良く並行しているし、背後で、モザイクモール港北の観覧車が格好のアクセントになってくれる。このアングルでは完全に都市化された風景だが、早渕川の谷に臨む斜面の随所に緑が残されているのが、車窓からも確かめられる。
センター北で地上区間は終わり、ここからは最後まで地下を進む。地図で追うと、北山田からは県道荏田綱島線の下を東へ向かい、途中でそれて日吉の洪積台地へ上がっていく。終点(正しくは起点)の日吉駅は、中山での横浜線の関係と同じく、東急東横線と直交する形で駅が設けられている。地下鉄の改札と向かい合うように新設された東急の地下改札から、直接ホームの渋谷方に上がれる。
東急の改札を横目に、東側にある出口を上がってみたところ、慶応義塾大学キャンパスのいちょう並木の脇に出た。夕暮れ近く、帰宅する学生たちの群れは圧倒的に、綱島街道を渡った東急駅舎に吸い込まれていき、新しい出入口には流れてこない。
![]() 地下鉄日吉駅東口 |
私が訪れたのは2008年5月で、東急日吉駅の2面あるホームの内側にはホームドアが設置済みだった。6月からここに目黒線が延長される。混雑を極める田園都市線が都心への唯一の足だった港北ニュータウンだが、こうして日吉経由が便利になっていけば、2本目の地下鉄がフル回転する日も遠くないのだろう。
■参考サイト
横浜市地下鉄グリーンライン
http://www.city.yokohama.jp/me/koutuu/greenline/
センター南付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/35.545600/139.574500
センター南付近のGoogleマップ
http://maps.google.com/maps?hl=ja&lr=&ie=UTF8&ll=35.5456,139.5745&z=17
★本ブログ内の関連記事
首都圏の新線
新線試乗記-ゆりかもめ豊洲延伸
新線試乗記-成田スカイアクセス
2008年開通の新線
新線試乗記-京都地下鉄東西線、太秦天神川延伸
新線試乗記-おおさか東線、放出~久宝寺間
新線試乗記-日暮里・舎人ライナー
新線試乗記-東京メトロ副都心線
新線試乗記-京阪中之島線
« 新線試乗記-日暮里・舎人ライナー | トップページ | 平凡社の中国地図帳 »
「日本の鉄道」カテゴリの記事
- ライトレールの風景-とさでん交通駅前線・桟橋線(2025.02.05)
- 新線試乗記-大阪メトロ中央線、夢洲延伸(2025.01.29)
- 祖谷渓の特殊軌道 II-祖谷温泉ケーブルカー ほか(2024.07.13)
- 祖谷渓の特殊軌道 I-奥祖谷観光周遊モノレール(2024.07.10)
- 鶴見線探訪記 II(2024.06.16)
中山駅から二ツ橋駅へ線路を建設すべきである。
投稿: ガーゴイル | 2023年3月28日 (火) 20時09分