バルト三国の地図-エストニアの旅行地図
バルト三国で最も北に位置するエストニアの旅行地図は、EOマップ社 EOMapとレギオRegio社が多く手がけている。サンプル画像を見る限り、地勢表現を省略し、緑地に赤の道路を巡らせるといった地図のスタイルは、よく似ている。
レギオ社については、紙地図に関する情報がウェブサイトにもあまり載っておらず、詳しくは知らないが、全土をカバーする道路地図帳が、1:150 000(スパイラル綴じ)と1:200 000(平綴じ)の2種類ある。1枚もののレパートリーは10点程度のようだが、その中にタリン公共交通路線図Tallinna ühistranspordikaart / Public transportation map of Tallinn(縮尺1:25 000)が含まれているのが興味をそそる。これは、交通局の窓口などで配布しているような、道路網を描いた市街図の上にトラムやバスのルートを系統番号とともに描いたものだ。
一方、EOマップ社の道路地図帳は、全76ページの1:150 000区分図と1:20 000の主要市街図という構成だ。別に、1枚ものの区分図も刊行されていて、こちらの縮尺は1:200 000、全土を5面でカバーする。
エストニアの行政区は、本土13郡(マーコンドmaakond)と西岸沖にある島嶼部の2郡(ヒーウマーHiiumaa=ヒーウ郡、サーレマーSaaremaa=サーレ郡)に分かれている。地名語尾のmaaは英語ならlandというような意味だ。先述の区分図では島嶼部2郡が1面にまとめられているが、筆者の手元にあるのはそれとは別の、サーレマーだけに的を絞った1:150 000の旅行地図だ(右写真)。カバーは赤をベースに、補色である濃緑の帯を入れた目立つ装いで、最近発行のものはこれで統一されている。用紙は合成紙を使用する。
エストニア最大の島、サーレマー(本島)は面積2,673平方キロで、神奈川県(2,416平方キロ)より少し広い。リガ湾Liivi Laht / Gulf of Rigaをふさぐように広がっていて、本土とは、ムフMuhu島を介してフェリーで連絡する。ソ連時代、西側諸国と対峙する閉鎖地域だったことでかえって素朴な風光が残り、それを好んで観光客が行き交うようになったのだそうだ。
EOマップの旅行地図も、道路網を見せるだけでなく、沼地、泥炭湿地、森林・低木林、空地といった地表の状況を描いて、土地のイメージを伝えようとしている。主題である観光情報については徹底的に記号化されて、その数は62個にもなる。見どころInteresting placesは、図上に連番で示され、図郭外に内容リストが載っている。リストや凡例集は、エストニア語のほか、フィンランド語、英、独、露語の5ヶ国語併記で、これを図中に書き込んでしまうと、非常に錯雑としたものになるに違いない。番号検索は不便に思えるが、地図に国際的な通用性を持たせながらも、すっきりと見せるための一つの方策なのだ。
裏面には、島随一の町クレッサーレKuressaareの1:15 000市街図(中心部は1:6 000)が載っている。この縮尺なら、町の前面を、4つの稜堡と3つの半月堡をもつ見事な城郭Linnusが守っている様子がよくわかる。本図にしろ拡大図にしろ、等高線のような地勢表現が一切ないことを除けば、過不足のないできばえだ。
EOMAP社は1991年末に設立、1992年に登記された会社で、官製地図の作成を請け負う技術力をもつ。現在は地理情報(ジオデータ)Geodata、販売Kaubanduse、土地測量センターMaamõõdukeskusの子会社3社を有し、ジオデータが地図の作成編集、販社が刊行と販売を受け持っている。販社はオンラインショップも開いているのだが、エストニア語版しかないので購入は難しい。それで筆者も、ラトビアのヤーニャ・セータ社に頼ることにした。
■参考サイト
レギオ http://www.regio.ee/
EOマップ http://www.eomap.ee/
同社ショップ http://www.eomap.ee/epood/ エストニア語のみ
EOマップ社が提供するタリン市街図 http://kaart.tallinn.ee/















バルト三国とまとめて扱われることはあっても、エストニア、ラトビア、リトアニアという国名、さらには三国の地理的な位置関係を知っている人はどれくらいいるだろうか。正直なところ筆者も正確に言う自信はなかった、少なくともこの本を読むまでは。志摩園子氏の「物語 バルト三国の歴史」(中公新書, 2004年)は、ドイツとロシアの勢力が常に拮抗してきたバルト海の東南岸で、三国のフレームが形づくられていく過程を明解に説き起こしている。筆者の理解した範囲では、三国を区別する主な要素は宗教と言語のようだ。






















最近のコメント