2018年2月18日 (日)

ドイツの新しい1:250,000地形図

連邦地図・測地局 Bundesamt für Kartographie und Geodäsie(略称BKG)が担当しているドイツの小縮尺図体系が2017年から大きく様変わりしている。黄色い表紙で親しまれてきた区分図シリーズの1:200,000地勢図 Topographische Übersichtskarte がついにカタログから姿を消してしまったのだ。代わりに登場したのが、Übersicht(概観)の語をつけずに、単に Topographische Karte(地形図)と称する1:250,000で、全30面が一気に刊行された。

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1:250,000地形図表紙
(左)ベルリン Berlin  (右)ローゼンハイム Rosenheim いずれも2017年版

1:200,000図のルーツは19世紀に遡るが、第二次世界大戦後、1961年に当時の西ドイツを44面でカバーするシリーズとして再興され、東西統一後は旧東側にも範囲を拡げて、全59面の区分図シリーズ(のちに一部の図郭拡張で58面)になった。近年、1:100,000以上の地形図が、平板な印象の ATKIS図式(下注)に置き換えられていくなかで、1:200,000は、配色に変更が加えられながらも、銅版刷りの繊細さを残すドイツ地形図の特質をおよそ50年間護り続けてきた。

*注 公式地形・地図情報システム(アトキス)Amtliches Topographisch-Kartographisches Informationssystem (ATKIS) で使用される地図図式。

ドイツの1:200,000地形図ほか」の項でも述べたように、戦後まもない地形図体系の再編の際にも縮尺を1:250,000に変更する案が検討されたことがある。実際、英仏をはじめ西側諸国ではそちらが多数派なのだ。グローバル化時代に入ると、このことがシステム規格の決定に影響を与えることになる。欧州各国の地図作成機関等が参加する組織、ユーロジオグラフィクス EuroGeographics が汎ヨーロッパの地理情報データベースを構築するにあたり、採用した縮尺の一つが1:250,000だった。

ユーロリージョナルマップ EuroRegionalMap と呼ばれるこのデータベースには、各組織が、担当する地域の地理情報を共通仕様で提供する必要がある。そのためにドイツも ATKIS に1:250,000のデータを作成し管理している。縮尺が近似する1:200,000を、印刷図を維持するために更新していく積極的な理由は見出しにくい。さらに、ATKISからは印刷図の原稿も直接出力できるので、国内各州の測量局は、担当する1:25,000から1:100,000までの印刷図の大部分をすでにこの方式に移行させてしまっている。BKGが同様の転換策に踏み切るのは、実は時間の問題だったのだ。

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1:250,000地形図索引図

今回刊行された1:250,000地形図は、冒頭にも述べた通り、ドイツ全土を30面でカバーする全く新しいシリーズだ。地形図の裏面には、同じエリアのカラー衛星画像 Satellitenbildkarte が印刷されている。

折寸こそ旧図と同じ横10.8×縦24.0cmだが、表紙からして、色で縮尺の違いを示す従来方式(例えば1:200,000は黄色)ではない。人目を惹く風景写真を中央に配し、その下に都市や観光地の名が列挙され、収載されるエリアがすぐにわかるようになっている。英仏の例に倣って、利用者へのアピールを強化する作戦だ。

図郭は、旧1:200,000の経度1度20分×緯度48分に対して、新1:250,000では縮尺が小さくなり、用紙の横を一折り分長くしたことで、経度2度×緯度1度と切りのいい数値に収まった。

内容はどうだろうか。1:200,000(下図左)と1:250,000(下図右)で、同じエリアを並べてみた。場所は、バイエルン南東部のローゼンハイム Rosenheim からオーストリア国境の山岳地帯にかけてと、ベルリン Berlin 市街だ。色調はほぼ変わらないものの、一見して1:250,000のほうが、情報の取捨選択が徹底されていることがわかる。絵的にはシンプルで見易くなったと感じる一方で、残念ながら、省かれたものも多数ある。

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1:200,000図(左)と1:250,000図(右)の比較
ローゼンハイムからオーストリア国境の山岳地帯
© Bundesamt für Kartographie und Geodäsie, 2018
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同 ベルリン市街
© Bundesamt für Kartographie und Geodäsie, 2018

たとえば、ローゼンハイム図の下のほうにあるバイリッシュツェル Bayrischzell の町の周辺に注目すると、1:200,000に記された Hochkreut、Suderlfeld などの集落名、Seeberg、Maroldschneid などの山名や標高値が、1:250,000ではことごとく無くなっている。配置するスペースが縮小する分、割愛が生じるのはやむを得ないとはいえ、地名は場所を特定する手がかりだから、残念なことだ。

また、道路網や集落の表現も簡略化された。ベルリン図に見られるとおり、1:200,000では市街地の塗りに2色が使われ、中心街は濃いピンク、それ以外は薄いピンクと区別されていた。ところが1:250,000ではそうした配慮はなく、一様にピンクで塗られている。また、郊外では1:200,000で、胡麻粒のような黒抹家屋の記号を使って、集落の広がりや密度を表現していたものが、1:250,000では単に円で集落の中心を示すだけになった。道路網の省略もその延長線で、円と円の接続関係がわかれば十分という考えだろう。

注記文字は、サンセリフ(先端に飾りのない)タイプに変わった。日本語書体の明朝とゴシックの関係に似て、サンセリフは線幅がほぼ同じで視認性が良いことから、採用される傾向にある。1:200,000では注記文字は、水部の青を除いて一様に黒色が使われていたが、1:250,000では居住地名は黒、水部は青、自然地名は茶色、公園域は緑、軍用地はピンクと、細かく変えている。これにより、居住地名がまず目に飛び込んでくるようになった。反面、山の名などは埋もれてしまい、目を凝らして探さなければならないが…。

一方、等高線とぼかしを併用する地勢表現は踏襲された。等高線間隔は、旧1:200,000が平野部25m、山地50mだった。1:250,000も平地と低山地ではそれぞれ25m、50mだが、高山地では100m、急峻な山地では200mに拡げられている。そのため、バイエルンアルプスでさえ等高線は粗く引かれ、等高線の密度から地勢を想像することは難しい。また、写実的な崖記号が無粋なドットパターンに置き換えられ、砂地と間違えかねない。

ぼかし(陰影)は、メッシュ標高データから精細な画像が自動生成されているので、等高線の情報不足を補って余りある。ただ惜しいことに、配色にピンク系のグレーを充てたために、眠たげな印象を与え、等高線との区別もつきにくくなった。

新作というのに否定的な感想が多くて恐縮だが、それというのも、ドイツでは地形図のデジタル化に際して、アナログ時代に磨かれた地図デザインのセンスが十分尊重されなかったように思うからだ。作成プロセスの合理化を追求するなかで、伝統的な長所を生かす努力がやや疎かになっている。1:250,000もそれだけ見れば決して悪くはないのだが、前身の1:200,000と見比べると、多くのものを犠牲にしていることに改めて気づく。

この1:250,000の登場の陰で、従来の1:200,000地勢図は、2014年に南ドイツの10面が更新されたのが最後の刊行となった。かろうじて現在は、同じく2014年に刊行された地方図 Regionalkarte シリーズ 計13面(下注)のみがカタログに掲載されている。これは主要都市とその周辺を1:200,000図で概観するもので、裏面にはより広域を収める1:1,000,000(100万分の1)図が印刷された徳用版だ。果たして継続的に更新されるのか不明だが、このシリーズが残る限り、1:200,000図を手にする機会が消滅したわけではない。

*注 ハンブルク Hamburg、ブレーメン Bremen、ベルリン Berlin、ハノーファー Hannover、ライン=ルール Rhein-Ruhr(ドルトムント中心)、ケルン=デュッセルドルフ Köln-Düsseldorf、ハレ=ライプツィヒ Halle-Leipzig、ドレスデン Dresden、ライン=マイン Rhein-Main(フランクフルト中心)、ライン=ネッカー Rhein-Neckar(マンハイム中心)、ニュルンベルク=フュルト Nürnberg-Fürth、シュトゥットガルト Stuttgart、ミュンヘン München の13面

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1:200,000地方図
(左)ベルリン地方 Region Berlin  (右)ライン=マイン地方 Region Rhein-Main いずれも2014年版
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1:200,000地方図索引図
カラーの図郭が地方図、グレーの図郭は従来の1:200,000地勢図

1:250,000地形図と1:200,000地方図は、日本のアマゾンや紀伊國屋などのショッピングサイトでも扱っている。"Umgebungskarte 1:250.000"、"Regionalkarte" などで検索するとよい。

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2018年2月12日 (月)

地形図を見るサイト-ルクセンブルク

ベネルクス三国の一角を成すルクセンブルクでも、充実した公式地図サイトが構築されている。国の測量機関である地籍・地形局 Administration du Cadastre et de la Topographie (ACT) が、最新のデジタル地形図はもとより、旧来の1:5,000~1:250,000地形図、20世紀初頭からの旧版地形図、18世紀の測量原図、そして新旧の空中写真や地質図、それらにオーバーレイできる地図データなど、多様なコンテンツを自ら運営するサイトで提供しているのだ。加えて、ウェブデザインのスマートさと多言語に対応(下注)している点も注目に値する。

*注 公用語であるフランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語に加えて、英語表記もある。

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18世紀のフェラーリ図に描かれたルクセンブルク市街
深い渓谷と堅固な堡塁が街を護る

では、その地図サイト Geoportal(以下、英語読みでジオポータルと表記)の概要を見ていこう。
(記述は2018年2月現在の仕様に基づく)

Geoportal(ジオポータル)
http://map.geoportail.lu/

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初期画面

上の画像が初期画面だが、以下の説明は英語版で行うので、初めに言語選択をしておきたい。右上の地球を象ったアイコンをクリックして、EN(英語)を選択する。

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言語と背景レイヤーの選択

デフォルトでは、表示される Background Layer(背景レイヤー)は Road map(道路地図)になっている。背景レイヤーを入れ替えるには、画面左上のリストで、Topographic map B/W(地形図モノクロ版)、Topographic map(地形図カラー版)、Aerial imagery(空中写真)、Hybrid map(ハイブリッド地図)、White background(無地の背景)から選択する。

このうち、ハイブリッド地図というのは、空中写真(オルソフォト)に地名や主要道路網などを加えたものだ。上記以外の地図については、別途レイヤーとして選択して重ね表示できる(詳細後述)。

特定の地域の地図を表示するには、地名、住所、地番(Parcel numberという)で指定するほか、マウスで直接矩形を描いて選択する方法がある。

縮尺を変更するには、拡大縮小(+-)ボタンを使うほか、ダブルクリックでも行える。図上でダブルクリックすると、1段階ずつ拡大する。Shiftキー+ダブルクリックで1段階ずつ縮小する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

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テーマとレイヤーの選択

背景レイヤーの上に重ねる地図レイヤーを表示するには、まず地図のテーマを選択する必要がある。デフォルトは「THEME: MAIN」になっている。その右の CHANGE をクリックすると、選択肢(MAIN、TOURISM、ENVIRONMENTなど)が表示される。任意のテーマを選択すると、下位項目が順に表示されていく。

