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2008年5月 1日 (木)

ロシアの鉄道地図 II-ウェブ版

今回はウェブ上で公開されているロシアの鉄道地図を見よう。

Blog_russia_railmap_hp1

一つ目は、ロシア鉄道 Российские железные дороги / Russian Railways の公式サイトに掲載されているものだ。サイトはロシア語版と英語版が設けられているが、鉄道地図はキリル文字を用いたロシア語版しかなく、ロシア鉄道を構成する17の地域支社ごとに1面ずつ作成されている。英語版サイトでは以下のURLがメインページになる。

■参考サイト
Structure (of Russian Railways)
http://eng.rzd.ru/wps/portal/rzdeng?STRUCTURE_ID=174

まず、鉄道網を表現したクリッカブルマップからして、地域支社の名称と相互の位置関係が一目でわかる優れものだ。この地図または下欄のリンクから各地域支社の詳細ページに飛ぶと、地域支社の簡潔なプロフィールとともに鉄道地図が見つかる。

Blog_russia_railmap_hp2

ちなみに、同サイトのロシア語版では、写真集 Фотогалерея / Photo Gallery の中に、鉄道地図だけを集めたページもある。また、この写真集には車両、列車、子供鉄道、施設、鉄道風景など豊富な画像が収められ、ロシア鉄道の素顔を知るのに格好の材料を提供している。

■参考サイト
鉄道地図一覧(ロシア語版)Схемы железных дорог
http://press.rzd.ru/wps/portal/press?STRUCTURE_ID=820
写真集メインページ(ロシア語版)
http://press.rzd.ru/wps/portal/press?STRUCTURE_ID=119

さて、その鉄道地図だが、行政区分別に塗り分けたベースマップの上に、路線が目立つ赤のラインで引かれ、駅を球状の記号で並べるというものだ。駅名には起点からのkm単位の距離が併記されている。前回紹介した鉄道地図帳と比較すると、同じ地図作成機関ロスカルトグラフィアのコピーライトが表示されているにもかかわらず、表現にはかなりの相違がある。

ウェブ版は、今も述べたように起点からの距離が書かれているが、地図帳は、道路地図によくあるように主要駅間の距離表示になっている。それにウェブ版では小駅(機能していない駅?)が省略されているようだ。路線の描き方で見ると、ウェブ版は地図帳に比べてかなり単純化されていて、時刻表の鉄道路線図という印象だ。ルートは直線的だし、幹線と支線の区別もない。

その点、地図帳は極力実際の経路に近づけた表現になっていて、幹線かどうかも線の太さでわかる。ウェブ版はJPEG画像で、細かい文字が一部読み取りにくいが、印刷物ではその心配はない。このように概して地図帳のほうに一日の長があるのだが、ウェブ版に記載されている亘り線や短絡線が、地図帳では無視されていたりするので、やはり複数の情報源で補うべきだろう。

Blog_russia_railmap_hp3

二つ目の鉄道地図は、距離や方角をデフォルメしたいわゆるスキマティックマップ(位相図)で、旧ソビエト連邦全域をカバーする個人の労作だ。うれしいことに英語版も用意されている。全体では相当大きなサイズになるため、横7×縦8=56枚に分割した画像で詳細を見るようにしてある。

■参考サイト
Russian, CIS and Baltic Railway Map(英語版)
http://parovoz.com/maps/supermap/index-e.html

左上隅に凡例があるが、それによると、まず彩色による区分で、予定線・工事線、廃止線・休止線、旅客輸送をしない単線とする単線、産業用の単線、旅客輸送をする複線としない複線、単線複線が入り混じる線区の別を示す。そして、線の種類による区分で、鉄道フェリー、電化線、狭軌線、3線軌道、ヨーロッパ標準軌道を表す。この組み合わせで路線の性格を詳しく読み取ることができる。例えば、モスクワとサンクトペテルブルクを結ぶ幹線は緑の二重線で描かれているので、全線が旅客輸送をする複線で、かつ1.5~3KV(実際は交流3KV)で電化されていることがわかる。

図上のルートは直交および斜め45度に単純化され、およその方向を示すに過ぎない。中間駅も大胆に省略されているが、その代わり、公式版鉄道地図には見当たらない貨物専用の枝線などがずいぶん発見できる。そのほか、地下鉄のある都市名は太字、路面電車のある都市は斜体で表されていて、都市交通を調べる手がかりになる。

このように、ロシアの鉄道ネットワークの全貌を一望することができる画期的な資料地図なのだが、広大な地域だけに、調べる側としては位置を特定する材料がほしい。だが、路線網以外に書かれているのは、単純化された海岸線と地域支社の境界線のみだ。地域支社の略称が付されているが、ロシア語をラテン文字に転写したもので、例えば、北部鉄道は英訳の Northern Railways ではなくロシア語で「北の」を表すセヴェルナヤ Северная の頭3文字の転写 SEV が使われている。ロシア以外の諸国も同様で、ウクライナに至っては地域鉄道別になっている。筆者は最初、どのあたりの路線網なのか皆目見当がつかなかった。

2種のウェブ版鉄道地図を一言で評すると、前者は旅行者用、後者は調査用だ。用途に応じてお使いになるといい。

★本ブログ内の関連記事
 ロシアの鉄道地図 I
 ロシアの鉄道を地図で追う

 近隣諸国のウェブ版鉄道地図については、以下を参照。
 フィンランドの鉄道地図
 バルト三国の鉄道地図
 ヨーロッパの鉄道地図 V-ウェブ版

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