オランダの鉄道地図 II
鉄道による貨物輸送を促進するために設立されたオランダ・鉄道貨物情報財団Rail Cargo Information Netherlands Foundationは、貨物輸送に関する鉄道地図を公開している。
■参考サイト
鉄道貨物情報財団 http://www.railcargo.nl/
トップページ > Railinfrastructuur > Spoorkaarten > Nieuwe spoorkaart van Nederland > posterrailcargo.pdf
「オランダの新鉄道地図Nieuwe spoorkaart van Nederland」と称するこの地図は、道路と水系で構成した単色のベースマップの上に、赤や緑の実線で鉄道路線を描いている。タイトルを見る限り何の変哲もなさそうだが、凡例(蘭・英併記)に目を通せばユニークな地図であることは明らかだ。
赤い線は旅客線ではなく、オープンアクセス鉄道網Open access rail networkと説明されている。オープンアクセスとは、列車運行事業者が使用料を支払って線路使用権を得ることができるシステムで、EC指令で示された目標に沿って、加盟各国が上下分離と併せて鉄道事業に適用した政策だ。ほとんどの路線が旅客列車の運行に供されているのだが、貨物事業者にも門戸が開かれている。それに対して、緑色は貨物鉄道専用線Dedicated freight railway lineを表している。このほか、設定された記号を操車場、コンテナターミナル、トラックとの積替駅、私有側線と追っていくと、おのずと鉄道にもう一つの重要な役割があることを再確認させられる。
もう一つ目を引くのは、国土の中央を東西に貫くベテュヴェルートBetuwerouteが描かれていることだ。これは2007年6月に開通した延長160kmの貨物専用線で、ドイツ国境に近いゼフェナールZevenaarとヨーロッパ最大の貿易港であるロッテルダム港を最短距離で結んでいる。旅客列車の運行頻度が高いオランダ国内では、鉄道の機能向上に貨物輸送の分離が求められ、特に需要の大きいドイツルートをバイパスする新線が計画された。環境に配慮した設計変更などで工費が見込みの2倍に膨れ上がったことや、電化方式も信号方式も新しいEU標準を採用したため、在来線仕様の機関車は通行できなくなるなど、難産を伝えられながらの開業だった。しかし、この地図上ではあたかも主役のように遇されていて、実際もレイン(ライン)=ヴァール川Rijn-Waalの水運を補完する物流の動脈に成長していくのだろう。
なお、上記ページからリンクしている「オランダの詳細鉄道地図Detailspoorkaarten van Nederland」には、この地図の都市部の拡大図が多数用意されている。
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オランダの鉄道施設管理は、2003年に設立されたプロレール社ProRailが行っているが、そのHPに、ファイルサイズが5MBもある鉄道地図が用意されている。
■参考サイト
プロレール社 http://www.prorail.nl/
トップページのPubliek > Spoorkaart またはトップページの直接リンクdirect naarから
縮尺は1:300 000で、ベースマップには同国の測量局Topografische Dienst Kadasterが編集した1:250 000道路地図を縮小使用している。道路地図といっても日本で言えば1:200 000地勢図に相当する公式地図で、道路、集落、水系、植生、行政界などが詳細に書き込まれたものだ。地図の見栄えで他と一線を画しているだけでなく、オランダの鉄道インフラの大要が概観できるという意味で注目に値する資料だ。どのような内容が盛り込まれているかは、凡例にある地図記号を見ていくのが手っ取り早い。表記がすべてオランダ語なので、参考のために、鉄道に関する地図記号の意味を日本語で付しておこう(厳密な訳ではないのでご了承を)。
Spoorwegen鉄道の部
- geëlektrificeerd (enkel- / dubbel- / meersporig) 電化(単線/複線/多複線)
- niet geëlektrificeerd (.... 非電化(同上)
- uitsluitend goederenvervoer (.... 貨物専用線(同上)
- museumspoorweg 保存鉄道
- niet in exploitatie 休止中
- lightrail 軌道
Station旅客駅の部
- station zonder inhaal- of kruisingsmogelijkheld ook wel halte genoemd 交換不可能(行き違いできない)で、合図により停車する駅(リクエストストップ?)
