2017年7月 2日 (日)

ニュージーランドの地形図-ウェブ版

前2回で紹介したニュージーランドの地形図は、ウェブサイトでも広範に公開されており、居ながらにして表情豊かな大地を図上旅行することが可能だ。サイトには、地形図をシームレスに閲覧するものと、図葉単位で画像ファイルをダウンロードするものがある。

NZ Topo Map(最新地形図の閲覧)
http://www.topomap.co.nz/

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日本の国土地理院に相当するニュージーランド土地情報局 Land Information New Zealand、略称 LINZ は、現行Topo50(1:50,000)、Topo250(1:250,000)シリーズの閲覧サイトを設けている。初期表示されるのは地形図(Topo50)のレイヤーだ。検索窓(上図①)で地名を入力するか、画面右上の+ボタン(上図④)で表示を拡大していけばよい。また、その下の50と250と記されたボタン(上図⑥)で、Topo50/Topo250の表示を切り替えることができる。

レイヤーの追加は、画面右上のドロップダウンリスト(上図②)で行う。日本語環境では、「None」(下層レイヤーなし)、「地図」(グーグルマップ)、「航空写真」が選択できる。ただし、レイヤーを選択しただけでは表示は変わらない。左側のスライドバー(上図③)を使って、レイヤーの透過度を調節する必要がある。

スマートフォンユーザーには、同名のアプリ(NZ Topo Map)も用意されている。地図閲覧は同じように無料だが、ダウンロードは有料になる。

MAPSPAST(旧版地形図の閲覧)
http://www.mapspast.org.nz/

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地形図表示画面
Sourced from NZMS 1 Maps S14 Motueka and S20 Nelson. Crown Copyright Reserved.

このサイトでは、旧版地形図をシームレスに閲覧することができる。ユニークなのは、1949年から2009年まで各10年代の最終日現在の「最新図」を提供する、と謳っている点だ。もちろん、その時点で刊行されていた最新図という意味であり、地図の表示内容が最終日の状態を表しているわけではない。現在閲覧できるのは、

・1959年  NZMS 1シリーズ(1:63,360、1マイル1インチ地図)
・1969年  NZMS 1 シリーズ
・1979年  NZMS 1 シリーズ
・1989年  NZMS 1シリーズおよびNZMS 260シリーズ(1:50,000)
・1999年  NZMS 260シリーズ
・2009年  Topo50シリーズ(1:50,000)
・最新  Topo50シリーズ(1:50,000)および空中写真

の7世代だ。

なお、NZMS 1シリーズが全土をカバーしたのは1975年なので、1959年と1969年の時点では主として山地で未完成(白紙)のエリアがある。1949年時点(NZMS 1初版)の作業は未着手とされているが、その代わりに1949年時点の1:63,360地籍図(NZMS 15)がある。地籍図は、1899年、1909年、1919年時点のNZMS13シリーズもあり、イギリス自治領時代の国土の状況を知る手がかりとして貴重だ。

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初期画面

閲覧画面の主な機能は次のとおり。

・ベースマップ(地図レイヤー)の切替え
 →画面左上のレイヤーボタン(上図②)で表示されるリストから選択
 (今のところ、複数レイヤーの選択はできない模様)

・座標系の切替え
 →画面左上の設定ボタン(上図③)で表示されるリストから選択(座標値は画面右下に表示されている)

・特定地点の図歴表示
 →画面左上の図歴表示ボタン(上図④=表示中の図歴、または⑤=すべての図歴)を選択したうえで、図上の任意の地点をクリック

Map-chooser(最新地形図のダウンロード)
http://www.linz.govt.nz/land/maps/linz-topographic-maps/map-chooser

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LINZはTopo50とTopo250について、紙地図だけでなく、画像ファイル(TIFFファイル、GeoTIFFファイル)、データファイル(シェープファイル)も無償で提供している。これらは本サイトから図葉ごとにダウンロードできる。初期画面のニュージーランド全図に表示されているのは、Topo250の図郭だ。任意の図郭をクリックすると、その図郭に含まれるTopo50の図郭の一覧と、Topo250の画像およびデータファイルへのリンクが表示される。

University of Auckland - NZ Cartographic and Geospatial Resources Repository(旧版地形図のダウンロード)
https://gdh.auckland.ac.nz/