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レイヤーリストの操作

レイヤーは複数選択でき、そのリストは MY LAYERS タブをクリックして見ることができる。MY LAYERS タブには、レイヤーの重ね順の変更、レイヤーの透明度の調節、レイヤーの追加/削除などの機能がある。

ここではベースマップにもなりうる地図・空中写真に絞って紹介しておこう。

地形図は、MAIN テーマ > GEOGRAPHICAL LOCATION(地理的位置)> Topographical mapsに格納されている。

同様に、空中写真は MAIN テーマ > LAND SURFACE(地表)> Orthophoto-images、
地質図は、MAIN テーマ > ENVIRONMENT, BIOLOGY AND GEOLOGY(環境、生物、地質) > Geology、
土壌図は、MAIN テーマ > ENVIRONMENT, BIOLOGY AND GEOLOGY(環境、生物、地質) > Soil mapsに、それぞれ分類されている。

地形図だけでも縮尺別に9種類のレイヤーがあるが、Automatical Topographical Map(自動地形図)を選ぶと、表示縮尺に応じて自動的にグラフィック(縮尺図)が変化していくので便利だ。そうではなく、グラフィックを固定して拡大縮小したいときは、その下に列挙されている Topographic map 1:250000~1:5000 から見たいものを選択する。

「Regional tourist map 1:20000 R(1:20,000地域別旅行地図)」は、かつて印刷版で刊行されていた旅行情報を付加した地形図で、末尾の R(régionale の頭字)は通常版と区別するための符号だった。Regional Mapsheets(地域図図郭)は、その図郭を表示する機能のことだ。

さらに興味深いのはその下にある Historical Topographical Maps(旧版地形図)という項目で、これを展開すると16種の古地図や旧版地形図のリストが現れる。

最も古い「Ferraris Map 1:20k 1778(1:20,000フェラーリ図、1778年)」は、18世紀後半に作成されたオーストリア領ネーデルラントの美麗な手彩色原図(冒頭画像はそのルクセンブルク旧市街、下注)だ。原図の縮尺は1:11,520だが、2013年の復刻本出版に際して作成された1:20,000の縮小画像が用いられている。

*注 現在のベルギー領部分は、ベルギーのサイト「カルテージウス Cartesius」などで公開されている。「地形図を見るサイト-ベルギー」参照。

次は20世紀に入り、1907年と1927年のJ・ハンゼン Hansen による1:50,000図がある。前者は粗いモノクロ複写だが、後者はカラーで原図の鮮やかさが再現されている。

次の「German War map 1:25k 1939(ドイツ戦時地形図、1939年)」は、第二次世界大戦中にルクセンブルクを占領したドイツが既存図から編集した1:25,000図だ。

そして、戦後の地図の空白期を埋めるために、キュマリー・ウント・フライ社 Kümmerly & Frey による1950年の1:150,000学習用地図が挿入されている。

本格的な地形図の復活は、フランス IGN の協力で作成された1954年の1:20,000で、1966年からは1:50,000も登場し、2000年までおよそ10年間隔で、その時点の最新図が収められている。

一方、空中写真は、戦後1951年撮影のものから利用できる。1994年まではシームレス化されていないので、各カットの撮影範囲を示す矩形が右の地図上に表示される。図上で見たい地点をクリックすると、左に写真のサムネールが現れ、それをクリックすることで実寸の画像ファイルが表示される仕組みだ。

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一般操作

ジオポータルで使える機能は他にもたくさんある。上の画像で、各アイコンの機能に日本語を添え書きしておいた。詳しくは画面右下にある HELP をご覧いただきたい。

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情報表示と印刷

たとえば、情報アイコンでは、表示縮尺や座標系を変更したり、カーソルを置いた地点の座標値や標高値の表示ができる。

また、印刷アイコンでは、PNG形式(画像ファイル)またはPDFファイルで地図のダウンロードができる。用紙の向きでは、"landscape" が横長、"portrait" が縦長の形式になる。また、印刷の縮尺では、たとえば1:50,000地形図が印刷対象であるとき、ここで1:50,000を選択すると等倍、1:25,000を選択すると2倍拡大したものが出力される。

なお、ジオポータル内のデータの利用について、利用規約(下注)には、利用者がインターネットを通じて行えることを列挙してあり、その中に「(ルクセンブルク大公国の公的機関を出処とする)地理製品、地理データおよび地理サービスを公開すること publier des géoproduits, géodonnées et géoservices (en provenance des instances officielles qui existent au Grand-Duché de Luxembourg)」も含まれている。

*注 利用規約(フランス語版) https://www.geoportail.lu/fr/propos/mentions-legales/ 引用した文言は 15.1 Généralités にある。

使用した地形図の著作権表示 © 2018 Administration du Cadastre et de la Topographie

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 ルクセンブルクの地形図

 地形図を見るサイト-ベルギー
 地形図を見るサイト-フランス

2018年2月 4日 (日)

地形図を見るサイト-ベルギー

北部のオランダ語圏と南部のフランス語圏、それに東部にはわずかながらドイツ語圏も存在するベルギーでは、政府組織のウェブサイトも、まず言語を選んでから入るようになっている。測量機関 NGI / IGN(下注)も例外ではない。

*注 オランダ語で Nationaal Geografisch Instituut (NGI)、フランス語で Institut Géographique National (IGN)、直訳すれば国立地理学研究所。

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Topomap Viewer で見るブルッヘ(ブルージュ)市街

NGI / IGN の作成している地図データは、Topomap Viewer(トポマップ・ビューワー)というサイトで公開されている。ここではデジタル地図や空中写真とともに、旧来の地形図(といっても1990年代に図式は一新されているが)を縮尺別に見ることができ、画像も鮮明だ。
(記述は2018年2月現在の仕様に基づく)

Topomap Viewer(トポマップ・ビューワー)
http://www.ngi.be/topomapviewer/

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初期画面で言語を選択

初期画面(上の画像)は言語の選択だ。英語版がないので、以下はフランス語版で説明するが、使用言語を宣言する際に利用規約の承諾まで要求されるのは、一般的な閲覧サイトにしてはものものしい。しかもその下には、規約を厳守せよ、特に複写は禁止、違反者には起訴も辞さない、と強い調子の警告文が続く。善良な市民をまるで犯罪予備軍のようにみなす態度には言葉を失う。

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利用規約の一部

とはいえ、異国から訴えられても困るので、コピーの扱いがどうなっているか、利用規約 Conditions d'utilisation にも目を通しておこう(上の画像)。知的財産権の項を見ると、利用者は参照、印刷、保存(下注)、リンクの第三者配布(=共有)の権利を有すると書かれている。複写には言及がないから、権利が認められていないことは確かだ。

*注 保存に関する原文は、"sauvegarder dans le marque-pages les données de Topomapviewer"(Topomapviewer のデータをブックマークにバックアップする)。しかし、本サイトには地図データのダウンロード機能はない。

一方、禁止条項では、「過度な方法で de manière excessive」複写し、複製することはできないとあって、一切不可という表現にはなっていない。厳密な法解釈はともかく、複写・複製については権利は主張できないものの、「過度でなければ」違反行為とまではいえない、ということかと思う。本稿でも画面のスクリーンショットを使っているので、権利関係は一応押さえておきたいところだ。

さて、この関所を通過すると、ようやくベルギー全図のデフォルト画面が現れる。国土の中央で横一文字に引かれたやや太い薄紫の線が言語境界線になる。

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ベルギー全図を表示したデフォルト画面

この画面で見えているのは CARTOWEB と称するデジタル地図で、拡大していくと、最終的に住宅が一軒ずつ判別できるまでになる。凡例(地図記号)を知りたければ、左メニュー上方のLEGENDEをクリックする。

左メニューには、表示可能な地図データの一覧がある。最上段の À superposer(オーバーレイ)は背景が透過処理されており、他の地図に重ねて用いるものだ。次の Photographies aériennes(空中写真)は、現在2013~15年撮影の最新オルソフォトのみ提供されている。

3番目の Carte de référence(参考地図)の中の Cartes classiques(直訳すると伝統的な地図)が、印刷版に使われている地形図になる。TOP10MAP(1:10,000)から TOP250MAP(1:250,000)まで4種類用意されている。名称の TOP は Topo(地形の)、10は縮尺1:10,000を意味している。印刷版ではこれ以外に1:20,000がある(下注)が、これは1:10,000図を単純に50%縮小したものなので、メニューにはない。

*注 1:20,000地形図は2016年から、独自のグラフィックを用いた1:25,000に順次置き換えられている。

使われる地図レイヤーは、表示縮尺に応じて自動的に切り替わるが、リストの上部にある"Mode automatique: l'échelle détermine la couche affichée(自動モード:縮尺により表示レイヤーが決まる)"のチェックをはずすと、レイヤーが固定化され、そのレイヤーの拡大縮小ができるようになる。ただし、複数の地形図レイヤーを同時に選択することはできないようだ。

レイヤーの選択を解除したいときは、そのサムネールの上でクリックする。

地図の拡大縮小は、地図画面左上のスケールバーを上下させる方法や、マウスホイールを使う方法がある。また、範囲を指定して拡大縮小するときは、上のメニューにある専用のボタンをクリックして行うほか、Shiftキーを押しながらマウスで矩形を描くのも可能だ。

また、上のメニューには「<」(前の画面、すなわち「元に戻す」)、「>」(後の画面)というボタンがある。閲覧サイトでは珍しい機能だが、前の画像をもう一度見たいと思うときはあるもので、覚えておくと重宝する。

これまで見てきたフランスやオランダのサイトとは違って、IGNのサイトはあくまで最新図が対象であって、旧版図の画像は用意されていない。どこかにないものかと探したところ、次のサイトが見つかった。

Cartesius(カルテージウス)
http://www.cartesius.be/CartesiusPortal/

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「カルテージウス」初期画面

これはベルギーと(ベルギーの植民地があった)中央アフリカの古地図、旧版地図、空中写真の膨大なコレクションを一挙公開するという意欲的なサイトで、NGI / IGN、王立図書館 Bibliothèque royale、国立古文書館 Archives de l’Etat、王立中央アフリカ博物館 Musée royal de l’Afrique centrale が共同で開設したものだ。近代測量以前の古地図はもとより、1770年代のフェラーリ図 Cartes de Ferraris(下注)から最近の地形図に至るまで、各時代の地図資料が見られる。

*注 フェラーリ伯により1770~78年に作成されたオーストリア領ネーデルラントの彩色地図。手描きの原図は縮尺1:11,520で275面あるが、それをカッシーニ図に合わせて1:86,400、25面に編集した銅版刷りの普及版も作られた。このサイトで表示されるのは、ベルギー王立図書館所蔵の1:11,520原図を1:20,000に縮小した画像。フェラーリ図の索引図は http://www.ngi.be/FerrarisKBR/ にある。

以下、英語版で説明するが、初期画面(上の画面)には Search と MyCartesuis の2つの入り口がある。前者では、膨大なコレクションから目的のコンテンツを地図上、あるいはキーワードで検索する。後者は、検索で見つけたコンテンツを利用者がいつでも呼び出せるように保存し、メモをつけたり、グループ化したり、公開したりできる(ユーザー登録が必要)。

