2009年7月23日 (木)

オランダの鉄道地図 II

鉄道による貨物輸送を促進するために設立されたオランダ・鉄道貨物情報財団Rail Cargo Information Netherlands Foundationは、貨物輸送に関する鉄道地図を公開している。

■参考サイト
鉄道貨物情報財団 http://www.railcargo.nl/
トップページ > Railinfrastructuur > Spoorkaarten > Nieuwe spoorkaart van Nederland > posterrailcargo.pdf

Blog_netherlands_railmap_hp3 「オランダの新鉄道地図Nieuwe spoorkaart van Nederland」と称するこの地図は、道路と水系で構成した単色のベースマップの上に、赤や緑の実線で鉄道路線を描いている。タイトルを見る限り何の変哲もなさそうだが、凡例(蘭・英併記)に目を通せばユニークな地図であることは明らかだ。

赤い線は旅客線ではなく、オープンアクセス鉄道網Open access rail networkと説明されている。オープンアクセスとは、列車運行事業者が使用料を支払って線路使用権を得ることができるシステムで、EC指令で示された目標に沿って、加盟各国が上下分離と併せて鉄道事業に適用した政策だ。ほとんどの路線が旅客列車の運行に供されているのだが、貨物事業者にも門戸が開かれている。それに対して、緑色は貨物鉄道専用線Dedicated freight railway lineを表している。このほか、設定された記号を操車場、コンテナターミナル、トラックとの積替駅、私有側線と追っていくと、おのずと鉄道にもう一つの重要な役割があることを再確認させられる。

もう一つ目を引くのは、国土の中央を東西に貫くベテュヴェルートBetuwerouteが描かれていることだ。これは2007年6月に開通した延長160kmの貨物専用線で、ドイツ国境に近いゼフェナールZevenaarとヨーロッパ最大の貿易港であるロッテルダム港を最短距離で結んでいる。旅客列車の運行頻度が高いオランダ国内では、鉄道の機能向上に貨物輸送の分離が求められ、特に需要の大きいドイツルートをバイパスする新線が計画された。環境に配慮した設計変更などで工費が見込みの2倍に膨れ上がったことや、電化方式も信号方式も新しいEU標準を採用したため、在来線仕様の機関車は通行できなくなるなど、難産を伝えられながらの開業だった。しかし、この地図上ではあたかも主役のように遇されていて、実際もレイン(ライン)=ヴァール川Rijn-Waalの水運を補完する物流の動脈に成長していくのだろう。

なお、上記ページからリンクしている「オランダの詳細鉄道地図Detailspoorkaarten van Nederland」には、この地図の都市部の拡大図が多数用意されている。

オランダの鉄道施設管理は、2003年に設立されたプロレール社ProRailが行っているが、そのHPに、ファイルサイズが5MBもある鉄道地図が用意されている。

■参考サイト
プロレール社 http://www.prorail.nl/
トップページのPubliek > Spoorkaart  またはトップページの直接リンクdirect naarから

Blog_netherlands_railmap_hp4 縮尺は1:300 000で、ベースマップには同国の測量局Topografische Dienst Kadasterが編集した1:250 000道路地図を縮小使用している。道路地図といっても日本で言えば1:200 000地勢図に相当する公式地図で、道路、集落、水系、植生、行政界などが詳細に書き込まれたものだ。地図の見栄えで他と一線を画しているだけでなく、オランダの鉄道インフラの大要が概観できるという意味で注目に値する資料だ。どのような内容が盛り込まれているかは、凡例にある地図記号を見ていくのが手っ取り早い。表記がすべてオランダ語なので、参考のために、鉄道に関する地図記号の意味を日本語で付しておこう(厳密な訳ではないのでご了承を)。

Spoorwegen鉄道の部
- geëlektrificeerd (enkel- / dubbel- / meersporig) 電化(単線/複線/多複線)
- niet geëlektrificeerd (.... 非電化(同上)
- uitsluitend goederenvervoer (.... 貨物専用線(同上)
- museumspoorweg 保存鉄道
- niet in exploitatie 休止中
- lightrail 軌道

Station旅客駅の部
- station zonder inhaal- of kruisingsmogelijkheld ook wel halte genoemd 交換不可能(行き違いできない)で、合図により停車する駅(リクエストストップ?)
- station / groot station mét inhaal-... 交換可能な駅/主要駅
- evenementenhalte (facultatieve halte) 臨時設置の乗降場(仮乗降場)
Functionaliteit spoor 運行機能の部
- Inhaalspoor op de vrije baan. bijv. ... (本線上の、あるいは駅機能のない)待避線、その例
- overloopwissel. bijv. ... 渡り線、その例
- aansluiting (splitsingspunt op vrije baan) 接続点(本線上の分岐点)

voorzieningen施設の部
- emplacement (rangeerstation / opstelterrein) 操車場/貨車組成施設
- laad- en losplaats voor goederenvervoer (openbaar) 貨物積み降し施設(非専有)
- containeroverslagmogelijkheld コンテナ積み降し施設
- revisiebedrijf 修理工場
- onderhoudsbedrijf 分解修理(全般検査)工場
- servicelocatie サービスステーション(?)
- tankplaats 給油施設

これまで紹介した鉄道地図と重複する情報も含まれているが、動力方式、線路数、駅の機能など鉄道施設の基本的なデータを包括的に表示しているところが得がたい。それに、位置情報だけだが保存鉄道やライトレールまでカバーしているので、およそ郊外路線と呼ばれるものは網羅していると考えられる。前回紹介したTreinreiziger.nlの列車系統図と併用すれば、旅行用としても十分に役立ちそうだ。印刷版の配布が案内されていないのがまことに惜しい。

最後に、私的サイトで過去の時刻表添付地図とおぼしきファイルを発見した。日付は2004年9月になっている。印刷物のスキャニングではなく、印刷用のデータファイルから直接PDF化したものなので、拡大しても鮮明な画像が得られる。トップページからのリンクで紹介すべきだが、リンクが見つからないので、やむをえずPDF(131KB)の直接リンクを記すことにする(リンク切れご容赦)。

■参考サイト
http://www.astro.rug.nl/~islands/spoorkaart.pdf

| | コメント (0)

2009年7月19日 (日)

オランダの鉄道地図 I

オランダの列車というと、筆者などはドッグノーズと呼ばれた黄色の電車を思い浮かべる。丸く膨らんだ前面の形状が犬の顔を思わせるのでそのあだ名がついているのだが、一世を風靡したこの形式も、スマートな新車に押されて現在は主に各停に運用されているようだ。

しかし注目すべきは顔の形ではなく、これが動力分散型の電車だという点だ。日本では特急でも電車が用いられるが、ヨーロッパの郊外列車や急行列車は、電気機関車が動力を持たない客車を牽引するスタイル(動力集中型)をとることが多い。その役を敢えて電車に担わせているのは、日本のように短距離高頻度の列車ダイヤが組まれていることの証しだろう。事実、オランダはヨーロッパで最も鉄道が利用されている国で、単位面積当りの路線の密度はベルギーやドイツに及ばないが、旅客輸送密度では鉄道王国スイスをも凌いでいる。発車時刻が等間隔のいわゆるパターンダイヤが採用され、国内のインターシティは特別料金が不要であるなど、気軽に使える鉄道が強く意識されている。

Blog_netherlands_railmap1 オランダ2800km余の鉄道路線を表示している鉄道地図(オランダ語でスポールカールトSpoorkaart)を見てみよう。印刷物で筆者が知っているのは、公式時刻表Spoorboekjeの添付地図ぐらいだ。手元にあるのはあまりにも古い1988年版だが、表紙のすぐ後ろに折りたたんだ鉄道地図がはさんであり、拡げると本のサイズの約6倍(縦41.5cm横37.5cm)の大きさになる(右写真、右上は時刻表表紙)。路線網が水平、垂直および斜め45度の直線に単純化された、いわゆるスキマティックマップ(位相図)だ。オランダの鉄道のシンボルカラーというべき濃い黄色の地の上に旅客用の全線全駅が表示され、路線ごとの時刻表番号が添えられている。ラントスタットRandstadと呼ばれるアムステルダムAmsterdam、ロッテルダムRotterdam、ハーグ(デン・ハーフDen Haag)、ユトレヒトUtrechtの4大都市圏は、拡大図がある。

ウェブ版はなかなか充実しているので、2回に分けて紹介しよう。

Blog_netherlands_railmap_hp1 オランダもインフラ管理と列車運行の事業者を分ける上下分離が実行されているが、後者の旅客輸送の大部分を担当するのがオランダ鉄道Nederlandse Spoorwegen (NS) だ。NSのサイトでは、時刻表添付と同じデザインを用いた地図がPDFファイルで提供されている。

■参考サイト
オランダ鉄道 http://www.ns.nl/
トップページのService > Folders over diensten (= Brochures on service) > Spoorkaart van Nederland

図の左上にあるタイトルは、直訳すると「オランダの運賃単位地図Tariefeenhedenkaart van Nederland」だ。運賃単位Tariefeenheidは基本的には営業キロ数なのだが、若干補正があるらしく、より正確に言うなら運賃計算キロだ。地図上の各駅間に書かれた数字がそれを表している。

20年前の路線図と比較すると、変化が2点目に付く。1つは、ローカル線にNS以外の会社が運行する区間が出現していることだ。北部フローニンゲン州Groningenとフリースラント州Frieslandのアリーヴァ社Arriva、東部ヘルダーラント州Gelderlandのシンテュス社Syntus、南東部リンブルフ州Limburgのヴェオリア交通社Veolia Transport(もとのコネックスConnex)などが、NSの運行路線とは色を変えて示されている。多くは国際交通企業で、路線バスなどと一体で地方の公共輸送を請け負っているのだ。

もう一つは、首都アムステルダムからベルギー国境へ、一直線に南下する南高速線HSL-Zuidの存在だ。地図ではHST(高速列車Hogesnelheidstreinの略)と記されている。パリから来るタリスThalysがここを疾走することになるのだが、2009年中に運行予定と注釈があるものの、現時点ではオランダ領内はまだ開通していない。
なお、上記ページで並べて紹介されている「オランダの運賃単位地図に付随する詳細図Detailkaarten behorende bij Tariefeenhedenkaart van Nederland」は、4大都市部の拡大図と全国図で、印刷図では先述の図の裏面に配置されるものだろう。全国図には、主要駅間の運賃単位が記されている。

Blog_netherlands_railmap_hp2 一方、独立系の鉄道旅行情報サイトTreinreiziger.nlでは、趣向の違う鉄道地図(PDF)が提供されている(Treinreizigerは英語ならtrain travelerの意)。オランダ国内の鉄道旅行に持っていくとすれば、NSの運賃地図よりこちらのほうだろう。なぜなら、これはオランダの旅客列車のルートを一覧できる優れものだからだ。

■参考サイト
Treinreiziger.nl   http://www.treinreiziger.nl/
トップページ > Reisinformatie > Spoorkaart >
文中の "De spoorkaart is vanaf nu te downloaden op treinreiziger.nl"(意味は「鉄道地図はtreinreiziger.nl ですぐにダウンロードできる」)、または "U kunt de kaart hier downloaden"(同「ここからダウンロードできる」)のリンクから

地図の裏面(PDFの2ページめ)に「鉄道地図をどう使うかHoe werkt de Spoorkaart?」という説明文がある。それによると、「この地図では、線の色を追うことによって、列車系統がどこを走るかを容易に確かめることができる。線が、ある駅で途切れていればその系統の起終点であり、駅を通り抜けていれば経由地だ。線の太さで、その列車系統の運行頻度(月~金、およそ7~19時の間。凡例の説明では7~20時)がわかる。夜間や週末には列車数が削減されることがある。すなわち、ラントスタット(4大都市圏)の頻発区間では30分、ラントスタット圏外のより本数の少ない区間では少なくとも1時間毎になる。この地図では発着時刻を示していないので、時刻表の代用にはならない。旅行計画にはNSなどのサイトを参照のこと。」

説明中の、線の太さで運行頻度を表す方法については、図の凡例で具体的に示されている。すなわち、細線は1時間に1本(per uur = per hour)、中線は同2本、太線は同4本、そして中線の破線は通勤通学のピーク時のみ2本(alleen in spitsuren = only in peak)などとなる。

列車を利用する際に、目的地まで直行できるのか、できない場合はどこで乗り換えるのかは大きな関心事だ。筆者はこれを見て、国際空港のあるスヒポールSchipholからアムステルダム中央駅を経由せずに東部の都市へ行く系統がいくつも設定されていることを初めて知った。昔の感覚でどの列車でも中央駅を通ると信じて乗っていたら、きっと慌てたことだろう。この地図が現地で容易に入手できるのかどうかは知らないが、返信用封筒を同封して請求すれば、印刷版の送付もしてくれるようだ(ただし、国外への対応は不詳)。

次回は貨物輸送とインフラ管理部門の鉄道地図を紹介する。

オランダの鉄道地図 II

| | コメント (0)

2009年7月12日 (日)

ベルギーの鉄道地図

Blog_belgium_railmap1 20年ほど前にパリからベルギーの首都ブリュッセルBruxellesへ旅したときは、EC(ユーロシティ)で2時間半、野を越え丘を越えて行く旅だった。現在は、高速線を経由するタリスThalysで1時間22分、ずいぶん速くなったものだ。その頃参考にと買ったポスターサイズの路線図Carte du résaeu(右写真。上は全体、下は一部拡大)が、筆者の持っている唯一のベルギー鉄道地図だ。縮尺1:300 000で、1988年11月1日現在の全線全駅が表示されている。駅は等級別の管理駅、被管理駅に分類され、路線は電化・非電化、単線・複線を記号化している。貨物線や休止線も載っているので、地形図で鉄道の軌跡をたどるときにも参考になる資料だった。残念だが、最近はこのような紙地図を目にしたことがない。それで本稿では、ウェブで見られるものを紹介しておきたい。

Blog_belgium_railmap_hp1 ベルギー国鉄SNCBの公式サイトに、インタラクティブ形式の路線図がある。ベルギーの公用語であるオランダ語、フランス語、ドイツ語のほかに英語版も用意されていて、抵抗なく使える。さらに、表形式の時刻表のリンクもあるので、鉄道旅行に最低限必要な情報が揃う。ところが、公式サイトの英語版ではなぜかリンクが欠落していて、英語版の路線図を見るのに、わざわざオランダ語(NLと略記)かフランス語版(FR)から入っていかなければならない。

■参考サイト
ベルギー鉄道SNCB(フランス語版)
http://www.sncb.be/ または http://www.b-rail.be/main/F/
 路線図はページ左下 "Carte réseau (= network map) "から
 表形式の時刻表は同じく "Brochures horaires (= timetable brochures)"

路線図の初期画面は全国図だ。部分拡大するにはCtrlキーを押しながら、任意の範囲をマウスでドラッグする。縮小するには右メニューの虫眼鏡ボタンを使う。また、右メニューのスケールバーでも倍率を変えられる。画面移動は同じ並びの一番左、八方向の三角印(▲)をマウスオーバーする。クリックすると移動速度が早くなる。路線をクリックすると対応する時刻表が見られる...、などと説明してはあるのだが、筆者のパソコンの性能が低いのか、使い方が間違っているのか、Ctrlキー+ドラッグの範囲指定拡大は反応がひどく鈍いし、対応する時刻表もいっかな出てこない。いろいろ機能を盛り込んだのはいいが、便利さを追求するあまり、かえって操作性を低下させてしまったようだ。

Blog_belgium_railmap_hp2 幸いなことに、路線図の古いバージョンがまだ残っている。こちらの方が機能が少ない分、ストレスなしに作動する。デザインを見る限り旧バージョンとは信じられないが、2007年開通のアントウェルペンAntwerpen中央駅を通過する新線が描かれていないので、それ以前の製作のようだ。

■参考サイト
SNCB路線図旧版(リンク切れご容赦)
http://www.b-rail.be/nat/F/common/netcard_flash/index.php

インタラクティブマップは一覧性の点で不満が残るという方に、個人サイトに挙がっている「1枚もの」を紹介しておこう。

Blog_belgium_railmap_hp3 一つは、駅舎を写した古い絵葉書を集めた「昔のベルギーの駅Les gares belges d'autrefois」というサイトにある。トップページの最下段に、「草創期から今日までのベルギー鉄道地図Carte du réseau belge depuis sa création jusqu'à nos jours」と「ベルギー旅客鉄道地図(2002年)Carte du réseau voyageurs belge (2002)」がリンクされている。特に前者は、廃止線を含めた普通鉄道の全路線を描きこんだ力作で、全盛期の鉄道網を回顧できる。

■参考サイト
昔のベルギーの駅 http://users.skynet.be/fa058639/

Blog_belgium_railmap_hp4 もう一つは、「ベルギー鉄道非公式サイトChemins de fer belges - Site non officiel」というベルギーの鉄道を紹介する個人サイトで、その中に「国鉄路線網地図Cartes du réseau SNCB」という鉄道地図を集めたページがある。最上段にある時刻表の添付地図をはじめ、多くは紙地図をスキャンしたものだが、唯一、「鉄道網の変遷Évolution du réseau」は、1830~2000年までの鉄道網の変遷を1年1秒の速度で見せるユニークな動画像だ。

■参考サイト
ベルギー鉄道非公式サイト「国鉄路線網地図」
http://www.belrail.be/F/infrastructure/index.php?page=cartes

ベルギーは、ヨーロッパ大陸でも早期に鉄道を導入した国の一つに数えられる。1830年、オランダから一方的に独立を宣言したベルギーは、北海に通じるスヘルデ川Schelde河口の封鎖に遭い、大きな打撃を受けた。水運に代わる輸送手段として注目したのが、イギリスで成功を収めていた鉄道だった。1835年にブリュッセル~メヘレンMechelen間が開通して、ベルギーの鉄道時代が幕を開けた。動画像に目を凝らしていると、1870年ごろまでに、路線が全国に張り巡らされる様子がよく分かる。時が流れて20世紀、1950年代からは直流3000Vの電化区間がずんずん延びていき、最後に交流25KVの高速線が西からすうっと現れて、全編が終わる。

| | コメント (0)

2009年7月 5日 (日)

アイルランドの鉄道地図

Blog_ireland_map アイルランド共和国の鉄道網を運営しているのは、国有のアイルランド鉄道だ。英語ではIrish Railだが、正式にはアイルランド語によるイルンロード・エールンIarnród Éireann(読み方はウィキペディア日本語版による)と称している。Iarnródは英語のIron Roadから来ていて、Iarnród Éireannはエール(アイルランド)の鉄道という意味をもつ。運行路線は首都ダブリンDublinから放射状に広がり、内陸を貫通して沿岸の主要都市に達している。

一方、1922年のアイルランド共和国独立に際して袂を分かった北アイルランドでは、北アイルランド鉄道NI Railwaysが鉄道事業を行っている。1990年代に極端な民営化が推し進められたイギリスで、唯一残る国有かつ上下一体経営の鉄道会社だ。首都ベルファストBelfastから延びる長短4方向の路線を維持する。

鉄道が盛んに建設されていた19世紀はまだ全島がイギリス領だったので、主要路線は1846年の鉄道規制法で定められた1600mm(5フィート3インチ)軌間、いわゆるアイリッシュ・ゲージで統一された。最盛期であった1920年には、島全体に狭軌を含めて計5500kmもの路線が存在したという。1950~60年代に不採算となっていた多くのローカル線が廃止された結果、路線規模は1/3にまで縮小した。現在の運行形態は首都中心で、アイルランド鉄道はDARTなどの近郊通勤列車、50~80km圏の郊外列車、地方都市へのインターシティを走らせている。また、ダブリンとベルファストの首都間は、両鉄道が共同で、ユーロスターなみの設備をもつ「エンタープライズEnterprise」号を投入している。

鉄道地図でもアイルランド島は、1つのくくりで扱われることがほとんどだ。単独の出版物になっているものでは、1997年にアイアン・アラン出版社から刊行された「ジョンソンのアイルランド鉄道地図帳・地名録Johnson's Atlas & Gazetteer of the Railways of Ireland」が知られているが、残念ながら今は絶版で、古書店を当るしかない。グレートブリテン島と合冊・併載になっているものは数種ある。下記リンクの記事を参照願いたい。

・トーマス・クック社の鉄道地図 Railmap Britain & Ireland
 アイルランド島は縮尺1:1 000 000(100万分の1)。駅の表示は主要駅のみ。旅行地図の性格をもつため、長距離バスルートも記載。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/i_7b92.html

・アイアン・アラン社の「Rail Atlas 1890」
 1890年当時(イギリス領時代)の全線全駅を表示。とうに廃止された路線が多数描かれた貴重な資料。ダブリンは拡大図あり。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/ii_6b6b.html