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オークランド大学 University of Auckland のニュージーランド地図・地理空間資源リポジトリ NZ Cartographic and Geospatial Resources Repository では、旧版地図の画像ファイルがシリーズ別、図葉・年代順に整理され、一般利用に供されている。同国で刊行されてきたおよそすべての図葉が網羅され、地図ファン垂涎の一大コレクションになっている。

初期画面では、4つのカテゴリーが表示される。

・New Zealand Mapping Service (NZMS) series maps
 NZMSと呼ばれる地籍図、地形図、航空図等の旧シリーズ

・Land and Survey (L&S) series maps
 L&Sと呼ばれる上記以外の地図資料

・Topographic (Topo) series maps
 Topo50、Topo250等、新シリーズの地形図

・Digital Topographic (Topo) data
 上記新シリーズのデータファイル

1番目のカテゴリーが、いわゆる旧版地形図(NZMSシリーズ)だ。2009年以降に製作されたNZ Topoシリーズは3番目のカテゴリーに属する。また、そのデータファイルは4番目のカテゴリーにある。

リンクから次の画面に入ると、サーバのディレクトリ一覧が表示されてしまい、いささか困惑するのだが、ともかくこのサブディレクトリに、各シリーズ名のついたフォルダ(例:NZMS 001)が格納されている。官製地図のシリーズ名については、次の表を参考にしていただきたい。

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主なニュージーランド官製地図シリーズ

たとえば、NZMS 001のフォルダを選択すると、次はファイル形式別のフォルダだ(geotif:GeoTIFFファイル、jpg:JPEG画像ファイル、tif:TIFFファイル)。ここでたとえば jpg を選択すると、次の画面で各図葉のファイルが現れる。ファイルの命名例は次のとおり。

NZMS001_Index-NI_1943.jpg:
 NZMS 1シリーズの索引図(Index)、北島編(NI=North Island)、1943年版

NZMS001_N1-2_1954.jpg:
 NZMS 1シリーズの地形図、図番N1-2(N1とN2の接合図)、1954年版

したがって、見たい図葉にたどり着くには、あらかじめ索引図で図番を調べておく必要がある。地図画像は300dpiでスキャンされており、細部まで確実に読み取ることができる。

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2017年6月28日 (水)

ニュージーランドの1:250,000地形図ほか

前回紹介した1:50,000のほかにも、ニュージーランドにはいくつかの地形図シリーズがある。縮尺の大きいものから順に紹介していこう。

1:25,000

1:25,000(NZMS 2 シリーズ)は、1マイル1インチ地図である NZMS 1 と重なる時期に、ごく一部の地域で製作されたに過ぎない(下注)。製作期間も1942年から1960年代半ばまでで、少し間が空いて1972年に出た S83-5 Burnham 第2版が最後の更新となった。その後は刊行されていない。

*注 これとは別に、北島のオークランド Auckland では仕様の異なる NZMS 2A シリーズ(1940~51年)が、同じくワイオウル Waiouru では NZMS 2B シリーズ(1940~59年)が刊行されていた。

図郭は、NZMS 1 のそれを縦横3等分した東西15km×南北10km、地勢表現は50フィート間隔の等高線による。NZMS 1 と異なり、密集していない市街地に黒抹家屋の記号が使われており、建物の並び方を読み取ることができる。街中に点々と置かれた赤色は郵便局の位置を示し、Pt の注記も Post Office with Telephone の略だ(下注)。また、街路にかなりの密度で張り巡らされた市電の線路も、鉄道ファンとしては興味深い。NZMS 1 では併用軌道の記載が省略されてしまうから、貴重な図化資料といえる。

*注 凡例によれば、Pt は電話のある郵便局 Post Office with Telephone、PT は郵便・電話局 Post & Telephone Office、P のみは郵便局、t のみは電話局を示す。

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25,000図の例 ウェリントン市街(1952年8月初版)
Sourced from NZMS 2 Map N164/2 Wellington. Crown Copyright Reserved.