操作マニュアルは40ページ以上もあって、本稿ではとうていフォローできないが、まずはSearch(検索)機能を使って、旧版地図を探し出すところまでを説明しよう。

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検索画面

Search をクリックして中に入ると、左に地図、右にキーワードを入力する画面が現れる。キーワードだけで検索するとヒット件数が多すぎる場合は、地図でエリア範囲を絞り込める。スケールバーで拡大縮小してもいいが、Shiftキーを押しながらマウスで範囲選択するほうが早い。

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検索範囲や語句、属性を入力

このとき、Intersection(左の地図に部分的にでも含まれる地図を検索)か、Overlapping(同 完全に含まれる地図を検索)か、Everywhere(全範囲を検索)かを選択できる。

例として、キーワードを"Carte topographique(仏語で地形図の意)" にし、縮尺で"Part of province, City and surrounding area(州、都市と周辺の一部)" を選んだ。これで縮尺が1:10,000~1:75,000の範囲になる。地図を Brussel / Bruxelles(ブリュッセル)周辺まで拡大しておき、検索ボタンをクリックした。

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検索結果

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サムネールの展開

結果は201件がヒットした。これで希望のものが見つかればよし、そうでなく検索結果を消去して条件設定をやり直すときは Filter Empty、検索条件を追加してさらに絞り込む場合は Extended filterをクリックする。

右下に表示されている検索結果のサムネールにカーソルを当てると、その範囲が左の地図に黄色で表示される。サムネールのテキストをクリックすると、解説が表示される。その "See map" を選択するか、サムネールの画像部分をクリックすると、MyCartesuis の画面に移って、高精度の地図画像が表示される。

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地図画像の表示

なお、英語版で上記の手順を実行したところ、いっこうに地図画像が現れなかったのだが、フランス語版で再試行すると短時間で表示された。もし英語版でサイトの反応が鈍いようなら、他の言語で試していただきたい。

使用した地形図の著作権表示 © 2018 IGN Topomapviewer

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 ベルギーの地形図
 ベルギーの地形図地図帳

 地形図を見るサイト-オランダ
 地形図を見るサイト-ルクセンブルク
 地形図を見るサイト-フランス
 地形図を見るサイト-ドイツ・バイエルン州

2018年1月30日 (火)

地形図を見るサイト-オランダ

2009年にオランダの官製地形図について少し調べたことがある(「オランダの地形図」参照)。それから早や9年、しばらくご無沙汰しているうちに、地形図サイトがすっかり様変わりしていた。

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「テイドライス」で見る1934年のデルフト
フェルメールの街がアップルグリーンの牧草地の中にくっきりと浮かぶ

オランダの国土測量はカダステル Kadaster(地籍局)という機関が担っているのだが、当時は historiekaart.nl(historiekaart は古地図の意)というサイトが提供され、グーグルの空中写真と対比しながら1829~1949年の1:25,000地形図を縦覧することができた。また、それとは別に、19世紀の軍用地形図を含むオランダの古地図が見られる watwaswaar.nl(Wat was waar は、何が真実だったのかの意)というサイトもあった。オランダはこうした古地図を収録した地図帳(アトラス)の刊行も盛んで、モニター画面と印刷物の両方で、19世紀前半から現代までさまざまな地形図を渉猟できたのだ。

ところが、今見ると上記のサイトはどちらも消えて、カダステルは新たに、時間旅行を意味する「Tijdreis(テイドライス)」という閲覧サイトを開設している。1815年に地形測量局 Topographisch Bureau が設立されて200年になるのを記念して、この間の国土の変貌を地図でたどるためのサイトだ。
(記述は2018年1月現在の仕様に基づく)

Tijdreis(テイドライス)   http://www.topotijdreis.nl/

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「テイドライス」初期画面

初期画面では、1925年のオランダ全図が現れる。時代的には戦間期で、南西部ゼーラント州 Seeland の陸化は完了し、ゾイデル海 Zuiderzee(現在のアイセル湖 IJsselmeer)の大規模干拓事業が始まった段階だ。地図は1929年から1:400,000行政区分図 Gemeentekaart(行政区分図)に置き換わり、1937年にはその図上にゾイデル海を締め切る大堤防 Afsluitdijk が現れるはずだ。

「テイドライス」のバナーや右上のiのアイコンをクリックすると、オランダ語の解説が表示される。「よくある質問 Veelgestelde vragen」が含まれているので、日本語に訳しておこう。

問:どのブラウザならアプリを最適に見られますか?
答:ブラウザの最新バージョンを使用することをお勧めします。このアプリは、Google Chrome と Mozilla Firefox で最もよく作動します。

問:初期の地図と現代の地図では位置の変動がありますが、どうしてですか?
答:クライエンホフ図 Kraijenhoff-kaart と郵便路線図 Postroutkaart の絶対位置は、相互間や他図との間で大きく異なります。差異は最大15kmに達することがあります。これは、地図作成の基準に適用される非常に単純な投影法に関係しています。加えて、縮尺が一定でないことが問題です。縮尺は、地図のデジタル統合によって改良されましたが、地図画像の歪みを正しく修正することはできません。この歪みは主に、曲がるべき緯線が直線で描かれているという事実から来るものです。クライエンホフ図の利用で重視したのは、地図相互間の良好な接続であり、歪みを解決することではありません。

問:このアプリではどの地図が見られますか?
答:いくつかの古い縮尺図が、このアプリの地図コレクションに使用されています。コレクションには1815~2015年の期間が含まれ、以下の地図シリーズの複数の版があります(下注)。

・小縮尺: 1810年郵便路線図 Postroutkaart、ネーデルラント全図 Algemene Kaart Nederland および行政区分図 Gemeentekaart
・やや中縮尺: クライエンホフ図 Kraijenhoffkaart
・中縮尺: 軍用地形図 Topografische Militaire Kaart (TMK) RD050(1:50,000)
・大縮尺: ボンヌ区分図 Bonnebladen および軍用地形図 RD025(1:25,000)

*注 1810年郵便路線図は、ナポレオン時代の道路網(郵便馬車ルート)を描いた古地図で、図上約13cmで徒歩10時間の距離を表す。
クライエンホフ図は、1798~1822年に作成(印刷は1809年~)されたオランダ最初の全国規模の地形図で、縮尺は1:115,200。
軍用地形図 TMK は、1850~64年に作成された石版単色刷り、縮尺1:50,000、全62面の地形図シリーズ。
ボンヌ区分図は、TMK完成後の1865年から作成された多色刷り、縮尺1:25,000の地形図で、1884年ごろに全土をカバーした。名称はボンヌ図法に由来。

問:地図はどのくらいの縮尺で表示され、どの投影法が使われているのですか?
答・地図は複数の縮尺で構成され、1:12,288,000(レベル0)から1:6,000(レベル11)までオランダの更新スケジュールに従ってデータが表示されます。使用している地図投影法は、国定三角図法 Rijksdriehoekstelsel です。

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地勢をケバで表現する1:50,000軍用地形図 (TMK)
レーネン Rhenen 付近
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手描きのタッチが味わい深い1:25,000ボンヌ区分図
ネイメーヘン Nijmegen 旧市街

このサイトは Esri のシステムを利用しており、操作は単純でわかりやすい。

特定の地域を表示するには、検索窓で地名(例:Amsterdam)を指定する。

地図を拡大縮小するには、左上の+-ボタンを使うほか、画面をダブルクリックしても一段階ずつ拡大する(shift+ダブルクリックは効かない)。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。Shiftキーを押しながらマウスで矩形を描けば、その範囲を拡大できる。

任意の時代を指定するのも3通りのやり方があり、一つは、時間バーの上にある年次のドロップダウンリストから選ぶ方法、二つ目はバー上のポインターをスライドさせる方法、そして三つ目はバー左端のグレー部分の任意の箇所をクリックする方法だ。

時代を連続的に変えるには、左上のプレイボタンをクリックする。画面は1年ずつゆっくりと進んでいくが、地形図の更新間隔は一般に数年おきのため、表示内容に変化のない期間も当然ある。

画面操作はこれだけだ。別の言い方をすれば、これしかできない。ただ地表の変化を眺めて楽しむだけなら問題は少ないが、資料として活用するには物足りなさが募る。たとえば、シームレス画像であっても、もとの地図の属性情報(縮尺、図名、作成年次など)は何らかの形で表示できるようにすべきだろう。画面に縮尺(スケールバー)の表示がないのも不親切だ。

また、画面解像度の関係で細かい注記文字が読めないため拡大しようとすると、自動的に大縮尺の地図に置き換わってしまう。結局、細部を確認できるのは、その時代で最大縮尺の地図(1:25,000など)だけになる。元のファイルがいくら高解像度で作成されていても、これでは宝の持ち腐れだ。フランスのように縮尺別のレイヤーに分けるか、詳細画像のダウンロード機能を付加すれば、この難点はカバーできると思うのだが(下注)。収載図はどれも高品質で絵画的にも美しいものばかりなので、仕様が改良・拡張され、より洗練されたサイトに進化する日を待ちたい。

*注 ダウンロードや印刷は別途有料サービスがあるため、それへの影響を懸念しているのかもしれない。

現行地形図を見るだけなら、公的な地理情報を一括している PDOK Viewer(PDOK=Publieke Dienstverlening Op de Kaart(地図での公共サービスの意))のサイトのほうが、同じ縮尺図を拡大縮小でき、画像も鮮明だ。PDOKは、カダステルをはじめ、社会基盤・環境省、経済省、水資源局 Rijkswaterstaat などが共同出資する公共企業体で、全国規模の地理情報をウェブサイトで提供している。

PDOK Viewer  http://pdokviewer.pdok.nl/

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PDOK Viewer 画面で、TOP25raster を表示

初期画面の左メニューが、閲覧できるデータの一覧(ABC順)だ。ツリーを下へスクロールしていくと、TOP10NL、TOP25raster などの地形図データが見つかるはずだ。ちなみに名称の TOP は Topografisch(地形の)、25は縮尺1:25,000、raster はラスタデータを意味する。左端の-をクリックして表示される下位項目(下注)にチェックを入れると、該当データが中央のビューワーに現れる。地図はレイヤーになっており、後述する方法で透明度を調整したり、重ね順を入れ替えたりできる。

*注 項目名の末尾にある tms (Tile Map Service), wmts (Web Map Tile Service), wms (Web Map Service) はウェブマッピングの仕様を示しているが、閲覧だけならどれを選んでも問題ない。画像をコピーするときは wms を使うとよい(tms, wmtsでは256×256 pixの小さなタイル単位になってしまう)。

注意すべきは、オランダ全土が表示されている初期画面では、チェックボックスがアクティブにならないものがあるということだ。各縮尺図は、表示できる画面縮尺に一定の範囲があり、それ以上でも以下でも選択ができない。+-のボタンかスケールバーで地図を拡大/縮小していくと、どこかの時点でチェックボックスがアクティブに転じる(色がグレーから黒に変わる)のが確認できるはずだ。

レイヤーの透明度を調整するには、左メニューの Actieve Lagen(アクティブレイヤーの意)の右の+をクリックし、該当レイヤーの透明度バーを適宜スライドさせる。

レイヤーの重ね順を変えるには、該当レイヤーのサムネールを変えたい位置にドラッグドロップする。

メニューを畳むには、右上端の≫をクリックする(右側の凡例も同じ)。

地図をプリントする機能は見当たらず、ブラウザの印刷機能を使うか、コピーした画像ファイルから印刷するしかないようだ。なお、PDOKで公開されているデータ(地図画面に CC-BY の著作権表示があるもの)は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従って、無償かつ自由な使用が許されている。