・M.G.Ball氏によるabc英国鉄道地図帳abc British Railways Atlas
 ポケット版の鉄道地図帳。アイルランド島は縮尺約1:1 670 000(167万分の1)で4ページを充てる。全駅表示。ダブリンは拡大図あり。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/iii_4389.html

・M.G.Ball氏によるヨーロッパ鉄道地図帳
 アイルランド島に1ページを割く。縮尺約1:2 220 000(222万分の1)。駅の表示は主要駅のみ。分冊版はイギリスと合冊で「Atlas of Britain & Ireland」となる。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2009/01/i-0b3a.html

・S.K. Baker氏による鉄道地図帳
 アイルランド島は1:495 000で全線全駅を表示。コークCork、ダブリン、ベルファストは拡大図あり。数年おきに改訂版が出されるので、直近の状況がチェックできる。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/11/iv_6a46.html

ウェブ版では、鉄道会社のサイトで提供されているものしか見当たらなかった。

Blog_ireland_railmap_hp1 アイルランド鉄道
http://www.iarnrodeireann.ie/your_journey/intercity_map.asp
旅客営業している全駅を結んだだけの簡素な鉄道地図だ。ダブリン近郊と、南岸のコークCork~コブCobh間の支線は別図になっている(左メニューで選択)。ただし、このサイトは旧版かもしれない。下記のサイトでは、時刻表検索Reservations & Timesでポップアップ表示される。また、起終点を選択するときにも使われている。
http://www.irishrail.ie/

Blog_ireland_railmap_hp2 北アイルランド鉄道
北アイルランド鉄道の持株会社のブランド名であるTranslinkのサイトに、路線図NI Railways Route map(PDF)へのリンクがある。地図は系統を色分けしたもので、実際の距離は考慮されていない。
http://www.translink.co.uk/translinknetwork.asp
また、直接のURLは次のとおり(リンク切れご容赦)。
http://www.translink.co.uk/resources2005/20060821routemapnir.pdf

ヨーロッパ全域の鉄道地図を提供するTrainspotting Bükkesのイギリス諸島編も参照。
http://www.bueker.net/trainspotting/maps_british-isles.php

| | コメント (0)

2009年6月28日 (日)

イギリスの鉄道地図 VI-コッブ大佐の鉄道地図帳

人気を博した「日本鉄道旅行地図帳」は、現役の鉄道を描いた地図もさることながら、今はなき路線を網羅した廃線地図にも大きな反響があったようだ。鉄道が陸上輸送を独占した時代、その存在は地域の都市形成や産業構造に計り知れない影響を与えている。廃線地図を見たことをきっかけにして、もっと詳しく歴史を知りたい、軌跡を追いたいという探究心が芽生えても不思議はない。

Blog_britain_railatlas7 同じような思いを抱いた人がイギリスにもいて、彼は、自らの半生をかけて類まれな鉄道地図帳をまとめあげた。「英国の鉄道-歴史地図帳The Railways of Great Britain - A Historical Atlas」、スリップケースに入った全2巻、地図646ページ(両巻の間に8ページの重複あり)、資料・索引47ページにもなる大作だ。トレヴィシックTrevithickが最初の機関車を走らせた1807年から、国鉄British Railが民営化された1994年までに存在した鉄道路線と駅を、地形図上にすべて描き込んでいる。ベースマップにしているのは、1:50 000地形図が登場する以前のイギリスの代表的な地形図である1マイル1インチ地図(いわゆるワンインチマップ1-inch map、縮尺1:63 360)だ。イギリスの鉄道地図は何種類も刊行されているが、全国版でこれほど大縮尺のものは他に例がなく、いわば究極の鉄道地図帳だ。

なぜ、古い地形図を使ったのか。序文によれば、地名、道路網、河川など地誌的背景は、その場所に鉄道が計画された理由や駅が設けられた理由を読み取る際の参考になる。しかし、最近の地形図では、廃線跡に新しい道路や建物が載って、位置が不明瞭になっていることがある。その点、1971年限りで刊行が止まったワンインチマップには、改変前の状態が残っているというのだ。地形図原図は多色刷りだが、地図帳では黒と青の版だけを抽出してグレー1色で印刷してあり、等高線は入っていない。あくまで主題を引き立てる役回りということだ。

鉄道線は、1948年の国有化以前の4大会社、いわゆるビッグフォーThe Big Fourを構成した路線ごとに塗り分けている。ロンドンから東海岸を北上するロンドン・アンド・ノースイースタンLondon & North Eastern (LNER) は緑、西海岸を北上するロンドン・ミッドランド・アンド・スコティッシュLondon, Midland & Scottish (LMS)は赤、西方へ向かうグレート・ウェスタンGreat Western (GWR) は青、南部一帯のサザンSouthern (SR) は茶色だ。路線が輻輳する場合は色の濃淡で識別できる。さらに開業時の所有会社名、途中で会社が変わったものは継承した会社名と年、軌間(後に改軌されたものは年も)、区間ごとの開業年、廃止年(clo 1900のように)が図上に注記される。

駅もしかり。すべての旅客駅が地形図と同じように丸印で示され、営業しているものは白抜き、廃止駅は中に斜線を施してある。路線と同時に開業したものは駅名の後にアスタリスクがつき、それ以外は開業年が(1872)、廃止年が[1972]のように注記されている。改称があった場合は、その履歴も付されている。

詳しい変遷を図示できるのも、この縮尺なればこそだ。鉄道のない地域はもとから省略されているが、そうでなくても周辺部では、見開きページに路線が1本のみということもしばしばある。しかし、縮小表示などはあえて行わず、読者に交通網の疎密度を実感させるに任せている。改廃のデータを表形式にしたものなら他にも存在するのだろうが、これは単なる文字の記録とは一線を画する。幹線の成立から培養線の拡大、はたまたライバル会社との絡み合いなど鉄道網のさまざまな事情が、空間と時間のコンテクストを通して把握できる、目で見るイギリスの鉄道発達史というべきものだ。

著者のマイケル・コッブ大佐Colonel Michael H. Cobbとはどんなプロフィールをもった人なのか。書評の略歴によると、第2次大戦に従軍した後、軍で測量と地図製作に携わり、除隊後は陸地測量部Ordnance Surveyに勤めた。同時にイギリスの鉄道全線を乗り尽くした愛好家でもあったので、1978年に人に勧められて、この仕事に着手した。1916年生まれで当時62歳だった彼は、やり遂げるには今の一生と、次の一生の半分が必要だと言ったそうだ。資料の完成には18年かかり、さらに篤志家の援助を得て出版に漕ぎ着けたのはその7年後の2003年だった。右上の写真は、誤りなどを修正した第2版(2006年)だ。大佐は2008年、この業績が評価されて母校のケンブリッジ大学から博士号を贈られたが、満91歳の授与は同大学では最高齢の記録だったという。

書評では、150ポンドという価格にもかかわらず、この地図帳は熱いケーキのように、つまり飛ぶように売れていると書くが、同時に、本屋へ自転車で買いに行こうとする人に対して、持ち帰るには大きくて重すぎると警告している。もちろん、アイアン・アラン出版社のサイトで注文すれば、遠く日本までも届けてくれるので、興味と資金を持ち合わせている限り億劫がる必要はないのだが。

■参考サイト
アイアン・アラン出版社による同書の紹介記事
http://www.ianallanpublishing.com/product.php?productid=55161
 書評へのリンクあり。ページの下部に地図のサンプル画像がある。

| | コメント (2)

2009年3月30日 (月)

ヨーロッパの鉄道地図-ウェブ版

ヨーロッパ全域を表した鉄道地図で、ウェブ公開され、内容の充実度も高いものというと、これを措いて他に知らない。
■参考サイト
Railways through Europe - maps of railway-networks
http://www.bueker.net/trainspotting/maps.php

Blog_europeanrailmap_hp1 「国の鉄道網には非常に興味深いものがある。国の歴史が路線配置の背後に見えることがあり、人やモノが集まって多忙なのか、静かなところなのかもわかる。鉄道網を知れば、いろいろな発見がある。鉄道網を理解するには地図が必要だが、レールファンにとっても複線、電化線を示した鉄道地図を見つけるのはなかなか難しい。これが、自分で地図を描こうと決めた理由だ。以来少しずつ、何か国かは他のレールファンの力も得ながら、ヨーロッパ全域をほぼカバーするに至った。確かに毎年、休止や新設や電化の動きが何件もあることを考えると、これほど巨大なテーマを一個人が完全に掌握することなど不可能だ。幸い、私たちは孤立してはおらず、多数のレールファンが、地図を改訂するために私を直接間接に助けてくれる。彼らに深く感謝を捧げたい。Boris Chomenko」

巻頭言で表明されているボランティア精神を讃えないわけにはいかないだろう。そのおかげで、私たちは居ながらにしてヨーロッパの鉄道事情を概観することができる。いまや対象となるエリアは、東方のバルト三国、ベラルーシ、ウクライナ、トルコにまで広がっている。個々の地図は基本的に国ごとに作成されているが、主要都市とその周辺は別に拡大図があるし、各地図に、一部を除いて英語版と現地語版が用意されているのも驚きだ。

地図の内容はどうだろうか。記号体系は、電化(方式別)・非電化、旅客線・貨物線、そして軌間(線路幅)を線の色で、単線・複線の違いを線の太さで区別している。建設中の路線は鎖線、計画線は灰色の線で表される。観光鉄道(保存鉄道)はSLのマークを添えてあるので目立つし、探せばラック鉄道や鋼索鉄道(ケーブルカー)も発見することができる。

各地図の表紙ページにある記録から、地図が頻繁に更新されていることがわかるが、このデータはまた、路線の休止や開通など、当該国の鉄道の最新動向を知る上でもたいへん役に立つ。ファイルサイズを軽くするためか、画像にアンチエイリアス処理を施しておらず、駅名や細線のルートが見やすいとは言えないが、資料としての価値を減じるほどではない。常に最新版に差し替えられるウェブの利点を生かした鉄道地図は、筆者のブラウザでお気に入りリストの上位をキープしている。

1972年、国際鉄道連合Union internationale des chemins de fer (UIC) の創立50周年を記念して、若者に鉄道旅行を安く提供しようと、ヨーロッパ21か国(自国を除く)を2等車で1ヶ月間無制限に使える鉄道パスが作られた。「インターレイルInterRail」の始まりだ。当初、年齢の上限は21歳だったが、現在は価格差があるものの年齢制限は撤廃されている。おなじみのユーレイルパスがヨーロッパ以外の居住者向けであるのに対して、こちらはロシアを含むヨーロッパ圏に6ヶ月以上居住(滞在)している人が対象だ。通用する国の数もインターレイルパスのほうが多い。

Blog_europeanrailmap_hp2 公式販売サイトに、パスの有効な国と路線を描いたオリジナルのPDF版鉄道地図がある。ヨーロッパ全図が一面に配置され(北欧は挿図)、国別に色分けした上に、概略の鉄道ルートが描かれている。高速線は緑、幹線、中でも高速列車の経由線は紫、その他は赤と区別してある。上述の労作に比べて種別が単純なのは、一般旅行者の参照用としてデザインされているからだ。

裏面(本来は表紙)はスイスの拡大図と、主要都市の駅配置、それにパス所有者の座席予約料金の一覧表になっている。印刷すれば折図になる仕様だが、パス購入時に渡されるものなので、単独では頒布していないようだ。

ユーレイルパスの販売サイトにも類似の地図が掲載されているが、イギリスなどのようにパスが使えない国は灰色に変えてある。また、InterRail.netという販売サイトにも、明らかに出所が同じと思われる鉄道地図があるが、こちらは段彩で地勢を加えた別バージョンだ。ただし、開通した高速新線が反映されておらず、新たに参加した国が通用範囲外であるなど、データは古いままだ。これ以外にもインターレイルパスを販売するサイトは多数あって、それぞれに個性的なつくりの鉄道地図を発見できるが、内容はどれも公式サイトには及ばない。

■参考サイト
インターレイル鉄道地図 http://www.interrailnet.com/interrail_railway_map
ユーレイル鉄道地図 http://www.eurail.com/eurail_railway_map
InterRail.net  http://www.interrail.net/english/rail_map_europe.php

| | コメント (0)

2009年3月26日 (木)

ヨーロッパの鉄道地図-キュマリー・ウント・フライ社

Blog_europeanrailmap5 2008年、本格的なヨーロッパ鉄道地図がまた一つ生まれた。スイスのバイルシュタイン社Beilsteinが編集して、キュマリー・ウント・フライ(キュメルリ・フライ)Kümmerly+Frey(K+F)のブランドを冠した「ヨーロッパ鉄道地図Railmap Europe」だ(写真左はカバー表面、右は裏面)。有力な地図出版社であるK+Fが持つ販売網に乗って、瞬く間に世界の地図商のカタログに掲載されるようになった。

138.6×99.6cmの用紙サイズは、これまで紹介したものの中で最も大きい。しかし、縮尺は1:5 000 000(500万分の1)と最小なので、相当広い範囲をカバーしていることがわかる。これが第一の特徴だ。表紙に掲げられた欧州旗に象徴されるように、この鉄道地図は、ヨーロッパ全域を初めて挿図を使わずに一図郭に収めようと試みている。左端はアイスランド島を取り込むため、海が多く占めるのも厭わず、西経20度まで図郭を伸ばす。右端はヨーロッパロシアの東限ウラル山脈を越えたエカテリンブルクに届く。北はスカンジナビア半島北端ノールカップ、南はアフリカ北岸からイランのテヘラン、イスファハンを結ぶラインまで確保した。

矩形の用紙にうまく入れるために、投影法は経度0度を中心軸とするロビンソン図法を用いている。擬円筒図法の一種であるこの図法では、メルカトル図法のように極に向かって面積が著しくひずまないよう、補正が施される。すなわち経線(縦軸)は平行線でなく、中心軸方向に緩やかに曲げられ、緯線間隔(南北の図上距離)は高緯度でも小幅な変化にとどめられる。これによって用紙の天地寸法も節約できるのだ。

第二の特徴は、鉄道の分類が詳細なことだ。大きく分けると高速線か、在来線かの区別がある。高速線は一貫して青の二重線をベースにした記号が使われ、新線と既存線改良、標準軌と広軌、非電化の区別がある。建設中または計画中の高速線も、開通予定年つきで表示されている。

在来線の記号はさらに多様だが、デザインに一定の法則がある。まず、軌間の別は線の形式で表す。具体的には標準軌が実線、広軌は旗竿形、狭軌は旗竿の白抜き部分を黄色に塗っている。次に、電化の別は塗りの有無(電化は塗り、非電化区間は白抜き)で、旅客線・貨物線の別は色(旅客線が朱色、貨物線はグレー)で区別するという具合だ。これで、たとえば標準軌で非電化の貨物線なら、実線の中を白抜きにした灰色の記号と特定できる。

第三の特徴として、地勢表現の繊細さがある。ぼかし(陰影)と、高度に応じて連続的に変化する彩色の組合せは、ヨーロッパの地勢図として使用に堪える出来栄えだ。凡例は英、独、仏、伊、西、露の6ヶ国語で説明されているし、主要都市名に現地語表記を併用しているのも興味深い。見慣れたラテン文字のほかにアラビア文字、ギリシャ文字、キリル文字、グルジア文字、アルメニア文字を探すことができる。

筆者の目にはなかなか魅力的な鉄道地図と映ったが、果たしてトーマス・クックのライバルになるだろうか。クックは、景勝路線をマークする一方で、鉄道記号の分類は幹線・支線の別や建設中、休止中など、旅行計画に関連する情報に絞っているので、シンプルで見やすい。対するK+Fは、記号を複雑にしたため、鉄道愛好家や職業人でなければ、やや難解な印象を抱くかもしれない。K+Fの縮尺が小さいことも不利な条件だ。クックは地図の裏面に中央部を拡大するサービスまでしているが、スイスの鉄道地図を別に作っているK+Fとしては、自社商品との競合は避けたいところだろう。

一方、クックはベースが白地図なので、旅心を誘う小道具として見たときには物足りない。その点、K+Fの地勢表現には、周回衛星の小窓から地球の表面を見ているような実感がある。欄外に整列している各国の国旗と国勢データを参照しながら、地図を眺めるのも楽しい。この地図の主題ではないアフリカや中央アジアの鉄道も省略せずに描いてあるので、得した気分になるという点も付け加えておこう。
両者を一言で評すれば、クックは旅行資料であり、K+Fは鉄道調査資料あるいは鑑賞用ということになる。あえてライバルに仕立てるまでもないのかもしれない。

■参考サイト
バイルシュタイン社のサイト http://www.beilstein.biz/
 英語版あり。バルセロナ、ミラノ、パリ付近のサンプル図が公開されている。
 なお、この地図は、上記サイトからリンクしているK+Fのショッピングサイトや、各国主要地図商で購入できる。日本の紀伊國屋BookWeb http://bookweb.kinokuniya.co.jp/ でも扱っている。

本ブログ「スイスの鉄道地図 I」で、K+F社のスイス鉄道地図を紹介している。
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2006/10/_i_9f60_1.html

ヨーロッパの鉄道地図-ウェブ版

| | コメント (0)

2009年3月19日 (木)

ヨーロッパの鉄道地図-折図いろいろ

トーマス・クック以外にも、個性豊かなヨーロッパ鉄道地図が刊行されている。手元にあるものを紹介しよう。

Blog_europeanrailmap2 カナダ、バンクーバー近郊のITMB出版社ITMB Publishingは、さまざまな縮尺で世界の国・地域図、市街図を多数発表しているが、その中に「ヨーロッパの鉄道Europe Railway」がある。109×69cmの耐水紙を使用して、オモテにヨーロッパの西半分、裏面に東半分を掲載している。縮尺は1:3 350 000(335万分の1)で、スカンジナビア北中部と、列車は走っていないがアイスランドは1:8 000 000(800万分の1)の挿図に収まる。

「列車でヨーロッパを旅する人はたいへん多いのに、大多数のヨーロッパ地図で鉄道路線の情報が省かれていることはほとんど知られていない。そう、AA、ADAC、ブレー、フライターク、ヒーマ、ミシュランその他、多くの地図に線路は表示されておらず、道路だけだ。その点、この地図ではアイルランドからウラル山脈、ノルウェーから地中海まで、旅客鉄道の大部分をしっかりと表示している」。自社サイトの地図紹介の一部だ。例に挙げられた各社はもともと道路地図として作っているので、鉄道の記載がないことを責めるわけにはいかない(そして実際はけっこう表示されている)が、それに比べてこれは道路と鉄道を同格に扱っている、と言いたいのだろう。

確かにこの地図では、鉄道を旗竿記号で明確に示しているので、ネットワークが概観できる。しかし、幹線支線のような区別は考慮されておらず、この場所を通っている、この都市間を結んでいるということが、知り得る情報のすべてだ。また、小縮尺の辛いところで、スイスのようにほんとうに鉄道で回れる地域の路線を表しきれていない。一方、道路のほうは、幹線自動車道(E-road)の路線番号が入り、道路種別も記号化されて、こちらが主役と言われても不自然でないほどだ。鉄道地図というより、むしろヨーロッパ広域交通地図という表現が当を得ていよう。

■参考サイト
ITMB出版社 http://www.itmb.com/
 右メニュー "Map Sample"にサンプル画像が、"Shop Onlines"オンラインショップで、自社地図のみならず世界各地の地図が購入できる。
「ヨーロッパの鉄道Europe Railway」のサンプル画像
http://www.itmb.com/map_samples/ITM/Europe-Railways_SMdet.jpg

Blog_europeanrailmap3 アメリカ、フロリダ州にあるストリートワイズ・マップス社Streetwise Mapsは、ラミネート加工を施した蛇腹折りのミニマップを専門とする出版社だ。このシリーズの一つに「ヨーロッパと主要鉄道路線Europe & Major Rail Routes」がある。48.8cm×21.6cm、縮尺1:11 500 000(1150万分の1)、鉄道は高速線と幹線、それに旅客フェリーを図示するだけの簡単なものだが、地方都市をまめに記載しているのと、主要都市間の所要時間が別表になっていて、実用にも配慮されている。とかく1枚ものの地図は扱いにくいときがあるから、ハンディで丈夫な地図なら根強い需要があるのだろう。

■参考サイト
ストリートワイズ・マップス社 http://www.streetwisemaps.com/

Blog_europeanrailmap3 アメリカ、カリフォルニア州のマップリンク社Map Linkは、世界の地図を取り扱うリテーラーとして有名だが、自社ブランドを冠したユニークな主題図のことは、知る人ぞ知る領域だ。例えば、世界の天文台と天文館地図、旅行者のための世界リスク地図、国際テロリズム参考地図、とタイトルが並ぶと、「ヨーロッパ鉄道地図Rail Map of Europe」がいかにも平凡な作品に見えてくる。しかし、表札だけで内容を判断するのはまだ早い。これは同社ならではの発想が貫かれた地図だからだ。