1:250,000

1950年代からの歴史をもつ1:250,000は、現在も更新が維持されている。初代シリーズは NZMS 18 で、1958年から1982年にかけて製作された。図郭は東西180km×南北120kmで、26面で全土をカバーした。地勢表現は、500フィート間隔の等高線にぼかし(陰影)を併用しているが、NZMS 1が未整備だったために等高線が描かれないエリアも散見される。

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250,000図表紙
(左)旧表紙 Christchurch 1982年版 (右)新表紙 Auckland 1997年版

1969年のメートル法採用をきっかけに、ニュージーランドでは1977年から新たなシリーズへの切替えが始まった。1:50,000の NZMS 260 シリーズに対して、1:250,000には NZMS 262 のシリーズ名が与えられた。図郭は東西200km×南北150kmに拡大され、18面で全土をカバーする。1985年に刊行が完了し、その後1998年まで更新が続けられた。

等高線間隔は100mで、ぼかし(陰影)も掛けられているが、NZMS 18 と同じ事情で、1:50,000の整備が間に合わずに等高線が省かれた図葉がある。その代替として、ハイライト(光の当たる側)に橙色、シャドーに灰色を置いて陰影を強調する2色法が試みられた。ここに自生林 Native Forest を表す青みを帯びた緑のアミが加わると、美的にも優れた図ができあがる。

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250,000図の例 トンガリロ山群
1980年初版は等高線がなく、2色陰影法で地勢を表現する
Sourced from NZMS 262 Map 6 Taranaki. Crown Copyright Reserved.
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同 1987年第2版で等高線が入れられた
Sourced from NZMS 262 Map 6 Taranaki. Crown Copyright Reserved.

地図記号は1:50,000のそれを簡略化したもので、デザインは共通だ。小縮尺で実形が表せなくなるためか、空港・飛行場には専用記号が設定されている。さらに国際空港 International airport には赤の、地方空港 Domestic airport には黄色の、それぞれ塗りが加わる。地物の記号でも、各種電波塔、送電線、灯台など、飛行中の目標または障害物に関わるものが取り上げられているのが興味深い。

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Topo250表紙
Auckland 2015年版

このNZMS 260 は、2009年にニュージーランド測地系2000に基づく NZ Topo250 へ一斉に切り替えられ、現在はこのシリーズが流通している。Topo50 と同じくA1判で縦長化されたので、図郭は東西120km×南北180kmとなり、それに伴い、面数は31面に増加した。

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1:250,000の3世代比較 オークランド
(左)NZMS 18 1977年版 マイル・フィート表示、道路は橙1色、注記はセリフ書体で、海に等深線が入る
(中)NZMS 262 1997年版 メートル表示、国道は赤、注記はサンセリフに
(右)Topo250 2015年版 地図表現はNZMS 262を踏襲、ぼかしは薄目に
Sourced from maps of NZMS 1 Wellington, NZMS 260 Wellington and Topo50 Wellington. Crown Copyright Reserved.

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500,000図表紙
North meets South 1988年版

1:500,000

大判用紙を使用し、かつ地図の方位を適宜傾けることによって、1:500,000(NZMS 242 シリーズ、下注)はわずか4面で全土をカバーする。1面に、東西400km×南北500kmという広大な面積が収まる。図名は土地鑑がないとややわかりにくいが、実質的に、Further North=北島北部、The North=北島主部、North Meets South=南島北部、The South=南島南部と考えるといいだろう。

*注 NZMS 242 としてはもう1面、フィジー諸島 Fiji Islands 図葉があった。

前身は1949~73年に刊行された NZMS 19 シリーズ(全7面)で、1976年から NZMS 242 に切り替えられた。後には Coast to Coast というシリーズの愛称もつけられている。1996年の測量事業再編で、1:500,000以下の小縮尺図が更新対象から外されたため、現在、公式サイトでダウンロードできるのはそれ以前の版だ(下注)。

*注 1:500,000は1995~96年版が最新になる。

地勢表現には、300m間隔の等高線(低地では150mのラインも)、段彩(高度別着色)、繊細なぼかし(陰影)の3種の手法が駆使されている。その効果を妨げないように植生表現では、自生林にアミではなく、より隙間の多いパターンが使われている。また、居住地名の注記は、読み取りやすいボールド体(太字)で強調される。ニュージーランドの地形図はどれも美しいのだが、中でもこれは出色の出来栄えと言えるだろう。この図版を利用して、航空図(NZMS 242A)も製作されている。

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500,000図の例 サザンアルプス中央部(1996年部分修正版)
Sourced from NZMS 242 Map 4 the South. Crown Copyright Reserved.