最後に官製地形図そのものではないが、それをしのぐ完成度を誇るオランダ全土のデジタル地形図をお目にかけよう。上記PDOKビューワーのデータツリーにも名が挙がっている OpenTopo だ。閲覧はPDOKで試していただくとして、これを大サイズのJPEG画像でダウンロードできるサイトがある。

OpenTopo.nl http://www.opentopo.nl/

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OponTopo.nl 初期画面

提供される縮尺は6段階で、100pix/km(実長1kmあたり画素数100ピクセル)は1:100,000、200pix/kmは同 1:50,000、400pix/kmは同 1:25,000に相当するという。最大縮尺は3,200pix/kmで1:3,125相当と非常に詳細なデータが得られる。等高線は2.5m間隔(100pix/kmでは省略)と官製図と同等で、かつ地勢を表すぼかしが入り、地図記号もより多彩だ。地形はカダステルの Top10NL、建物は地方自治体、水路は水資源局 Rijkswaterstaat の公式データを使用し、OpenStreetMap と組み合わせているという。

カダステルの官製地形図と同じエリアを比べてみよう(下図参照)。まずアムステルダム中心部だが、左の1:25,000官製図では市街地がベタ塗りで埋められ、施設の注記は、著名な観光地でもある国立美術館 Rijksmuseum、計量所 Waag、アンネ・フランクの家 Anne Frankhaus、マヘレの跳ね橋 Magere Brug 程度だ。一方、右の OpenTopo では建物の平面形が読み取れ、主要施設の注記もかなりの量に上る。地図を携えて街歩きが可能なほど、情報が豊富であることがわかるだろう。

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官製地形図(左)と OpenTopo (右)の比較。アムステルダム旧市街

次は北海沿岸のリゾート、エフモント・アーン・ゼー Egmond aan Zee の周辺だ。海岸砂丘の複雑な起伏が、 OpenTopo では等高線を読まずとも、ぼかしによって直観的に、かつ詳細に確かめられる。官製地形図(1:25,000、1:50,000など)でもかつては砂丘にぼかしをかけていたのだが、1990年代に改訂された新図式で省かれてしまい、現在は等高線だけになっている。訴求力の点でどちらが勝るのかは敢えていうまでもない。

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同 エフモント・アーン・ゼー

使用した地形図の著作権表示 © Kadaster, 2018, © OpenTopo, 2018

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 地形図を見るサイト-ベルギー
 地形図を見るサイト-フランス
 地形図を見るサイト-ドイツ・バイエルン州

2018年1月25日 (木)

地形図を見るサイト-フランス

フランスの国土地理院であるIGN(イ・ジ・エヌ、Institut Géographique National)も、地形図を含む幅広いジャンルの地理情報をウェブサイトで公開している。

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「ジェオポルタイユ」で見る1:25,000地形図
遠浅の湾内に浮かぶモン・サン・ミシェル。中心が修道院 Abbaye 、東~南斜面に門前町

フランスは面積では西ヨーロッパ最大で、551,500平方km(海外領土・属領を含まず)と、スイスやドイツ・バイエルン州の約13倍もある。そのため、さすがに旧版地形図がすべて見られるわけではないが、18世紀のカッシーニ図、19世紀前半の参謀本部地図、20世紀中盤の1:50,000(IGN旧版)、そして現行図と、世紀単位で国土の発展を追うことができる(下注)。

*注 パリ首都圏については、さらに1818~24年の参謀本部地図と1900年図式地形図も提供されている。

サイトのもう一つの特徴は、フランス国内だけでなく、国外についても協力会社の地図でカバーしている点だ。そのために Esri や OpenStreetMap の世界地図が使われており、それに加えて、スイスとルクセンブルクの官製図もレイヤーとして選択できる。グーグルマップの浸透で、国境を越えて地図・空中写真を閲覧できるのは当たり前のように思われがちだが、国家測量機関のサイトではあまり例がない。IGNは以前から、紙地図でも民間地図会社と提携して、他国の旅行地図をIGNブランドで販売してきた。それと同じことをウェブサイトの世界でも実現しているわけだ。

それでは、IGNの地図閲覧サイト Géoportail(ジェオポルタイユ、地理ポータルの意)の内容を見ていこう。表記はフランス語のみのため、スクリーンショットには適宜日本語訳を付している。
(記述は2018年1月現在の仕様に基づく)

ジェオポルタイユ Géoportail
https://www.geoportail.gouv.fr/

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初期画面

初期画面(上の画像)が地図ではなく、説明文が並んでいるだけなので戸惑うが、検索窓を除いて、どの文字列をクリックしても、次に出てくる画面は同じだ。

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次画面(2回目以降は省略も)

次画面(上の画像)には簡単な操作説明がある。FAQを見るのでなければ、画面上のどこかでクリックする。これでようやく黒のマスクが取れて、フランス全土の空中写真が現れる。

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操作初期画面

各アイコンの機能は上の画像に書き加えたとおりだが、空中写真を拡大しても、土地鑑がない限りそれがどこなのか見当もつかない。それで空中写真を地図に取り換えることにしよう。

別の地図などにするには、左上隅のCARTES(地図)のアイコンをクリックして、メニューを表示させる(このときアイコンが90度回転する)。なお、メニューを消去するには、再度CARTESアイコンをクリックする。

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ベースマップメニュー。「すべてのベースマップを見る」をクリックすると右の画面に

FOND DE CARTE(ベースマップ)をすべて表示するには、Voir tous les fonds de carte(すべてのベースマップを見る)をクリックする。上の右画面のような一覧が表示されるので、任意のサムネールを選択する。

なお、選択したベースマップはレイヤーとして、削除の操作(方法は後述)をしない限り積み重なっていく。つまり、一度選択したものは、画面で見えなくても背後には残っているのだ。それで、重ね順を変更したり、透明度を調節すること(方法は後述)によって、再び表示させることができる。また、レイヤーのサムネールをダブルクリックしても、重ね順が一番手前に来る。

選択できるベースマップは以下の通り。

・Carte IGN:IGN地図、すなわち全土のベクトルマップ
・Parcelles cadastrales:地籍図。背景が透明のため、他の地図に重ねて表示が可能。
・Plan IGN:IGN地図(作業用)。家屋の輪郭や影を消し、作業に使いやすいようにしている。
・Carte topographique IGN: IGN地形図、市販されている1:25,000地形図と同じもの。
・Cartes IGN classiques:IGN地図旧図式
・Carte IGN (niveaux de gris):IGN地図グレースケール版。さまざまなデータをオーバーレイするときに用いるとよい。
・Carte France Raster:ラスターマップ
・Carte du relief:レリーフ地図
・Cartes 1950:1950年代の地形図、縮尺1:50,000。
・Photographies aériennes 1950-1965:1950~1965年撮影の空中写真
・Carte de Cassini:カッシーニ図。18世紀に作成された三角測量に基づく世界最初の地図。原図の縮尺は1:86,400
・Carte de l'état-major (1820-1866):参謀本部地図。19世紀の軍用地形図で、縮尺1:80,000
・Cartes géologiques:地質図
・Esri World Topographic Map
・Esri World Street Map
・OpenStreetMap monde

メニューを畳むには、tous les fonds de carte の見出しの左の "<" をクリックする。

用意されている地図データはこれだけではない。Données thématiques(テーマのデータ)の見出しの下に、Agriculture(農業)から Territoires et transports(国土と交通)まで並ぶ項目の中にも、多数の選択肢がある。

例えば Culture et patrimoine(文化と遺産)には、Guyane française(フランス領ギアナ図、1780年、下注)、Carte de l’état-major – environs de Paris(最初の参謀本部地図-パリ周辺、1818~24年)、Cartes topographique type 1900 – Paris et ses environs(1900年図式地形図-パリとその周辺)など、上のベースマップ一覧にはない古地図が挙がっている。

*注 フランス領ギアナは南米大陸の北東岸にあり、ベースマップをその位置にしないと表示されない、

International et Europe(世界とヨーロッパ)では、Suisse(スイス)や Luxembourg(ルクセンブルク)の地形図が見られ(下注)、Territoires et transports(国土と交通)> Transportsには、Routes(道路)、Réseau ferroviaire(鉄道網)のオーバーレイやCarte OACI-VFR(ICAO航空図)もある。

*注 ルクセンブルクの地形図作成は、戦後一貫してフランスIGNが協力しているので、ここに登場するのは不思議なことではない。本ブログ「ルクセンブルクの地形図」参照。

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レイヤー操作メニュー

次に削除や重ね順の変更など、レイヤーの操作方法は以下のとおり。

まず、右上にあるレイヤーアイコン(上図の左画面参照)をクリックして、選択中のレイヤーを一覧表示する。歯車アイコン(同 中画面)をクリックすると、図のようなマネージャが現れる(同 右画面)。上がレイヤーの透明度を変えるスライドバーで、下のアイコンは左から、レイヤーの非表示/表示、モノクロ/カラー、情報の表示、削除(=選択をやめる)といった機能だ。

また、レイヤーの重ね順を変更するには、レイヤーのサムネールを上下にドラッグドロップする。

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印刷画面

次は表示した地図の操作について。

特定の地域を表示するには、検索窓で任意の地名(例:Paris)、郵便番号(例:75004)、経緯度(例:48°51'10.8" 2°20'59.4")、同 座標値(例:48.853084 2.349864)などを指定する。

地図を拡大縮小するには、+-ボタンを使うほか、ダブルクリックでも行える。図上でダブルクリックすると、1段階ずつ拡大する。Shiftキー+ダブルクリックで1段階ずつ縮小する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

地図をプリントするときは、画面右上の印刷アイコンをクリックする。印刷する地図にタイトルやコメントを入力する画面が出るが、必要なければ空白のままで、Imprimer(印刷する)ボタンをクリックする。拡大縮小や印刷範囲の微調整といった機能は見当たらない。

その他詳しい使い方は、画面右上のヘルプアイコンからリンクしている。

スイスで提供されているような「地形図による時間旅行」ができるサイトは、「ルモンテ・ル・タン Remonter le temps(時を遡るの意)」の名称で別に作られている。2種類の地図・空中写真を並べて比較したり、ダウンロードしたりする機能が実装されているが、表示できるのは、IGN地図、1950年代の縮尺1:50,000地形図、1820~66年の参謀本部地図、18世紀のカッシーニ図、現行の空中写真、1950~65年の空中写真の6種類にとどまる。いずれもジェオポルタイユで見ることができるものばかりで、わざわざ別サイトにする意味は薄いように思う。

ルモンテ・ル・タン Remonter le temps
https://remonterletemps.ign.fr/

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「ルモンテ・ル・タン」2種の地図比較画面

なお、ジェオポルタイユのデータの使用については、利用規約に次のとおり記されている。
http://www.geoportail.gouv.fr/mentions-legales より抜粋、和訳)