98×69cmの大判用紙の片面刷りで、縮尺は1:4 125 000(412万5千分の1)、大西洋岸から東はルーマニアまでが掲載範囲だが、スカンジナビアを右上に挿図したため、ポーランドやバルト三国は割愛されてしまった。凡例は5ヶ国語対応で、英・独・仏、それにスウェーデン語と日本語という珍しい組合せだ。鉄道ファンが使用する主要言語として選ばれたのかと勝手に想像した。

鉄道記号は国鉄か私鉄かで分け、さらに運行頻度で5段階に分ける。民営化や上下分離で国鉄という分類が難しくなってはきたが、ここまでなら常識的な設定だ。次の旅行情報という記号が独創的で、A地点におけるおよその出発時間(厳密な時刻ではない)とA地点からB地点までの所要時間を逐一図示している。所要時間は赤数字で、出発時刻は時計をイメージした目盛り入りの円で表していて、これによってパリ~ベルリン間は所要10~11時間、パリ発午前9時ごろ、午後1時と9時ごろの1日3便あることがわかる。航路は所要時間とともに、夏季と冬季に分けて運行頻度を数字で示している。

ところが、この表が地方線を含め、ぎっしりと地図に埋め込まれて、路線のルート表示がかなり隠れてしまうし、時計の目盛りが細かすぎて、列車頻度が高いと判別に苦労する。それに1時間単位の表示では目安程度にしか使えない、もっと頻発になると表現できないなど弱点も多々見つかる。果たして商品として成立しているのか、という疑問はあるものの、アイデア賞だけは授けたい気がする。

■参考サイト
マップリンク社 http://www.maplink.com/
"Maps & Atlases" > "Map Link Code - Locate a specific map" > 入力欄に"ML EUR RAIL"
これで上記地図のサンプル画像が表示される。ちなみに、世界の天文台と天文館地図は"ML WOR ASTRO"、旅行者のための世界リスク地図は"ML WOR RISK"、国際テロリズム参考地図は"ML WOR TER"

Blog_europeanrailmap5 イギリスのロジャー・ラッセルズ社Roger Lascellesは、赤いカバーをまとった国・地方別地図が看板商品だが、中に「ヨーロッパ鉄道電化方式地図Europe Railway Electrification Map」と「世界鉄道ゲージ地図World Railway Gauge Map」というユニークな地図が含まれている。

前者は、ヨーロッパ地図を国ごとに支配的な電化方式で塗り分けたものだ。交流の国は緑系、直流は赤系と補色で対比しているので、ベルギーとオランダが交流連合に囲まれながら直流の孤島を維持しているといったパッチワークの分布状況が、一目瞭然だ。地図には主な鉄道路線も記入されている。一国で複数の電化方式を採用していることもしばしばあるが、これは別冊に掲載された方式別延長キロの表が参考になる。冊子のメイン記事は、電化方式を主としたヨーロッパの鉄道事情についての詳しい解説(英語)で、興味深く読める。

後者は、全世界の主要鉄道路線を軌間(線路幅)別に色分け表示したもので、こちらはさらにボリュームのある地域別の説明資料が付録になっている。

■参考サイト
ロジャー・ラッセルズ社 http://www.rogerlascellesmaps.co.uk/

いずれも、自社ショッピングサイトのほか、アマゾンAmazon.co.jpなどでも扱っている。

ヨーロッパの鉄道地図-キュマリー・ウント・フライ社

| | コメント (0)

2009年3月12日 (木)

ヨーロッパの鉄道地図-トーマス・クック社

Blog_europeanrailmap1 ヨーロッパ全域をカバーする鉄道地図といえば、「トーマス・クックのヨーロッパ鉄道地図The Thomas Cook Rail Map of Europe」がまず思い浮かぶ。同じ出版社が刊行している歴史ある鉄道時刻表European Timetableとともに、ヨーロッパを鉄道で旅する人たちに愛用されてきた。1978年初版で、現在17版を重ねる(写真は第15版。最新版は表紙デザインが変わっている)。

簡単に内容を紹介しておこう。99×69cmの大判用紙を用いた地図のオモテ面は、縮尺およそ1:4 000 000(400万分の1)のヨーロッパ全図(スカンジナビア半島は挿図で1:6 000 000)だ。大西洋岸からモスクワやトルコのアンカラまでを収めている。しかし、鉄道網が比較的稠密なヨーロッパ中央部(特にスイス)はこの縮尺では書ききれないので、裏面にこれを補う1:1 500 000(150万分の1)の拡大図がある。東西はパリ~ワルシャワ、南北はベルリン~ボローニャの範囲については、こちらに詳細が載っている。

凡例は、英独仏西の4ヶ国語が併記されている。鉄道に関する地図記号で最も目立っている赤の実線は、フランスでいうLGV(Ligne à grande vitesse)、つまり高速路線だ。対して黒の実線は普通鉄道の幹線、それより細い線は支線を表す。建設中、休止中、ラック鉄道の区分もある。観光鉄道のうち重要なものにはT(= Tourist Railway)印が添えてある。駅の表示は主要駅のみだが、起終点だけでなく、中間駅も結構目配りされているようだ。中でも国境駅は赤で塗ってある。シェンゲン協定で国境通過時のパスポートチェックはなくなったとはいえ、機関車の付替えなど国際列車特有のイベントが残っているからか。

バス路線はオレンジの細線を充てるが、鉄道網を補完するものや、旅行者がよく利用するものに限られている。一瞥すると、この記号の密度が高いのは、アイルランド、スイス南東部からチロルにかけて、そしてスカンジナビアの北部だ。旅のニーズがあるのに、鉄道網がほとんど消滅した、あるいは発達していない地域ということだろう。

ところで、クック鉄道地図の有名かつ最大の特徴は何だろうか。それは路線の上に緑のアミで強調しているので目を引く。そう、景観路線Scenic routeの表示だ。地図カバーの解説を借りると、これは「鉄道で旅する人の参考になるように、山や川、海岸の風景が車窓から見えるという条件で、個人の知見や地図ユーザーの投書の中から編集部員の主観で選んだもの」。示された区間が絶景の連続かというとそうでもないのだが、車窓を楽しむ旅の目安にはなる。他に、主なスパイラル(ループ線)を誇張して描いているのもこの方針の延長線だろう。

しかし、地図を眺めるにつけ、筆者が残念に思うことが二つある。その一つが景観路線の推薦理由が明らかでないことだ。さいわい、アルプス、ピレネーなど山岳地帯はぼかしがかけられているし(かなり大雑把だが!)、主要河川や海岸線に沿う区間も見ればわかる。何が見どころか、ある程度まで推測は可能というものの、簡単な分類が記されていればさらに親切だろう。

二つ目は、時刻表とのリンクが考慮されていない点だ。時刻表のスタッフが編集、更新していると広告にうたうほど、クック鉄道時刻表の威光を背負っているのに、不思議なことだ。鉄道地図は、ディテールはともかく地理的位置に合わせて路線網を描いている。一方、時刻表の索引図は、主要駅間を直線で結んで位置関係だけを明らかにした、いわゆるスキマティックマップ(位相図)だ。たとえば、鉄道地図で発見したシーニックルートを走る列車の時刻を調べたいと思ったとしよう。図法の異なる2つの地図を比較して路線を同定し、索引図のほうで時刻表番号を求めて、ようやく目的の時刻表に到達する。慣れない人にとっては億劫な作業だ。しかし、鉄道地図に時刻表番号が添えてあったら、ワンストップで解決するだろう。何か技術的な問題があるのかもしれないが、理想の道連れIdeal companionを標榜するからには、改良を期待したいものだ。

Blog_europeanrailatlas3 クック鉄道地図は、アマゾンその他のショッピングサイトで扱っている。なお、ミュンヘンのゲラモント出版社GeraMond Verlagから刊行されている「ヨーロッパ鉄道地図帳Eisenbahnatlas Europa」(2006)は、各国の鉄道の現状をカラー写真つきで解説した本だが、巻末の鉄道地図はトーマス・クックをそのまま利用している。

■参考サイト 
トーマス・クック出版社
http://www.thomascookpublishing.com/
本ブログ「イギリスの鉄道地図 I-トーマス・クック社」
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/i_7b92.html
 ヨーロッパ版の姉妹品であるイギリス・アイルランド鉄道地図Rail Map Britain & Irelandを紹介している。

ヨーロッパの鉄道地図-折図いろいろ

| | コメント (0)

2009年1月29日 (木)

新潮社の日本鉄道旅行地図帳

Blog_japan_railatlas このブログではヨーロッパの鉄道地図を各種取り上げてきたが、日本でも目下、画期的なシリーズが刊行中だ。昨年(2008年)5月の発刊から9ヶ月、ついに筆者の住む関西編まで揃ったので、ここで少し感想を記しておこう。

地図の電子化が進む一方で、アイディアを競うように実用本位の地図帳が書店の棚を賑わせている。このシリーズも、地図出版の傾向と鉄道趣味のブーム化とを追い風に企画されたに違いない。刊行予告の時点では、手を変え品を変えてよく作るものだ、となかば呆れて眺めていたが、第1号を手にとって少なからず驚いた。盛りだくさんの内容とこだわり抜いた編集、まさに日本の鉄道を徹底的に楽しむために作られた、他に類を見ない地図帳だったからだ。

新潮社刊「日本鉄道旅行地図帳」は、エリア別に北から12分冊とし、旧領土・植民地の別巻も予定されている。メインテーマとなる鉄道地図は、現状報告にとどまらず過去と未来にも目を向けているのが新鮮だ。

今を描く「鉄道旅行地図」は、現存鉄道の全線全駅を、数値地図の標高データを用いて地勢を精密に描き出したベースマップ上に図化したものだ。縮尺は各号の中では統一されているが、北海道、東北などは1:800 000、南関東、東海、関西などは1:500 000と、鉄道網の疎密度によって変えている。都市圏は拡大図がある。路線表示についてはJRと私鉄の単線・複線に分類し、信号場や貨物駅、スイッチバックや急勾配区間を注記している。別ページで写真と解説をつけた名駅舎・鉄道保存施設、一口コメントを添えた車窓絶景など、鉄道関連の見どころ紹介も楽しい。

題名に「旅行」と銘打っているとおり、地図には百名山、さくら名所、名城、名湯、その他名所旧跡の記号がプロットされ、地名の傍らに土地の名産品がさりげなく記されている。地図帳が鉄道ファンに限らず、旅好きな層全般に支持されているのも頷ける。

山岳地帯は鉄道にとって建設・運行の難所である一方、旅行者にとっては車窓の変化が列車に乗る楽しみを誘う。地図帳ではそういう地域を選んで、三次元の鳥瞰図で紹介している。これまでの9号から拾うと、狩勝峠、板谷峠、清水トンネル、碓氷峠、箱根富士、立山黒部、大井川と指折りの名所ばかりで、峡谷や山腹を縫う鉄路のかぼそげな様子が臨場感をもって伝わってくる。関西編では、これが奈良飛鳥と京都近傍の国宝所在地を示す図になっている。発想は大変ユニークだが、遠方になるほど面積がひずむため、一部の注記が集中して錯雑感を招いてしまった。垂直視点にしたほうが分かり易かっただろう。東京の地下鉄立体透視地図も同様で、固定の視点で立体的に見せるには限界があり、表紙にあるような標高地形図に重ねれば十分ではなかったか。

過去を記録するのは「廃線鉄道地図」で、過去帳入りした路線やルート変更の跡を駅名入りで、かつ現役線との接続状況も含めて明らかにしている。幾度も変遷を重ねている路線は、時代別の分図が用意されているし、スイッチバックは消滅したものを含めて解説つきの配線図がある。全国津々浦々の路面電車、森林鉄道、簡易軌道まで洗いざらい調べ上げ、丹念に書き込んだ執念にはまったく脱帽する。筆者も旧版地形図を渉猟したことがあり、昔どこに鉄道が延びていたかはたいてい知っているつもりだったが、この地図を読めば、こんなところにも、という小鉄道がまだまだ現れる。これまで廃線跡探訪記などで個別の路線図は目にしても、全国規模の一覧図にまとめたものはなく、将来にわたって交通発達史の貴重な資料となるに違いない。

未来予想図としては、東京近郊の構想線・夢想線が特集されている。事情通にとってはこの項の監修者である川島令三氏の著書で既知の情報とはいえ、一般の読者は興味津々で眺めることだろう。同じように未来形だったはずが、図らずも過去完了になってしまった国鉄予定線・未成線の一覧図もあり、鉄道に託された見果てぬ夢に思いを馳せることができる。

各号には地域特集として、特徴的なテーマを取り上げたコーナーがある。上述の鳥瞰図や構想線一覧もその一つだが、ほかにも、昭和初期の蛇腹折り鉄道地図を紹介したり(東北編)、蒸機のメッカ、梅小路蒸気機関車館をレポートする(関西編2)など、どこまでも読者を飽きさせない。さらに車両基地一覧、軟券博物館、そして後半には路線と駅の詳細なデータ集等々があり、たかだか50ページ前後の冊子としては、信じられないほどの密度を有する。

諸外国の鉄道地図帳が、おおむね路線あるいは列車データの図化に特化した、いわば専門店であるのに対して、こちらは痒いところに手が届くコンビニのような店づくりになっている。筆者は紹介記事を書こうとして一度ならず読み返したが、そのたびに新たな発見があり、遅々として筆が進まなかった。大仰ではなく、日本の鉄道140年の歴史を地図上に焼き付けた記念碑的労作と言うべきだろう。

ところで、従来、鉄道地図というと、時刻表の索引地図のように、弧状に連なる日本列島を矩形の図郭に収めるため、距離や方位を歪めるのが通例だった。それに対して、この地図帳は正縮尺(1つの図の中で縮尺が一定)を標榜している。識者の書評で、日本初の正縮尺鉄道地図を謳うのは編集者の不勉強で、1966年に鉄道図書刊行会から「日本鉄道線路図」が出ていると指摘されていた(「鉄道ジャーナル」2008.11 p.142)。興味を覚えていたところ、さっそく刊行元の鉄道誌(「鉄道ピクトリアル」2009.1)に復刻版が掲載された。確かに全国同一縮尺、全線全駅の先駆的な著作だが、白地図に路線を記入しただけの至ってシンプルなものだ。初のタイトルは譲っても、情報量や多様性の点で、今回のシリーズとは比較にならないことを言い添えておきたい。

■参考サイト
新潮社「日本鉄道旅行地図帳」 http://www.shinchosha.co.jp/railmap/

| | コメント (0)

2009年1月15日 (木)

フランスの鉄道地図 IV-ウェブ版

前回はフランスの列車や路線網を表現した鉄道地図を紹介した。今回は路線の設備を詳述した全国鉄道地図2種とイル=ド=フランスの鉄道地図だ。

Blog_france_railmap_hp5 前者の1つめは、フランス国鉄SNCFが製作し、フランス鉄道線路公社Réseau Ferré de France (RFF) が公開している。1997年、旧フランス国鉄SNCFは列車運行とインフラ管理を別組織化する、いわゆる上下分離の対象となったが、その際、インフラ保有の受け皿として設立されたのがRFFだ。その資料サイトに、組織のミッションにふさわしい鉄道地図が収められている。「Réseau ferré national(全国鉄道ネットワーク)」というタイトルで、RFFの管理下にあるフランス全土の鉄道線(一部の地方私鉄を含む)を詳細に図示したものだ。記載項目は比較的シンプルで、線路の本数、待避線、操車場、旅客駅とそれ以外(非営業を含む)といった施設関係と、狭軌線、地方私鉄、休止線、廃止線の区別、それに行政界とSNCFの管理局界が入っている程度だ。しかし、鉄道の公式資料であり、全線全駅が待避線や連絡線の有無を含めて丹念に図示されていることで、注目に値する。

「フランスの鉄道地図 II」に記したように、この地図はかつて同国の国土地理院IGNが、上下左右4分割した印刷図にして頒布していた。現在は全1面にPDF化されて便利な反面、4.5MBという大容量のため、表示に若干時間を要する。旧図では河川や運河、隣接国内の路線網なども描かれていたが、現行版では省略され、県名も番号に置き換えられて、一般図的な要素はすっかり消し去られた。ちなみに縮尺が1:800 000と記されているが、ファイル上は約1:1 200 000(120万分の1)に縮小されている。
■参考サイト
RFFの資料サイトDocument de référence du réseau ferré national
http://rff-document-de-reference.eu/
トップページ > Principales cartes > Carte du réseau ferré national(全国鉄道ネットワーク地図)

地図への直接リンク(リンク切れご容赦)
http://rff-document-de-reference.eu/images/stories/pdf/2010/fr/fr_docref_anx_4_5.pdf
これとは別に、RFFオリジナル地図もある http://www.rff.fr/biblio_pdf/rf_inv_r_carte.pdf

Blog_france_railmap_hp6 もう1つは個人サイトで、「フランス鉄道網Le réseau ferré français」と題する線路配置図だ。上記の地図を各路線の主要駅間ごとに抽出したような体裁で、駅とキロ程を図示している。また、付属資料として開業日、勾配、トンネル、電化方式、最高速度などのデータを揃えているので、資料集として活用できる。
■参考サイト
フランス鉄道網 http://pagesperso-orange.fr/florent.brisou/Lignes.htm

Blog_france_railmap_hp7 最後は、イル=ド=フランス交通連合Syndicat des transports d'Île-de-France (STIF) のサイトにある鉄道地図だ。下記のリンクをたどると、Cartothèqueの括りにさまざまなタイプの路線図PDFが集められており、パリ都市圏の公共交通を知るうえで見逃せない資料集となっている。

サイトは5ヶ国語に対応しているが、地図が見られるのはフランス語版だけだ。簡単に内容を記すと、Les transports aujourd’hui(今日の交通)として、Le réseau de trains(近郊列車網)、Le réseau RER(RER網=パリ市内を通過する地域急行線)、Plan de métro(メトロ=パリ地下鉄)、 Plan de lignes tramways(トラム)、Le bus : lien vers l’atlas pour la cartographie complète des bus en Île-de-France(イル=ド=フランスのバス全線を示したアトラスへのリンク)、Noctilien(夜間バス)、Plan des lignes de bus Mobilien à Paris(パリへのモビリアンバス=サービス改善のための新政策による路線バス)、Plan des lignes de bus Mobilien en Petite Couronne(プティット・クロンヌ=パリ市に接する県のモビリアンバス)、Plan des lignes de bus Mobilien en Grande Couronne(グランド・クロンヌ=パリ市に接しない県のモビリアンバス)と、STIFに参加する公共交通の路線図がずらりと並んでいる。そのほか、Zones tarifaires(運賃ゾーン)、Parcs Relais(パークアンドライド)など利用者の参考情報や、Les transports demain(明日の交通)の項にまとめられた将来計画図などもある。ビジュアル化によって地域交通への親しみを深めてもらおうという組織の意思が汲み取れる。

■参考サイト
イル=ド=フランス交通連合 http://www.stif-idf.fr/
トップページのInformation et Communication > Système d’Informations Géographique > Cartothèque
地図集ページの直接リンク
http://www.stif.info/information-communication/systeme-informations-geographique/84.html

なお、印刷された鉄道地図については、以下参照
本ブログ「フランスの鉄道地図 I」
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2006/11/_i_12fe.html

| | コメント (0)

2009年1月 8日 (木)

フランスの鉄道地図 III-ウェブ版

ウェブサイトで公開されているフランスの鉄道地図は、なかなか充実したラインナップだ。テーマとしては、列車や路線のネットワークを表現したものと路線の設備を詳述するものの2種類に大別できるだろう。量が多いので、2回に分けて紹介したい。

前者の鉄道地図は以下の4つのサイトで見ることができる。
Blog_france_railmap_hp1 まず、フランス国鉄SNCFのサイトには、フランス全国版とイル=ド=フランスÎle-de-France(首都パリを中心とする地域、首都圏)の詳細版がある。全国版は路線網と主要駅を表示しているが、TGVやユーロスターが走る高速鉄道線以外は、すべて細線で区別なく表した単調な地図だ。イル=ド=フランス版はパリと郊外を結ぶRERとTransilienの路線を描いているが、3.5MBもあるPDFファイルにもかかわらず、解像度が低く、実用に耐えない。
■参考サイト
フランス国鉄SNCF http://www.sncf.com/
初期画面でしばらく待つと、詳しいメニューが表示される。
Vie pratique(実用)> Où aller en train?(列車でどこへ?) >
Carte ferroviaire nationale(全国鉄道地図)またはRéseau ferré d'Île-de-France(イル=ド=フランス鉄道網)を選択する。

フランス路線図への直接リンク(リンク切れご容赦)
http://medias.sncf.com/resources/fr_FR/medias/MD0006_20070801/file_pdf.pdf