- station / groot station mét inhaal-... 交換可能な駅/主要駅
- evenementenhalte (facultatieve halte) 臨時設置の乗降場(仮乗降場)
Functionaliteit spoor 運行機能の部
- Inhaalspoor op de vrije baan. bijv. ... (本線上の、あるいは駅機能のない)待避線、その例
- overloopwissel. bijv. ... 渡り線、その例
- aansluiting (splitsingspunt op vrije baan) 接続点(本線上の分岐点)
voorzieningen施設の部
- emplacement (rangeerstation / opstelterrein) 操車場/貨車組成施設
- laad- en losplaats voor goederenvervoer (openbaar) 貨物積み降し施設(非専有)
- containeroverslagmogelijkheld コンテナ積み降し施設
- revisiebedrijf 修理工場
- onderhoudsbedrijf 分解修理(全般検査)工場
- servicelocatie サービスステーション(?)
- tankplaats 給油施設
これまで紹介した鉄道地図と重複する情報も含まれているが、動力方式、線路数、駅の機能など鉄道施設の基本的なデータを包括的に表示しているところが得がたい。それに、位置情報だけだが保存鉄道やライトレールまでカバーしているので、およそ郊外路線と呼ばれるものは網羅していると考えられる。前回紹介したTreinreiziger.nlの列車系統図と併用すれば、旅行用としても十分に役立ちそうだ。印刷版の配布が案内されていないのがまことに惜しい。
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最後に、私的サイトで過去の時刻表添付地図とおぼしきファイルを発見した。日付は2004年9月になっている。印刷物のスキャニングではなく、印刷用のデータファイルから直接PDF化したものなので、拡大しても鮮明な画像が得られる。トップページからのリンクで紹介すべきだが、リンクが見つからないので、やむをえずPDF(131KB)の直接リンクを記すことにする(リンク切れご容赦)。

オランダもインフラ管理と列車運行の事業者を分ける上下分離が実行されているが、後者の旅客輸送の大部分を担当するのがオランダ鉄道Nederlandse Spoorwegen (NS) だ。NSのサイトでは、時刻表添付と同じデザインを用いた地図がPDFファイルで提供されている。
一方、独立系の鉄道旅行情報サイトTreinreiziger.nlでは、趣向の違う鉄道地図(PDF)が提供されている(Treinreizigerは英語ならtrain travelerの意)。オランダ国内の鉄道旅行に持っていくとすれば、NSの運賃地図よりこちらのほうだろう。なぜなら、これはオランダの旅客列車のルートを一覧できる優れものだからだ。
ベルギー国鉄SNCBの公式サイトに、インタラクティブ形式の路線図がある。ベルギーの公用語であるオランダ語、フランス語、ドイツ語のほかに英語版も用意されていて、抵抗なく使える。さらに、表形式の時刻表のリンクもあるので、鉄道旅行に最低限必要な情報が揃う。ところが、公式サイトの英語版ではなぜかリンクが欠落していて、英語版の路線図を見るのに、わざわざオランダ語(NLと略記)かフランス語版(FR)から入っていかなければならない。
幸いなことに、路線図の古いバージョンがまだ残っている。こちらの方が機能が少ない分、ストレスなしに作動する。デザインを見る限り旧バージョンとは信じられないが、2007年開通のアントウェルペンAntwerpen中央駅を通過する新線が描かれていないので、それ以前の製作のようだ。
一つは、駅舎を写した古い絵葉書を集めた「昔のベルギーの駅Les gares belges d'autrefois」というサイトにある。トップページの最下段に、「草創期から今日までのベルギー鉄道地図Carte du réseau belge depuis sa création jusqu'à nos jours」と「ベルギー旅客鉄道地図(2002年)Carte du réseau voyageurs belge (2002)」がリンクされている。特に前者は、廃止線を含めた普通鉄道の全路線を描きこんだ力作で、全盛期の鉄道網を回顧できる。