「10.スクリーンショットと印刷

IGNのコンテンツのみがスクリーンショットまたは印刷物に含まれる場合、各データレイヤーの情報に反対記述がない限り、IGNは次のとおり再使用を許可する。

・A4サイズおよび解像度150dpi(約1230×1750ピクセル)に限定した、直接または間接的に経済的利益を与えない用途での印刷

・最大サイズ1000×1000ピクセルかそれと同等または約100万ピクセルの1個または複数個の画像に限定した、サイト、ブログ、共有プラットフォームその他、インターネットユーザーが登録なしで参照可能なウェブアプリケーションへの挿入。あらゆる公表物には、GéoportailのロゴとIGNのロゴまたは「© IGN」と年次の記述を添えなければならない。ただしこの記述では、公表サイトとジェオポルタイユの間で混同が生じないように、スクリーンショットの出処を示すべきである。

それ以外のIGNデータの使用はすべて、IGN代理店網から入手できるライセンスの対象となる。」

使用した地形図の著作権表示 © IGN, 2018

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 地形図を見るサイト-ドイツ・バイエルン州

2018年1月18日 (木)

地形図を見るサイト-ドイツ・バイエルン州

通販サイトで商品の発注や代金決済が手軽に行えるようになった今でも、外国の地形図を印刷物で入手するには、ある程度の手数と時間を伴う。一方で、より手軽に地形図にアクセスできるように、ウェブサイトで閲覧やセルフ印刷のサービスを提供する測量機関も増えてきた。本ブログでも、先にスイスとニュージーランドのサイトを紹介した(本稿末尾にリンクあり)が、ほかにも同じような仕組みを整えているところがある。ドイツ・バイエルン州もその一つだ。

ドイツの地形図概説 II-連邦と州の分業」 でも紹介したように、ドイツの官製地図作成は、小縮尺(1:200,000以下)が連邦政府、中・大縮尺図(1:100,000以上)は各州政府という分業体制がとられていて、ウェブサイトもそれぞれにある。中でもバイエルン州の測量局(下注)が開いているサイト「バイエルンアトラス BayernAtlas」は、使い勝手がよく、内容的にも充実している。

*注 かつてはバイエルン州測量局 Bayerisches Landesvermessungsamt という単純明快な名称だったが、現在は任務の高度化を反映して「デジタル化・広帯域・測量局 Landesamt für Digitalisierung, Breitband und Vermessung(略称 LDBV)」と称する。

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「バイエルンアトラス」で見る現行1:25,000地形図
ワグネリアンの聖地バイロイト。南に旧市街、北に祝祭劇場 Festspielhaus が建つ丘

バイエルン Bayern(正式名:バイエルン自由州 Freistaat Bayern)は、ドイツの面積の2割に当たる広い州域(70,549平方km、北海道の面積の85%に相当)を有している。その上、オーストリアとの国境にはアルプスの山岳地帯が横たわり、地勢の面でもダイナミックさが際立つ。それだけに、見ごたえのあるサイトで、地形の詳細を余すところなくチェックできるのはうれしいことだ。

同サイトは、スイスの「連邦ジオポータル Geoportal des Bundes」で使われているシステムをベースにしているので、画面デザインや操作方法はよく似ている。ただ、英語表記の説明も選択できるスイスとは異なり、ドイツ語表記しかないのが難点だ。そこで本稿では、スイスのサイト紹介と重複するのを承知の上で、主な使い方を日本語訳を加えながら記すことにしたい。
(記述は2018年1月現在の仕様に基づく)

バイエルンアトラス BayernAtlas
https://geoportal.bayern.de/bayernatlas/

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初期画面

初期画面(上の画像)では、バイエルン州全域が「ウェブカルテ Webkarte」のカラー版で表示されている。ウェブカルテというのはベクトルマップで、右端の拡大縮小(+-)ボタンを使って、最終的に家1軒の形と家屋番号がわかるところまで拡大できる。実用的にはこれで十分だが、残念ながら等高線や植生の種類などは省かれており、そこが地形図との違いになっている。ウェブカルテは背景図として扱われており、他の地図と入れ替えたり、この上に別の地図レイヤーを重ねたりできる。

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背景図選択

背景図を入れ替えるには、画面右下の Hintergrund(背景)をクリックする。背景図は、Kein Hintergrund(背景なし=白地の画面)、Webkarte S/W(ウェブカルテのモノクロ版)、Historische Karte(古地図)、Topographische Karte(地形図)、Luftbild + Beschriftung(空中写真+注記)、Webkarte(ウェブカルテのカラー版=初期画面)の6種から選択できる。

このうち、「Historische Karte(古地図)」は、1817~1841年に作成されたバイエルン王国最初の近代測量成果である縮尺1:25,000の「測量原図 Urpositionsblätter」902面のシームレス画像が表示される。それ以外の旧版地形図は、背景図ではなくレイヤーで重ねることになる(後述)。

「Topographische Karte(地形図)」は、現行地形図のピクセルマップ(ラスタデータ)で、1:200,000以下は連邦の測量局BKG作成の図が使われている。

「Luftbild + Beschriftung(空中写真+注記)」には、画像に注記文字が埋め込まれている。注記のない空中写真はレイヤーで選択できる(後述)。

特定の地域の地図を表示するには、地名、郵便番号、経緯度、UTM座標などで指定するほか、マウスで直接矩形を描いて選択する方法がある。

・地名/郵便番号で検索
 →検索窓に、表示したい地名(例:Augsburg)または郵便番号(例:86150)を入力。候補が表示された場合はその中から選択

・経緯度で検索
 →検索窓に、経緯度(経度 緯度の順、48°22'03" 10°53'54")、同 座標値(例:48.36728 10.89829)などを入力

・マウスで直接選択
 →地図上でShiftキーを押しながらマウスで任意の範囲をドラッグする(矩形を描く)

地図を拡大縮小するには、+-ボタンを使うほか、ダブルクリックでも行える。図上でダブルクリックすると、1段階ずつ拡大する。Shiftキー+ダブルクリックで1段階ずつ縮小する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

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テーマの選択

背景図の上に重ねる地図レイヤーを表示するには、まず地図のテーマを選択する必要がある。レイヤーはテーマ別にまとめられているからだ。テーマは左メニューに表示されており、デフォルトは「Freizeit in Bayern(バイエルンでの休暇)」になっている。この下部項目にレイヤーが列挙されている。

地図のテーマを選択するには、初期画面で「Freizeit in Bayern」の見出しの右にある「Thema wechseln(テーマを選択)」のリンクから、選択肢(下の画像)を表示させる。

レイヤー表示の例として、ここでは「旧版地図」と「注記のない空中写真」を取り上げる。

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さまざまなテーマを選択できる

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旧版地形図を表示

・旧版地図(図郭表示→PDFダウンロード)
 テーマ「Geobasisdaten(地理基礎データ)」の従項目に「Historische Karten(旧版地図)」がある。2018年1月現在で提供されているのは1:25,000地形図 Historische Topographische Karten 1:25 000(下注)のみだ。表示される索引図の中から任意の図郭をクリックすると、その図葉の刊行年次リストとPDFファイルへのリンクが表示される(上の画像)。

*注 バイエルンの1:25,000地形図は、1902年にラインプファルツ Rheinpfalz(ライン川左岸にあったバイエルン王国の飛び地で、第2次大戦後はラインラント・プファルツ州の一部となる)で、1920年からライン川右岸のバイエルン rechtsrheinischen Bayern でも開始され、1960年に全558面が完成した。リストには2008年までに作成されたものが表示される。

・注記のない空中写真
 「Freizeit in Bayern(バイエルンでの休暇)」の従項目の「Basiskarten(基本図)」に、Luftbild(空中写真)を選択する。

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複数の地図の対比、透明度バーを使う

複数の地図や空中写真を画面上で対比させるときは、2通りの方法がある。まず、地図や空中写真を先述の手順で複数選択しておく。

・透明度バーを使う
 →左メニュー下部の Dargestellte Karten(表示する地図、上図②)で、上記テーマで選択したレイヤーの一覧が表示されるので、右の歯車マーク(上図③)をクリックし、Transparenz(透明度)バー(上図④)をスライドさせて、各層の透明度を調整する。重ね順は右側の矢印をクリックして変更できる。

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同上、左右に並べて表示

・左右に並べて表示
 →左メニューの Erweitere Werkzeuge(拡張ツール)> Vergleichen(対比)で左右に並べて表示できる。境界線はスライド(左右に移動)できる。

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地図の印刷

地図をプリントするときは、左メニューのDrucken(印刷)から必要事項を選択する。Orientierung(印刷の向き)は、Hochformat(縦長)か Querformat(横長)で、Maßstab(印刷の縮尺)の意味するところは、印刷対象となる地図本来の縮尺ではなく、紙に印刷したときの縮尺のことだ。たとえば1:50,000地形図が印刷対象のとき、ここで1:25,000を選択すると2倍に拡大したものが出力される。

選択後、Drucken(印刷する)をクリックする。生成されたPDFファイルを保存し、アドビリーダー等を使ってプリントする。

その他詳しい使い方は画面右上の Hilfe(ヘルプ)にある。

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時間旅行バーの表示

「時間旅行 Zeitreise」

スイスのサイトと同じく、各時代の旧版地形図による「時間旅行」機能も提供されている。
左メニューにある Thema wechseln(テーマ変更)のリンクから、Zeitreise(時間旅行)を選択すると、画面上部に「時間旅行バー」が表示される。バーには1850年代から現在までの目盛が振られている。ポインターに記されている数字は年次で、その時点で最も新しい改訂年次の地図が画面に表示される。

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年次の選択

表示地図の年次を変更するには

・ポインターをスライド
 →ポインターをバーの上で左右にスライドさせる。動かす都度、地図が入れ替わる。

・ポインターの年次を手入力
 →年次の個所をダブルクリックで選択して、任意の年次を手入力する。

なお、年代(特に古い年代)によって旧版図が存在しない場合は、最も近い年代の図(または別の縮尺図の拡大版など)が表示される。

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地図の縮尺や改訂年次などを知る

表示地図の縮尺や改訂年次などを知るには、図上でクリックする。Objekt-Information(主題情報)として、シリーズ名称・縮尺、Blattnummer(図番)または Blattname(図名)、Herausgabejhar(改訂年次)、Ausgabeart(版の種類、Normalausgabe=通常版、Schummerungsausgabe=ぼかし付加版、Farbausgabe=カラー版など)が表示される。

また、その下の行に "Karte als PDF" のリンクが出る場合は、当該図のPDFファイルをダウンロードすることができる。

時代順に地図を自動で切替えるには、時間旅行バーの右端にあるプレイボタンをクリックする。

異なる年次の地図を同時に表示するには、上記「複数の地図や空中写真を画面上で対比させるとき」の機能を使用する。

「バイエルンアトラス」では、ドイツ全土をカバーする既知の地形図体系とは別に、バイエルン王国(第一次世界大戦後は州)が独自に整備した19世紀前半の縮尺1:25,000「測量原図 Urpositionsblätter」や、縮尺1:50,000「バイエルン王国地形図集成 Topographischer Atlas des Königreiches Bayern」など、貴重な古地図(旧版地形図)も公開されており、興味は尽きない。1:50,000旧版など未作成のPDF化が完了した暁には、スイスのそれに匹敵するすばらしいウェブ・アーカイブになることが期待される。

使用した地形図の著作権表示 © Landesamt für Digitalisierung, Breitband und Vermessung, Bayern, 2018

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2016年11月13日 (日)

イギリスの1:250,000地形図 II-歴史

1:250,000は、図上1cmで実長2.5kmを表す縮尺だ。しかし、そのルーツをたどれば、いわゆる「クォーターインチ地図 Quarter-inch Map」に行き当たる。これは図上1/4インチが実長1マイルに対応するもので、分数表示では1:253,440になる。

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1:250,000 クォーターインチ地図 第5シリーズD版
ハイランズ西部(1978年)の一部(×1.6)
© Crown copyright 2016

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クォーターインチ地図
第4シリーズ表紙
 1948年
image from The Charles Close Society site.