Blog_france_railmap_hp2 次は、個人サイトの力作だ。フランスとカナダ(およびブラジル、リオデジャネイロ)の有用な鉄道地図が提供されている。列車が走るルートを列車種別や系統ごとに描き分け、同時に主な駅間の所要時間や運行頻度を表示したものだが、スマートな配色と明解なデザイン、それにデータ更新が頻繁に実施されていることにも感心する。

フランス編は全国を18面に分割する。地図はJPEG画像だが、小さい文字も問題なく読めるし、地図の縁にある矢印で隣接図にジャンプできるのも親切だ。地図表現はというと、列車種別や系統によって配色を変えて、同じ路線をTGV、幹線列車(コライユColaille)、ローカル列車(TER)が併走している様子を表現する。また、高速専用線(Ligne à grande vitesse = LGV)は鎖線で区別する。
所要時間は1h30のように表記し、運行頻度(ただし、地方線における平日の列車本数)は列車種別と同じ色の数字で示す。地勢表現はないものの、NASAが提供する衛星写真を下敷きにしているので、山地と平野が、そして拡大図では森林がうっすらと見えている。
主要都市については拡大図があって、地下鉄やLRTの路線と全駅が示され、さらに欄外に幹線時刻表や、各鉄道事業者サイトへのリンク集もある。フランス語版と英語版があるが、地図画像が別々に用意されるなど、たいへん充実した内容を備えている。
■参考サイト
Cartes ferroviaires (Railway Maps)  http://membres.lycos.fr/cartesferro/
フランス鉄道地図の英語版は以下のリンクから
http://membres.lycos.fr/cartesferro/france/france_en.html

Blog_france_railmap_hp3 3番目は「フランスの鉄道地図 II」で紹介したイティネレール・エ・テリトワール社Itinéraires & Territoiresが運営するサイトitransports.comにある、インタラクティブマップだ。メインページはフランス語だが、英語版も用意されているので、そちらで説明しよう。
初期画面では小さなフランス全国路線図が表示されているが、縮尺を上げていくと、道路や水系(川、池など)が描かれたベースマップ上に鉄道路線と駅が浮かぶようになる。駅をクリックすると駅名と停車する列車種別、市内路線では系統番号などが示される。スケールバーを最大にしてみたところ、パリ市内では駅舎の外観を立体的に描いた図が現れた。青い太線はSNCFなどの鉄道線、ピンクはメトロ(地下鉄)、ライトグリーンはバス路線を表している。

インタラクティブマップを使いこなすために、左の入力欄、あるいは上部のメニュータブをいくつか試してみた。
"Journey planner(旅程作成)"では、出発地と到着地、出発日を入力すると、列車時刻とともに地図上のルートを表示してくれる。駅を調べる場合はStationを選択してから、駅名か都市名を入力する。市内に複数の駅があるときは選択肢が表示される。フランスの場合、地方都市間の往来は、距離的に遠回りでもパリ市内を経由したほうが便利なこともしばしばなので、市内の拠点駅間を連絡するRERにも対応している。地図には列車の走るルートが紫で表示されており、道路地図に見られるルートプランナー機能を、鉄道旅行に応用したものと考えればよい。
"Cities"を入力すると、市内交通路線の案内や市内主要駅周辺の市街図などにアクセスでき、鉄道やバスの系統をクリックすると図上にルートが表示される。"Maps"では、地名や駅名を入力して目的地の拡大図を表示する。このように、紙の地図では不可能な個別問合せを実現してくれる、インターネットならではのサービスだ。
■参考サイト
itransports.com 英語版 http://itransports.fr/en

Blog_france_railmap_hp4 最後も個人サイトで、「公共交通アトラスAtlas des transports publics」と題し、鉄道線はもとよりバス路線を克明に描いた正縮尺地図をPDFで提供している。使用言語はフランス語のみ。
冒頭の説明文を引用すると、「このサイトの目的は、もっと網羅的かつ正確にフランスの公共交通を表示することのできる地図を提供することだ。(中略)この作業はインターネットで収集できた交通事業者や運行機関による旅行情報をベースにしている。参考にした資料は地域ごとのページに記してある。サイトには100面を越える地図があり、国土の1/2が表現されているが、個人による無報酬の企画だ。残念ながら情報の完璧さ、正確さは保証できないので、どうか事業者の公式サイトか素材情報を参照されたい。」

地図は大判のPDFファイルで、1:250 000と縮尺が明示されている。凡例Légende des cartesによれば、鉄道線は赤い梯子状の記号で表され、駅の位置には停車する列車の種別、系統番号が記されている。メトロ、トラム、ケーブルカーなどの都市交通はピンクやオレンジ色だ。バスの表示は細分化され、都市間バス路線は緑色で、かつ実線は毎日運行、破線は週・月1回、細かい破線は臨時を表す。近郊バスは黄色、トロリーバスなどはベージュ色だ。地図には運輸連合の範囲も表示している。
山間部のバス路線まで忠実にトレースした努力には脱帽するが、イル=ド=フランスはあまりに路線が多く複雑なためか、リストから欠けている。ぜひ完成を待ちたい。
■参考サイト
公共交通アトラス http://atlastransportpublic.free.fr/
地図はCartesのリンクまたは、Aller directement aux cartes(直接地図に行く)のプルダウンリストから。

フランスの鉄道地図 IV

| | コメント (2)

2009年1月 1日 (木)

ヨーロッパの鉄道地図-M.G.Ball地図帳

Blog_europeanrailatlas1鉄道利用の旅行者によく知られているトーマス・クックのヨーロッパ鉄道地図の紹介は後回しにして、今回はM. G. Ball氏の編纂するヨーロッパ鉄道地図帳European Railway Atlasを取り上げたい。というのも、ヨーロッパ全域をカバーする鉄道地図の中で鉄道愛好家向けのものとしては唯一であり、久しぶりに復刊されたからだ。氏の労作は1990年代に5分冊で刊行されていたが、長らく廃刊のままだった。
■参考サイト
イギリスとアイルランドの鉄道地図 III
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/iii_4389.html

昨年あたりから国・地域別の分割版が提供され始め、全域の完成が待たれていたが、2008年12月、ついに完全版の出来が発表された。180ページ、地図は122面ある。1ページ1面で割り付けられており、残りのページは索引と後述する資料集だ。先行してPDFファイルがCD収録の形で有償配布され、印刷本は追って刊行されるようだ。公式の紹介ページ(下記)に、各国版1ページずつのサンプル図が掲載されている。筆者はまだ完全版を実見していないが、手元にあるフランス編とハンガリー編を参考にして内容を見てみよう。
■参考サイト
M. G. Ballのヨーロッパ鉄道地図帳 http://www.europeanrailwayatlas.com/

地図の縮尺は国・地域ごとに異なっている。数値を明示していないのでスケールバーから測ると、フランス編は本土1:1 800 000(180万分の1)、ハンガリー編は1:1 200 000(120万分の1)程度だ。残念ながらこの縮尺では全駅表示は不可能で、路線網の表現にとどまる。ただし、フランス編では、パリParis、リールLille、リヨンLyon周辺について拡大図が用意されているので、RERのような近郊路線も省かれてはいない。また、コルシカ島Corseの図はサルデーニャ島Sardegnaを含んでおり、本来はイタリア編に属するものだ。国別とはいえ、隣国の路線も簡略化されつつ描かれているので、国際路線を追跡するのに不自由はない。

凡例はフランス編が英、仏、独語、ハンガリー編にはハンガリー語が加わり、全域版ではEUの公用語数に匹敵するほどの言語が並んでいるのだろう。地図記号も多彩だ。線の形状で区別するものでは、標準軌でICが走る幹線、支線、貨物線(いずれも複線、単線の別あり)、休止線、それに狭軌の複線、単線、休止線などがある。フルカラーを生かした色による区別は、主に電化方式の違いを示していて、結果的に国ごとに支配的な配色が変わるので効果的だ。建設予定線と保存鉄道も色で判別できる。

しかし、労作に水を差すようだが、記号の設定のしかたには少々疑問がある。直線が複線を表し、直線の上にドットを並べて(だんごの串刺しに似た形状)単線を表すというのは、必ずしもわかりやすいとはいえない。そのつど凡例を参照しなくて済むように、たとえば複線は二重線、単線は一重線というような簡明な表現にすべきだろう。ついでに国境の記号も、色は赤ながら同じような直線にドットの串刺しで表現されていて、まぎらわしい。

それはさておき、この地図帳のコンテンツは鉄道地図だけにとどまらない。「ヨーロッパの鉄道への総合案内A Comprehensive Guide to Europe's Railways」を標榜するのも故なるかな、地図帳につきものの地名索引のほかに、保存鉄道の一覧、鉄道と列車予約の取扱サイト、愛好家向けサイトなどが紹介されていて、調べものには重宝する。

全域版が上梓された後も、国・地域別版は並行して提供されるようだ。オーストリア、ベネルクス三国、イギリスとアイルランド、東欧諸国、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、北欧諸国、ポーランド、スロバキアとチェコ、南東欧諸国とトルコ、スペインとポルトガル、スイスの14分冊があり、上記公式サイトで発注すると、オンデマンドプリント、簡易製本で送られてくる。国によってはこれより詳細な鉄道地図が存在する場合もあるが、ヨーロッパ全域を統一された基準で網羅した意義は大きく、調査研究の基礎資料として利用価値は高い。

ヨーロッパの鉄道地図-トーマス・クック社

| | コメント (0)

2008年11月13日 (木)

スイスの鉄道地図 III-ウェブ版

Blog_swiss_railmap_hp1 www.fahrplanfelder.chは、スイス公式時刻表をPDFファイルで提供するサイトだ。鉄道、バス、湖岸の連絡船などテーブル形式の公共交通機関時刻表Fahrplanfeldが、すべて閲覧できるようになっている。スイスの公用語である独、仏、伊、ロマンシュの4ヶ国語に加えて、英語による案内があるので、外国人にとっても使いやすい。ファイルはドイツのように電話帳1冊まるごとではなく、時刻表番号ごとに分けられていて、地名をキーにしてその町を通る交通機関を検索することも可能だ。

このサイトでは鉄道地図も見ることができる。周囲の青地からスイスの国土が白く浮かび上がる美しいデザインの索引地図だ。地図は2種類あって、一つは鉄道、索道、船の、もう一つはバスの、それぞれ時刻表番号を付した路線図になっている。その意味では、公共交通地図といったほうが正確だろう。

■参考サイト
スイス公式時刻表 http://www.fahrplanfelder.ch/
路線図は、英語版左メニューのExplanations > Synoptic map Railways, Cableways and Boats とSynoptic map Buses

「鉄道、索道、船」版では、鉄道が赤の線で表され、幹線は太く、地方線は細く描き分けられている。たとえば、BLSのレッチュベルクLötschberg越えは、2007年に34,577mの基底トンネルが開通して優等列車が大部分そちらに移ったため、カンデルシュテークKandersteg経由の旧線は、細線表示に変わっている。駅は主要駅しか載っていないので、小さな駅を調べたければ、印刷図の「スイス公共交通公式地図 Offizielle Karte des öffentlichen Verkehrs der Schweiz」(スイスの鉄道地図 I 参照)に拠る必要がある。船も湖に時刻表番号が書き込まれているだけで、航路は示されていない。その一方で、テーマ外であるバス路線は、観光利用が多そうなものを黄色で図示しているが、時刻表番号が添えられていないので、結局「バス路線図」のほうを探すことになる。

調べている過程で同じベースマップを使用した地図を、何種類か発見した。Swiss Travel Systemのサイトにあるのがその一例だ。しかし、上記サイトの地図が最もデータ量が多かった。
■参考サイト
Swiss Travel Systemの一覧図
http://www.swisstravelsystem.com/download_sts/uebersichtskarte_en.pdf
こちらは、鉄道、船、バスが同一図面に表示されている。

Blog_swiss_railmap_hp2

ところで、鉄道地図といえるのかわからないが、Googleマップの上を列車に見立てた記号が動くという興味深いサイトがある。
■参考サイト
swisstrains  http://www.swisstrains.ch/

市街図に赤い線で鉄道が描き加えられている。その上にあるスイス国鉄のマークが駅の位置で、マウスを載せると駅名が表示される。IC、Sなどと書かれた赤丸は、列車の位置を表している。いうまでもなく、ICはインターシティIntercity、SはSバーンS-Bahn=近郊列車の意味だ。デフォルトの画面はチューリヒZürich市街だが、ポップアップの"Station finder" に駅名(都市名でも選択可能)を入力すると、国内各地に飛べる。

見ていると、この赤丸がじわじわと動いているのに気づく。マウスを載せれば、列車番号や起終点、現在地、速度が表示され、クリックするとその列車の時刻表が現れる。説明によると、列車の位置は時刻表に基づいたもので、GPSで実際の列車の動きを反映させているわけではない。しかし、スイスの列車はたいてい時刻どおりに動いているから、おおむね正しい位置なのだ、と言い切っている。

バスロケーションとは行かないまでも、オンラインの特性を生かした臨場感あふれるシステムだ、と一瞬感心したが、ちょっと待て。いま手元の時計は朝の11時、現地時間では真夜中のはずなのに、近郊列車が何本も走っているのはどういうことか。よく注意して見ると、表示されている時刻は日本の、正確に言えば、筆者のパソコンのそれだった。パソコンのタイムゾーンをスイスのそれに変更すると、列車の影は消えた。本国(および同じ時間帯の国々)でなら有益なシステムも、遠く離れた極東の国ではそのまま使うわけにはいかない。

なお、他都市にも同じようなシステムがあると紹介されていたので、ご参考までに。
■参考サイト
ヘルシンキ http://transport.wspgroup.fi/hklkartta/
ダブリン http://dartmaps.mackers.com/

また、印刷された鉄道地図については、以下参照
本ブログ「スイスの鉄道地図 I」
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2006/10/_i_9f60_1.html

| | コメント (0)

2008年11月 6日 (木)

ドイツの鉄道地図 III-ウェブ版

Blog_germany_railmap_hp 以前の記事で、出発地と目的地と乗車日を入力すると最適の列車を表示するオンライン時刻表が、旅を想像する愉しみを奪ってしまったと嘆いたことがある。それを聞き取ってくれたとは思えないが、ドイツ鉄道Deutsche Bahnのサイトにある「電子時刻表Elektronisches Kursbuch」では、冊子にすれば電話帳を超える厚さになるテーブル形式の時刻表を、まるごとPDFで提供し始めた。冊子のほうは今年限りで廃刊にするらしい。時刻表は、地域別におのおの数百ページ、30~40MBもあるような重いファイルだが、それと同時に、ドイツ鉄道の旅客全線を表した鉄道地図も見ることができる。

■参考サイト
ドイツ鉄道時刻表サイト http://kursbuch.bahn.de/
左メニュー上部の"Interaktive Übersichtskarte"(対話式一覧図) > "Streckenkarte"(路線図)
表示された図をクリックすると拡大する

この鉄道地図(旅客線一覧図Übersichtskarte für den Personenverkehr)は、昔から冊子体の時刻表に添付されているものだ。ドイツの鉄道を知るうえでの基礎資料なのだが、一般の書店では扱っていなかった。ウェブ版は1個のPDFファイルではなく、小さな窓で必要に応じてクリックで上下左右に移動する方式だ。操作の手間はあるが、常に最新版が見られるのはありがたい。

地図上で鉄道線は数種の記号に分類されていて、最も太い実線は長距離列車の走る線区、いわば幹線を示す。それより少し細い線は近距離線区(地方線)、最も細い実線は保存鉄道、二重の破線は工事中の高速鉄道だ。いずれの場合も、短いヒゲが立っているのは電化区間という意味になる。そのほか、バス代行、鉄道フェリー、航路、登山鉄道の記号も用意されている。一方、駅の表示は必ずしも全駅を網羅してはいない。特に大都市近郊のように路線が稠密な地域は、1:1 200 000(120万分の1)という縮尺ではとうてい描ききれるものではないからだ。ちなみに、ドイツ統一以前の鉄道地図には全駅が表示されていたが、縮尺は1:425 000と現在よりかなり大きく、さらに主要都市は拡大図があった。

冊子が決してまねのできないのは、地図上の時刻表番号に埋め込んである線区ごとの時刻表へのリンクだ。地図と時刻表をワンストップで接続するこの機能は、単純なことながら非常に便利で、地図をPDF形式にしない最大の理由はここにあるのだろう。

さて、メニューの"Streckenkarte"の下には、"Verbundkarte"(フェアブントカルテ、直訳すると連合地図)というのがある。開いてみると同じような鉄道地図だが、ベースが多色に塗り分けられている。これは地域交通事業者の連合体、「運輸連合Verkehrsverbund」のエリアを表現した地図だ。ヨーロッパを旅すると、一定の区域内で鉄道、トラム、バスなど事業者を問わず使える共通切符が普及している。これを実現しているのが運輸連合で、案内所や時刻表も統一するなど、公共交通機関の利用促進に貢献してきた。組織化が広範囲に及んでいることがこの地図でよく分かる。

なぜかラトビアの旅行社のサイトに、「連合地図」のPDF版が上がっている。インタラクティブマップではまどろっこしいという方は、こちらをダウンロードされるといい。

■参考サイト
Latviatours  http://www.latviatours.lv/
トップメニューのVilcieni (Trains) > Ceļošana pa Vāciju (Travel in Germany) > Dzelzceļu tīkls Vācijā (Railway network in Germany)
ファイルのURLは以下のとおり(リンク切れご容赦)。
http://www.latviatours.lv/upload/Vilcieni/Dzelzcelu_tikls_Vacija.pdf

ドイツ鉄道のサイトに戻ると、地域別の詳しい鉄道地図が左メニューのBand A以下に多数用意されている。それぞれのサブメニューに"Übersichtskarten"(一覧図)あるいは、"Netzpläne"(路線図)とあるのがそれで、Band Aには長距離列車網を表した図があるし、Band Bにはベルリンを含む東北部各州にある運輸連合の路線図が並んでいる。市内交通網まで一つのサイトですべて閲覧できるというのは、会社別のサイトを一つずつ探さなくてはならない日本に比べて、ずいぶん先を行っていると言わざるを得ない。

■参考サイト
印刷された鉄道地図については、以下参照
本ブログ「ドイツの鉄道地図 I」
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2006/10/post_3435.html

| | コメント (0)

2008年10月30日 (木)

オーストリアの鉄道地図 II-ウェブ版

Blog_austria_railmap_hp ウェブサイトで見られる鉄道地図にも言及しておこう。オーストリア連邦鉄道Österreichische Bundesbahnen = ÖBB、すなわち国鉄のサイトに、全国の路線網を描いた地図がPDFファイルで上がっている。

■参考サイト
オーストリア連邦鉄道(旅客部門) http://www.oebb.at/pv/
左メニュー上部の"Fahrplanauskunft"(運行ダイヤ情報)> "Kursbuch aktuell"(現行時刻表)> 線区別リストの最上段に、"Übersichtskarte Bahnnetz Österreich"(オーストリア鉄道一覧図)がある。

ファイルのURLは以下のとおり。定期的に更新される性格のものなので、リンク切れの節はご容赦。
http://www.oebb.at/pv/de/Servicebox/Fahrplanabfrage/Kursbuch_aktuell/Fahrplanbilder_2009/Bahnnetz_200922531930.pdf

ご覧になれば分かるとおり、これは公式時刻表Fahrpläneの索引図だ。私鉄を含めて旅客営業している全線区と主要駅名、それに時刻表番号が添えられている。時刻表に路線図はつきものだが、オーストリアの場合、表示区分が線区の特性にまで踏み込んでいて、鉄道ファンにとっても興味深い。

線の種類による分類では、太い実線が特急が走る線区、細い実線はローカル列車のみの線区を表している。線幅の差が強調されているので、骨格となる幹線網が一目瞭然だ。実線以外は特殊路線で、破線は狭軌、点線はラック式、一点鎖線は季節営業の観光路線などを指し、鉄道好きの旅心を刺激してやまない。色による分類では、赤で国鉄、緑で私鉄を示している。

これらの記号の組合せで、国鉄にもナローゲージの地方線が残っていることが読み取れる。マリアツェル鉄道Mariazellbahn(時刻表番号115)、イプスタール鉄道Ybbstalbahn(同132)がそうだ。ピンツガウ鉄道Pinzgaubahn(同230)も2008年版では赤に塗られているが、同年7月から第三セクターであるザルツブルク株式会社Salzburg AGの運営に移行して、ピンツガウ地方鉄道Pinzgauer Lokalbahnと名乗っている。

Blog_oebb_netzkarte こうして現在もじわじわと地方線整理が進行しているようだが、筆者の手元にある1983年版の鉄道地図と見比べると、特にウィーンの北方、ワインフィアテルWeinviertel地方での撤退状況はすさまじい(図の上は1983年版公式時刻表より。下は2008年版PDFより)。チェコ方面へ向かう北部鉄道Nordbahnの西側の丘陵地を覆っていた支線網は、もはや見る影もない。1988年に実施された合理化で、旅客列車が一斉に廃止され、貨物輸送を続ける線区も限定的になっているのだ。

