ノルウェーの地図と鉄道 III-オーフォート鉄道
北緯68度26分、ヨーロッパ最北の鉄道としてかねてから有名なオーフォート鉄道Ofotbanen。ソ連崩壊後はサンクトペテルブルク~ムルマンスク線が登場してその地位を譲り渡したが、車窓風景のすばらしさは数字の上でのランキングを補って余りある。
ルートはスカンジナビア半島を縦断している。スウェーデン、ボスニア湾岸のルーレオLuleåを発して、鉄鉱山の町キールナKiruna、国立公園の玄関口アビスコAbiskoを経由、北大西洋に面したノルウェーの港ナルヴィークNarvikに至る。ノルウェー側の線名は地方名オフォーテンOfotenから来ているが、スウェーデン側ではその使命に照らして、ずばり鉱石鉄道Malmbananと呼ばれる。旅客列車の運行は国際的な交通事業者であるコネックス社Connex の担当で、北部地方の列車を意味する「ノールランストーゲNorrlandståget」がこの区間を1日3往復している。
官製地図でその軌跡を追いたい。ハイライト区間であるアビスコ~ナルヴィーク間は国境をまたいでいるため、双方の図郭に含まれている。互いに他国の領土はその国の測量局が図化したものを使用しているのだが、最大縮尺がノルウェーは1:50 000であるのに対して、スウェーデンの場合、山間部は1:100 000にとどまる。これを1枚の地図につなげようとすると工夫が必要になる。
ノルウェーの官製図では、右上に掲げた1431-Ⅳ番Narvik図幅の右(東)に接続する1431-Ⅰ番Bjørnfjell図幅に国境線がある。隣国の部分は1:100 000を2倍に拡大している。等高線は双方とも20m間隔なのでうまく接合するはずだが、単純に拡大したために線幅や文字サイズが違いすぎてとても同じ精度には見えない。
一方のスウェーデンは手元に土地測量局Landmäterietが発行する「山岳地図Fjällkartan」のBD6番 Abisko-Kebnekaise-Narvik がある(右写真)。南方にある同国の最高峰ケブネカイセKebnekaiseまで含んでおり、代表的なトレッキングルート「王様の散歩道Kungsleden」を訪れるのにも最適の地図だ。縮尺は1:100 000ながら、氷河が削った複雑な地形を繊細なぼかしと彩色で表現していて、見た目にも美しい。隣国の部分は当然1:50 000がベースだが、道路や集落の表示、地名の注記文字などを標準サイズに修正しているので違和感がない。ただし、等高線はそのまま1/2に縮小されていて、とにかく細かい。スウェーデン側では急傾斜地の等高線を一部省略しているのに、ノルウェーはそうしないのも原因だろう。
列車でアビスコからナルヴィーク方面へ向かうときは、眺望が終始右手に開けることに注意したい。大小の湖が点在する広大なU字谷を行くこと1時間。国境駅リクスグレンセンRiksgränsenは雪覆いの中だ。そのあとも雪覆いが断続し、分水界を通過した列車は坂道をすべるように降りていく。短い鉄橋を渡ってトンネルを抜けたところは、フィヨルドの深い谷壁の中腹だ。オメガカーブで支谷を大きく巻いて、Katterratという人気のない駅に停車。このあたり、谷底との高低差は300m以上ある。やがて眼下の谷には海水が満ちてきて、それを眺めながらゆっくりと山を下る。フィヨルドを渡る国道E6号線の吊り橋(ロンバーク橋Rombaksbrua)を見送れば、終点まであと10分あまり。窓に張り付いて歓声をあげていた乗客も席に戻って、降りる仕度を始めるだろう。ナルヴィーク旅客駅は標高40mの高台に位置しているが、貨物列車はさらに進んで海岸の港に至る。
■参考サイト
オーフォート鉄道 http://www.ofotbanen.no/
ノルウェー鉄道 http://www.nsb.no/
英語版あり。国内線の時刻表がダウンロードできるが、オーフォート鉄道だけはコネックス社のHPにある。
コネックス社 http://www.connex.se/ 英語版あり
「ノールランストーゲ」時刻表 tidtabell%2030-40%2020060618-20070616.pdf



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