新線試乗記-仙台空港鉄道
梅雨空の上を飛んだ飛行機は、着陸態勢に入るとまもなく一面の雲海に突入した。窓の視界が閉ざされること数分、白い幕が消えると、海原がもう手の届きそうなところで、にぶく光っている。一直線に延びた海岸線をかすめるように、飛行機は空港に進入していくのだが、その直前、右手遠方からやってきた鉄道の華奢な高架が、手前で地下に潜っていくのが見える。2007年3月18日に開通したばかりの仙台空港鉄道だ。
路線図 |
東北本線の名取駅から分岐して仙台空港駅まで、延長7.1km。列車はすべて仙台駅から直通し、快速なら空港まで最速17分で着く。仙台にはこれまで何度か足を運んだが、空港と市内の間はバスで40分かかっていた。仙台東部道路、同 南部道路と高規格の自動車専用道を経由するので、これでも速かったはずなのだが、市内から空港へ向かうときは道路状況のリスクも考慮して、飛行機の発時刻まで1時間半ぐらい余裕を見ておく必要があった。新幹線「はやて」なら、その間に大宮まで戻ってきている。
それにこのバスルートを地図で見ると、仙台若林JCTが市街から東にかなり離れているため、Z字形に大回りしている。運賃はそのころ910円。それに対して鉄道は、空港と市内を合理的なルートで直結し、運賃も両鉄道合算してなお630円と安くなった。所要時間の短縮とあいまって、画期的な輸送機関の登場といえる。列車本数がまだ毎時2~3本しかなく、フリークエンシーの点で問題がないわけではないが。
さて、仙台空港に降り立った私は、さっそく鉄道駅をめざした。旅客ターミナルビルの2階へあがると、駅のコンコースは連絡通路でつながっている。プラットホームも終点の利点を生かして頭端式なので、まったく段差なしに列車に乗り継ぐことができる。加えて改札はSUICAが使えるから、切符を買う手間も省けた。実に快適な接続だ。
仙台空港駅ホームにて |
クロスシートが並ぶE721系車内 * |
タッチの差で各停が出てしまったので、隣のホームに停車している快速に乗り込んだ。各停は空港鉄道が保有するライトブルーとオレンジの帯を巻いたSAT721系だったが、快速に運用されていたのはグリーンとブルー帯のE721系(写真)。電車は海の方向へ出発するので、一瞬意外な感じがする。ターミナルが滑走路の南側にあるため、先ほど機内から見たとおり、大きく左回りして北へ抜けて行くのだ。
貞山堀にもやる小舟を横目に、滑走路下のトンネルにもぐり、再び高架に上がればあとは平原をまっしぐらに進む。快速とあって、名取まで停まらないばかりか、途中駅が1線スルーで設計されているため、速度が落ちない(杜せきのした駅は対向設備未設置)。両側に広がる緑の田園はすぐに造成地に変わり、新線の需要喚起のために大規模な宅地開発が行われようとしていることを知る。仙台空港は、流動の大きな羽田への路線が設定されていないので、空港との往来だけでは採算的に難しいのだろう。空き地の続く先に、東北一といわれるショッピングセンター、ダイヤモンドシティ・エアリの巨大な躯体が姿を現した。
やがてブレーキがかかり、電車は大きく右にカーブし始める。東北本線との取り付け部分に差し掛かったのだ。陸羽街道(国道4号)を下に見て、JRの上下線にはさまれる形で、名取駅の2番線にすべりこんだ。仙台駅までは、あと10分ほどだ。
(左)快速は名取までノンストップ(写真は美田園)* (右)名取駅にて 下り列車が空港鉄道の高架を上っていく * |
仙台駅にて * |
*注 キャプションに * 印がある写真は2016年6月撮影
■参考サイト
仙台空港鉄道 http://www.senat.co.jp/
仙台空港付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/38.137500/140.930100
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