ほかの鉄道地図としては、ヨーロッパ全域の鉄道地図を提供するTrainspotting Bükkesのオーストリア編がある。路線は電化方式、旅客・貨物線、狭軌などを区別し、主要駅も表示されているが、GIF形式の画像なので拡大縮小は効かない。

■参考サイト
Trainspotting Bükkes http://www.bueker.net/trainspotting/maps_austria.php
ウィーン近郊拡大図は下記。
http://www.bueker.net/trainspotting/maps_vienna-area.php

| | コメント (0)

2008年10月23日 (木)

オーストリアの鉄道地図 I

Blog_austria_railmap1 鉄道地図のテーマでは各国とも1枚ものの地図から先に紹介してきたが、オーストリアに関しては現在流通しているものはなさそうだ。しかし、かつては「オーストリア鉄道・航路地図Eisenbahn- und Schiffahrtskarte der Republik Österreich」という連邦鉄道(国鉄)ÖBB発行の大判地図があった(右上写真が全体。右下はその一部を拡大)。

Blog_austria_railmap1_detail 筆者の手元にあるのは1958年版とかなり古いが、縮尺1:600 000で、行政界と水系、山名を表示したベースマップの上に、国鉄の全線全駅を表示したものだ。国鉄線は標準軌・狭軌、単線・複線、電化・非電化を線の形状で区別し、さらにウィーンWien、リンツLinz、インスブルックInnsbruck、フィラッハVillachの管理局別に色分けしている。私鉄やロープウェー、それに路面電車のルート(停留所は省略)ももれなく記載している。ユニークな点は、駅を示す丸印が、線路のどちら側に駅舎があるかを表現していることだ。余白には主要都市の拡大図も入って、特色9色刷りの詳細かつ贅沢な鉄道地図だった。堀淳一氏の著書に、機能に徹し、「ドイツやフランスのそれとも一味違った美しさを持って」(『地図と風土』p.248、下注参照)いると言及されているとおりだ。

Blog_austria_railatlas現在、入手できるものとしては、冊子(地図帳)形式の鉄道地図がある。シュヴェーアス・ウント・ヴァル社Schweers+Wallの「オーストリア鉄道地図帳Eisenbahnatlas Österreich / Railatlas Austria」、24cm×28cmの判形、128ページの上製本だ(写真左は表紙、右は裏表紙)。手元にあるのは2005年版だが、まだ次の改訂版は出ていない。同社は、ドイツとスイスについても同じ仕様で刊行しているので、都合、鉄道地図帳のドイツ語圏三部作というべきものだ。

96ページに及ぶ鉄道地図の縮尺は1:150 000で、同じ縮尺のスイス編とぴったりつながる。ちなみにドイツは1:300 000だ。国土面積の違いもさることながら、狭軌の小鉄道が今なお活躍している両国なので、描写に余裕を持たせた縮尺にしてあるのだろう。主要都市とその近郊は、この後に1:50 000の拡大図がある。ウィーンWien、バーデンBaden、グムンデンGmunden、グラーツGraz、インスブルックInnsbruck、リンツLinz、ザルツブルクSalzburg、フィラッハVillachが用意されている。市内を走るトラムのルートまで書き込まれているが、中間の停留所は別ページの系統別路線図を見ることになる。そのほか、世界遺産のゼメリング鉄道Semmeringbahnも、1:150 000では連続するトンネルや橋梁のデータが入りきらないのだろう。1:75 000の挿図を使っての特別扱いだ。

巻頭言で、この地図帳のテーマは現役の鉄道網を描くことだと言っているが、廃止・休止線や計画線もできるだけ収録している。オーストリア最初の鉄道は、1827年にブドヴァイスBudweis(チェコのチェスケー・ブジェヨヴィツェČeské Budějovice)~リンツLinz~グムンデンGmunden間に開通した軌間1106mmの馬車鉄道だ。ザルツカンマーグートSalzkammergutで産出する岩塩を運ぶために敷かれたそうだが、特にリンツ以北の国境越えについては、一定の間隔で置かれた交換所とその距離程、標高に至るまで、現役の鉄道と同等の詳細データを地図から読み取ることができる。

計画線では、ウィーン西駅~リンツ間の西部鉄道新線Neue Westbahnが目を引く。すでに供用中の区間もあるが、ウィーンからザンクト・ペルテンSt. Pöltenまでは、長さ11.6kmのウィーンの森トンネルWienerwaldtunnelをはじめとする大小のトンネルによってドナウの平野に迂回する別線を建設中だ。オメガ線を介在させた現ルートからは最大10km以上も離れている。
もう一つ、大規模なプロジェクトは、同国南部の主要都市であるグラーツとクラーゲンフルトKlagenfurtをつなぐコーアアルム鉄道Koralmbahnだろう。この間には高速道路が整備されているが、鉄道ではかなり遠回りを強いられる。これを長さ32.8kmのコーアアルムトンネルとドラウ川Drau沿いの新線と既存線の改良で直結しようというものだ。2014~18年の完成をめざしている。

はじめにスイスやドイツ編と同一仕様と書いたが、中にはユニークなものもある。複線のときに列車が通る方向が矢印で示されているのだ。その理由は、幹線の場合、ドイツやハンガリーは右側通行、スイスやイタリアは左側通行だが、オーストリア国内では混在しているからだ。ウィーン起点で見れば、ドイツへ直通する西部鉄道Westbahnは右側通行で、ゼメリング峠越えを擁する南部鉄道Südbahnは左側通行だ。ゼメリングの向こう側、ブルック・アン・デア・ムーアBruck an der Murでケルンテン州Kärnten方面への幹線が分岐するが、こちらは西部鉄道に合わせて右側通行に変わる。

もちろん、複線といってもいわゆる双単線方式なので、双方向に運転が可能なのだが、こういう特殊事情も鉄道地図にはちゃんと表現されている。旅行に携帯するには不向きだろうが、オーストリアの鉄道を研究しようとするなら、座右の書であるのは間違いない。

■参考サイト
シュヴェーアス・ウント・ヴァル社 http://www.schweers-wall.de/

ブドヴァイス~リンツ~グムンデン馬車鉄道(ドイツ語版Wikipedia)
http://de.wikipedia.org/wiki/Pferdeeisenbahn_Budweis–Linz–Gmunden
道路や列車の通行方向については次のHPの説明が詳しい。
Which side of the road do they drive on? http://www.brianlucas.ca/roadside/

注:堀淳一氏が言及しているのは、鉄道地図に触れた次の著書。
 『地図と風土』(そしえて, 1978. p246-248)
 『一本道とネットワーク』(作品社, 1997. p306-311および巻頭カラー図版V.6.11)

オーストリアの鉄道地図 II

| | コメント (0)

2008年7月17日 (木)

バルト三国の鉄道地図

バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の鉄道は、ソ連時代、カリーニングラード州とともにバルチック鉄道Балтийская железная дорога / Baltic Railwayの管轄下にあったが、1991年の再独立によって、各国に移管された。三国を合わせた面積は175,000平方キロで、そこに約700万人が住む。1平方キロ当たりの人口密度は40.4人と、北海道(66.8人。面積には北方四島を含む)の6割ほどにしかならず、旅客鉄道が生き残る環境としてはかなり厳しいと想像される。ガイドブックなどには、各都市間の移動はバスが中心で、鉄道は本数が少なく使いにくいと書かれていることが多い。

Blog_balticstates_railmap いったいどの路線が、どれぐらいの頻度で運行されているのだろうか。各鉄道会社の2008年夏ダイヤを参考に、地図上に落とし込んでみたのが、右の図だ。すべての系統を網羅できたか心許ないが、およその傾向は読み取れるだろう。どの国の路線網も太字で記した首都を中心にしており、タリンTallinnとリーガRīgaの近郊では比較的頻度の高いダイヤ(通勤電車)が組まれていることがわかる。しかし、距離が100kmを越える区間になると、1日数本の中・長距離列車が運行されているだけだ。早朝に地方を出て首都へ、夜に首都から地方へ戻るというような設定では、首都を足場にする旅行者のニーズに合わない。

図では国際列車を省略しているが、三国の首都間を行き交う「首都特急」などは夢の話で、列車の目的地はロシア方面に限られているのが実態だ。モスクワとサンクトペテルブルク行きはどの首都からも出ているし、ロシア本土とカリーニングラード州を連絡する列車はリトアニア国内に停車していく。首都間は無理でも、せめて三国間の国境を越える列車がないかと探したが、見つかったのは、ヴィリニュスからラトビア東部の都市に停車してサンクトペテルブルクへ行く1往復と、リーガからエストニア国境にある双子町ヴァルカValkaへ足を伸ばす3往復だけだった。ヴァルカから先、タルトゥ、タリン方面へ行く定期列車は設定されていないので、今のところ鉄路でラトビアからエストニアへ回遊することは不可能のようだ。

このように、バルト三国相互間の旅客往来に鉄道が関与する割合は極めて小さい。それが影響しているのか、鉄道地図も、三国の全体像が見えるものは刊行されておらず、トーマス・クックのヨーロッパ鉄道地図The Thomas Cook Rail Map of Europeのレベルか、そうでなければ、鉄道会社が作成したものを個別に当たるほかないようだ。

エストニア
国有のエストニア鉄道Eesti Raudtee / Estonian Railwaysの輸送部門は貨物に特化されており、旅客輸送には別途数社が関わっている。南西鉄道Edelaraudtee / South-West Railwayは、タリンTallinn~パルヌPärnuおよびヴィリヤンディViljandi間を経営(施設保有、旅客・貨物輸送)しているほか、エストニア鉄道の管理下にある東のナルヴァNarva、東南のタルトゥTartuへも旅客列車を走らせている。また、首都タリン近郊では、電気鉄道Elektriraudtee / Electric Railwayによる通勤電車があり、首都とサンクトペテルブルク、モスクワを結ぶ各1往復の夜行列車は、ゴーレール社GoRailが運行している。

エストニア鉄道の公式サイトには、古い鉄道地図があたかも現行のものであるかのように掲載されていて、誤解を招きそうだ。南西鉄道と電気鉄道のサイトにも、自社運行区間の簡単な路線図がある。なお、イギリスのクエールマップ社Quail Mapのシリーズに、エストニア鉄道地図(1枚ものの印刷図、1997年版)がある。

■参考サイト
エストニア鉄道 http://www.evr.ee/
 トップページ > EVR Kaartで、旧路線図が見られる。かつての路線網を知るのには役立つが、現況との乖離が大きい。
南西鉄道 http://www.edel.ee/
 概略ルート図: トップページ > Kaart  非運行区間を含んでいる。
 路線別時刻表:トップページ > Sõiduplaanid ja -hinnad > Põhisõiduplaanid(基本時刻表)
電気鉄道 http://www.elektriraudtee.ee/
 路線図: トップページ > REISIJALE(旅客)> Piletihinnad(運賃)のページ末尾にある。
 時刻表:トップページ > REISIJALE(旅客)> Sõiduplaan(時刻表)
  時刻表検索とは別に、エクセル形式の全駅時刻表Sõiduplaanがダウンロードできる。
  ダイレクトリンク http://www.elektriraudtee.ee/file.php?2694
クエールマップ社 http://www.quailmapcompany.free-online.co.uk/

ラトビア
国有のラトビア鉄道 Latvijas dzelzceļš = LDz / Latvian Railwaysの子会社、旅客列車会社Pasažieru Vilciens / Passenger Trainが運行する。リーガから4方向に40~80km圏内までは近郊路線として、通勤電車が走るが、以遠はディーゼル機関車が牽引する中長距離列車で、一部を除いて本数が少ない。特に西の沿岸都市が不便で、リェパーヤLiepājaへは辛うじて1本が残るが、ヴェンツピルスVentspilsへは全く走っていない。

バルト三国の鉄道の軌間はロシアと共通の1520mm(エストニアは1524mm)だが、かつては狭軌鉄道網も発達していた。東部のグルベネGulbeneには、定期運行する最後の750mm狭軌鉄道がある。

■参考サイト
ラトビア鉄道 http://www.ldz.lv/
 英語版でも路線図、時刻表が見られる。
 路線図: トップページ> Passenger traffic > Route Scheme  
 本来は区分ごとの拡大図が表示されるところ、現在は全体図(425KB)が現れる。
 時刻表は検索方式のみ。
旅客列車  http://www.pv.lv/
 このサイトでも同じ路線図が見られるが、上記に比べて解像度が低い。
本ブログ ラトビア最後の狭軌鉄道
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2008/07/post_45c7.html

リトアニア
国有のリトアニア鉄道Lietuvos geležinkeliai = LG / Lithuanian Railwaysが国内の旅客列車を運行しているが、他の二国に比べると上下分離や子会社化が進んでいない。近郊電車区間も存在しないが、これは人口分布が首都への一極集中型でないことが一因としてあげられよう。旅客列車の本数では、ヴィリニュスと第二の都市カウナスKaunasの間の17往復が最も多く、次がヴィリニュス近郊の観光地トラカイTrakai行きの10往復、他は毎日1桁台の列車しか走っていない。貨物輸送は盛んだが、旅客輸送全体に占める鉄道の割合は、ラトビア5.1%、エストニア1.7%に対してリトアニアは1.0%しかなく、EU諸国で最低だ(EU energy and transport in figures - Statistical pocketbook 2007/2008 p.121による2006年のデータ)。

リトアニアにも狭軌鉄道が存在したが、現在は保存鉄道として、アウクシュタイティヤ狭軌鉄道Aukštaitijos Siaurasis Geležinkelis = ASG / Aukštaitija Narrow Gauge Railway、68.4kmが残るのみとなっている。

■参考サイト
リトアニア鉄道  http://www.litrail.lt/ 英語版あり
 路線図:Passenger transportation > Train stations > Train stations map
 時刻表は検索方式のみ。
アウクシュタイティヤ狭軌鉄道 http://www.siaurukas.eu/

| | コメント (0)

2008年5月 1日 (木)

ロシアの鉄道地図 II-ウェブ版

今回はウェブ上で公開されているロシアの鉄道地図を見よう。

Blog_russia_railmap_hp1 一つ目は、ロシア鉄道Российские железные дороги / Russian Railwaysの公式サイトに掲載されているものだ。サイトはロシア語版と英語版が設けられているが、鉄道地図はキリル文字を用いたロシア語版しかなく、ロシア鉄道を構成する17の地域支社ごとに1面ずつ作成されている。英語版サイトでは以下のURLがメインページになる。
■参考サイト
Structure (of Russian Railways)
http://eng.rzd.ru/wps/portal/rzdeng?STRUCTURE_ID=174

まず、鉄道網を表現したクリッカブルマップからして、地域支社の名称と相互の位置関係が一目でわかる優れものだ。この地図または下欄のリンクから各地域支社の詳細ページに飛ぶと、地域支社の簡潔なプロフィールとともに鉄道地図が見つかる。

Blog_russia_railmap_hp2 ちなみに、同サイトのロシア語版では、写真集Фотогалерея / Photo Galleryの中に、鉄道地図だけを集めたページもある。また、この写真集には車両、列車、子供鉄道、施設、鉄道風景など豊富な画像が収められ、ロシア鉄道の素顔を知るのに格好の材料を提供している。
■参考サイト
鉄道地図一覧(ロシア語版)Схемы железных дорог
http://press.rzd.ru/wps/portal/press?STRUCTURE_ID=820
写真集メインページ(ロシア語版)
http://press.rzd.ru/wps/portal/press?STRUCTURE_ID=119

さて、その鉄道地図だが、行政区分別に塗り分けたベースマップの上に、路線が目立つ赤のラインで引かれ、駅を球状の記号で並べるというものだ。駅名には起点からのkm単位の距離が併記されている。前回紹介した鉄道地図帳と比較すると、同じ地図作成機関ロスカルトグラフィアのコピーライトが表示されているにもかかわらず、表現にはかなりの相違がある。

ウェブ版は、今も述べたように起点からの距離が書かれているが、地図帳は、道路地図によくあるように主要駅間の距離表示になっている。それにウェブ版では小駅(機能していない駅?)が省略されているようだ。路線の描き方で見ると、ウェブ版は地図帳に比べてかなり単純化されていて、時刻表の鉄道路線図という印象だ。ルートは直線的だし、幹線と支線の区別もない。その点、地図帳は極力実際の経路に近づけた表現になっていて、幹線かどうかも線の太さでわかる。ウェブ版はJPEG画像で、細かい文字が一部読み取りにくいが、印刷物ではその心配はない。このように概して地図帳のほうに一日の長があるのだが、ウェブ版に記載されている亘り線や短絡線が、地図帳では無視されていたりするので、やはり複数の情報源で補うべきだろう。

Blog_russia_railmap_hp3 二つ目の鉄道地図は、距離や方角をデフォルメしたいわゆるスキマティックマップ(位相図)で、旧ソビエト連邦全域をカバーする個人の労作だ。うれしいことに英語版も用意されている。全体では相当大きなサイズになるため、横7×縦8=56枚に分割した画像で詳細を見るようにしてある。
■参考サイト
Russian, CIS and Baltic Railway Map(英語版)
http://parovoz.com/maps/supermap/index-e.html

左上隅に凡例があるが、それによると、まず彩色による区分で、予定線・工事線、廃止線・休止線、旅客輸送をしない単線とする単線、産業用の単線、旅客輸送をする複線としない複線、単線複線が入り混じる線区の別を示す。そして、線の種類による区分で、鉄道フェリー、電化線、狭軌線、3線軌道、ヨーロッパ標準軌道を表す。この組み合わせで路線の性格を詳しく読み取ることができる。例えば、モスクワとサンクトペテルブルクを結ぶ幹線は緑の二重線で描かれているので、全線が旅客輸送をする複線で、かつ1.5~3KV(実際は交流3KV)で電化されていることがわかる。

図上のルートは直交および斜め45度に単純化され、およその方向を示すに過ぎない。中間駅も大胆に省略されているが、その代わり、公式版鉄道地図には見当たらない貨物専用の枝線などがずいぶん発見できる。そのほか、地下鉄のある都市名は太字、路面電車のある都市は斜体で表されていて、都市交通を調べる手がかりになる。

このように、ロシアの鉄道ネットワークの全貌を一望することができる画期的な資料地図なのだが、広大な地域だけに、調べる側としては位置を特定する材料がほしい。だが、路線網以外に書かれているのは、単純化された海岸線と地域支社の境界線のみだ。地域支社の略称が付されているが、ロシア語をラテン文字に転写したもので、例えば、北部鉄道は英訳のNorthern Railwaysではなくロシア語で「北の」を表すセヴェルナヤСевернаяの頭3文字の転写SEVが使われている。ロシア以外の諸国も同様で、ウクライナに至っては地域鉄道別になっている。筆者は最初、どのあたりの路線網なのか皆目見当がつかなかった。

2種のウェブ版鉄道地図を一言で評すると、前者は旅行者用、後者は調査用だ。用途に応じてお使いになるといい。

| | コメント (0)

2008年4月24日 (木)

ロシアの鉄道地図 I

Blog_russia_railatlas 中・東欧の地図を扱うオンラインショップを物色していたときに見つけたのが、この地図帳。地図178ページ、索引72ページ、その他含めて256ページのハードカバー本だ。多少古ぼけた印象の表紙の上部に書かれているのは、すばり「鉄道地図Атлас железные дороги / Railway Atlas」で、その下に「ロシア、CIS諸国、バルト諸国」とあり、この1冊で旧ソビエト連邦全域の鉄道路線を概観することができる。製作したのは「2002年、オムスク地図製作所Омская картграфическая фабрика / Omsk Cartographic Factory」で、ロシアの地図作成機関ロスカルトグラフィアРоскартография / Roskartographia関連の政府出資会社だ。

ページ構成は以下の通り。

・1:25 000 000行政区分図(CIS、バルト諸国含む)、地勢図
 いずれも見開き2ページに全域を収めた小縮尺図だが、ロシア地理の入門に役立つ。
・索引図、主要鉄道路線図
 前者は行政区域、後者は路線を地域鉄道支社別に色分けする。同じ色をメイン地図でも使っているので、直感的に関連がわかる。なお、CIS、バルト諸国は別の索引図がある。
・主要都市間距離、標準時間帯
 後者は挿図だが、11もの標準時をもつ大国らしい主題図だ。
・凡例集
 地図帳の表記はすべてロシア語だが、凡例だけは英語版も用意されている。

・行政区分別鉄道地図
これが本編で、見開き2ページにロシア連邦各行政区の全図と、州都の拡大図を挿図で載せるスタイルで統一している。ロシアの行政区は、州(областьオーブラスチ)、共和国(республикаレスプブリカ)、地方(крайクライ)、連邦直轄市(федеральный город、モスクワ市とサンクトペテルブルク市)ほかがあり、区分図の数も83にのぼる。