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1,000,000図表紙
South Island 1989年版

1:1,000,000(100万分の1)

1:1,000,000(NZMS 265 シリーズ)は、1980~89年の間に製作され、北島と南島の2面がある。この縮尺では等高線が省かれ、段彩とぼかしで地勢が表される。段彩は、海の深度にも用いられている。残念ながら、ぼかしは粗く、また暗めのトーンのため、山地はともかく、平野部がひどく沈んで見える。せめて道路網や市街地に明色を配すればよかったのだが、前者は薄茶色、後者は黒のアミで、アクセントにもなっていない。1島が1面に収まるという長所はあるものの、地図表現は1:500,000に劣ると言わざるを得ない。なお、裏面には、地名索引が印刷されている。

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1,000,000図の例 クライストチャーチ周辺(1989年版)
Sourced from NZMS 265 Map of the South Island. Crown Copyright Reserved.

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2,000,000図表紙
New Zealand 1996年版

1:2,000,000(200万分の1)

北島と南島を1面に収める1:2,000,000は、シリーズ名 NZMS 266 として1984年に製作され、1986年と1996年に改訂版が出た。地勢表現は段彩と繊細なぼかしによるが、地色が明るいので、上に載る道路網も容易に識別できる。市街地に黄色を配したのも効果的だ。また、文字サイズが小さくなるものの、自然地名も豊富に盛り込まれている。総合的に見て1:500,000を凝縮したような完成度を保っており、ニュージーランドの地理的な全体像を知りたいというときにお薦めできる地図だ。

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2,000,000図の例 南島中央部(1996年版)
Sourced from NZMS 266 Map. Crown Copyright Reserved.

最後に、ニュージーランドの地形図の入手方法だが、紙地図(オフセット印刷図)は、ニュージーランド国内の主な地図商で扱っている。地図商のリストは、「官製地図を求めて-ニュージーランド」にまとめている。また、LINZの特設ウェブサイト等では、閲覧およびデータダウンロードが可能だ。これについては、次回詳述する。

なお、ニュージーランドの官製地形図は、クリエイティブ・コモンズ表示3.0国際ライセンスに従い、旧版と現行版にかかわらず無償利用が可能となっている。その際、LINZは次の著作権表示を付すことを求めている。
"Sourced from [product name]. Crown Copyright Reserved"

■参考サイト
Land Information New Zealand (LINZ)  http://www.linz.govt.nz/

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2017年6月24日 (土)

ニュージーランドの1:50,000地形図

ニュージーランドは、2つの大きな島と周辺の小島から成る国だ。北島は本州の約1/2、南島は同じく約2/3の広さがあり、雄大な自然美で冒険好きの人々を惹き付けてきた。代表的な景観を挙げれば、北島ではトンガリロ国立公園やタラナキ山(エグモント山)に代表される際立った風貌の火山群、南島では背骨を成すサザンアルプスの氷河や、西岸の険しいフィヨルドだろうか。変化に富んだ地形はまた、それを写し取る地図に対する興味をも刺激し続ける。

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南島、ミルフォードサウンド
Photo by Wikikiwiman from English Wikipedia.

同国の地形図はかつて土地測量局 Department of Lands and Survey(1987年から、測量・土地情報局 Department of Survey and Land Information)が製作していた。1996年の組織改革により、同局はニュージーランド土地情報局 Land Information New Zealand、略称 LINZ に再編され、その際、測量事業部門が切り離されて、新設の国有企業 テラリンク・ニュージーランド有限会社 Terralink New Zealand Ltd に移管された。1998年からはさらに競争入札で民間委託されるなど事業の扱いは二転三転したが、2007年にLINZの直営に戻されて、現在に至る。

LINZは、ウェブサイトでの全面公開や二次利用の許諾など地図利用の制限緩和を進めるかたわら、採算的には厳しい紙地図(オフセット印刷図)の供給も維持している。多様なニーズに応えようとするニュージーランドの地形図事情について、3回にわたり紹介したい。

ニュージーランドの本格的な地形図作成は、まだイギリスの自治領だった1930年代に始まる。軍事戦略問題を研究する帝国防衛委員会 Committee of Imperial Defence が、全国の詳細な地形図の開発を政府に求めていた。その背景には、アジア・太平洋圏への進出拡張を図る日本に対する強い警戒があった。

航空写真測量による最初の1マイル1インチ地形図(略してワンインチマップ 1 inch map と呼ばれる)は、1939年に刊行されている。これはイギリスの方式に倣った、実長1マイルを図上1インチで表す縮尺図だ。分数表記では1:63,360とされる。NZMS 1(下注)と呼ばれたシリーズは、1947年の国家独立後も作成が続けられ、1975年に360面で全土をカバーした。更新はその後も1989年まで行われた。

*注 NZMS は New Zealand Mapping Service の略。ニュージーランドの政府刊行地図は「NZMS+シリーズ連番」の形で体系化されている。1マイル1インチ地形図は、図郭が東西45km×南北30kmの範囲、地勢表現は100フィート間隔の等高線とぼかし(陰影)による。

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1マイル1インチ地形図の例 南島カイアポイ Kaiapoi 周辺
Sourced from NZMS 1 Map S76 Kaiapoi. Crown Copyright Reserved.

