新線試乗記-ゆりかもめ豊洲延伸
先日、東京へ行く機会があったので、この機を逃すまじと、2006年3月27日に開通したゆりかもめ延伸区間(有明~豊洲)に初乗車してきた。仕事先の最寄り駅が永田町だったので、東京メトロ有楽町線で一直線、豊洲駅に降り立つ。ゆりかもめの駅は近接しているが、地下から地上へ、そして高架へとエスカレータを延々乗り継いでいかなければならない。
路線図 |
時刻は夕方5時過ぎ、さすがに豊洲側から乗り込む人はまばらだ。無人運転なので最前列のかぶりつきは、とても見晴らしがいい。正面遠方にレインボーブリッジ、右手には四角く残る海面をはさんで晴海ふ頭が延びている。走行路の周囲はまだ開発を控えた空き地ばかりが目立ち、途中駅からの乗客もほとんどなかった。
新豊洲、市場前(築地市場が移転してくるのだそうだ)とまっすぐ進んだ後、左に90度カーブして東雲(しののめ)運河を渡る。有明テニスの森駅は、言わずと知れた有明コロシアムの下車駅となっているが、実は隣の有明駅のほうが少し近いらしい。左の眼下に2016年東京オリンピック選手村予定地と書かれた看板が立っている。東行きが渋滞する湾岸道路を悠々とまたいだところが有明駅で、初乗り区間はここまでだ。
(左)豊洲駅入口 (右)豊洲駅に入線 |
(左)行く手にレインボーブリッジ (右)船の科学館駅付近 |
この先は路線図でわかるとおり、臨海副都心の中心部をぐるりと周回するルートになっている。1995年に開通した当時とは打って変わり、凝ったスタイルの建物が林立する中を進んでいく。有明を出た列車の正面に立ちはだかるのは、太い4本足で立つ東京ビッグサイトだ。右に90度向きを変えると、パレットタウンの大観覧車が現れ、左手は埠頭に囲まれた水面が陽光を反射している。
青海駅から左にカーブして、テレコムセンターの巨大な凱旋門をかすめる。進路が180度変わって北に向けば、左に大型クルーズ船と見間違う船の科学館。海底に潜っていく湾岸道を見送ると、フジテレビをはじめとするお台場のビル群を掻き分けていく。
しかし、奇抜な外観の建物がいくら目を引いたとしても、ゆりかもめの車窓のハイライトが、この先にある港をまたぐ大吊橋、レインボーブリッジにあることはまちがいない。第三台場の史跡を横目にゆるやかにカーブしながら上り詰めていく東側のアプローチもさることながら、橋を渡って西詰め、芝浦ふ頭側にあるオープンループ線は一番の見せ場だ。
レインボーブリッジ歩道から眺める第三台場とお台場のビル群 |
鉄道でループ線といえば、山岳地帯で急勾配を緩和するために作るのが一般的だ。山襞を利用しているため、ルートの一部がトンネルになっていることが多く、オープンループは珍しい存在といえる。
思い浮かぶのは、スイスのベルニナ線にあるブルージョのループ橋、ドイツ北部のバルト海・北海運河をまたぐ大規模なレンズブルク鉄橋、それにインド、ダージリン・ヒマラヤ鉄道にあるバタシアほかいくつかのループ...。この稀少なグループにわが日本のゆりかもめも仲間入りしたというわけだ。しかも海の上で一回転するのは、おそらく例がない。
海の上のオープンループ |
しかし、かぶりつきで見ていると、ループ区間を過ぎたあとも高い高架の上を走っていくではないか。わざわざ空中に円を描く大規模な構築物がほんとうに必要だったのかと、素朴な疑問が湧く。
レインボーブリッジは上層が首都高速、下層は一般道に両側をはさまれる形で軌道が敷かれている。高速道路が橋からすぐに右折するのに対して、一般道は橋脚のすぐ近くで地上まで降りるために、ループで高度を稼いでいる。軌道はすぐに一般道を乗り越せないため、ループにつき合わされているのだ。とはいえ、これでゆりかもめに乗る行為に、遊園地にいるような非日常性の感覚が一つ加わったことは否定できないだろう。
* 写真は2008年11月1日撮影
■参考サイト
ゆりかもめ http://www.yurikamome.co.jp/
レインボーブリッジ付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/35.636400/139.763600
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