クロアチアの1:100,000地図帳
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クロアチアのアドリア海沿岸には古くからの良港が点在しており、内陸のサヴァ川 Sava 流域から交易ルートが開かれていた。内陸平野と海岸の間には、ディナル山地 Dinara Planina をはじめとする1000m級の切り立った石灰岩山地が立ちはだかる。やがて物流の主役に躍り出た鉄道も、複雑な起伏をもつこの山地を乗り越さなければならなかった。
サヴァ河畔の首都ザグレブ Zagreb とこの国最大の港町リエカ Rijeka を結ぶ路線は、電化された主要幹線の一つだが、小縮尺の地図で見ても相当な難路と想像される。もっと詳しい地形図がほしい。クロアチアの官製地形図は単価が高いので入手をためらっていたところ、スロヴェニア測地研究所 Geodetski Zavod Slovenije のサイトに、クロアチアの地図帳が言及されているのを発見。問合せてみると、同研究所の協力でザグレブの書店から刊行されたものだ、と回答があった。その後1ヶ月かけて送られてきたのが、全土の1:100,000地形図を掲載した「クロアチア大地図帳 Veliki Atlas Hrvatske」(Mozaik Knjiga社発行、2002年版、全480ページ)。前回紹介したスロヴェニア地図帳の姉妹編といっていい仕様だった。
さっそくザグレブ~リエカ線を図上で追ってみると、ザグレブから南西へ30km、旧市街が「六稜郭」の中にあるカルロヴァツ Karlovac までは平野を走る直線主体のルートだ。水量の豊かなムレジニツァ川 Mrežnica のほとりをしばらく進み、ゆるやかなカルスト台地を上り始める。オグリン Ogulin の手前で南方の港スプリト Split へ向かう支線を分けたあと、台地を刻むドブラ Dobra 川の谷中を小さなカーブを重ねて遡る。谷が尽きるとそこはクパ川Kupaの深く広い斜面の上だ。比高が450mもある斜面に沿ってさらに高度を上げていくと、やがてデルニツェ Delnice の町。車窓には高原状の風景が展開し、最高地点は標高800mにも達する。ところがそこはもう海岸から直線距離で10kmもない地点なので、この先、港町まで一気に下降しなくてはならない。2回の半回転を含む急カーブと下り勾配の連続だ。左手がアドリア海なのだが、地図で見る限りすっきり見晴らせる場所は少なさそうだ...。
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大地図帳ではなくもっと手軽な地図でよければ、同研究所が作成するアドリア海沿岸地域の1:100,000区分図シリーズ全8面があり、欧米の通販サイトでも入手できる。内容は官製図から編集されたもので、等高線は40m間隔(官製は20m)に広がるが、この縮尺ならかえって相応といえる。裏面には図郭内の中心都市の市街図とともに、観光ガイドが英語でも記述されていて、役に立つ。
右の写真はチェコのGeoClub社発行の「ダルマチア4」(ドゥブロブニク周辺)。中身は同研究所の図版を使っている。
■参考サイト
クロアチア鉄道(英語版) http://www.hznet.hr/eng/
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