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2008年1月28日 (月)

立山黒部アルペンルートを行く III

黒部ケーブルカー 黒部平→黒部湖

黒部湖へのケーブルカーは全線地中区間で、ここまで絶景を思う存分楽しんだ人々にとっては単なる移動手段でしかない。席取りに慌てることもなく、誰もがおとなしく乗り込む。景観に配慮して、とよく書かれるが、それだけならさっきのロープウェイと無粋な駅舎の存在が説明できない。むしろ厳しい気候の山岳地帯で、保守や運行の容易さを優先したのだろう。立山黒部貫光の事業案内によれば、車両は131人乗り、運転時分は5分、延長(斜長)827m、山上側勾配30度25分(587‰)、駅間の高低差は373mある。同社が運営する交通機関はここまでだ。

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黒部ケーブルカー
 

山麓駅も地中深くにあり、降りてからもまだ歩道トンネルが続く。これを抜けるといきなり弓なりにカーブした黒部ダムの上だ。堤頂の長さは492mあって、立派な道路としか見えない。右側、つまり湖の方は山中のおだやかな風景が広がるが、左側に移って手すりから身を乗り出したとたん、眼もくらむ高さに肝を冷やす。堤高186mは、1963年の完成から現在まで日本一のタイトルを譲っていない。記念放水の期間はすでに終わってしまったが、その代わり、険しい峡谷の両側でみごとに色づいた森がどこまでも眼を和ませる。

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威容を誇る黒部ダム
 

通路の東寄りにはベンチが並べてあり、ここで弁当を広げた。今思えば、名物黒部ダムカレーを試食するという手もあったのだが、混雑を心配して富山駅で買ってしまっていたのだ。移動につれて、回り舞台のように景色ががらりと置き変わる。かなりの長旅をしてきたような気がするのに、時計を見ればまだ正午に届いていない。ダムを見下ろす展望台へ、崖っぷちに架けられたつづら折りの階段を上る。破砕帯から引いているという飲み水を口に含むと、乾いた喉に実にうまかった。

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ダムを見下ろす展望台から
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黒部湖越しに赤牛岳遠望
 

■参考サイト
黒部ダム付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/36.566400/137.662200

関電トロリーバス 黒部ダム→扇沢

富山・長野の県境、後立山連峰、赤沢岳直下を貫く関電トンネル(針ノ木隧道)は、黒部ダム建設に際して掘られた資材運搬用のトンネルだ。1964年からトロリーバスが走り、黒部峡谷への観光客を運んでいる。展望台からトンネル内の220段を降りると、乗り場に出る。ここはさすがに混んでいた。今日は月曜日で、早めに行動したこともあって、大きな混雑に遭遇せずにここまで来たので、改札前に溢れかえった人の波には一瞬ひるんだ。まだお昼なのだが...。改札が始まると、ホームで待つ5台(だったと思う)のバスは見るみるうちに立ち客で一杯になった。バスは72人乗りで、延長6.1kmの道のりを16分で走る。

13時05分に発車。立山トロリーバスの時と違って、車内は通勤ラッシュのような有様なので、前面車窓などとても望めない。単線トンネルで中間部に対向場所が造られていることだけは辛うじてわかった。扇沢到着直前にトンネルを出て、下り坂を半回転しながら、山あいのターミナルに滑り込む。ターミナルは建物の外にあるので、架線や集電装置などの設備が存分に観察できて、興味深い。

帰宅後、関西電力が作成した黒部ダムのウェブサイトを見たら、「トロバス」の詳細が紹介されていた(下記 参考サイト参照)。見た目はバスだが法的には電車なので鉄道と同じ地上標識が使われていたり、ボディーの裾に描かれた4本の黒い帯のデザインが「黒四(くろよん:黒部ダムの別称)」を表しているなど、トリビアも発見できる。

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関電トロリーバスで扇沢へ

松本電気鉄道バス 扇沢→信濃大町

富山発アルペンルートの最終ランナーは、松本電鉄の乗合バスだ。これも補助椅子を全部倒すほどのお客が乗ったが、なんとか1台に収まった。とすると5台に分乗したあの人出はどこへ消えたのか。立山ケーブルカーの山麓駅で経験したように、団体客にはお迎えのバスが来ていたし、ターミナル付属の駐車場にはたくさんのクルマが止まっていた。独占が解かれると、とたんに公共交通の分が悪くなるのだ。バスが走る道路はもう下り一方、深く覆いかぶさるような谷も徐々に開けて、家並みが見えてきた。ひなびた風情の大町温泉郷を経由して、JR信濃大町駅前には14時05分に到着した。

なにしろ、手持ちのアルペンきっぷは大糸線内のほか下車できないし、明日は仕事だ。糸魚川回りで今日中に京都まで帰るために、駆け足旅行にならざるを得なかった。登山家には笑われるかもしれないが、青空のもと、峻険な山岳地帯がもつ美しさと気高さを自分なりに堪能したので、思い出話がたくさんできた。日本もまだ広いな、とつくづく思う。

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信濃大町駅へ到着
 

■参考サイト
黒部ダム(関西電力HP) http://www.kurobe-dam.com/
黒部ダム > 関電トロリーバス http://www.kurobe-dam.com/trolleybus/

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