もう一つは、「ベルギー鉄道非公式サイトChemins de fer belges - Site non officiel」というベルギーの鉄道を紹介する個人サイトで、その中に「国鉄路線網地図Cartes du réseau SNCB」という鉄道地図を集めたページがある。最上段にある時刻表の添付地図をはじめ、多くは紙地図をスキャンしたものだが、唯一、「鉄道網の変遷Évolution du réseau」は、1830~2000年までの鉄道網の変遷を1年1秒の速度で見せるユニークな動画像だ。
アイルランド鉄道
北アイルランド鉄道
「国の鉄道網には非常に興味深いものがある。国の歴史が路線配置の背後に見えることがあり、人やモノが集まって多忙なのか、静かなところなのかもわかる。鉄道網を知れば、いろいろな発見がある。鉄道網を理解するには地図が必要だが、レールファンにとっても複線、電化線を示した鉄道地図を見つけるのはなかなか難しい。これが、自分で地図を描こうと決めた理由だ。以来少しずつ、何か国かは他のレールファンの力も得ながら、ヨーロッパ全域をほぼカバーするに至った。確かに毎年、休止や新設や電化の動きが何件もあることを考えると、これほど巨大なテーマを一個人が完全に掌握することなど不可能だ。幸い、私たちは孤立してはおらず、多数のレールファンが、地図を改訂するために私を直接間接に助けてくれる。彼らに深く感謝を捧げたい。Boris Chomenko」
公式販売サイトに、パスの有効な国と路線を描いたオリジナルのPDF版鉄道地図がある。ヨーロッパ全図が一面に配置され(北欧は挿図)、国別に色分けした上に、概略の鉄道ルートが描かれている。高速線は緑、幹線、中でも高速列車の経由線は紫、その他は赤と区別してある。上述の労作に比べて種別が単純なのは、一般旅行者の参照用としてデザインされているからだ。







前者の1つめは、フランス国鉄SNCFが製作し、フランス鉄道線路公社Réseau Ferré de France (RFF) が公開している。1997年、旧フランス国鉄SNCFは列車運行とインフラ管理を別組織化する、いわゆる上下分離の対象となったが、その際、インフラ保有の受け皿として設立されたのがRFFだ。その資料サイトに、組織のミッションにふさわしい鉄道地図が収められている。「Réseau ferré national(全国鉄道ネットワーク)」というタイトルで、RFFの管理下にあるフランス全土の鉄道線(一部の地方私鉄を含む)を詳細に図示したものだ。記載項目は比較的シンプルで、線路の本数、待避線、操車場、旅客駅とそれ以外(非営業を含む)といった施設関係と、狭軌線、地方私鉄、休止線、廃止線の区別、それに行政界とSNCFの管理局界が入っている程度だ。しかし、鉄道の公式資料であり、全線全駅が待避線や連絡線の有無を含めて丹念に図示されていることで、注目に値する。
もう1つは個人サイトで、「フランス鉄道網Le réseau ferré français」と題する線路配置図だ。上記の地図を各路線の主要駅間ごとに抽出したような体裁で、駅とキロ程を図示している。また、付属資料として開業日、勾配、トンネル、電化方式、最高速度などのデータを揃えているので、資料集として活用できる。
最後は、イル=ド=フランス交通連合Syndicat des transports d'Île-de-France (STIF) のサイトにある鉄道地図だ。下記のリンクをたどると、Cartothèqueの括りにさまざまなタイプの路線図PDFが集められており、パリ都市圏の公共交通を知るうえで見逃せない資料集となっている。
まず、フランス国鉄SNCFのサイトには、フランス全国版とイル=ド=フランスÎle-de-France(首都パリを中心とする地域、首都圏)の詳細版がある。全国版は路線網と主要駅を表示しているが、TGVやユーロスターが走る高速鉄道線以外は、すべて細線で区別なく表した単調な地図だ。イル=ド=フランス版はパリと郊外を結ぶRERとTransilienの路線を描いているが、3.5MBもあるPDFファイルにもかかわらず、解像度が低く、実用に耐えない。
次は、個人サイトの力作だ。フランスとカナダ(およびブラジル、リオデジャネイロ)の有用な鉄道地図が提供されている。列車が走るルートを列車種別や系統ごとに描き分け、同時に主な駅間の所要時間や運行頻度を表示したものだが、スマートな配色と明解なデザイン、それにデータ更新が頻繁に実施されていることにも感心する。
3番目は「フランスの鉄道地図 II」で紹介したイティネレール・エ・テリトワール社Itinéraires & Territoiresが運営するサイトitransports.comにある、インタラクティブマップだ。メインページはフランス語だが、英語版も用意されているので、そちらで説明しよう。