巻頭に概要が書かれているので、主だったところを紹介すると、
「この地図帳は鉄道で旅する乗客の参考になるように編集されている。掲載は地域鉄道支社の順で、バルト諸国、CIS諸国は最後にまとめてある。鉄道のない地域は省略されている。幹線道路、連絡航路、主要な町も掲載している。駅や停留所は名称とともにすべて書き込み、都市名が駅名と異なる場合は括弧書きで併記している。主要な駅間距離をルート上に書き添えている。州都拡大図は、鉄道路線のほかに市街地、道路、空港、水系などを示している...」。

最後に、駅名索引と、都市名と駅名が異なるケースの対照表がついている。

ちなみに、ロシアでも鉄道はすでに国の直轄から政府出資の株式会社に移行した。新生ロシア鉄道Российские железные дороги / Russian Railwaysには17の地域支社がある。地図帳では、北西部を受け持つ最も歴史の古い10月鉄道Октябрьская железная дорога / October Railwaysに始まって、バルト海に面した飛び地にあるカリーニングラード鉄道、首都とその周辺のモスクワ鉄道、ヤロスラヴリを拠点とする北部鉄道Северная железная дорога / Northern Railwaysという順で、最後は、極東のサハリン鉄道が締めくくる。

地域支社の管轄区域が、おおむね行政区のかたまりごとに分割されているのも、地図帳から読み取れる。ただし、モスクワ市のページを見ると、モスクワ鉄道のローズ色が支配する中心部へ、バイオレット色の10月鉄道が北西から直線的に入ってきて目立つ。サンクトペテルブルクとを結ぶこの路線は、10月鉄道が一括管理しているらしい。

鉄道地図はすべて縮尺が明示されている。州別図の場合、最も面積の狭い州で1:750 000、広いものでは1:3 000 000(300万分の1)だ。州都の拡大図も1:200 000~1:500 000と、分類的には小縮尺に入る。そこに路線が、多くても数本引かれているだけだから、現実のスケールは想像をはるかに超えている。ロシアの大地は、長らく鉄のカーテンの向こう側にあったせいで、いまだに筆者にはほとんど馴染みがない。しかし、ここに描かれた鉄道路線と自然景などの手がかりと地形図を照合すれば、未知の領域に足を踏み入れる糸口がつかめるに違いない。

筆者は本書を以下のサイトで購入したが、ロシア書専門のナウカ・ジャパンのカタログにも載っている(Book No. R60847)。

■参考サイト
中・東欧の地図販売サイトMittelosteuropa-Landkarten 
http://www.mittelosteuropa-landkarten.com/
ロシア鉄道公式サイト(英語版) http://eng.rzd.ru/

ロシアの鉄道地図 II

| | コメント (0)

2007年11月 8日 (木)

イギリスの鉄道地図 V-ウェブ版

ウェブ上で見ることができるイギリス鉄道地図を紹介する(いずれもアイルランドは範囲外)。

■ナショナルレール路線図 National Rail Network Maps
http://www.nationalrail.co.uk/tocs_maps/maps/network_rail_maps.htm
Blog_britain_railmap_hp1 ナショナルレールNational Railは単一の鉄道会社ではなく、イギリス国鉄の解体後に参入した列車運行会社(ATOCと呼ばれ、現在24社ある)が共通で使用するブランドだ。長年なじまれた2本の矢のマークも国鉄から引き継いでいる。ナショナルレールは独自のウェブサイトを開設して、時刻検索やサービスの案内を行っているが、その中にPDFによる全国鉄道地図が含まれている。

Great Britain:Map of the National Rail network
グレートブリテン島の鉄道網全図。都市近郊は拡大図が別にあるため、主要駅のみだが、それ以外は旅客営業している全駅を表示している。

National Rail Map (schematic)
主要路線を図式化したもの。サイズも小さいので鉄道網の概略が一目でわかる。フェリー、空港とのリンクも表示されている。

National Rail Passenger Operators
列車運行会社ごとに運行路線を表示した地図。現在掲載されているのは、2007年11月からの事業者変更を反映した第7版だが、過去の版(2005年2月以降)も作成者Barry S. Doe氏のサイトにある。
http://www.barrydoe.plus.com/rail.pdf
ちなみに、この親サイトはイギリスの交通に関する網羅的なディレクトリ(リンク集)だ。
http://www.barrydoe.plus.com/

■新アドルストロップ鉄道地図帳New Adlestrop Railway Atlas
http://www.systemed.net/atlas/
Blog_britain_railmap_hp2 地図帳と名乗っているがウェブ上で公開している1枚ものの鉄道地図だ。イギリスの営業線と休止・廃止線の全線全駅(メトロとライトレールは路線のみ)を克明に描いていて、旅客線、保存鉄道線、貨物線を区分する。作者は「著作権のある鉄道地図帳から情報を得ることはしない方針」と書いているので、おそらく当時の時刻表や路線図、地形図などから調べ起こしているのだろう。残念ながら、今のところイングランド北部とスコットランドは未完成で、東岸はヨーク北方、西岸はマンチェスター、リヴァプールの手前で終わっている。

■プロジェクトマッピングProject Mapping
http://www.projectmapping.co.uk/
Blog_britain_railmap_hp3 独自のコンセプトで作成されたイギリス鉄道路線図が各種提供されている。いずれもスキマティックマップ、すなわち距離や方角をデフォルメした図式化地図(位相図)だが、未来的なデザインで古い鉄道のイメージを打ち破るものだ。路線網図Network MapにはA4サイズの簡略版とA2の詳細版が用意されているほか、会社(TOC)別に運行路線を色分けした地図Franchise Map、建設中または予定線を図示した地図などもある。後者では、北ウェールズのカナーヴォンCaernarfonや、湖水地方のケジックKeswickへ行く廃止線の復活構想があることもわかる。

このほか、ヨーロッパ全域の鉄道地図を提供するTrainspotting Bükkesにもイギリス編がある。
http://www.bueker.net/trainspotting/maps_british-isles.php
路線(電化方式、旅客・貨物線の区別あり)と分岐駅が表示されているが、GIF形式の画像なので拡大縮小は効かない。

(ウェブ画像は2008年11月2日現在)

イギリスの鉄道地図 VI-コッブ大佐の鉄道地図帳

| | コメント (0)

2007年11月 1日 (木)

イギリスの鉄道地図 IV-ベーカー鉄道地図帳

Blog_britain_railatlas5 《S.K. Baker(OPC)系統》
イギリスの普通鉄道で最も標高の高い駅として知られるデントDent。雄大な風景が続くヨークシャー・デイルズYorkshire Dalesを縦断するセトル・カーライル線Settle and Carlisle Line の中ほどにある。その写真を表紙に配したのが、スチュアート・ベーカーStuart K. Baker著「イギリス・アイルランド鉄道地図帳Rail Atlas Great Britain & Ireland」(写真)だ。全128ページ(図版104ページ、索引19ページほか)、判型17.8×25.2cmのハードカバーで、今年(2007年)、30周年記念版と銘打った第11版が刊行された。

1977年の初版以降、今に至るまで改訂が重ねられてきたことは、研究者や愛好家の支持の高さを証明している。いかにもイギリスらしい広告記事によれば、クリケットファンには「ウィズデンWisden」、アンティーク収集なら「ライルLyle」、そして鉄道好きには「ベーカー」といえば通じるのだそうだ。

*注:Wisdenはクリケット年鑑、Lyleはアンティーク・ディーラー向けガイドブックの名称。

過去2回にわたって紹介した鉄道地図帳と同じように、これもまた白地図に全線全駅を図示しているが、特徴を挙げるとすれば、拡大図が豊富なことだろう。グレートブリテン島の区分図は縮尺1:350 000で統一されているのだが(スコットランドのハイランド地方のみ1:700 000)、主要都市域はほとんど1:70 000~1:90 000の別図面が用意されている。というのも、側線sidingsや操車場marshalling yardなど貨物設備をもらさず書き込むためだ。引込み線が発電所、石油、セメント、鉱山などと用途別に記号化されているかと思えば、アイルランドでは、泥炭採掘のために敷かれた運搬軌道が、緑のひび割れのように描かれている。

区分図の鉄道記号には電化・非電化の区別がないが、その代わり、巻末に電化地図Electrification Mapとしてまとめてある。このほうが、例えば南東イングランドの特徴的な第3軌条がどこまで及ぶかが概観できておもしろい。この電化方式が遠くウェーマスWeymouthまで延びているとは、筆者もこれを見て初めて知った。

この地図帳は、OPCすなわちオックスフォード出版社Oxford Publishing Companyの看板商品の一つだが、1998年にアイアン・アランがOPCブランドを買い取った結果、同社は鉄道地図帳シリーズをいくつも抱え込むことになった。それぞれ特徴を持っているとはいえ顧客は重なるので、これらが交通整理の対象になるのはやむをえないことだっただろう。定期的に改訂版が出るところを見ると、「ベーカー」がどうやら存続の優先権を勝ち得ているようだ。

Blog_britain_railguide さて、ペーパー版鉄道地図の最後に、時刻表の鉄道地図にも触れておこう。「OAG鉄道案内 OAG Rail Guide」(写真)は、1853年に創刊されたABC鉄道案内 ABC Railway Guideをルーツとするイギリス鉄道時刻表だ。1996年から航空時刻表で知られるOAG(Official Aviation Guideの略号に由来)の名を冠するようになったが、2007年10月号を最後に惜しくも廃刊となった。

時刻表には索引地図がつきものだが、全駅を掲載しているもの(日本、韓国、ベネルクス諸国など)もあれば、途中駅を省略した概略版(スイス、オーストリアなど)もある。OAGの場合は、方位や距離をデフォルメしない正統派のイギリス全国路線図と、直線状にデフォルメされた都市近郊路線図を備えていて、両方で旅客線の全線全駅表示を達成していた。さらに巻末にはヨーロッパ各国の路線図があり、いずれも単色ながら、全体としてみればトーマス・クックの鉄道地図に匹敵する情報量を有していた。最終号には、12月からミドルトン・プレス社Middleton Pressが引き継ぐと案内されていたが、果たしてどのような内容になるのだろうか。

■参考サイト
アイアン・アラン出版社  http://www.ianallanpublishing.com/
ミドルトン・プレス社 http://www.middletonpress.co.uk/

イギリスの鉄道地図 V-ウェブ版

| | コメント (0)

2007年10月25日 (木)

イギリスの鉄道地図 III

引き続き、アイアン・アラン出版社Ian Allan Publishingの刊行する鉄道地図帳を紹介する。

Blog_britain_railatlas3 《M.G. Ball系統》
筆者の本棚の隅に埋もれている地図帳があった。M. G. Ball著「ヨーロッパ鉄道地図帳-英国諸島編European Railway Atlas - British Isles」(写真は第2版、1996年)、かれこれ10年も前に買ったものだ。A4判、72ページ、地図は黒と赤の2色刷り。掲載範囲はイギリスとアイルランドで、全線全駅の詳細なデータが図示されている。

英、伊、独、仏、西の5ヶ国語を併記した凡例によれば、路線の記号は単線・複線の別、貨物線、狭軌線、電化線、計画線を区別する。休止中、電化工事中、休止予定線については略号で注記されている。保存鉄道や観光鉄道は、○にT(Tourist Railway)の記号を付して、鉄道名と軌間を書いている。記号が赤色なら蒸気鉄道だ。駅も普通鉄道が○の記号に対して、観光用はその中に十字を入れている。2色刷りという制約の中で、できるだけ容易に判別できるように工夫されているのだ。さらに興味深いのは、おそらくすべてのトンネルと主な鉄橋の名称と長さ、サミットの高度が、それぞれ記載されている点だ。

初版が1992年と比較的新しいのに地図自体は意外にも手描きだが、けっして読みにくくはない。前書きにOSの1:250 000地形図をベースにしたとあるので、これがフルカラーで水系や地勢が加刷されていたら、さぞすばらしい鉄道旅行地図になっただろうに、と欲張りな筆者は思う。

本書の裏表紙に広告されているとおり、このヨーロッパ鉄道地図帳はシリーズもので、英国諸島編のほかに大陸編4冊(注参照)があった。しかし、残念なことに現在はすべて絶版で、古書店ではけっこうな値段がついている。
(注)M. G. Ball著「ヨーロッパ鉄道地図帳」大陸編
European Railway Atlas: Denmark, Germany, Austria and Switzerland
European Railway Atlas: France, Netherlands, Belgium, Luxembourg
European Railway Atlas: Spain, Portugal, Italy, Greece
European Railway Atlas: Scandinavia and Eastern Europe

【追記 2009.1.1】
「ヨーロッパ鉄道地図帳」は2008年12月に新装版として復活した。国・地域別の分冊版も入手できる。次の記事参照。
本ブログ「ヨーロッパの鉄道地図-M.G.Ball地図帳」
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2009/01/i-0b3a.html

Blog_britain_railatlas4Mike G. Ball氏の著作はしかし、別の形で存続している。写真は「abc英国鉄道地図帳abc British Railways Atlas」という名のポケットブック(判型12×18.5cm、新書版に近い)だ。1995年初版で、現在は2004年第3版が出ている。abcというタイトルは、アガサ・クリスティのミステリーでもおなじみのABC時刻表 ABC Railway Guideを思い起こさせる。区分図の切り方はヨーロッパ鉄道地図帳と全く同じで、路線網や駅名も省略していないが、構築物のデータなどマニアックな内容を排除した簡略版だ。区別しているのは、旅客線、貨物線、計画線と保存鉄道線だけで、蒸気鉄道にはイラスト風のSLマークが添えられている。判型といい、地図といい、いたってシンプルな体裁なので、持ち歩き用を意図しているのだろうか。
これはアイアン・アラン社のオンラインショップその他で購入できる。

■参考サイト
アイアン・アラン出版社  http://www.ianallanpublishing.com/

イギリスの鉄道地図 IV-ベーカー鉄道地図帳

| | コメント (0)

2007年10月18日 (木)

イギリスの鉄道地図 II

アイアン・アラン出版社Ian Allan Publishingは趣味系書籍・雑誌の大手で、鉄道分野でも月刊誌「レールウェイズ・イラストレーティッドRailways Illustrated」や「モダン・レールウェイズModern Railways」でおなじみだ。近年、ミッドランドMidland Publishing やオックスフォードOxford Publishing(OPC)など鉄道書の中小出版社を傘下に収めて、規模を拡大している。

アイアン・アラン社が刊行している鉄道地図帳が、筆者の知る限り3系統ある。どれも白地図に鉄道網だけを表示した辞書的な地図帳だ。それぞれ、
・Sectional Atlas系統
・M.G. Ball系統
・S.K. Baker(OPC) 系統
と勝手に名づけたうえで、順に紹介していこう。

Blog_britain_railatlas1 《Sectional Atlas系統》
「英国鉄道区分地図2002 Sectional Maps of Britain's Railways 2002」(写真)は64ページ(図版45ページ、索引16ページ)、判型17.5×24.2cm、グレートブリテン島全体をカバーした鉄道地図帳だ(アイルランド島は不掲載)。中表紙にアイアン・アラン社創業60周年のロゴが入っているところを見ると、記念出版なのだろう。

巻頭辞は次のように記している。「1980年代後半まで、アイアン・アラン出版が定期刊行していた地図帳に、区分地図帳Sectional Atlas (of British Railways)がある。現存の鉄道路線と休止・廃止線がともに描かれていたので、歴史家や愛好家にとって両者の関係を検証する資料になっていた。区分地図帳は1980年代後半に出版されたのが最後で、それから10年以上が経過した。その間、鉄道業界は、民営化が完了し、鉄道の各部門にフランチャイズ制が導入されるなど、大きく変化してきた。貨物専用線はそれほど急激ではないものの、規模縮小が続き、その一方で、次世代LRTの計画が進捗し、休止線が保存鉄道として復活している。この区分地図帳の最新版は、鉄道網を記録したアイアン・アラン出版の新しいデータベースを使用して準備され、最近、同社で出版された鉄道地図帳と同じフォーマットを使っている。」

地図の凡例を見ると、現役の旅客線、貨物線のほか、工事線・計画線、その他の営業線(列車線に対する近郊電車線を指す)、保存鉄道線、休止・廃止線の区別がある。配色も、現役線のグレーに対して、休・廃止線はクロームイエローが用いられて、よく目立つ。駅名は旅客駅、貨物駅、休・廃止駅(ただし主要駅のみ表示)で色分けし、巻末の駅名索引も3種に分けて編まれている。このように、過去に存在した路線を網羅しているところが、Sectional Atlasの、類書にはない最大の特色だ。索引図がついておらず、ノンブルが数字(1, 2, 3...)ではなく英語(one, two, three...)表記であるなど、いささか使いにくい点もあるが、興味深い資料であることは確かだ。

Blog_britain_railatlas6 実は、この鉄道地図帳にはルーツが存在する。1958年に初版が出された「英国鉄道集約化以前地図帳・地名録British Railways Pre-Grouping Atlas and Gazetteer」(写真)だ。これは、1921年鉄道法によって4大鉄道会社、いわゆるビッグフォーに集約化される前(プレ・グルーピング)の状況を表したものだ。

ここでは、縮尺が8マイル1インチ(図上1インチが実距離8マイルを表す。1:506,880に相当)と明記されている。しかしこの縮尺でも、全線全駅を掲載しようとすると描ききれない。首都ロンドンはもとより、ウェールズ南部、ヨークシャー南部といった炭鉱地域や、マンチェスター、グラスゴーのような産業革命の中心地は、路線網が稠密すぎるからだ。45ページの区分図のうち、最後の7ページはそのための拡大図に充てられている。これによって、1923年の集約化や1948年の国有化に伴って姿を消した駅や支線の現役時代を振り返るのも難しいことではなくなった。路線は所有会社別に色分けしたうえ、会社の略称が添えられていて、会社のフルネームを知りたければ、巻末の地名録の中にある一覧表が役に立つ。

上述した2002年版は図郭、ページ設定を含めてこの仕様を踏襲したものだ。索引図が省かれたり、ノンブルが英語だったりするのも、旧来の地図帳の利用者を前提にしていると考えれば納得がいく。上で引用した巻頭辞のとおり、地図帳のオリジナルはとうに絶版になっているが、1967年第5版を復刻したものが、現在もアイアン・アラン社から入手可能だ。

Blog_britain_railatlas2一方、この地図帳のデータを改めてコンピュータ上に展開した上で、特定の時代に焦点を当てて当時の鉄道地図を再現したものも数点刊行されている。Britain's Railwaysシリーズとして同社から刊行された「Rail Atlas 1890」(写真)、「British Railway Atlas 1955」、そして「Rail Atlas 1970」だ。

手元には1890年版があるが、2002年版と同じ図版に、1890年1月1日現在の営業路線の全線全駅がプロットされている。所有会社ごとの路線の彩色は、プレ・グルーピング版に準じたものだ。復刻版ではいささか見づらくなっていた駅名の細かい文字も、クリアに読める。1890年といえばヴィクトリア朝の後期で、鉄道網はほぼ完成しており、かつ自動車交通が台頭する以前のいわば鉄道黄金時代にあたる。2002年版では路線の位置と終端駅程度しか描かれていない休止線、廃止線も、ここでは全ての駅の場所と駅名、それに運営する会社名が記されていて壮観だ。縦横に張り巡らされた路線網を追うと、貨客を満載した列車がひっきりなしに行き交うさまが目に浮かぶ。

この1890年版は、プレ・グルーピング版で割愛されたアイルランド全島(1890年当時はイギリスに併合されていた)や、王室属領のチャンネル諸島も掲載範囲に含まれていて、イギリス諸島の鉄道の全貌を知る上でたいへん貴重な資料になっている。
(M.G. Ball系統、OPC系統は次回以降に)

■参考サイト
アイアン・アラン出版社  http://www.ianallanpublishing.com/

イギリスの鉄道地図 III

| | コメント (0)

2007年10月11日 (木)

イギリスの鉄道地図 I-トーマス・クック社

トーマス・クックThomas Cookの社史は、旅行業の歴史そのものだ。旅行者の手引きとして考案されたヨーロッパ鉄道時刻表は1873年の創刊以来、未だに刊行され続けている。同社が理想の道連れideal companionとうたう大判折図の「ヨーロッパ鉄道地図Thomas Cook Rail Map of Europe」もすでに16版を数える。いずれも日本のユーレイルパスユーザーには必須アイテムとしてつとに知られているものだ。

Blog_thomascook_uk_railmap 「イギリス・アイルランド鉄道地図Rail Map Britain & Ireland」はヨーロッパ版の姉妹品として、1989年に発刊された。2007年現在、第5版が出ている。1枚もののイギリスの鉄道地図としては、筆者が知る限りこれしかない。縮尺はイングランド、ウェールズが1:750 000、スコットランドとアイルランドは1:1 000 000(100万分の1)。グレートブリテン島の南2/3を表面に、北1/3とアイルランド、それにロンドン地域の拡大図を裏面に配置する。

