2006年8月18日 (金)

ノルウェーの地図と鉄道 III-オーフォート鉄道

Blog_narvik 北緯68度26分、ヨーロッパ最北の鉄道としてかねてから有名なオーフォート鉄道Ofotbanen。ソ連崩壊後はサンクトペテルブルク~ムルマンスク線が登場してその地位を譲り渡したが、車窓風景のすばらしさは数字の上でのランキングを補って余りある。

ルートはスカンジナビア半島を縦断している。スウェーデン、ボスニア湾岸のルーレオLuleåを発して、鉄鉱山の町キールナKiruna、国立公園の玄関口アビスコAbiskoを経由、北大西洋に面したノルウェーの港ナルヴィークNarvikに至る。ノルウェー側の線名は地方名オフォーテンOfotenから来ているが、スウェーデン側ではその使命に照らして、ずばり鉱石鉄道Malmbananと呼ばれる。旅客列車の運行は国際的な交通事業者であるコネックス社Connex の担当で、北部地方の列車を意味する「ノールランストーゲNorrlandståget」がこの区間を1日3往復している。

官製地図でその軌跡を追いたい。ハイライト区間であるアビスコ~ナルヴィーク間は国境をまたいでいるため、双方の図郭に含まれている。互いに他国の領土はその国の測量局が図化したものを使用しているのだが、最大縮尺がノルウェーは1:50 000であるのに対して、スウェーデンの場合、山間部は1:100 000にとどまる。これを1枚の地図につなげようとすると工夫が必要になる。

ノルウェーの官製図では、右上に掲げた1431-Ⅳ番Narvik図幅の右(東)に接続する1431-Ⅰ番Bjørnfjell図幅に国境線がある。隣国の部分は1:100 000を2倍に拡大している。等高線は双方とも20m間隔なのでうまく接合するはずだが、単純に拡大したために線幅や文字サイズが違いすぎてとても同じ精度には見えない。

Blog_swedenfjallkartan 一方のスウェーデンは手元に土地測量局Landmäterietが発行する「山岳地図Fjällkartan」のBD6番 Abisko-Kebnekaise-Narvik がある(右写真)。南方にある同国の最高峰ケブネカイセKebnekaiseまで含んでおり、代表的なトレッキングルート「王様の散歩道Kungsleden」を訪れるのにも最適の地図だ。縮尺は1:100 000ながら、氷河が削った複雑な地形を繊細なぼかしと彩色で表現していて、見た目にも美しい。隣国の部分は当然1:50 000がベースだが、道路や集落の表示、地名の注記文字などを標準サイズに修正しているので違和感がない。ただし、等高線はそのまま1/2に縮小されていて、とにかく細かい。スウェーデン側では急傾斜地の等高線を一部省略しているのに、ノルウェーはそうしないのも原因だろう。

列車でアビスコからナルヴィーク方面へ向かうときは、眺望が終始右手に開けることに注意したい。大小の湖が点在する広大なU字谷を行くこと1時間。国境駅リクスグレンセンRiksgränsenは雪覆いの中だ。そのあとも雪覆いが断続し、分水界を通過した列車は坂道をすべるように降りていく。短い鉄橋を渡ってトンネルを抜けたところは、フィヨルドの深い谷壁の中腹だ。オメガカーブで支谷を大きく巻いて、Katterratという人気のない駅に停車。このあたり、谷底との高低差は300m以上ある。やがて眼下の谷には海水が満ちてきて、それを眺めながらゆっくりと山を下る。フィヨルドを渡る国道E6号線の吊り橋(ロンバーク橋Rombaksbrua)を見送れば、終点まであと10分あまり。窓に張り付いて歓声をあげていた乗客も席に戻って、降りる仕度を始めるだろう。ナルヴィーク旅客駅は標高40mの高台に位置しているが、貨物列車はさらに進んで海岸の港に至る。

■参考サイト
オーフォート鉄道 http://www.ofotbanen.no/
ノルウェー鉄道 http://www.nsb.no/
英語版あり。国内線の時刻表がダウンロードできるが、オーフォート鉄道だけはコネックス社のHPにある。
コネックス社 http://www.connex.se/ 英語版あり
「ノールランストーゲ」時刻表 tidtabell%2030-40%2020060618-20070616.pdf

ブログランキング・にほんブログ村へ

| | コメント (0)

2006年8月11日 (金)

ノルウェーの地図と鉄道 II-ラウマ線

Blog_norwayatlas ノルウェー全土をカバーする最も大きな縮尺の官製地図は1:50 000だが、土地勘を得るためにはまず、小縮尺の地図帳であたりをつけるのが筆者の流儀だ。同国の国土地理院Statens Kartverkが刊行する縮尺1:300 000の「ノルウェー道路地図帳Veiatlas Norge」がある。道路地図とはいえ、繊細なぼかし(北西から光を当てたときに得られる影の表現)と彩色で複雑な地勢がみごとに表現されていて、鑑賞に堪えうる地図となっている。