同国では1969年にメートル法が採用されたが、そのときはまだ、NZMS 1が南島のフィヨルド地方で完成していなかった。そこで、当面このシリーズで全土を覆うことが優先されたという。しかし並行して、メートル法による新しい地形図の研究も進められた。NZMS 1の完成から間もない1977年には、縮尺1:50,000による新シリーズ NZMS 260 の刊行が開始されている。これは1997年に296面で全土をカバーし、2007年まで更新が続けられた。

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NZMS 260シリーズ表紙
(左)旧表紙 Wellington 1986年部分修正版
(中)Topomapロゴ入り Taumarinui 1987年版
(右)新表紙 Te Anau 2000年版

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Topo50表紙
Wellington 2014年版

NZMS 260は足掛け30年間使われたなじみ深いシリーズだったが、2009年9月に、デジタル編集技術の進歩と新測地系採用を反映したNZ Topo50 シリーズ451面に切り替えられた。縮尺は同じく1:50,000だ。地域座標系NZGD49を使用していたNZMS 260に対し、Topo50は、世界測地系WGS84に基づくニュージーランド測地系2000 New Zealand Geodetic Datum 2000 (NZGD2000) で投影されている。そのため、両者はグリッド位置がずれており、互換性がない。

ニュージーランドでも昨今、利用の大勢はオンラインに移行しているが、冒頭で述べたように、新シリーズ Topo50 でも紙地図の供給が継続されたことは注目すべきだろう(下注)。しかも図郭は、NZMS 260が東西40km×南北30kmの横長判なのに対して、Topo50は汎用のA1判を縦長に使っている。東西24km×南北36kmとカバーする面積が小さくなり、その分、面数は25%も増加した。

*注 対照的に、官製旅行地図(ハイキング地図)の印刷版は廃止された。旅行地図は稿を改めて紹介の予定。

在庫管理の手間がかさむにもかかわらず小判化を断行した理由は明らかでないが、表紙に記されている「エマージェンシー・サービス使用 Used by New Zealand Emergency Service」という語句が一つのヒントになる。南オーストラリア州などでも見られるように(下注)、消防や災害救助といった公共分野では紙地図の需要があり、それに応える形で刊行が維持されているようだ。紙寸や折りをコンパクトにしたのも、現場に向かう狭い車内での扱いやすさを考慮した可能性がある。

*注 南オーストラリア州ではエマージェンシー・サービスの名を冠した地図帳が刊行されている。「オーストラリアの地形図-南オーストラリア州」参照。

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Topo50およびTopo250索引図の一部
Topo250(1:250,000、黒枠の範囲)の図郭を縦横5等分したのがTopo50の図郭(緑枠)

では、1:50,000の仕様を詳しく見てみよう。地勢表現は、20m間隔の等高線にぼかし(陰影)が併用されている。等高線は茶色ではなく道路の塗りと同じ橙色で、サザンアルプスなどに見られる氷河と万年雪のエリアでは青に変わる。平野部では10mの補助曲線も用いられる。

地勢を際立たせるぼかしの技法は、1960年代にNZMS 1シリーズの図式改訂で初めて採用されたものだ。NZMS 260までは比較的濃いアミで立体感が強調され、見栄えがしたが、Topo50ではやや控えめになった。色彩では、植生のミントグリーンに、道路記号の塗りとして鮮やかな赤と橙が加わる。この2色の帯は明瞭なアクセントとなって図を引き立てている。

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同国最高峰クック山 Mt. Cook
NZMS260では、氷河が青の等高線とぼかしで美しく描かれる
Sourced from NZMS 260 Map H36 Mount Cook. Crown Copyright Reserved.
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北島東岸マウント・マウンガヌイ Mount Maunganui、陸繫島と砂州上の市街地
Sourced from NZMS 260 Map U14 Tauranga. Crown Copyright Reserved.