最後も個人サイトで、「公共交通アトラスAtlas des transports publics」と題し、鉄道線はもとよりバス路線を克明に描いた正縮尺地図をPDFで提供している。使用言語はフランス語のみ。
www.fahrplanfelder.chは、スイス公式時刻表をPDFファイルで提供するサイトだ。鉄道、バス、湖岸の連絡船などテーブル形式の公共交通機関時刻表Fahrplanfeldが、すべて閲覧できるようになっている。スイスの公用語である独、仏、伊、ロマンシュの4ヶ国語に加えて、英語による案内があるので、外国人にとっても使いやすい。ファイルはドイツのように電話帳1冊まるごとではなく、時刻表番号ごとに分けられていて、地名をキーにしてその町を通る交通機関を検索することも可能だ。
以前の記事で、出発地と目的地と乗車日を入力すると最適の列車を表示するオンライン時刻表が、旅を想像する愉しみを奪ってしまったと嘆いたことがある。それを聞き取ってくれたとは思えないが、ドイツ鉄道Deutsche Bahnのサイトにある「電子時刻表Elektronisches Kursbuch」では、冊子にすれば電話帳を超える厚さになるテーブル形式の時刻表を、まるごとPDFで提供し始めた。冊子のほうは今年限りで廃刊にするらしい。時刻表は、地域別におのおの数百ページ、30~40MBもあるような重いファイルだが、それと同時に、ドイツ鉄道の旅客全線を表した鉄道地図も見ることができる。
ウェブサイトで見られる鉄道地図にも言及しておこう。オーストリア連邦鉄道Österreichische Bundesbahnen = ÖBB、すなわち国鉄のサイトに、全国の路線網を描いた地図がPDFファイルで上がっている。




一つ目は、ロシア鉄道
ちなみに、同サイトのロシア語版では、写真集
二つ目の鉄道地図は、距離や方角をデフォルメしたいわゆるスキマティックマップ(位相図)で、旧ソビエト連邦全域をカバーする個人の労作だ。うれしいことに英語版も用意されている。全体では相当大きなサイズになるため、横7×縦8=56枚に分割した画像で詳細を見るようにしてある。
ナショナルレールNational Railは単一の鉄道会社ではなく、イギリス国鉄の解体後に参入した列車運行会社(ATOCと呼ばれ、現在24社ある)が共通で使用するブランドだ。長年なじまれた2本の矢のマークも国鉄から引き継いでいる。ナショナルレールは独自のウェブサイトを開設して、時刻検索やサービスの案内を行っているが、その中にPDFによる全国鉄道地図が含まれている。
地図帳と名乗っているがウェブ上で公開している1枚ものの鉄道地図だ。イギリスの営業線と休止・廃止線の全線全駅(メトロとライトレールは路線のみ)を克明に描いていて、旅客線、保存鉄道線、貨物線を区分する。作者は「著作権のある鉄道地図帳から情報を得ることはしない方針」と書いているので、おそらく当時の時刻表や路線図、地形図などから調べ起こしているのだろう。残念ながら、今のところイングランド北部とスコットランドは未完成で、東岸はヨーク北方、西岸はマンチェスター、リヴァプールの手前で終わっている。
独自のコンセプトで作成されたイギリス鉄道路線図が各種提供されている。いずれもスキマティックマップ、すなわち距離や方角をデフォルメした図式化地図(位相図)だが、未来的なデザインで古い鉄道のイメージを打ち破るものだ。路線網図Network MapにはA4サイズの簡略版とA2の詳細版が用意されているほか、会社(TOC)別に運行路線を色分けした地図Franchise Map、建設中または予定線を図示した地図などもある。後者では、北ウェールズのカナーヴォンCaernarfonや、湖水地方のケジックKeswickへ行く廃止線の復活構想があることもわかる。







現地から地図帳を取寄せるほどのこともないが、ウェブサイトで気軽にインドの鉄道地図を見たいという向きに、2点紹介しておきたい。1つは、インド鉄道の公式サイトにあるものだ。
全体図をクリックすると地域ごとの拡大図を表示するので、試しにどれかご覧になるといい。全国の鉄道路線を網羅しているのはもちろんのこと、執念のようなデータ収集の成果である各種情報(軌間、単線・複線、電化・非電化の別など)の表示にも手を抜いていない。大地図帳と違うのは、縮尺による制約もあって主要駅のみの表示になっていることだが、それとて急行停車駅は省略されていないから、通常の旅行には支障ないだろう。逆にフルカラーの利点を生かして、路線が鉄道管理局別に色分けされているので、視覚的にわかりやすい。
また、大都市周辺の詳細図は別に作られている。IRFCAが都市交通図を含めたインドの鉄道地図のリストを作っているので、そちらを参照されたい。
















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