クォーターインチの初版刊行は、1888年のことだ。すでに1859年から1マイル1インチ図(1:63,360)をもとに編集作業が着手されていたのだが、情報量の不足から完成が遅れていた。しかもこの第1シリーズはデザイン、内容とも不評で、途中で改訂版である第2シリーズに切り替えられて、ようやく1918年に全土21面が揃った。

続いて1919年に始まった第3シリーズでは、精度の低いぼかし(陰影)に代えて、段彩を施した200フィート(61m)間隔の等高線が用いられ、道路網が太く強調された。下図でご覧のとおり、クォーターインチ図式の骨格はここで確立され、その後実に70年以上にわたって各シリーズに受け継がれていく。

1934年からの第4シリーズ全19面では、森林に緑色が配されるとともに、自動車旅行の一般化に呼応して、車内で扱いやすいように縦長の折図として販売されるようになった(右写真)。

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クォーターインチ地図 第3シリーズの例 図番4、右図は一部拡大(×2.0)
image from The Charles Close Society site.

現行版に直接つながるのは、第二次大戦後の1957年に始まる第5シリーズだ。というのも、ここで初めて他の欧米諸国に歩調を合わせて、縮尺が1:250,000に変更されたからだ(下注)。しかし、実際の縮尺の変化は小さかったので、シリーズの名称はクォーターインチ地図のままとされた。つまり、伝統的な測量単位(帝国単位)を名乗りながらも、中身はメートル系に置き換えられていたわけだ。全土を17面でカバーするこのシリーズは、1970年代まで改訂を加えながら刊行が続けられた。表紙のデザインは、他の縮尺と同様、途中で大きく変わったが(下写真)、1インチ地図の赤表紙に対して、青表紙とされた点は共通している。

*注 地図の縮尺表示には「1:250,000またはおよそ4マイル1インチ」と記された。

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クォーターインチ地図 第5シリーズ表紙
(左)A版、1962年 (中)C版、1966年 (右)D版、1978年

地勢表現には、さらに磨きがかけられた。段彩(高度別着色)は、低地では薄いミントグリーンだが、200フィートでクリームイエローに変わり、高度が上がるにつれて黄系から濃い茶系へと変化していく。それで、平地の多い図葉には爽やかな空間が広がる一方で、山地の卓越する図葉では険しい地勢が強調される。さらに、森林を表す明るいアップルグリーンの塗りが適度なアクセントを添える。

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クォーターインチ地図 第5シリーズの異版を比較。後の版ほど彩色の明度が向上する
(左)A版、クライド湾 1962年 (右)D版、ハイランド西部 1978年
© Crown copyright 2016

初期は暗めの色調だったが、版を重ねるごとに明度が上がり、美しい見栄えになっていった。実際に今年(2016年)、OS創設225周年を記念して出版された特別図「ハイランド西部 Western Highlands」で、第5シリーズ(D版、1967年、下注)がベースに採用されたことでも、その完成度の高さが窺える。

*注 同一シリーズ中の版 Edition の区別は長らく、Aから始まるアルファベットで(マイナーな改訂はアルファベットに数字を添えて、例:A2)、地図のコピーライト表示の近くに記されていた。ただし、2015年6月から、歴年表示のみに切り替えられている。

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ルートマスター表紙 1978年

長年親しまれたクォーターインチ地図だが、1978年に開始された新シリーズで、ついにその名が消える。新名称は、道を識る者というような意味の「ルートマスター Routemaster」とされた。形態の点で旧版と違うのは、地図が両面刷りになったことだ。全土を9面でカバーできるように図郭を拡張するかわりに、それを南北に2分割して、表裏に印刷している。用紙も、直前の旧版のおよそ横82cm×縦75cmに対して、123.5cm×48cmと著しい横長サイズに変わった。

これは縦の折返しをなくし、蛇腹状に畳んで扱いやすくする試みなのだが、ユーザーの反応は意外にも冷たかった。そこで、次の版では、同じ図郭のまま、片面刷りに戻されている。当然、用紙が約2倍大になるため、今度は、車中で使うにはかさばって困るという苦情が寄せられたそうだ。

地図図式にも目立った変化があった。実は第5シリーズでは高地の塗り色が濃くなりすぎて、小道や注記が見分けにくいという声が上がっていた。実際にはこの欠点は改版でかなり改善されていたのだが、ルートマスターではさらに思い切って段彩の色を薄くした。等高線の色も茶系から赤系に変えた。また、道路番号の文字はぼかしにかかる部分に白のマージンをつけるなど、細かい工夫もしている。その結果、両図を並べれば、まったく別の図のように見える(下図参照)。濃色の道路網が効果的に目に飛び込んでくる反面、地勢表現にメリハリが感じられなくなったのもまた事実だ。

なお、このルートマスター版を使って、OSブランドの地図帳「OSイギリス地図帳 Ordnance Survey Atlas of Great Britain」(1982年初版)、「OSイギリス道路地図帳 Ordnance Survey Road Atlas of Great Britain」(1983年初版)も制作されている。

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両者の印象の差は地勢表現の配色の大幅変更によるところが大きい
(左)クォーターインチ地図 第5シリーズC版 ウェールズ北部及びランカシャー 1966年
(右)ルートマスター A版 ウェールズ及びミッドランズ西部 1978年
 原図は堀淳一氏所蔵
© Crown copyright 2016

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トラベルマスター表紙 1993年

1993年からはシリーズ名称が、「トラベルマスター Travelmaster」に再び変更された。新名称には、ターゲットを旅行者一般に拡大する意図が込められたようだ。用紙寸法はそのままだが、図郭が一部変更されて、面数は8面に減っている。ただし、1:625,000の全国図がトラベルマスターの図番1に位置づけられたため、1:250,000図葉には2~9番が振られた。また、図面編集がデジタル化され、それに伴って図式も大幅に変更された。この図式が、多少手を加えながら、現在まで引き継がれているものだ。

2001年以降は、小縮尺図や旅行地図(集成図)が「トラベルマップ Travel Maps」の名でグループ化された。その上でシリーズごとの役割を改めて明確化するために、1:250,000は「ロード Road」と命名された(下注)。その際、図番が1~8番に振り直されたため、同じ図郭でもトラベルマスター時代とは1だけ図番がずれている。

*注 1:625,000全国図は「ルート Route」、旅行地図(集成図)は「ツアー Tour」と命名。

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OSロード 表紙 (左)2009年 (右)2016年

そして前回も触れたように、2010年1月の供給中止を迎えることになる。この背景には、当時のOSの組織内事情がある。1990年代に急速に進んだ地図のデジタル化で、広い作業スペースが不要になったため、OSは古い本部施設をたたんで、別の場所に移転する準備を進めていた。付随して、これまで200年以上内製してきた地図の印刷と出荷業務も、外部業者に委託する方針が決まる。ところがその際、見直しの対象に挙げられたのが小縮尺図で、費用対効果が低いとして、1:250,000と1:625,000全国図の刊行の取止めが発表されたのだ。

日本の1:50,000の例を引くまでもなく、印刷物としての地形図の供給見直しは世界的な趨勢だ。その中でむしろOSは、フランス国土地理院(IGN)などとともに、地形図に豊富な旅行情報を盛り込むことで、積極的に一般市民への浸透を図ってきた。そのパイオニアでさえ、時代の流れには逆らえなかったのか、と当時は残念に思ったことだ。それだけに、今回装いも新たに復活したOSロードには期待がかかる。この新地図が、車を運転する人にとどまらず、国土をくまなく知りたいと考える多くの層に受け入れられることを願いたい。

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新版では地勢表現(段彩とぼかし)が改善された
(左)トラベルマスターA版 イングランド南東部 1993年
(右)OSロード イングランド南東部 2016年版
© Crown copyright 2016

本稿は、Tim Owen and Elaine Pilbeam "Ordnance Survey: map makers to Britain since 1791", Ordnance Survey, 1992、参考サイトに挙げたウェブサイトを参照して記述した。

■参考サイト
イギリス陸地測量部(OS) http://www.ordnancesurvey.co.uk/
チャールズ・クロース協会 https://www.charlesclosesociety.org/
The Lez Watson Inexperience - Ordnance Survey Leisure Maps Summary Lists
http://www.watsonlv.net/os-maps.shtml

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 イギリスの1:250,000地形図 I-概要

2016年11月 6日 (日)

イギリスの1:250,000地形図 I-概要

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1:250,000
OSロード 表紙
図番6 ウェールズ及び
ミッドランズ西部

イギリス陸地測量部 Ordnance Survey(以下、OS)が刊行する地図のマーケティングは、伝統的に、対象となるユーザーごとに的を絞った形で展開されている。「OSロード Road」と通称されるように、1:250,000縮尺図には道路地図の性格が与えられ、ターゲットは自動車のドライバーだ。後で見るように地勢描写もしっかり施されているのだが、道路区分の強調、道路番号の明示、それにラウンドアバウトや急勾配など小縮尺にしては細かい情報も添えられるなど、ドライブ用途に傾斜した造りになっているのが特色だ。

ところがこのシリーズは、2010年1月限りで供給が中止されていた。今回このテーマを取り上げたのは、その消えた1:250,000が7年近い空白期間を経て、今年(2016年)9月に店頭に戻ってきたからだ。「ロード」の名称や、図郭・図番は中断前のものを引き継いでいるが、新版として最新情報が盛り込まれていることは言うまでもない。

それにしても、スマートフォンや携帯端末でデジタル地図が簡単に手に入る時代に、なぜいったん廃止した紙地図を復活させたのか。OSの担当者はこう語る。「デジタル地図は、A地点からB地点へ行く道を知るのにはすばらしいのだが、のんびり車を走らせたり、何か新しいものを見つけたりするときには制約がとても多い。OSロードを休刊してからも、紙地図の優れた点はテーブルの上に広げて学習したり計画を立てたりすることにあるのだという顧客の声を、私たちは絶えず耳にしていた」(下注)。

*注 "Ordnance Survey relaunches road maps", Ordnance Survey News, 14 September 2016 から翻訳引用

モバイル機器を使えば確かに便利だが、小さな画面で広域を見渡すには、縮尺を小さくせざるをえない。そうすると地図表現は概略になり、今度は細部を確認できなくなってしまう。地図ファンとしては、まだ紙地図は駆逐されるべきでないとしたOSの勇断を大いに喜びたいところだ。

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1:250,000 OSロードの一例 ウェールズ北部スノードニア周辺
© Crown copyright 2016