初版のころは、まだイギリス国鉄British Rail(BR)が健在で、都市交通や地方の小鉄道や貨物鉄道を除くと、全国の鉄道網を一括運営していた。この鉄道地図では、インターシティ(IC)が平均時速90マイル以上で最低1時間ごとに走る区間は「高速High-Speed」、地域間の速達列車が60マイル以上で最低2時間ごとに走る区間は「急行Express」といったように、路線表示を国鉄の列車種別で区分していたが、これも自然なことだった。デザインも配色も決して洗練されてはいなかったが、幹線と支線を見分けるのに不自由はなかった。

しかし、サッチャー政権が推し進めたサービス民営化政策の一環として、1993年に成立した鉄道法Railways Actによって翌年、国鉄は解体された。イギリスの鉄道改革は、事業にフランチャイズ制を導入したのが大きな特徴で、参入した旅客鉄道会社は25社に及んだ。地方の拠点都市とその周辺に路線網を固める会社もあれば、長距離路線を主体とする会社もあり、大都市間を結ぶ幹線には何社もの列車が行き交った。

鉄道地図もその影響で、列車速度や運行頻度で一括りに表しきれなくなったらしい。現行版は列車種別による区分から、運行する旅客鉄道会社で色分けする方式に切り替えている。複数社が運行する路線は、色の線が並行してカラフルな帯に見える。各社のテリトリーが一目瞭然なのはおもしろいが、優等列車が走る区間という形では判別できなくなった。

デザインは初期に比べてかなり改良されている。うるさかった基図のトーンが下がって路線図と駅名が見分けやすくなり、クックの特徴の一つである景勝区間Scenic Routeの表示も点線化したので、路線表示と混同されるおそれがなくなった。難をいえば、1:750 000というスケールでは都市部の表示が難しいのだから、バーミンガムBirmingham、マンチェスターManchester・リヴァプールLiverpool、グラスゴーGlasgowのような路線稠密地域は、ロンドンに準じた拡大図がほしいところだ。

トーマス・クックは合併連衡を繰り返して、今では旅行業でヨーロッパ第二の規模に成長した。その一部門が刊行する鉄道地図も老舗の知名度とあいまって、同種の地図の中では最も入手しやすいものとなっている。日本でも、アマゾンその他、洋書を扱うショップで扱っている。

■参考サイト
トーマス・クック出版社  http://www.thomascookpublishing.com/
本ブログ「ヨーロッパの鉄道地図-トーマス・クック社」
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2009/03/ii-1bbd.html

イギリスの鉄道地図 II

| | コメント (2)

2007年7月19日 (木)

インドの鉄道地図 III-ウェブ版

Blog_india_railmap_hp1 現地から地図帳を取寄せるほどのこともないが、ウェブサイトで気軽にインドの鉄道地図を見たいという向きに、2点紹介しておきたい。1つは、インド鉄道の公式サイトにあるものだ。
■参考サイト
Indian Railways  http://www.indianrailways.gov.in/

トップページのインデクスNetwork Mapに、全国路線図や各管理局が作成した管内路線図が集められている。管理局ごとの個性あふれる路線図を見るのも愉しいが、筆者には全国路線図Indian Railway Mapが興味深かった。ベースマップはインド測量局が製作したという、地勢を段彩と陰影で描いたもの。鉄道路線は、広軌幹線が濃いオレンジで太く、その他の広軌線は薄いオレンジで細く、1m軌間(メーターゲージ)は青紫、それ以下の狭軌線は緑と色分けされている。多色刷りの地図の上に加刷するという難しい条件にもかかわらず、いわゆる弁別性を考慮した配色で、なかなか立派なものだ。不案内な土地の場合、まずは一覧性のある小縮尺図で全体を把握したいと思うのだが、そういう要望を満たしてくれる地図だ。

Blog_india_railwaytimetable

この鉄道地図のペーパー版は、インド鉄道が発行している冊子「主要列車時刻表Trains at a Glance」(写真は2004年9月~05年6月有効版)に添付されている。こちらは細かい字も鮮明に読み取れる。地図に縮尺は明示されていないが、簡易に計測すると約750万分の1、すなわち図上1cmが実距離75kmに相当するようだ。

もう1つは、前回紹介した「インド鉄道大地図帳」の作者、Samit Roychoudhury氏が提供する無料公開版で、インド鉄道ファンクラブIRFCAか、氏自身のサイトで見ることができる。
■参考サイト
IRFCAのサイトにあるインド鉄道地図  http://irfca.org/faq/faq-map.html
S.R.氏のサイトにあるインド鉄道地図  http://samit.org/irmap/
どちらも内容は同じ。

Blog_india_railmap_hp2 全体図をクリックすると地域ごとの拡大図を表示するので、試しにどれかご覧になるといい。全国の鉄道路線を網羅しているのはもちろんのこと、執念のようなデータ収集の成果である各種情報(軌間、単線・複線、電化・非電化の別など)の表示にも手を抜いていない。大地図帳と違うのは、縮尺による制約もあって主要駅のみの表示になっていることだが、それとて急行停車駅は省略されていないから、通常の旅行には支障ないだろう。逆にフルカラーの利点を生かして、路線が鉄道管理局別に色分けされているので、視覚的にわかりやすい。

Blog_india_railmap_hp3 また、大都市周辺の詳細図は別に作られている。IRFCAが都市交通図を含めたインドの鉄道地図のリストを作っているので、そちらを参照されたい。
■参考サイト
IRFCAによるインドの鉄道地図集成  http://irfca.org/docs/maps.html

(ウェブ画像はいずれも2008年11月2日現在)

| | コメント (0)

2007年7月12日 (木)

インドの鉄道地図 II

Blog_india_railwayatlas_sr 今回紹介するのは、Samit Roychoudhury 氏が自ら企画・製作・出版する「インド鉄道大地図帳The Great Indian Railway Atlas」だ。Greatというタイトルにもかかわらず、サイズは18cm×24cm、ページ数は84ページと、前回紹介したIMSの鉄道地図帳とほとんど変わらない(GreatはRailwayに係るのかしら)。しかしそれ以外の点では、実に好対照を成している。IMSが赤表紙なら、こちらは青表紙(それでブルーアトラスとも)。政府監修に対してプライベート出版、文章主体に対して図版に専心。さらに誤解を恐れず言うなら、IMSが古いインド映画を思わせる時代がかった編集スタイルなのに対して、こちらはコンピュータ世代が創り出したスマートなデザインと明快なコンセプトの刊行物なのだ。

鉄道地図としてみた場合、なにより画期的なのは全線全駅が掲載されていることだ。鉄道のない地域を除いてインド全土を61ページに分割した1:1 500 000(150万分の1)の図郭に、鉄道に関する情報を満載する。廃駅を含めて合計1万もあるという駅はもとより、路線は軌間、単線・複線、電化・非電化の別、新線、線増、電化の工事中・計画中、そして休止線に至るまで詳しく記載されている。インドの鉄道は、幹線こそ1676mm(5フィート6インチ)の広軌だが、地方の支線には1000mmをはじめ、762mm、610mmの軌間が残っている。この地図で見る限り、大部分の狭軌線に改軌計画があることがわかる。

車庫はEL、DL、SLの別があり、修繕庫、貨物ヤードも記号化されているし、かつての日本の時刻表添付地図のように、管理局の境界が管理局名の略称とともに書き込まれている。さらにつぶさに見ていくと、主なトンネルや鉄橋が注記されていたり、山岳路線が網掛けで図示されていたりと、地図ファンの興味までそそるのが小憎らしい。この国は官製地形図を国外に公開していないため、詳細地形を知るすべがなく、かえって焦燥感を掻き立てられるからだ。フルカラーは表紙両面だけで、本文がすべて2色刷りなのは惜しいが、この膨大な労力に免じてそれも良しとしよう。

地図帳の裏表紙に書かれた推薦文によると、「Samit Roychoudhury氏は1990年代、アーメダバードの国立デザイン研究所に学び、その後数年間カルカッタのコンピュータ会社に勤務した。彼は少年時代から列車に熱中していたが、この地図帳から彼の長年の研究と詳細な情報収集の成果が読み取れる。これはきっとあなたの役に立つはずだ。なぜなら他の地図帳と違い、鉄道を深く理解し愛する人々のために編まれているのだから...」1冊24.99ドルとかなり値が張るが、その言葉どおり、インド鉄道の情報源として欠かせない図書と言える。

下記サイトに詳しい紹介があり、オンラインショップも開いている。筆者もここで直接購入した。
■参考サイト
The Great Indian Railway Atlas  http://indianrailstuff.com/

インドの鉄道地図 III

| | コメント (0)

2007年7月 5日 (木)

インドの鉄道地図 I

Blog_india_railwayatlas_ims

インドはアジア随一の鉄道王国だ。総延長63,140km、駅数6,856。機関車7,739両、客車39,236両を保有し、1日1,100万人の旅客、110万トンの貨物を運ぶ。そしてインド鉄道は国内最大の従業員を抱える事業所でもある...。

Indian Map Serviceが発行するインド鉄道地図帳India Railway Atlas(写真は2005年版)は、書名から想像する内容よりは鉄道旅行のための資料集といったほうが近い。上のデータはここから引用したものだ。地図帳の奥付にはインド政府Government of Indiaの著作権表示が見られ、鉄道省監修の公式ガイドといった位置付けなのだろう。

全96ページの内容を紹介すると...
・観光図(インド全図の上に主要都市、記念物・巡礼地、自然保護区、ビーチ、避暑地を位置表示)
・ハイウェイおよび航空路図
・鉄道管理区域図(インド全図の上に主要鉄道路線と駅、管理局界を表示)
・豪華列車と軽便列車(概説とルート図)
・現代インド鉄道の驚異(コンカン鉄道Konkan Railway、コルカタ市メトロ、チェンナイ市高架鉄道の概説)
・州別鉄道地図とデータ集
・州別主要列車時刻表(列車名、停車駅、時刻)
・デリー、ムンバイ等主要都市のメトロ・郊外線路線図
・インド鉄道データ(90項目)
・世界の鉄道データ(14項目)
・駅名索引

メインテーマであるはずの州別鉄道地図は、白地図に路線と主要駅をプロットした簡素なものだ。路線網はほぼ完全に示されているが、幹線・支線とか軌間とかいった区別は一切されていない。むしろ関心は、州の特徴を描き分けることにあるかのようだ。

例えば、北部のウッタル・プラデーシュ州Uttar Pradeshの概説を引用すると、「インドで最も人口の多い州で、面積では4番目にランクされる。州はたいへん多彩で興味深い文化と歴史を有する。偉大な賢人、神聖な書物と叙事詩、そして大河をもつ土地で、そこには永久の歴史と無限の伝説がある。中世、州はムスリムの支配下に入り、ヒンドゥー、イスラム両文化の融合を導いた。イギリスの統治下でも文化的な主導権を保ち、立派にインドの独立戦争を主導した。州は北部山岳地域、南部丘陵地域、ガンジス平野の3つに分けられる。それはまた、高原避暑地、巡礼地、自然保護区、国立公園、史跡その他を含む100以上の旅行先を擁していて、休暇を求める人たちには天国だ。」

概説のかたわらには、州の面積、人口などのプロフィールや交通手段、主な観光地の特徴や最寄り駅からの距離表が添えられて、筆者のようにインドの地理に不案内な者でも、読めばそれなりに地域的特色が理解できた。

一方、列車時刻表Railway Time Tableは、日本で主流の駅×列車のマトリクスではなくて、列車ごとに停車駅・時刻を順に記述している。そして「一目でわかるAt a glance」とヘッダーにあるとおり、旅行者向けに優等列車を抜粋したものだ。ラージダーニー・エクスプレス(首都急行)Rajdhani Express、シャターブディー・エクスプレス(新世紀急行)Shatabdi Expressのような特急列車群に始まって、一般的な急行列車Expressまで、48ページにわたってぎっしり書き込まれている。これでも全国で1日11,000往復という列車本数から見れば、ほんの一部なのだろう。

巻末の世界の鉄道データの中に面白い記述を見つけた。「最も忙しい鉄道:世界で最も混雑する鉄道システムは日本の国鉄Japanese National Railwaysである。」別に異論はないのだが、インドのように客車のデッキにぶら下がれない列車というのは、かえって窮屈なものかもしれない、とふと思った。

■参考サイト
インド鉄道 http://www.indianrail.gov.in/

インドの鉄道地図 II

| | コメント (0)

2006年11月24日 (金)

フランスの鉄道地図 II

Blog_france_railatlas 各国鉄道地図の2回目は地図帳を紹介してきたので、フランス編もそれに倣おうと思う。イティネレール・エ・テリトワール社Itinéraires & Territoiresが、A5サイズの「交通地図帳-旅行用交通ガイドAtlas des Transports - Guide des transports de voyageurs」を刊行している。詳細な情報源であることは間違いないのだが、前2か国のような「上級鉄道ファン向け」ではない。

全192ページの内容を目次に沿って紹介すると...
A. 鉄道ネットワークの概念図
B. フランス国鉄営業ガイド
C. 国内交通ネットワークの詳細図
D. TER(域内急行列車)のガイド
E. 都市交通路線図
F. 駅周辺図
G. 主要都市(隣国を含む)の交通機関データ
H. 空港、島嶼、名所、海水浴場、スキー場への交通機関データ

Cの「国内交通ネットワークの詳細図」はメインの鉄道路線図で、全国を見開き16面に分割している。前回紹介したIGNの「列車でフランスLa France en train」と同じベースマップを使い、鉄道ルートや駅の表示もほぼ同じだ。国鉄以外では、規模の大きいプロヴァンス鉄道Chemins de fer de la Provence(ニース~ディーニュ間)と、地中海に浮かぶコルシカ(コルス)島のコルス鉄道Chemins de fer de la Corseだけが描かれている。もとより1:1 000 000(100万分の1)程度の縮尺では小さな観光鉄道は描ききれないだろう。IGNの地図にない特徴は、主要路線バスのルートが、国鉄との連絡切符のあるなしで区分表示されていること。その代わり、IGNにちりばめられていた観光地の表示は最小限にとどめられ、雰囲気の盛り上げより実用性を重視した編集になっている。

Eの都市交通路線図は、イル=ド=フランスに始まり、主な都市の路線図と停留所名を掲載している。ストラスブールStrasbourgやボルドーBordeauxなど、それぞれご自慢のLRV(新型路面電車)や新交通システムの写真が添えられているのも楽しい。初めて訪れる町では、駅に到着しても、まずトラムやバスの乗り場を探して右往左往することが多いが、Fの駅周辺図で運行系統別の乗り場との位置を確かめておけば、スムーズにたどり着けるだろう。時刻や所要時間などより詳しい情報を事前に知りたければ、Gの交通機関HPや電話番号が手がかりになる。

Blog_france_railatlas2このように、IGNの地図が鉄道網、特に高速列車のネットワークをテーマにした広報的色彩の強いものであるのに対して、こちらはそれ以外の交通機関にも目配りする。表紙のコピーを借りれば、「国内をクルマなしで(en France sans voiture)」旅する人のためのガイドブックなのだ。

地図帳とは別に、折図形式の「フランスの交通-フランス旅行用交通地図France Transports - Carte de France des transports de voyageurs」もある。上で箇条書きした内容のうち、CとE、すなわち路線図だけを1枚の大判用紙に配置したものだ。フランスの鉄道網は首都パリを中心にして四方へ広がっているので、国土の隅々まで一覧できるという点では、地図帳より使い勝手がいいかもしれない。

【追記 2009.1.21】
Blog_france_railatlas3 2007年に、同社から待望の「列車でフランス-全線全駅Le Train en France - Toutes les lignes, toutes les gares」が刊行された。IGN発行のものと同じタイトルだが、特に関連はない。こちらはスパイラル綴じで、上記の交通地図帳より一回り小さい12cm×17cmのポケットサイズの地図帳だ。全国を見開き27面に分割し、国鉄路線の全駅を表示している。約1:1 000 000(100万分の1)という小縮尺なので、主要都市近郊は拡大図がある。巻末には、この年開業のTGVヨーロッパ東線が詳しく特集され、データ集とともに路線図や駅周辺図を見ることができる。

これらの冊子は、出版元のサイトから入手できる。

■参考サイト
イティネレール・エ・テリトワール社 http://www.itineraires-et-territoires.com/
 オンラインショップは、acheter en ligne (buy online) から

フランスの鉄道地図 III

| | コメント (0)

2006年11月17日 (金)

フランスの鉄道地図 I

Blog_france_railmapフランス国土地理院Institut Géographique National (略称IGN)の地図カタログでは、地形図をベースにした観光地図が幅をきかせている。1:25 000のような正統な地形図でさえ観光情報がたっぷり含まれているぐらいだから、編集方針に迷いはない。最も小縮尺の地図は1:1 000 000(100万分の1)だが、こちらも修道院、城砦、庭園、戦跡、歴史街道、公園、カヌー・カヤック、ゴルフ、魚釣り、ハイキングルートなどなど、ジャンルを特化した観光用主題図のみごとなコレクションを構成している。価格が5ユーロ(750円)ぽっきりと、比較的低価格に抑えられているのも嬉しい。

このシリーズに、鉄道地図「列車でフランスLa France en train」(写真は1996年版)がある。大判用紙の片面にフランス全土を収めた折図だ。ホームページのキャッチコピーによれば、「ガラビ鉄橋から英仏海峡トンネルまで、フランスを鉄道で旅するためのフランス全図。鉄道を愛する人のためのフランス全図」。

英仏海峡トンネルLe tunnel sous la Mancheはいまさら説明するまでもないとして、ガラビ鉄橋Viaduc de Garabitというのは、フランス中央高地にある大規模な上路アーチ橋で、エッフェル塔で高名なエッフェル技師の代表作の一つだ。橋とトンネル、つまり空中と地中(海底)を対比して、フランスの鉄道風景を立体的に読み込んだ巧いコピーだと思うが、同時にこの地図が、ドイツやイギリスで見られるように鉄道網を忠実に描くのではなくて、旅行者に照準を合わせたものなのだと強調しているようにも聞こえる。

事実、この地図では路線の扱い方が特徴的だ。TGV用の高速新線、在来線でTGVまたは特急が走るルート、ユーロスターEurostar、タリスThalysのルートが色分けされて目立つ一方、ほかの国鉄路線は十把ひとからげに黒の実線で示される。地方私鉄に至ってはかわいそうに、描く対象にもされていない。駅についても、プロットされているのは特急が停車する主要駅だけで、それ以外はベースの地図にある町の位置から類推するしかない。それに比べて観光情報の記号は多彩だ。鉄道博物館や鉄橋といった関連ものに限らず、全国の観光地がまんべんなく紹介されている。SNCF(フランス国鉄)の協力でIGNが製作した、というクレジットが物語るように、国鉄が世界に誇る高速鉄道網の広報企画なのだろう。

Blog_france_railmap2 というわけで、筆者がこれを入手したとき、鉄道地図としては物足りなさを覚えたのも確かだ。そのIGNも1970年代までは、縮尺1:800 000で全線全駅を表示した「フランス鉄道図Carte des chemins de fer Français」を作成していた。これは、北東、北西、南東、南西の4図で1セットになるもので、SNCFの著作権表示がある公式地図だった(右写真は1978年版の北西編)。現在は「全国鉄道ネットワーク地図Carte du réseau ferré national」と改題して、フランス鉄道線路事業公社RFFのサイト上でPDFファイルにより提供されている。鉄道網をより詳しく調べようとする向きには、大容量のため少々扱いにくいが、こちらをお薦めする(「フランスの鉄道地図 IV」で詳述。下記リンク参照)。

■参考サイト
フランス国土地理院 IGN http://www.ign.fr/
「列車でフランス La France en train」
http://www.ign.fr/rubrique.asp?rbr_id=1555&GRA_ID=1M912
官製地図を求めて-各国地図事情 フランス
http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_france.html

英仏海峡トンネル(ユーロトンネル社のサイト) http://www.eurotunnel.fr/
ガラビ鉄橋 http://www.garabit.com/viaducgarabit/viaduc.htm

本ブログ「フランスの鉄道地図 IV」
http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2009/01/iv-1ed5.html

フランスの鉄道地図 II

| | コメント (0)

2006年11月 3日 (金)

ドイツの鉄道地図 II

昨年、ドイツの保存鉄道について調べる機会があった。蒸機の本線走行から軌間600mmの森林鉄道まで、多様な形態の動態保存が至るところで行われている。それは筆者の想像を超えるボリュームだった。リスト編集の際に参考にしたのは、10年ほど前に買ったシュヴェーアス・ウント・ヴァル社Schweers+Wallの「ドイツ鉄道地図帳Eisenbahn Atlas Deutschland / Railatlas Germany」。去る10月20日の項で同社発行のスイス鉄道地図帳を紹介したが、そのドイツ編だ。

