新線試乗記-大阪地下鉄今里筋線
市営団地の間を縫う道路際に、目を引く濃い黄色のゲートが建っている。大阪市営地下鉄今里筋(いまざとすじ)線、井高野(いたかの)駅の地上出口だ。濃い黄色はこの線のシンボルカラーだ。正確には黄とオレンジの中間、柑子(こうじ)色というらしいが、その色帯をまとった真新しい4両編成の小柄な電車に乗ってここまでやってきた。きょうは午後の空き時間を使って、大阪近郊に最近開通した2つの鉄道路線を乗りつぶそうとしている。
今里筋線用の80系電車 |
(左)扉右の"LIM"のロゴは、リニア誘導モーター linear induction motor の略 扉左は民営化に伴う新ロゴ * (右)車内 * |
一つ目がこの今里筋線で、2006年12月24日に開通した11.9kmの路線だ。電車は鉄輪を履いているが、長堀鶴見緑地線と同様、リニアモーターで動く。市営地下鉄では唯一JR大阪環状線の内側に入らないこともあり、今里駅の長い乗り換え通路を歩いて電車に乗り込んだときには、各車両のお客が10人にも足りなかった。
しかし、ホームには可動式の柵が設けられ、各出口にエスカレータ、エレベータが完備されていて、現代の輸送機関は設備投資がたいへんだ。車内で二人の中年女性が話していた。「この電車すいてんのがええねェ、儲からんやろけど」。乗客が鉄道の経営状態にまで心を配るのが大阪のいいところ。
路線図 オレンジ(柑子色)が今里筋線 |
今里には東成区役所もあるし、路線の起点にふさわしいと思うのだが、実は終点だ(延伸計画があるので暫定的だが)。私は起点に向かって乗ったことになる。全線が地下なので、一応持ってきた地形図も、位置情報を得る以上には役に立たない。ルートは今里筋(大阪では南北の通りに「筋」をつけて呼ぶ)をまっすぐ北上して、東方から大阪市内に入ってくる地下鉄、JR、京阪などの鉄道と次々に交差している。交差地点には駅が設けられ、これまでバスしかなかった市内東部の縦目の連絡網を刷新した。
(左)鴫野駅出入口、高架下にあるJR駅と近接 * (右)関目成育駅も、京阪関目駅西口と隣接 * |
関目成育(せきめせいいく)駅を過ぎると谷町線との合流を避けるように突如右へ90度それて、ひと筋東へ移る。新森古市(しんもりふるいち)駅の先でまた北へ。大阪市交通局の地下鉄第8号線(今里筋線)の工事パンフレットを見ると、北上する本線と分岐して国道163号線の下を東へ進む支線が描かれている。車両基地への連絡線だ。そしてさらに鶴見緑地の真下を通って、長堀鶴見緑地線の検車場へ合流している。回送用の別線が地下に2kmも延びているとは驚きだ。
地下鉄谷町線との乗換駅、太子橋今市(たいしばしいまいち)のホームにすべりこむと、にわかに車内がにぎわってきた。谷町線は大阪のキタの中心、梅田に直結している。地下鉄開通と同時に井高野車庫と大阪駅を結ぶ市営バスが削減されたそうだから、お客がこちらに流れてきているのだろう。この先、ルートは淀川の下を通って、地下鉄未踏の地であった東淀川区に分け入る。川向こうのだいどう豊里駅までは1.7kmと駅間距離が最も長い。
井高野駅 (左)シンボルカラーのゲートは出入口は各駅共通 (右)列車案内モニターのある改札 * |
徐行が多くなってきたな、と思ううちにもう終点、いや起点の井高野だった。今里から20分強。ここは大阪市域の東北隅にあたり、高層の市営団地が広がって、ベッドタウン化している。地上にあがり、柑子色のゲートを見上げたところで、次の目的、大阪モノレール彩都線に心が動いた。
モノレールの本線は意外に近くを通っていて、ここから最寄の摂津南駅まで直線で東へ2kmしかないのだが、地図によると、道中は工場や倉庫が立ち並ぶいささか殺風景なエリアらしい。一方、西1.3kmには阪急の相川駅がある。歩く距離も節約できるし、ここは阪急の普通電車に乗って、南茨木でモノレールに乗り継ぐことにしよう。
*キャプション末尾に * 印のある写真は2020年1月、それ以外は2007年5月の撮影。
■参考サイト
大阪市交通局 http://www.kotsu.city.osaka.jp/
井高野駅付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/34.760200/135.547300
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