では、その新しい1:250,000「OSロード」の内容を見ていこう。名称の「ロード」というのは、もちろん道路(地図)の意味だ。しかし、アメリカの道路地図のように白地図に道路網と水系だけというのではなく、地勢が明瞭に描かれた「地形図」でもあり、交通網のほかにさまざまな旅行情報が入った「旅行地図」の性格も合わせ持っている。

地図記号は、各縮尺でほぼ共通のデザインが使われており、その点ではなじみやすいだろう。道路の重要度は、青・緑・赤・橙・黄という中塗りの色で表わされるが、主要道路については1:50,000などより若干幅を太くしてある。無骨な感もしないわけではないが、その効果で、道路網を図上で地勢表現などに煩わされずに、文字通りネットワークとして認識することができる。

さらに、道路番号に枠付きの大きな文字が使われ、サービスエリアは両車線/片車線、通年/期間限定と細かく分類されるなど、道路地図らしい配慮が随所に見られる。特に後者の分類は1:50,000などにはないものだ。興味深いのはラウンドアバウトで、この縮尺では省略されてもおかしくないところ、小さいながらもそれらしく描かれている。運転中のいい目印になるからだろう。

鉄道の記号については、標準軌がおなじみの太い実線だが、狭軌線は日本でいうところの私鉄記号ではなく、旗竿の塗りを省いた梯子のようなデザインが使われる。1:250,000図では最初からその形で、濃い段彩に紛れてしまわないための工夫だ。駅も律儀に表示されているので、都市やその近郊では赤い円(ライトレールは黄色の円)が集中して賑やかだ。ただし、駅名はごく一部を除いて、周辺の地名から推測するしかない。

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凡例 道路・鉄道の部

独立記号では、沖合にある発電用風車 Wind turbine の群が目を引く(一部は山地にも)。灯台も伝統的に描かれているが、今や目標物の地位を奪いそうな勢いだ。凡例には、太陽光発電施設 Solar farm という記号も登場している(ただし選択表示)。一方、陸上では、主に青色の記号で示されるさまざまな旅行情報が溢れている。修道院・大聖堂、水族館、ビーチをはじめ凡例に33個も並ぶ記号の列を見れば、旅行のヒントがいくつも掴めそうだ。

ちなみに保存鉄道 Preserved railway の記号は、長い路線の場合、起終点駅のそばに置かれていることが多い。1:25,000の同じ記号では蒸機が右に向かっているのだが、本図では逆に左向きにされている。

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凡例 旅行情報の部

次に地勢表現だが、等高線と段彩(高度別着色)、それにぼかし(陰影)も駆使して実感あふれる仕上がりになっている。「クォーターインチ地図 Quarter-inch map」を名乗っていた時代の、メリハリのついたグラフィックを参考にしたのかもしれない。その等高線は、おもしろいことに200フィート(約61m)間隔だ。1:25,000図や1:50,000図ではもちろんメートル刻みなのに、1:250,000には昔の等高線が大切に保存されているのだ(単に全面改版した場合にかかるコストの問題かもしれないが)。標高点はメートル値のため、等高線の高度値はメートル換算で記載してある。

段彩も少々ユニークだ。ふつうは等高線に沿って塗り分けるのだが、ここでは200フィートから600フィートあたりの境界がぼかされて、平野から傾斜地がじわりと立ち上がる様子がうまく表現されている。また、陰影をつけるぼかしも比較的繊細なもので、等高線では表現に限界のある地形の起伏をつぶさに捉えている。

1:250,000は、1993年からの描画作業のデジタル化(「トラベルマスター Travelmaster」シリーズ)の際に、図式が一変した。それまではどちらかというと大人しい印象のグラフィックだったのが、新図式では、太い描線、サンセリフの文字フォントの採用で、見た目にも濃くごわごわした図柄になってしまった。ぼかしもスクリーントーンを切って貼り付けたような品質で、失望したものだ。最新版もその図式を継承しているのだが、地勢表現が改良された(下注)ことで、印象はかなりいい方に変わった。筆者も久しぶりに全面揃えようという気になっている。

*注 中断前のロード図が手元にないため、その時点で改良されたのかは定かでない。

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凡例 地勢の部
等高線間隔は200フィート(約61m)

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1:250,000 OSロード 索引図
8面で全土をカバーする

OSロードシリーズは、8面でイギリス全土をカバーする。各図郭は十分な重複があり、特に図番5「ミッドランズ東部及びアングリア東部 East Midlands and East Anglia」と図番8「イングランド南東部 South East England」は、いずれもグレーター・ロンドン Greater London を図郭に取り込むために大きく重なっている。

価格は5.99ポンド(1ポンド130円として779円)で、1:50,000などの中縮尺図(普通紙版8.99ポンド)よりお得な設定だ。日本のアマゾンや紀伊國屋書店などの通販サイトでも扱っているので、"OS Road Map"などで検索するとよい。

なお、OS公式サイトでは、1:250,000ラスタデータのTIFファイルも無料公開されており、ナショナルグリッド単位でダウンロードが可能だ(下記参考サイトのOS OpenData参照)。印刷物と同等の解像度とはいかないが、実用的には問題ないだろう。

次回は、1:250,000のたどってきた130年近い歴史について、旧版地図の画像を交えながら紹介してみたい。

■参考サイト
イギリス陸地測量部(OS) http://www.ordnancesurvey.co.uk/
OS OpenData https://www.ordnancesurvey.co.uk/opendatadownload/products.html
チャールズ・クロース協会 https://www.charlesclosesociety.org/

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 アイルランドの1:50,000と1:250,000地形図

2016年2月 9日 (火)

スコットランドの名物地図

その土地ならではの名物を求めて訪ね歩くのは、旅の大いなる楽しみだ。スコットランドが目的地ならさしずめ、湖のほとりに静かにたたずむ古城、あるいはスモーキーな香りに満ちたスコッチ・ウイスキーの醸造所。それからお土産には、タータンチェックの小物がよさそうだ。コリンズのピクトリアルマップシリーズ Collins Pictorial Maps Series は、4点の主題図でスコットランドの代表的な名物のありかを親切に教えてくれる。

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アイリーン・ドナン城 Eilean Donan Castle
Photo by DAVID ILIFF at wikimedia. License: CC-BY-SA 3.0

刊行しているのは、ニューヨークに本拠を置く世界有数の出版社、ハーパーコリンズ HarperCollins。しかし、元をたどれば19世紀前半の創業で、タイムズ地図帳やハーフインチ図の刊行によりイギリスを代表する地図出版社として名を馳せていたバーソロミュー社 John Bartholomew and Son の製作だ。バーソロミュー社はスコットランドの首都エディンバラ Edinburgh が拠点だったので、地元愛あふれる地図があったとしても何の不思議もない。

シリーズは古いものでは1970年代から幾度か改訂が重ねられていて、そのつどカバーデザインも変化してきた。現在は藍地のカバーに統一されている。一種ずつ特色を見ていこう。

「スコットランドの古城地図 Collins Castles Map of Scotland」

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これは、スコットランドの古城や要塞化された邸宅の位置を地図上に克明にプロットしたものだ。その数、実に735か所に上る。ベースマップは縮尺約1:1,000,000(100万分の1)のスコットランド全図と、特に存在が集中する地域、グラスゴーからエディンバラにかけてや、アバディーンシャー北部の拡大図だ。地勢を表す段彩を施し、交通網(主要道路と道路番号、鉄道、空港)や観光案内所が記されている。

凡例によると、リストアップの基準は、今日でも何か興味を引くものが残る石造りの城、宮殿、要塞化された邸宅で、12世紀のモット城 motte castle(土盛りした基部に建てられた木製の構造物)の一部を含むが、中世の堀で囲まれた敷地や湖上住居(人工島)crannog は含まない。

地図上では、施設の記号が3色に分けられているが、これは公開の可否を表している。すなわち緑は、通常訪問者に開放されているもの(例えば観光施設や宿泊施設化されているもの)、橙は、ふだん外側からよく見える城や城跡(ただし私有の場合がある)、赤は私邸で原則非公開だ。

記号には連番が振られていて、併載のABC順索引とすぐ照合できる。この索引を見れば、城・邸宅の名称、公開可否、クロスリファレンス(地図との相互参照)のほか、築造形式と時代、連絡先電話番号、ウェブサイトまでわかる。余白には古城の写真がキャプションつきで散りばめられ、お薦めの名城10か所、子どもが特に喜ぶ場所5か所というコラムもある。一読すれば、ある程度の予備知識を仕入れることができる。

「スコットランドのウイスキー地図 Collins Whisky Map of Scotland」

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スコットランドで操業中のウイスキー醸造所とウイスキー関連の見どころを地図に落とし込んだもので、醸造所108か所、関連観光施設4か所が網羅されている。ベースマップは古城地図と同じ体裁だが、緑~茶系の定番的段彩を使った古城地図に対して、こちらは灰紫系で統一され、陰鬱な冬景色を想像させる。

醸造所を表す記号は、キルン Kiln と呼ばれる麦芽を乾燥させる建物を象っている。これも公開の可否で3色に分けられ、緑は通常一般公開しているもの、芥子色は事前予約者のみに公開するもの、赤は非公開の施設だ。併載の索引は、醸造所名、会社名、公開可否、クロスリファレンス、連絡電話番号、ウェブサイトのリストになっている。

たっぷり取られた余白には、原料となるピート、水、大麦からウイスキーが作られる工程を写真つきで見せるコラムや、ジョニー・ウォーカー Johnnie Walker、J&B、バランタイン Ballantine's など世界に知られたブレンドウイスキーのブランドトップ10の紹介、その輸出先と輸出額を示す地図、スコッチ・ウイスキーに関する詳細情報の入手先など、さまざまなデータが列挙されて興味深い。

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ウイスキー地図(旧版)を縮小。中央のスコットランド全図の色調などは現行版と異なる。
(画像はAmazon.co.ukから取得)

■参考サイト
スコッチ・ウイスキー協会 Scotch Whisky Association
http://www.scotch-whisky.org.uk/

「スコットランドのタータン地図 Collins Tartans Map of Scotland」

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上記2種とは趣を異にしていて、スコットランドの氏族すなわちクラン Clan と、格子柄のタータン(日本でいうタータンチェック)の関係を地図で示そうというのがこの地図の趣旨だ。

用紙の中央に、17世紀初めにおける各クランの勢力範囲を塗り分けたスコットランド全図が配置されている。それを取り囲むように、2.5×4.0cm角のタータンの織り見本が整然と並んでいるのだが、その数なんと247種。スコットランド・タータン・オーソリティ Scottish Tartans Authority 承認のロゴがついているだけのことはある。

クランシップ(氏族制度)は中世、特に北部のハイランド地方で自治制度の基盤を成すものだった。ところが、名誉革命で王位を追われたジェームズ2世を支持してイングランド政府に抵抗したため(彼らはジャコバイト Jacobite と呼ばれた)、1746年、カロデン・ムーアでの敗戦を境に解体させられてしまう。それ以降スコットランドでも、生活慣習のイングランド化が浸透していくのだが、18世紀半ばにロマン主義の風潮が強まると、民族の誇りの象徴としてクランが再評価されるようになる。そしてあまり普及していなかった南部ローランド地方にも広まったのだ。

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タータン地図の一部を縮小
(画像はAmazon.co.ukから取得)

