新線試乗記-おおさか東線、放出~久宝寺間
今年(2008年)も首都圏と京阪神圏で新線の開業が相次ぐ。折に触れてこのブログに乗車記録を加えていこう。
去る3月15日に開業したJR西日本のおおさか東線に乗った。新幹線は別として、JRグループの新規開業はほんとうに久しぶりだ。2000年の仙石線あおば通延伸以来ではないだろうか。全線が青空区間(高架と盛り土)だが、それも既存の貨物線を旅客用に再整備したのだと聞けば、合点がいく。大阪市周辺で開発の手が加わっていない土地などほとんどありえないので、そうでもなければ地上を走らせることは不可能だったろう。
最終的には、新大阪から関西本線(愛称 大和路線)の久宝寺(きゅうほうじ)までの20.3kmとなる計画だが、その南半分、放出(はなてん)~久宝寺9.2kmが、今回先行して営業を開始している。
![]() 路線図 |
私は、奈良から大阪方面行きの大和路(やまとじ)快速で、久宝寺へアプローチした。このあたりへ足を延ばすこともしばらくなかったので、てっきり快速は王寺~天王寺間ノンストップだと思っていた。久宝寺も、上下ホームが遠く離れて、まるで別駅だった時代しか記憶にない。ここにあった竜華(りゅうげ)操車場はとうの昔に廃止され、跡地の再開発で全く様子が変わってしまった。久宝寺駅はもとの上り線側に高架駅舎と2面4線を構える立派な駅になり、駅前にはバスターミナルもできている。
![]() 久宝寺駅にて |
おおさか東線(以下、東線)には、朝夕に奈良~尼崎間の直通快速が設定されているが、訪れたのは平日の日中だったので、新規区間を普通電車が振子のように往復していた。快速が出た後、同じ内側線に、大和路線のカナリア色をまとった東線の6両編成が入ってくる。日中は毎時4本走るが、大和路快速が20分毎なので、ホームを共有する東線の発車間隔は一定になっていない。始発駅から乗り込んだのは、1両に数人だった。
大和路快速はホームを出るとすぐポイントを渡って外側線に移るが、東線電車は直進し、近畿自動車道をくぐると高架に上がっていく。右カーブの途中で最初の駅、新加美(しんかみ)がある。針路が西から北に変わる頃、左後方から関西本線百済貨物駅との連絡線が合流して、遠くまで見通せる長い直線区間にさしかかる。次の駅まで2.7kmも開いている。周辺は今でこそ中小の工場が区画を埋めているが、沿線で最後まで田園風景が見られた地域だ。
![]() DC牽引の貨物列車とすれ違う |
JR長瀬からしばらくは、以前から盛り土で2本の近鉄線をまたいでいた。近鉄が連続立体交差事業でJRの上空を高々と乗り越すようになったので、こちらはもとの盛り土を生かして複線化している。続くJR俊徳道(しゅんとくみち)とJR河内永和(かわちえいわ)の間が、わずか600mしか離れていないのは、どちらも近鉄との連絡駅だからだ。
駅名もそのまま借りている。後からできた駅に社名を冠して区別するのは、私鉄ならごく自然だが、JRの場合はまだ違和感がぬぐえない。とはいえ、JR東西線のときに連絡駅をことごとく異なる駅名にして、傲慢な印象を与えたことを思えば、時代は変わったと思う。
![]() JR俊徳道、近鉄大阪線と間近で交差 |
![]() JRを冠する駅名が3駅連続する ひらがなにすると、冗長さが目に付くが… |
次の高井田中央(たかいだちゅうおう)も、地下鉄中央線高井田駅の真上だが、大和路線に同名の駅があるので、ストレートに命名できなかったようだ。中央というのは直交する中央大通からとったらしいが、高井田の古い集落はもっと南にあるので、その意味で「中央」ではない。駅を出たところで、その昔、大和川の流路の一つであった長瀬川を越える。市街地の中に農地がぽつりぽつりと残っているのが眺められる。
![]() 高井田中央の駅前にちょこんとある地下鉄の出入口 (レンガ色の建物、2019年3月撮影) |
やがて大きく左にカーブし始めれば、14分のミニトリップもまもなく幕だ。電車基地へ分ける線路を右に見て、第二寝屋川のトラス橋を渡ると、片町線(愛称 学研都市線)が近づいて、放出(はなてん)のホームに滑り込む。難読駅名の一つだが、関西人には中古車業者のCMでなじみの地名だ。いつしか乗客は増えていて、1両から20人ぐらいが降りた。ここも順方向へは平面で乗り換えられるようにして、直通列車の少ないハンディをカバーしている。
![]() 放出駅に進入するおおさか東線の電車 |
城東貨物線の旅客線化は、武蔵野線の例のように、都心指向の放射状鉄道網に対する環状連絡線として構想されている。あれば便利に使う人もいようが、都心へ向かう輸送量とはとうてい比較にならない。おおさか東線の広報が、奈良から大阪キタへの2本目の直結ルートという側面を強調しているのは、そうした理由だろう。レールはキタを貫いて神戸・宝塚方面へも伸びているので、来年開通する近鉄~阪神連絡ルート(「新線試乗記-阪神なんば線」参照)の先手をとったともいえる。
とはいえ、線内運行中心の現状は、華々しいイメージからはほど遠い。幹線に客を供給するフィーダー線の役回りからどのように脱皮させていくのか、全線開通後を見据えたJR西日本の次なる戦略が楽しみだ。
■参考サイト
放出駅付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/34.688100/135.563200
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