地図記号では、まず道路の路面状態を3種に分類するのが目を引く。通常は舗装か未舗装かの2パターンしかないが、ここではアスファルト sealed、マカダム舗装 metalled(砕石舗装のこと、さらにタールで固める場合もある)、未舗装 unmetalled と分けている。また、1車線橋梁 one lane bridge、渡渉地 ford などの記号もあって、原野を貫く一本道といったアウトバックの典型風景を彷彿とさせる。

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Topo50凡例 道路・その他

鉄道記号は、複線に旗竿形、単線に太い線が充てられて、やや違和感があるが、路線そのものが少なく、かつ複線区間は北島の都市部に限られている。そのほか、パイプライン pipeline(地中 underground と地上 above ground の別あり)、送電線 power line(鉄塔 on pylons と電柱 on poles の別あり)、電信線など、線状に延びる施設が細かく分類されているのも特色だ。

水部には、青と赤の×印を用いた冷泉 cold spring/温泉 hot spring の記号がある。また、大型の赤い×印が噴気孔 fumarole、それを〇で囲むと地熱採取孔 geothermal bore を表す。いずれも、活発な火山活動を前提にした記号だ。

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Topo50凡例 水部・植生

Topo50は1インチ地図から数えて3代目のシリーズだが、各シリーズの間で地図表現はどのように変化してきたのか。同じウェリントン Wellington 図葉から、都市と郊外(海岸、山地)のエリアを抜き出してみた(下図参照)。それぞれ左/上は1インチ図であるNZMS 1、中央がNZMS 260、右/下がTopo50だ。

NZMS 1とNZMS 260は、用いられる縮尺や単位(マイル・フィート/メートル)だけでなく、見た目もかなり異なる。特に目立つのは市街地の表現だろう。NZMS 1では、密集していない市街地で、道路と総描家屋をひとまとめにしたような特異な描き方をするが、NZMS 260では灰アミに変わる。実はどちらもイギリス流で、本家の図式改訂が持ち込まれた形だ。また、注記フォントは、セリフ書体(先端に飾りのある)からサンセリフ(飾りのない)になり、鉄道や道路など交通路の記号は太く強調されて、図上での視認性はかなり良くなった。

これに比べて、NZMS 260からTopo50へは、地図デザインも記号も軽微な変更にとどめられ、親和性が高い。ただしよく見ると、都市図ではTopo50 のほうが施設の注記(Schs=学校、Hosp=病院、Substn=変電所など)が充実している。郊外図でも、ウェリントン図葉では海岸の崖(海蝕崖)や山地の沢など、Topo50のほうが情報量が多く、目立たないところで改良の手が加えられているようだ。

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ウェリントン市街
(左)NZMS 1 1974年版 (中)NZMS 260 1983年版 (右)Topo50 2016年版
Sourced from maps of NZMS 1 Wellington, NZMS 260 Wellington and Topo50 Wellington. Crown Copyright Reserved.
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テラウィティ岬 Cape Terawhiti 周辺(ウェリントン西方)
(上)NZMS 1 1974年版 (中)NZMS 260 1983年版 (下)Topo50 2016年版
Sourced from maps of NZMS 1 Wellington, NZMS 260 Wellington and Topo50 Wellington. Crown Copyright Reserved.

次回は、1:50,000以外の縮尺図を紹介する。

■参考サイト
Land Information New Zealand (LINZ)  http://www.linz.govt.nz/

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 ニュージーランドの1:250,000地形図ほか
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 オーストラリアの地形図-連邦1:100,000
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2017年5月13日 (土)

オーストラリアの地形図-タスマニア州 II

タスマニア州の第一次産業・公園・水・環境省 Department of Primary Industries, Parks, Water and Environment が2015年4月に作成した「タスマップ地形図作成 将来の方向性 TASMAP Topographic mapping Future directions」というパンフレットがある。その中でタスマップ(下注)の将来の方向性について、次の5項目が提案されている。

*注 現地の発音はタ「ズ」マップだが、タスマニアの慣用表記に合わせて、本稿ではタスマップと記す。

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「タスマップ地形図作成 将来の方向性」表紙

1.新たに1:50,000地形図シリーズを導入する
2.新たに1:50,000タスマニア マップブックシリーズを導入する
3.1:25,000、1:50,000、1:100,000、1:250,000基本図シリーズのデジタル版を導入する
4.1:25,000および1:100,000地図シリーズの現行版を保管し、今後改訂を行わない
5.1:250,000シリーズ、国立公園・観光・レクリエーション地図、タスマニア市街地図帳の保守・製作を継続する