クラン地図を見ると、私たちにも馴染みのある名が並んでいる。Mac、Mc(息子の意)が前につくマクドナルド MacDonald(下注)、マッキントッシュ MacKintosh、マッカーサー MacArthur、マッケンジー MacKenzie、ほかにもキャンベル Campbell、カーネギー Carnegie、ダグラス Douglas、ゴードン Gordon など。

*注 マクドナルドだけでも Macdonald、MacDonald、Mcdonald、McDonald、M'donald、M'Donald など綴りには揺れがある。

19世紀後半にタータン・クレーズ Tartan craze(タータン熱)と呼ばれる流行期があり、このときクランとタータンの1対1の関係が定められた。この地図はいわばその見本帳のような体裁になっている。一口に格子柄と言っても実に多くの美しい組合せが生み出されていて、織り方の妙を目で追うだけでも見飽きることがない。

■参考サイト
スコットランド・タータン・オーソリティ http://www.tartansauthority.com/

「旧きスコットランド クラン地図 Scotland of Old Clans Map」

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これもクラン関連の地図だが、上記と同じクランの勢力分布図を取り囲んでいるのは、色も意匠もさまざまなクランの紋章だ。標語 Motto、兜の飾り Crests、盾形紋章 Arms の1セットで、その数174種を配した豪勢なイラストマップになっている。

兜の飾りのモチーフには、人物や鳥獣のほかに王冠、剣、帆船、竪琴なども見られる。盾形紋章も獅子、帆船、幾何学文様などバラエティに富む。いずれもクランに伝わる民話や伝説や史実が背景にあるのだろう。異国の紋章について語る知識は全く持ち合わせていないが、これだけ集まれば素人目にも圧巻だ。スコットランドに興味がおありなら、タータン地図とともに一度手に取ってみる価値はある。

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クラン地図の一部を縮小
(画像はAmazon.co.ukから取得)

■参考サイト
スコットランド族長常設協議会 Standing Council of Scottish Chiefs
http://www.clanchiefs.org.uk/

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 イギリスの旅行地図-ハーヴィー社
 北アイルランドの地形図・旅行地図
 アイルランドの旅行地図

2016年1月11日 (月)

ドイツのサイクリング地図-コンパス社とバイクライン

多彩なドイツ自転車道地図(サイクリングマップ)の世界は、3つの主たるブランドが支えている。前回は、BVAビーレフェルト出版社刊行のADFC(全ドイツ自転車クラブ Allgemeiner Deutscher Fahrrad-Club)公式地図を紹介したが、それと拮抗するラインナップを誇るコンパス社とバイクライン(エステルバウアー社)の製品を見てみよう。

コンパス社 Kompass は、緑の表紙のハイキング地図 Wanderkarte でつとに名高い(下注)。ドイツ語圏の書店の地図コーナーには必ず置いてあるような定番商品の一つだ。ハイキング地図といっても、実態は自転車道やスキールートも収録する総合旅行地図なのだが、これには一つの弱点があった。なんでも載っているばかりに、テーマの掘り下げが十分でない部分が見られたのだ。

*注 コンパス社のハイキング地図については「オーストリアの旅行地図-コンパス社」参照。

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コンパス
サイクリング地図
「東アルゴイ、プファッフェンヴィンケル」表紙

ハイキング地図の第一の目的はルートの位置の明示、つまり道に迷わないようにすることだ。次にルートの状況が重要で、同社の場合、歩き道にはヴェーク Weg(車輪を転がすことができる凹凸の少ない小道)、フースヴェーク Fußweg(それほど険しくない歩き道、英語のフットパス Footpath)、シュタイク Steig(山道、険しい道)が記号で描き分けられている。しかし自転車道は、マウンテンバイクルートとの区分があるだけで、道の主従関係も路面の状況も実際よくわからなかった。情報社会が進んでサイクリングを楽しむ人たちの要望レベルが上がると、目的により適合した地図が求められるようになる。コンパス社としても、従来品では満足してもらえないという判断があったに違いない。

赤い表紙の「コンパス サイクリング地図 Kompass Fahrradkarte」が現れたのはここ数年のことだが、早やドイツ全土をほぼカバーするまでに成長した。テリトリーは、オーストリアのチロル州 Tirol やイタリア側の南チロル Südtirol(上アディジェ Alto Adige)まで拡がっている(下注)。空白地域がまだ残るハイキング地図に比べても、目を見張る充実ぶりだ。

*注 コンパス社の本拠地はチロル州インスブルック Innsbruck なので、チロルを重視するのは当然のことだ。

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コンパスサイクリング地図 索引図

縮尺はハイキング地図の1:50,000に対して、サイクリング地図では、単位時間に稼げる距離の違いを考慮して1:70,000に縮小してあるが、これでもADFC地図(1:75,000)より心持ち大きい。地図は耐水紙に両面印刷され、合せて東西70km×南北60km程度のエリアを収録している。また、図葉によって、別刷りの1:20,000主要市街図が添付されていることがある。

内容はどうだろうか。地勢表現はハイキング地図を準用しているようだ。陰影(ぼかし)がかけられ、丘陵地でも起伏を読み取ることができる。官製地形図と並べても遜色のない水準だが、自転車道を引き立たせるために敢えてトーンを抑えている。

その自転車道には紫、橙、緑の3色が使われる。紫が長距離自転車道 Fernradweg、橙が主要自転車道 Hauptradweg、緑がそれらを補完する地方自転車道 Nebenradweg だ。いずれも実線で良好な道、破線で悪路を表現する(下図凡例参照)。長距離道と主要道には、道路地図のような区間距離が添えられ、走るときの目安にできる。地図記号を使った駐車場、宿泊施設、案内所その他の観光情報もひととおり揃っているが、自転車修理場や貸出し所といった、ADFCにある自転車特有の項目が見当たらないのは少々残念だ。

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コンパスサイクリング地図 2013年版 凡例の一部

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コンパス
広域自転車旅行地図
「バイエルン南部」
表紙

なお、もっと広域を一度に見たいという向きには、2015年に新たに刊行された「広域自転車旅行地図 Großraum-Radtourenkarte」がある。縮尺は1:125,000で、両面印刷の地図2枚を1セットにしている。手元の「バイエルン南部 Bayern Süd」の場合、東西215km×南北160kmと広大なエリアを概観できる。内容は上記サイクリング地図とほぼ同じだ。2015年末の時点ではまだカタログに4点しかないが、2017年にはドイツ全土を全12点でカバーするという。

この広域自転車旅行地図がADFCの自転車旅行地図(1:150,000)に、先述のサイクリング地図がADFC地域図(1:75,000)に対応するとすれば、ADFCの自転車旅行ガイドに対しては、「自転車旅行ガイド Fahrradführer」が用意されている。長距離自転車道などのルート案内が目的で、リング綴じ、横長、天綴じのフォーマットと、ADFCとまったく同じような体裁の製品だ。残念ながら筆者は実見していないが、公式サイトによれば、市街図には薬局、自転車修理場、ATMなど実用的な参考情報も掲載されているそうだ。

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コンパス広域自転車旅行地図 表紙の一部を拡大

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バイクライン
サイクリング地図
「プファッフェンヴィンケル」表紙

ドイツのサイクリング愛好者なら、エステルバウアー Esterbauer 社の名は知らなくても、「バイクライン bikeline」のブランドにはきっと馴染みがあるに相違ない。「何の気苦労もなく自転車を楽しむために」の一言をロゴに添えたセルリアンブルーの表紙の地図やガイドブックは、ADFCとともに書店の地図棚の常連だ。オーストリアを拠点にするエステルバウアー社は1980年代の創業で、サイクリング関係の出版を専門にしている。公式サイトによればすでに400点以上のタイトルがあるという。主力製品は、サイクリング地図と自転車旅行ブックで、言うまでもなく前者は1枚もの折図、後者は横長スタイルの冊子だ。

バイクライン サイクリング地図 bikeline Radkarte」は、ドイツの主要地域のほか、オーストリアやフランスのアルザス地方の一部もカバーする。縮尺は1:75,000で、他社製品と同じく、耐水紙に両面印刷されている。収録エリアは、東西65km×南北60km程度の範囲だ。余白に主要市街図が添えられている。

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バイクライン サイクリング地図 索引図

メイン図のベースマップは比較的簡単なものだ。標高データから生成したと思われる等高線は、山地では滑らか過ぎ、平地では不自然な形状なのだが、登山用ではないから地形の概観が掴めればいい、という考えだろう。交通路や市街地は正確に描かれているが、地勢と同様、色のトーンが落とされ、鮮やかな色を用いた自転車道との対比に効果を発揮している。3社のなかではルートの視認性(見易さ)が最も高く、この点が人々に長く支持されてきた理由の一つだと思う。

では、肝心の自転車道はどうか。凡例を下に掲げた。まず主要ルート Hauptroute とそれを補完する地方ルート Nebenroute、その他の自転車ルートという大きな括りがある。その中で自転車道 Radweg と自転車ルート Radroute を線の色で分類し、さらに舗装・未舗装、悪路、玉石舗装など道路の状況を線の形状で区別する。コンパス社よりはるかに親切で、実走調査が行き届いていることがわかる。ただ、紫、赤、茶、黄、ピンクと多くの色を用いたため、地図上でルートの主従関係、あるいはネットワーク構造が直感的に理解しにくくなっているのが惜しい。

道路状況以外では、区間距離、道路勾配、修理場や自転車貸出所、駐輪場の位置などサイクリングに役立つ必要な情報が網羅されている。ADFCの地図では図郭内を走る自転車道について文章による説明もついているが、バイクラインには特にない。その役割はガイドブックに任せて、地図はグラフィックによる情報表現に徹するものと決めているようだ。

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バイクライン サイクリング地図2013年版 凡例の一部(和訳を付記)

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バイクライン自転車旅行ブック
「長距離自転車道
ハンブルク~ブレーメン」表紙

これに対して、長距離ルートに焦点を絞ったブック形式のガイドは「自転車旅行ブック Radtourenbuch」の名称で刊行されている。会社の事業としてはこちらが本領のようで、テリトリーは、ドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイス)にとどまらず、オランダ、フランス、デンマーク、スペイン、イタリアなどにも及ぶ。他社と同様の横長判でリング綴じだが、ADFCやコンパス社の縦開きに対して、バイクラインは左に綴じ目がある横開きタイプだ。

ここまでドイツをカバーする3社のサイクリング地図を概観してきた。それぞれに特徴があって、一概に優劣はつけがたいのだが、敢えて私見を述べれば、情報の種類と量ではADFC、地図自体が洗練されているのはコンパス、地図の見易さではバイクラインが優位に立っている。とはいえ、机上で眺めているのと実走で参照するのとでは、着眼点が変わるに違いない。実際に使ってみた感想をお持ちの方は、ぜひコメントをお寄せいただきたい。

これらの地図は、日本のアマゾンや紀伊國屋などのショッピングサイトでも購入できる。"Kompass Fahrradkarte" "bikeline" などで検索するとヒットする。

■参考サイト
コンパス社 http://www.kompass.de/
エステルバウアー出版社 http://www.esterbauer.com/

★本ブログ内の関連記事
 ドイツのサイクリング地図-ADFC公式地図
 ドイツの旅行地図-ライン渓谷を例に

 オランダのサイクリング地図
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 オーストリアの旅行地図-コンパス社

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