ポーランドの1:100,000旅行地図
ドイツの地図通販店 MapFox.de から取り寄せた地図を紹介するシリーズの第2弾は、ポーランドの旅行地図。1:100,000官製地形図に観光情報を加刷したもので、WZKart (Wojskowe Zakłady Kartograficzne) が発行している。
■参考サイト
MapFox.de http://www.mapfox.net/
紹介した地形図の索引図は、左メニューのPolen > Polen: Amtliche topografische Landkarten 1:100.000
WZKart http://www.wzkart.pl/ 関連記事は少ない
この旅行地図シリーズの一部は下記サイトで画像提供されている。
http://www.lemko.org/maps100/
もとの地形図の図郭は、旧共産圏で共通化された経度30'×緯度20'だが、これを横に2枚貼り合わせて1°×20'の横長図郭にしてある。ベースの官製図の上に、観光施設や公園・自然保護区域、ハイキングルートなどが記号で示されている。7色刷り(ブラック、グレー、ブラウン、ブルー、レッド、アップルグリーン、パープル)なので多彩な地図を想像するが、全体の印象は意外に地味。線画が中心で、ぼかしや段彩など絵画的な要素に乏しいのが原因だ。平野部は描写対象が分散しているのでまだしも、山地は等高線と公園域の網目がかぶって、ごちゃごちゃしている。とはいえ、ポーランドの地形図で外国向けに売られているのはこれと1:50,000の区分図ぐらいなので、あまり文句は言えない。
写真はシリーズの1枚で、ポーランド南西部、チェコとの国境付近を描いた図。このあたりは第2次大戦まではドイツ領で、ニーダー・シュレジエン Niederschlesien(低シレジア)地方と呼ばれていた。図名となっているイェレニャ・グラ Jelenia Góra は、ドイツの測量局BKGが発行する当時の復刻図ではヒルシュベルク Hirschberg と注記されている。
チェコとの国境を限るのは1509mの主峰を擁するカルコノチェ Karkonosze 山地だが、これも筆者には、ドイツ語のリーゼン・ゲビルゲ Riesengebirge のほうが馴染みがある。というのも、象徴主義の画家、フリードリヒがこの山の風景をよく描いているからだ。キャンバスの中のリーゼン山地は、なだらかな山容が幾重にも連なり、はるか遠く朝もやの、あるいは夕映えの空に溶けている。暗く神秘的な作風で知られる画家だが、この山を描くときは穏やかな希望が感じられる。実際はどんな場所なのか、一度この目で確かめてみたいものだ。
ついでながら鉄道ファンとしては、西隣のイーゼル・ゲビルゲ Iselgebirge との間の鞍部を越えてイェレニャ・グラとチェコのリベレツ Liberec を結ぶ鉄道の、極端な蛇行ルートに興味を引かれる。しかし残念なことに、今は運行休止になっているようで、趣味の両立は果たせそうにない。
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