この方針が出された背景には、オンラインマッピングやドライビング・ナビゲーションの急速な普及と技術的進化がある。その影響下で人々は、地図上の情報が常に最新であることを期待し、そのことが紙地図需要の低迷に拍車をかける一因になっている。地図製作・供給の現場はいずこも、この状況にどう対処していくべきかという共通の悩みを抱えているのだ。

前回紹介したタスマップの1:25,000地形図は全415面あるが、製作後の経過年数は平均20年で、40%は25年以上放置されている。1:100,000図40面でも、平均経過年数は10年だ。そして地形図は、点数が多い割に大して売れない。例えば、タスマップ1:25,000図で年間販売実績が100部を越えるのは、わずか14面に過ぎない。

それなら紙地図はもう不要かというとそうではなく、タスマニアでは例えば、エマージェンシーサービス組織や、人里離れた奥地を歩くブッシュウォーカーらに、まだ根強い需要があるという。それが紙地図の全面廃止ではなく、縮尺シリーズの整理という穏当な結論につながったようだ。

2015年の方針のなかで最も興味を惹かれるのは、1:50,000地形図シリーズを新たに導入するという点だ。縮尺1:50,000は、従来のタスマップの地図体系にはなかった。更新停止となる1:25,000図と1:100,000図の「最良の機能を結合して、より良質で適切な製品を提供する」というコンセプトで開発された1:50,000地形図とは、どのような中身なのか。さっそく、タスマップの販売サイトを通じて現物を取り寄せた。

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1:50,000地形図表紙
(左)TQ08 Wellington 第1版 2015年 (右)TM06 St Clair 第1版 2015年

上記パンフレットによれば、1:50,000地形図は80面で州全域(離島のマッコーリー島 Macquarie Island を除く)をカバーする。2015年に刊行がスタートしたが、優先的に1:25,000図が在庫切れのエリアや、需要が大きいエリアの図が刊行されていて、2017年3月現在の刊行面数は23面となっている。

図郭は1:25,000と同様にUTM座標区切りで、1面で東西40km×南北30kmのエリア(面積1200平方km)を収める。用紙寸法を拡大した効果もあって、これで1:25,000図(200平方km)の6倍の面積が描けることになり、その分、面数が減ってストックの維持コストも軽くなるはずだ。

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1:50,000索引図の一部(2017年3月現在)、緑の図葉が刊行済

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1:50,000の凡例

既存の1:25,000図と、内容を比べてみよう。地図表現では、配色に目立った変化はなさそうだ。等高線間隔は日本の1:50,000と同じ20mになったが、ぼかし(陰影)が付されているので、それがない1:25,000より地勢を感じ取りやすい。ただし、1:100,000図の明瞭なぼかしに比べれば控えめだ。植生は、1:25,000で8種に分類されていたものが4種に簡素化された。森林 Forest と低木林 Scrub の高さで2種に分け、ほかに植林地、果樹園・葡萄園を区別する。

地図記号では、市町村界 Local Government Area boundary がグレーの太線で存在を主張しているのに気づくが、これは1:25,000図式の踏襲だ。1:50,000ではさらにこの線に沿って市町村名が付された。建物関連では警察署、消防署、救急施設、州立エマージェンシーサービス、病院、郵便局といった公共サービス関連の記号がカラフルなデザインで目を引く。上述のように、こうした組織内での利用が意識されているのだろう。

業務用としてはともかく、個人の山歩きなどには使えるだろうか。セント・クレア湖 Lake St Clair 周辺の図を見てみると、主要な登山道は名称ともども網羅されていた。山小屋の場所と名称も記されている。少なくともタスマップが従来出している旅行地図(下注)に描かれる対象物は、きちんと転載されているようだ。なお、旅行地図のような耐水仕様の用紙ではないので、野外での本格的な使用には注意が必要だ。

*注 参考にしたのは、タスマップ刊行の "Lake St Clair Day Walks" 2016年版。

ところで、1:100,000もそうだったが、図名に必ずしも主要地名は使われない。明確な命名基準は知らないが、図郭の中央近くにある自然地名を用いることが多いようだ。州都ホバート Hobart が載る図葉は「ウェリントン Wellington」で、これは町の背後にあるピークまたは山地 range の名だ。その北隣の図葉「グリーン・ポンズ Green Ponds」は、目を凝らして探すとジョーダン川 Jordan River 支流の小河川の名だった。