前回に引き続いて、地図でこの国の鉄道を追っていこう。ベルゲンから大西洋を北へ向かうと、次に鉄道が海岸に現れるのは300kmほど離れたオンダルスネスÅndalsnesの町。オスロOsloから内陸を延々458km走ってきた線路の終点だ。途中、山中ののドンボースDombåsで、港町トロンハイムTrondheimへ北上するドブレ線Dovrebanenを分岐し、ここから先はラウマ線Raumabanen(延長114.2km)を名乗っている。

ドンボースあたりではまだ川を遡っている最中だが、氷河が作ったU字谷をさらに進むうちに、いつのまにか川が逆方向、すなわち進行方向に流れているのに気づいて驚く。ベルゲン線と違って峠らしい峠がない。いわゆる谷中分水を通過したのだ。実は分水界には湖が広がっているのだが、それが峠だとは誰一人として気づかない。

ところが、ビョーリBjorliという小駅(標高575m)を過ぎてまもなく、急に谷が深まり、川は水煙をあげて流れ落ちるようになる。直線で10kmほど進む間に400mも下る急流だ。鉄道はスイスアルプスにあるような180度転回を2度繰り返して、この高低差を克服する。ラウマ線のハイライトだ。その先、川の流れは穏やかさを取り戻すが、谷の両側は800~900m、高いところでは1500m以上という切り立った岩壁が続き、夏場の増水期には糸のような滝が随所にかかる。

この景勝路線には1993年からSLが牽引する観光列車が登場した。今年もサマーシーズンの週末を中心に、オンダルスネスからビョーリの間を1日2往復している。オンダルスネスは、秘境ガイランゲルフィヨルドGeirangerfjordや優美な港町オーレスンÅlesundへの玄関口として知られるが、こんな楽しいイベントも用意されているのだ。この国の鉄道に退屈という文字はない。

■参考サイト
ラウマ線(英語版あり) http://www.raumabanen.net

| | コメント (0)

2006年8月 3日 (木)

ノルウェーの地図と鉄道 I-ベルゲン線

Blog_bergen ヨーロッパで変化に富んだ国土といえば、まず思い浮かぶのはアルプスを擁するスイスだが、ノルウェーもまたそれに劣らず、地図ファンを魅了してやまない。スカンジナビア半島は背骨にあたる山脈の位置が大きく西に偏っている。それで、半島の西側を占めるノルウェーの国土は、2000mを超える標高差のスケールと、フィヨルドに代表される海と陸とがめまぐるしく交錯する複雑な地形が特徴だ。

この半島を横断する鉄道は、どれも氷河が削った雄大な地形を進む景勝路線だ。日本でもおなじみなのは、オスロOsloとベルゲンBergenを結ぶ延長493kmのベルゲン線Bergensbanen。途中のミュールダールMyrdalから分岐するフロム鉄道Flåmsbanaと組み合わせたルートには、世界中から年間50万人近い観光客が押し寄せるという。フロム鉄道の公式サイトには日本語版が用意されていることからも、人気の度合いがわかる。

終点ベルゲンはノルウェー第2の港湾都市ゆえに、首都との間を結ぶこの路線は重要幹線として整備されてきた。全線開通は1909年だが、その後短絡トンネルの建設によって、当初のルートが放棄されたところも多い。

同線の最高地点は従来、ミュールダールの手前約20km、トーガ湖Tågavatni(官製図の表記による)付近の標高1301mで、ここを境に道は下り坂となり、その先、左回りの大きなオメガカーブを構えて高度を下げていた。しかし、1993年に延長10.3kmのフィンセトンネルFinsetunnelenが開通して、氷河を左手に望むこの峠越え区間は廃線となってしまった。同じようにベルゲン駅へのアプローチも、山塊を避けて大きく迂回するルートから、ウルリケントンネルUlrikentunnelenなど2本のトンネルで直線的に結ぶ新線に変更されている(1964年)。旧線はフィヨルドの岬の先を回り、ベルゲン市街にも南から進入していた。物流の効率化のために鉄道の近代化はやむをえない選択とはいえ、その引き換えに車窓の愉しみが消えていくのも世の東西を問わない現実だ。

さて、ノルウェー全土をカバーする最も大きな縮尺の官製地図は1:50 000だが、観光地図シリーズの1冊にベルゲンの1:25 000がある。筆者の手元にある1994年版(写真)では、表面全面が1:25 000、裏面には等高線とぼかし入りの1:200 000地域図と1:10 000中心市街図が載っていて、かゆいところに手が届く地図だ。用済みになったはずの旧鉄道線が断続的ながらまだ描かれているので、貨物線として生き残っているのだろう(現在の地形図=下記サイト=にも描かれている)。このまま保存されるのなら嬉しいことだが。

■参考サイト
フロム鉄道 http://www.flaamsbana.no/
ノルウェーの地形図閲覧サイト http://ngis2.statkart.no/norgesglasset/default.html
「官製地図を求めて-ノルウェー」 http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_norway.html

| | コメント (0)