Blog_germany_railatlasここで紹介するにあたって、ドイツのアマゾンAmazon.de から2005/2006年版と銘打った新版を取寄せた(写真)。旧版(1994年版)は現存線中心の淡々とした記述だったが、新版はスイス編と同様、多色刷りで、休止線や廃止線のルートも可能な限り描かれていて、充実度は格段に向上している。ハードカバー、208ページ。そのうち、鉄道地図が151ページを占め、残りは駅名索引や鉄道会社一覧などの資料に充てられている。スイス編の地図の縮尺が1:150 000なのに対して、ドイツ編は1:300 000だ。スイスの8.6倍の面積を有するヨーロッパの大国なので、1冊に収めるための判断によるものだろう。精度を補うために、都市部については、縮尺1:50 000~1:100 000の拡大図が多数用意されている。

使われている記号はスイス編とほぼ同じで、幹線・地方線、単線・複線、電化方式、狭軌、貨物専用、休止・廃止線、予定線、運行者と線路所有者(日本でいう第二種、第三種)、DBの線区番号と時刻表番号など、路線関係の記号だけでも豊富に設定されている。これに旅客駅・貨物駅、操車場などの施設記号が加わる。都市部ではトラムや地下鉄が青色で表示されていて、区別が容易だ。

スイス編にない新たな記号は、たとえば近郊列車Sバーン S-Bahn、地下鉄U-Bahnの表示がある。スイスでも近郊列車をSバーンと呼んでいるが、地図に表示せず別表にまとめているのだ。可動式橋梁という記号も独特だろう。低地が続く北海やバルト海の沿岸に見られる、船舶を通すために橋桁が動く橋のことだ。橋桁が回転する旋回式、上に引き上げる昇開式、両側に跳ね上げる跳開式と、記号で方式まで分かる。

凡例に上がっていないものでも地図上で使われていることがある。一つは急勾配の表示だ。スイスの山間部に比べれば土地の起伏が緩やかなのは確かだが、ライン川の側壁やテューリンゲン森、黒森(シュヴァルツヴァルト)など局所的に、普通鉄道で60‰前後という相当急な坂道が存在する。そのような区間にはV字を縦に重ねた記号に最急勾配の数値が添えられている。山岳関係ではチェアリフトも凡例にないが、南ドイツのバイエルンアルプス地域には表示されている。

休止線、廃止線の活用法が記号化されているのもユニークな点だ。たとえば、休止線を動力車ではなく保線用の手漕ぎまたは足漕ぎの台車、ドライジーネDraisineで走行する保存鉄道がある。鉄路の上のサイクリングといった趣きで、主に北部の平野で散見される。もう一つは廃線跡の自転車道への転換だ。これはわが国にも例があるので、ウォーキングやサイクリングの盛んな彼の国では当然考えられることだ。基本的に拡幅を伴わないので現役時代の名残をとどめるし、路線の位置が永く地図の上にも残る。しかし、集中しているのはアイフェル山地Eifelなど中西部の山の中が中心で、平野部にはあまり見つからなかった。既存道路に自転車用のレーンが確保されていたりするので、独立した自転車道を設ける必要性が薄いのかもしれない。

【追記 2008.11.2】
ドイツ編は出版社の地元でもあり、読者層が厚いのだろう。この記事を書いていくらも経たないうちに、表紙のデザインもスマートに、2007/2008年版として改訂された。さらに驚くべきことに、DVD版が発売されているのだ。広告では、価格が冊子の40ユーロに対して58ユーロと割高なだけに、それに見合う高機能性をアピールしている。概観図から詳細図へとワンクリックで拡大や並列表示ができたり、現役線のみ、廃止線含む、植生表示や施設の説明表示のオンオフなど、レイヤーを自由に選択できたり、さらに各種データもテキストで利用できたり、と確かに便利そうだ。鉄道地図もディジタル媒体で提供されるのが普通になっていくのだろうか。

■参考サイト
シュヴェーアス・ウント・ヴァル社 http://www.schweers-wall.de/
ミルゼブルク自転車道Milseburgradweg http://www.milseburgradweg.de/
 ヘッセン州にある廃線跡自転車道の一例。峠越えのトンネルあり、馬蹄形ループ(180度転回)あり、と変化に富んだルートが特徴。

鉄道のある地図 ドイツ北部 http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_rail_germanyn.html
同 東部 http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_rail_germanye.html
同 西部 http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_rail_germanyw.html
同 南部 http://homepage3.nifty.com/homipage/map/map_rail_germanys.html

ドイツの鉄道地図 III

| | コメント (0)

2006年10月27日 (金)

ドイツの鉄道地図 I

Blog_germany_railmap3 東西統一前、1980年代の西ドイツ国鉄(ドイツ連邦鉄道Deutsche Bundesbahn)の全国版時刻表は厚さ5cmもある電話帳のようなしろものだった。筆者のお目当ては付録として差し込まれていた4色刷の鉄道地図Übersichtskarte(右写真。上は全体、下は一部拡大)で、これは今も大切に保存してある。

縮尺1:425 000で、北部編と南部編の2枚に分かれ、それぞれ大判用紙の両面に印刷されている。ベースマップは、国境と水系だけを描いたシンプルなものだ。赤で示された鉄道の記号は、特急列車が走る路線(幹線)、近距離列車の路線(支線)、国鉄以外の鉄道(私鉄、保存鉄道)に分けられ、電化・非電化の区別もある。鉄道から爪のように出ているのは駅の記号で、バス連絡があれば丸、その他は長方形で示される。そして、駅の記号が出る方向で線路のどちら側に駅舎があるかがわかるのだ。鉄道網を補完しているのが緑の二重線で示されるバス路線で、文字通り網の目のように図面を覆っている。時刻表番号がすべての路線に振られて、完璧な索引地図となっていた。

Blog_germany_railmap4 それに対して、最近のドイツ鉄道Deutsche Bahn発行の鉄道地図「旅客線一覧図Übersichtskarte für den Personenverkehr」(右写真は表題と凡例)は、路線こそ網羅しているものの、小さな駅の表示を省略した簡略版になっている。縮尺は1:1 200 000(120万分の1)で、統一ドイツの全土をカバーしても、大判用紙の片面に納まる。ベースマップはフルカラーの効果を出したもので、国境と水系を示すほか、地勢を表すために、山地・丘陵地ではぼかし(陰影)をつけ、平野は薄緑に色を変えている。鉄道の記号は、高速線の記号が追加された以外、旧図と同じ仕様だが、バス路線は記されていない。裏面は、地域交通事業者の連合体(運輸連合Verkehrsverbund)のエリアを表現した運輸連合地図Verbundkarteになっている。

Blog_germany_railmap1 通常の旅行ならこれで十分間に合うとはいうものの、以前のような全線全駅地図はもう作られなくなったのだろうか。そうではなく、時刻表とは切り離して単独で販売されるようになったのだ。

名称は「ドイツ バス・鉄道路線図Fahrplankarte für Bus und Bahn Deutschland」という。ドイツ交通クラブVerkehrsclub Deutschland (VCD) が監修し、ドイツ鉄道のホームページにも紹介されているだけあって、往年の時刻表添付地図Fahrplankarteにさらに磨きをかけた内容だ。縮尺は1:750 000、表面は鉄道の全線全駅と、鉄道網を補完する主要バス路線が描かれる。裏面は観光用と銘打ち、長距離歩道や自然公園のエリアを重ね刷りしている。

表面の鉄道に関する情報はかなり詳細だ。路線ごとに、どのタイプの列車が走っているか、運行頻度は、所要時間は、停車駅は...など基本的な情報が全て盛り込まれている。列車のタイプは遠距離列車(ICE、IC、ECなど)が赤、速達型地域間列車が緑、普通列車は黒の色分けで、運行頻度は線の太さで区別する。主要駅間の所要時間は傍らに添えられた数字でわかる。わが国の電車の車内で見かける路線図と同じように、ICEから各停まですべて走っている路線なら、実線を3本並行させることによって、マトリクスの情報を上手に整理している。

都市エリアの近郊線S-Bahn、地下鉄U-Bahnは、さすがにこの縮尺では表現しきれないので、セットになった別冊Begleitbuchのほうに拡大版を載せている。この別冊にはそのほか、地域ごとの情報源の一覧や駅名索引など豊富な内容を詰め込んで、170ページ以上もあるのだ。

Blog_germany_railmap2 これは全国版だが、地域版も一部で刊行されている。手元にある「ライン・モーゼル バス・鉄道旅行路線図Fahrplankarte für Ausflüge und Reisen mit Bus und Bahn Rhein-Mosel」はドイツ中西部を1:150 000の縮尺で表したものだが、さすがにこの縮尺になると、バス路線も省略なしに描かれ、所要時間や時刻表と対応する路線番号が付されている。別冊にはトラムを含めた市内路線図や観光案内がぎっしり収められて、ドイツらしい徹底ぶりだ。これらの地図はVCDのオンラインショップに挙がっているほか、ドイツのアマゾンなどでも扱っており、容易に入手できる。

■参考サイト
ドイツ交通クラブ(VCD) http://www.verkehrsclub-deutschland.de/
 トップページのshopに、オンラインショップがある。

ドイツ鉄道の公式時刻表PDF http://www.bahn.de/
 トップページのPlanen&Buchen > Reiseplanung > Kursbuch-Aktualisierungen > 地図で地域を選択

ドイツの鉄道地図 II

| | コメント (0)

2006年10月20日 (金)

スイスの鉄道地図 II

Blog_swiss_railatlas 前回紹介した「スイス公共交通公式地図 Offizielle Karte des öffentlichen Verkehrs der Schweiz」は個人旅行を楽しむ人向きのアイテムだった。もっと詳しく鉄道網について調べたいと思うと、もはや1枚ものの折図では無理で、鉄道地図帳Railway Atlasのような冊子に頼ることになる。

2004年にドイツのシュヴェーアス・ウント・ヴァル出版社Verlag Schweers+Wallから発行された「スイス鉄道地図帳Eisenbahnatlas Schweiz(英語名はRailatlas Switzerland)」が手元にある。

メインは60ページ余に及ぶ縮尺1:150 000の区分図だ。ベースマップは、地形をぼかし(陰影)で表現した上に水系(川、湖)と森林のベタを重ねていて、およその地勢が判読できるのが、これまでの鉄道地図と一線を画している。鉄道のデータはまさに至れり尽くせりで、路線は旅客営業路線(単線複線)、貨物線、休止線、廃止線をそれぞれ標準軌と狭軌の別で描き、ラックレール、私鉄、「上下分離」、保存鉄道、構想線など運行形態の違いはもとより、電化方式、駅の種類も細かく表示されている。欄外に私鉄や登山鉄道、廃止線のデータが載せられているのも貴重だ。主要都市については1:50 000の拡大図があり、巻末には駅名索引もついている。全96ページの冊子から、スイスの鉄道の過去・現在・未来が見えてくる。

隣国ドイツやフランスのような長距離の高速新線ではないものの、スイスの主要幹線も旅客列車の速度向上と貨物輸送の拡大をめざして着実に新線建設が進められている。
チューリヒZürichから南に向かうと、まず中央駅からタルウィルThalwilまで市街の山手を貫く9422mの新トンネルが目を引く。さらにその途中からツークZugへ短絡するツィマーベルク基底トンネルZimmerberg Basistunnel計画もあるという。その先、アルプスを越える延長57kmのゴッタルドGotthard基底トンネルのルートも描かれている。それによれば、トンネルは現在よりかなり東寄りのコースを採って峠の北側のアルトドルフAltdorfから南のビアスカBiasca付近に直接抜けるため、名物のループ線やオメガカーブはすべてパスされてしまう。

チューリヒから西の方面では、首都ベルンBernの手前まで曲線を緩和した新線が完成して、速達を旨とするインターシティはそちらを通るようになった。ブルグドルフBurgdorfは旧線に取り残され、浅い谷あいをくねくねと行くローカル線的な風景は、インターレギオ、つまり「急行列車」に乗らないと見られない。

新線建設の影で、ひっそりと使命を終えたローカル線も目につく。中央部では、ウォーレン・マイスターシュワンデン鉄道Wohlen - Meisterschwanden-Bahn(1999年廃止)、ゼータル線Seetalbahnの北の端、レンツブルクLenzburg~ウィルデックWildegg間(1984年廃止)、同 ベロミュンスターBeromünster支線(2000年廃止)など。この本では、廃止時期のデータは西暦の前に十字架の印をつけて示されているのがおもしろい。

ところで余談になるが、ベロミュンスター支線は、メーターゲージのウィネンタル・ズーレンタル鉄道Wynental- und Suhrentalbahn(WSB)と一部で並行しており、前者が専用線なのに対して、後者は道路上の併用軌道で道路交通上の障害となっていた。前者の営業廃止に際して、この区間を活用して後者を専用軌道化することになり、新たに連絡線が作られた(2002年開通)。名鉄美濃線の先端区間廃止の際に、並行する長良川鉄道の関駅まで連絡線を作った経緯に似ている。かくしてこのライナハReinachとメンツィケンMenzikenの間ではWSBのほうが廃線になり、ベロミュンスター支線は別の形で生き延びることになった。

■参考サイト
Verlag Schweers+Wall http://www.schweers-wall.de/
WSBを運行するAAR bus+bahn http://www.aar.ch/

スイスの鉄道地図 III

| | コメント (0)

2006年10月12日 (木)

スイスの鉄道地図 I

スイスは誰もが認める鉄道王国だ。路線網の骨格を形成するのは、国鉄に当たるスイス連邦鉄道Schweizerische Bundesbahnen (SBB)だが、それ以外におびただしい数の私鉄が地方交通、ときには幹線交通をも担っていて、その個性の豊かさが大きな魅力となっている。

スイスを旅するときは必ず鉄道のお世話になる。プランニングに時刻表と地図は必需品だ。ウェブ上で出発地と目的地や乗車日を入力すると、お望みの列車はこれです、とばかりに表示されるオンライン時刻表が大はやりだ。現在のSBBのサイトでもまずこれが出てくる。利用者の多くはこのサービスを求めていると考えてのページ構成だろう。しかし、鉄道ファンにとって、最適の1本を機械的に選ぶシステムというのは、闇夜を懐中電灯の光だけで歩かされているような焦燥感を伴う。一覧表形式の時刻表を繰りながら、接続は、待ち時間は、と道中のあれこれに思いを巡らせることからこそ、私たちの旅は始まるのだと言いたい。

かつて旅の友であったスイス公式時刻表Offizielles Kursbuch Schweizは現在もあるが、ホームページではCD-ROMしか紹介されていない。板を買わなくてもPDFファイルでダウンロードできるので、非常に手軽になったが、年鑑的な性格が薄れつつあるのは少し残念だ。

Blog_swiss_railmap 一方、鉄道地図のほうは、キュマリー・ウント・フライ社Kümmerly+Freyが刊行する「スイス公共交通公式地図 Offizielle Karte des öffentlichen Verkehrs der Schweiz(英語名はSwitzerland, the official map of public transport)」がある。写真は筆者が1995年に購入したものなので、いささか内容が古いが、同社のサイトを調べてみると、主題図Thematische Kartenのリストの中に今も健在だった(現時点の価格は19.80スイスフラン)。簡単な路線図でよければスイスパスのような割引切符におまけでついてくるパンフレットで用が足せるが、途中駅もきちんと表示されたものとなると「公式地図」の出番だ。スイス国内の鉄道、バス、航路が公式時刻表の路線番号とともに図示されていて、時刻表の索引図としての用途を併せ持っている。

鉄道は、幹線を太く、地方線を細く描きわけ、駅もインターシティ(IC)停車の主要駅と急行停車駅は赤で塗って識別しやすくしている。ラック式鉄道、ケーブルカー、チェアリフトも、時刻表に載っているものはすべて掲げてある。旅にアクセントをつける湖の定期船航路は青の線で、バス路線は道路記号の内側を橙色に塗って表現している。スイスは鉄道の密度が高いことで知られるが、それにバス路線を組み合わせれば、たいていの町や村に行けそうだ。拡げると横130cm×縦92cmにもなる大判の地図だが、スイスの鉄道を知るうえでの必須アイテムであるのは疑いない。

この地図は縮尺が1:301 000と妙な端数を伴っているのが気になるが、わが国で普及している方角をデフォルメした鉄道地図とは違って、区間距離や周辺路線との位置関係を正確に把握できるのがいい。地勢をぼかし(陰影)で表現していることもあって、筆者などは眺めているだけで早や旅した気分になってしまうのだ。

■参考サイト
スイス連邦鉄道 SBB  http://www.sbb.ch/
公式時刻表 http://www.fahrplanfelder.ch/
英語版あり。メニューの "List of localities" で駅名を選ぶと、その駅を通る路線の時刻表リストが表示される。
Kümmerly+Frey  http://www.swissmaps.ch/
英語版あり。メニューのThematische Karten (Thematic maps)に上記地図があり、オンラインショッピングができる。

スイスの鉄道地図 II

| | コメント (0)

2006年8月31日 (木)

オーストラリア大陸縦断列車と鉄道地図

Blog_australia_railmap_nat オーストラリア南岸のアデレードと北岸のダーウィンの間2,979kmを結ぶ大陸縦断列車「ザ・ガンThe Ghan」が走り始めたのは2004年2月4日だった。列車の名称は、道路が整備されるまでこのルートの輸送手段であったアフガニスタン生まれのらくだAfghan camelの略称にちなんでいる。熱風の吹きすさぶ荒地を進むらくだの隊列(camel trains)に比べて、現代のtrainの旅は桁違いにらくだ!

■参考サイト
Great Southern Railway http://www.gsr.com.au/ ザ・ガンを運行する。日本語サイトあり

それはともかく、南北縦断鉄道の開通(工事の完成は2003年9月)は国を挙げてのお祝いごとだった。同国の国土地理院にあたるジオサイエンス・オーストラリアも記念出版として、鉄道地図NATMAP Railways of Australiaを作成した。縮尺1:5 000 000(500万分の1)で、地勢を陰影で表したオレンジの大地に全国の鉄道路線が描かれている。

同国の鉄道は開発の経緯から、南岸のヴィクトリア州は1600mmの広軌、南東のニューサウスウェールズ州とインターステート(州間)幹線は1435mmの標準軌、北東のクイーンズランド州、南方の島タスマニア州や西岸のパースPerth周辺は1067mmの狭軌と、ゲージ(線路幅)が異なる。地図ではこれを緑、赤、青の実線で示し、さらに旅客・貨物共用、貨物専用、休止中の違いを線幅や網かけで描き分けている。

それで見ると、日本の20倍もある広大な大陸だけに、鉄道は沿岸部の都市間連絡と内陸にひげのように伸びる貨物線が中心だ。インディアン・パシフィック号が走るナラボー平原Nullarbor Plainの世界一長い直線コースも、大陸全体から見ればかなり沿岸部に寄っている。ほんとうに大陸の中央部に入り込むのは「ザ・ガン」のルートだけ...となると、地図の製作者が標準軌の塗り色に、目立つ赤を選んだ心境もよくわかる。

Blog_australia_railmap_hema ところで、オーストラリアの鉄道地図はジオサイエンスの独占ではない。大手地図出版社ヒーマHema Mapsから「オーストラリアの鉄道旅行Rail Journeys of Australia」というタイトルの地図が刊行されていて、情報量では圧倒的な差があるので、お求めの向きにはこちらをお勧めする。

ベースとなる地図は縮尺1:5 500 000で前者と似たサイズだが、地勢表現は省略されている(そもそも鉄道地図の要件ではない)。その代わりに地名や道路網は詳しく描かれ、1枚ものの地図なのに地名索引まで備えている。鉄道の表示は軌間や利用状況で区分されているほか、有名な長距離列車の通過するルートが網かけで示され、図郭外に解説がついている。さらに、相当数の保存鉄道や鉄道博物館が、運行頻度や所在地、ウェブサイトなどのデータつきでリストアップされているのには感嘆するしかない。

裏面は全駅を表示した都市近郊路線図で、実は同じもの(Australian Rail Maps)がウェブサイトにも上がっているのだ。ウェブの路線図は列車を運行する鉄道会社のサイトにリンクしているので、長距離路線から市内交通まで全国の鉄道時刻表が居ながらにして得られるというしくみ。わずか12.95ドル(1,150円)で買えるオーストラリアの鉄道百科、そんな形容もあながち大げさではない。

■参考サイト
Australian Rail Maps http://www.railpage.org.au/railmaps/
ヒーマ社 http://www.hemamaps.com.au/ 同社は直販をしていないが、HPの"BUY A MAP"に小売店の一覧表がある。筆者もその一つ、Information Victoriaで購入した。

ブログランキング・にほんブログ村へ

| | コメント (0)