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2008年3月 6日 (木)

ハンガリーの道路地図帳-カルトグラフィア他1社

道路地図帳はクルマのドライバーのためだけにあるのではないと、筆者は思っている。鉄道やバスを利用する旅のプランニングにも、国や地域について調べ物をするときにも、一定程度大きい縮尺で、地名、道路網、地点間の距離、市街地の広がりなどがわかる道路地図帳は大変役に立つ。機能一辺倒でなく、旅心を誘うような工夫が施されていれば、なおさら歓迎だ。

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カルトグラフィア社
の道路地図帳表紙
 

カルトグラフィア社のハンガリー道路地図帳(右写真)は、この国のことをほとんど知らなかった頃に、地名を検索する目的で購入した。表紙の MAGYARORSZÁG(マジャルオルサーグ)はマジャル人の国、すなわちハンガリーのことだ。

地図の上で赤枠で囲まれた地名に気づく。凡例を見ると、それは「見どころ」を表していて、さらに枠内を黄色に塗っているのは美観都市 Picturesque town の意味だとわかる。赤の点線を沿わせた道路は景色のいい道で、周辺に点在する記号は、展望台、古城、宮殿、修道院、博物館のような観光スポットを示すものだ。該当区域はたいてい国立公園か、景観保護地域のアミ(網点)が被されている...。

こうしてページを繰るうちに、皆目わからないハンガリー語の注記も、にわかに興味の対象へと浮上してくる。道路地図帳が未知の国への案内役に変身するときだ。

カルトグラフィア社のことは、別稿「ハンガリーの旅行地図-カルトグラフィア社」で紹介している。筆者の手元にある道路地図帳は、同社のシンボルカラーである黄色いカバーを付けた横14.5cm×縦24cm、144ページのコンパクトな冊子で、全国を見開き45面に分割した縮尺1:250,000の地図に、地名索引がつく。同社はA4変形サイズの中型地図帳も刊行しているが、旅行に持参するなら小型のほうが扱いやすいだろう。

地図には地勢表現はなく、ベージュ色の市街地とアップルグリーンの森林がアクセントになっている。道路記号は自動車専用道(ドイツでいうアウトバーン)を、緑の間に黄を挟んだ太い線で強調する一方、一級道を緑、二級道を赤、地方道を橙、その他を黄と色分けする。注目すべきはサイクリングを推奨する道路の表示があることで、日本の地形図にある有料道路の記号に似て、道路の中央に黒点が並んでいるのがそれだ。選択基準は知らないが、平野、山間を問わず国内をくまなく巡っている。

鉄道はマゼンタの実線で、標準軌、狭軌、ラック式と区別され、駅舎が線路のどちら側にあるかもわかる。このような交通路の表示に加えて、先述の旅行情報がこまめに記載されているわけで、眺めていても、いっかな飽きることがない。

さて、道路地図で目的の町までたどり着いたら、次は市街図が必要になる。1:250,000の縮尺では町の中の様子までとうてい描けないからだ。同社の中型地図帳には市街図が付いているようだが、小型版にもあればと思っていたところ、サルヴァシュ・アンドラーシュ社 Szarvas András とディマップ社 Dimap の共同事業による道路地図帳(下写真)に出会った。サイズはカルトグラフィア社と変わらず、メインの地図の縮尺も同じ1:250,000だ。

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サルヴァシュ・アンドラーシュ社の道路地図帳表紙
 

道路地図は、全体的に見て旅行情報が控えめで、道路網の表示を主体にすっきりとデザインしている。例えば、カルトグラフィア社ならインターチェンジの誘導路や交差点のロータリーを描くなど、細部にもこだわりを見せるが、こちらのインターチェンジは円の中に番号を記入しただけの簡単なものだ。端的な言い方が許されるなら、徹底して読み深めたければカルトグラフィア、直感的な認識力を優先するならサルヴァシュというところか。

しかし、同社の地図帳の真髄は、むしろその先にある。道路地図と地名索引の後に、実に盛りだくさんの主題図が続くからだ。1:16,000市街図がなんと101個所、1:27,000旅行地図が13個所、1:64,000旅行地図が6個所、最後に1:15,000のブダペスト市街図が付いて、計80ページ。全208ページの4割を占めている。

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地図サンプル(地図帳裏表紙を拡大)
(左)1:250,000道路地図
(右)1:64,000旅行地図 バラトン湖北岸の一部
 

聞いたこともない地方都市まで丹念に揃えた市街図は、縮尺が統一されているので、町の規模を比較できるのがいい。内容を見ると、ほとんどの通りに名称が入れられ、主要施設が描かれ、教会や城跡など町のシンボルは赤で囲んで強調される。バスターミナルや駐車場ばかりか、病院や薬局の在りかまで読み取れるなど、実際の観光や所用に十分使えるものになっている。

続いては、人気の観光地やハイキング適地の拡大図だ。10m間隔の等高線が入った地形図で、1~2kmのグリッドにより距離が目測できるように配慮されている。伝統の小村ホッローケー Hollókő、ベネディクト派修道院のパンノンハルマ Pannonhalma、貴腐ワインのトカイ Tokaj、大鍾乳洞のアッグテレク Aggtelek、大平原のホルトバージ Hortobágyと、筆者は居ながらにして、ハンガリーの世界遺産を思う存分たどることができた。

カルトグラフィア社は、凡例がハンガリー語と英、独の3ヶ国語、サルヴァシュ社にいたっては、英独仏に中東欧の各国語で10ヶ国語もの表記があり、外国人が使うことを意識した編集がなされている。旅心をかきたてる逸品といえよう。

■参考サイト
カルトグラフィア社 http://www.cartographia.hu/ (英語版あり)
サルヴァシュ・アンドラーシュ社 http://www.map.hu/ (英語版あり)

いずれもショッピングサイトがある。両社の地図はヨーロッパの主な地図販売店でも扱っている。

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