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2006年8月25日 (金)

新線試乗記-近鉄けいはんな線

7月20日に書いた未乗区間の一つで、今年(2006年)3月27日に開業した近鉄けいはんな線新線区間(生駒~学研奈良登美ヶ丘 8.6km)に乗ってきた。

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けいはんな線直通7000系電車
 

近畿圏外の方には「けいはんな」とか「学研」(出版社ではない)と言ってもなじみが薄かろう。正式名称を関西文化学術研究都市という大阪府、京都府、奈良県の府県境に広がる丘陵地帯を開発するプロジェクトで、愛称が「けいはんな(京阪奈)都市」、または「学研都市」(最近は後者が定着)なのだ。

既存の鉄道がこのエリアの縁辺を走るのに対して、中心部に到達する路線ということから「けいはんな線」とされた。従来はバスしか公共交通機関がなかった地域から大阪市内に直通するので、「つくばエクスプレス」のような速達効果も期待されてのスタートだ。

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右上の学研奈良登美ヶ丘駅から左へ延びるのがけいはんな線
生駒で奈良線と接続後、地下鉄中央線(緑色の線)に直通 *
 

天王寺の美術館へ展覧会を見に行った帰り道、谷町四丁目からけいはんな線に直通する中央線(といっても大阪市地下鉄の)に乗り換えた。新線に入る電車は日中15分毎なので、途中駅となった生駒(いこま)止まりを1本見送ってからかぶりつきに立つ。

社局の境界である5駅目の長田で運転士が交替してから気がついた。近鉄線内はワンマン運転なのだ。6両編成の都市型交通システムにしてこの合理化策。運転席は左側なので、島式ホームでは停止後、運転士が右側に移ってドアを開ける。乗降終了を確認してドアを閉め、運転席に戻って前方確認、発車。大阪市交通局の2人分の業務をこなさなければならない私鉄の社員はきびしい。

長田から2つ目の吉田ではすでに高架に載っていて、頭上の高速道路も消えるので視界が開ける。行く手に生駒山地が屏風のように立ちはだかっている。山の中腹を小豆色の近鉄電車が横切るのがちらりと見えた。あちらは近鉄奈良線で、まもなく新生駒トンネルに入っていくはずだ。新石切(しんいしきり)駅を出るとこちらもすぐに生駒トンネル。ずっと先輩である路線のトンネル名が「新」生駒なのは、けいはんな線(当時は東大阪線)が奈良線の旧線トンネルを一部利用して作られているからだ。

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生駒駅
(左)奈良線との間に連絡改札がある *
(右)地下鉄の車両が到着 *
 

その奈良線とトンネルを出た先の生駒で接続したあと、いよいよ新規開通区間に足を踏み入れる。初乗りには地形図が欠かせない。1:25,000地形図では「生駒山」図幅と「奈良」図幅でカバーできるが、更新がどちらも平成13(2001)年と古く、ルートが描かれていない(下注)ので、地図サイトを参考にあらかじめ自分で書き込んで持ってきた。

*注 その後、2006年9月1日に発行された1:25,000地形図「生駒山」図幅は、図郭の四周が拡張されたため、今回の延伸区間が1面でカバーされている。

電車は東生駒の車庫の脇をかすめて、左カーブのまま3.6kmの東生駒トンネルに突っ込む。沿線の谷あいは住宅開発が進んでいて、もはや地上に線路を敷くことは難しい。それで生駒と富雄の間を南北に走る丘陵の下にトンネルを穿ったと見た。ルートが不自然なS字形を描いているのはそのせいだ。トンネルの上は近鉄グループのゴルフ場(飛鳥カンツリー倶楽部)なので、通過交渉もやりやすかったのだろう。

白庭台駅を経て、高架で富雄川の谷を渡るときに田んぼが見えた。たいぶ北にあがったのでまだ農村風景が残っているようだ。学研北生駒駅を出て短いトンネルを抜けると、下り勾配となって、前方に終点が姿を現す。第三軌条で架線がないので、地上を走る複線の光景は何か物足りなささえ感じる。

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北生駒駅
(左)バスターミナルが隣接 *
(右)架線がないので非電化線のよう *
 

終点、学研奈良登美ヶ丘駅はのびやかな丘陵地を見晴らす場所に位置しているが、それにしてもこの不恰好な長い駅名はどうだろう。どうせ利用者は「とみがおか」と略して呼ぶに決まっているのに。地形図を見ると、このまま東に直進すれば近鉄京都線の高の原駅につながるのだが、北に分岐する案もあって、延伸計画は進展していない。

駅前からは、奈良線の学園前駅、高の原駅、あるいは学研都市の中心部経由で京都線祝園(ほうその)駅などを結ぶ奈良交通の路線バスがある。私も30分毎に来る祝園行きで帰途に就いた。

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学研奈良登美ヶ丘駅
(左)7000系が入線
(右)昼間は6両編成を持て余す
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学研奈良登美ヶ丘駅を俯瞰 *
 

*キャプション末尾に * 印のある写真は2018年2月、それ以外は2006年8月の撮影。

■参考サイト
近鉄けいはんな線 http://www.kintetsu.co.jp/shinsen/
学研奈良登美ヶ丘駅付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/34.726500/135.752300

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