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1:50,000図 市街地の例 TQ08 Wellington 2015年 表紙を拡大
© Tasmanian Government, 2017
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1:50,000図 山地の例 TM06 St Clair 2015年 表紙を拡大
© Tasmanian Government, 2017

方針の第2項目にあるとおり、1:50,000は1枚物の折図のほかに、地図帳(マップブック Map Book) としての刊行も予定されている。州全域を301図に分け、3分冊で刊行されるという。マップブックはすでにビクトリア州、南オーストラリア州で実例があるが、上記パンフレットでは2007年製作の旧版を置き換えると書いているので、企画自体はタスマニア州が先鞭をつけていたのかもしれない(下注)。

*注 残念ながら筆者は2007年版を実見したことがない。

一方、既存の1:25,000図と1:100,000図は、オフセット印刷としては在庫限りとなるが、直販サイト TASMAP eShop(下記参考サイト)でオンデマンド印刷による販売が継続される。また、これらを含むタスマップの各縮尺図は、同じ直販サイトでデジタルファイルのダウンロード販売も行われている。これにはGPSデバイスやGISソフトで使えるGeo TIFFファイルと、グーグルアース等で開くKMZファイルの2種類がある。オンデマンド印刷の価格が55オーストラリアドルときわめて高価なのに対して、ダウンロードの価格は1件当たりわずか2ドルだ。

*注 ちなみにオフセット印刷図は9.95ドル(2017年5月現在)。

■参考サイト
TASMAP eShop  https://www.tasmap.tas.gov.au/

また、タスマップには地図閲覧サイト LISTmap(タスマニア土地情報システム Land Information System Tasmania、下記参考サイト)も用意されている。ここでは、ベースマップとしてデジタル地図のほかに、1:250,000図と1:25,000図のラスタ画像を表示できる。画像はやや鮮明さに欠けるが、読図には支障がない。

■参考サイト
LISTmap  http://maps.thelist.tas.gov.au/

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LISTmap 初期画面
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地形図画像は右上の Basemaps ドロップダウンリストの "Scanned Maps" を選択
ちなみに "Topographic" はデジタル版地形図
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左端のスケールバーで縮尺を大きくすると、1:250,000画像が表示される
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さらに縮尺を大きくすると、1:25,000画像が表示される

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2017年5月 7日 (日)

オーストラリアの地形図-タスマニア州 I

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オーストラリアの地図を眺めると、大陸の南東沖に逆三角形をした島が見つかる。タスマニア島 Tasmania(下注1)だ。大陸との比較で小さな島と思われがちだが、面積は約64,500平方km(下注2)と北海道の8割強の広さがあり、周辺の島嶼とあわせて一つの州を形成している。歴史的にも、大陸の東半を占めていたニューサウスウェールズからの分離が1825年で、他の植民地に一歩先んじており、早くから独自の行政体制を整えていたことが知れる。

*注1 1856年まではヴァン・ディーメンズランド Van Diemen's Land と呼ばれていた。Tasmania の実際の発音は、タズマイニアに近い。
*注2 周辺島嶼を含めたタスマニア州全体の面積は68,401平方km。

タスマニアはまた、地形図の分野でも他州をしのぐ技術と実績を有している。オーストラリアでは1:100,000以下の縮尺図は連邦の測量機関(現在はジオサイエンス・オーストラリア  Geoscience Australia)が担当する原則なのだが、タスマニアだけは例外で、1:100,000も1:250,000も州の測量機関によって独自の体裁で作られてきた。

しかし、地形図体系の見直しという世界レベルの大波は、ここタスマニアにも押し寄せている。その結果、2015年には思い切った方針転換が発表されるに至った。豊富なラインナップを誇ったタスマニアの地形図は、今後どうなっていくのか。2015年以前の体系と以後の体系について、今回と次回で概観してみたい。

タスマニア州の測量機関は、第一次産業・公園・水・環境省 Department of Primary Industries, Parks, Water and Environment のもとで2015年に設立されたランド・タスマニア Land Tasmania だ。それまでは情報・土地サービス局 Information and Land Services Division と称していた。

官製地図のブランドである「タスマップ(タズマップ) TASMAP」は、民間とは一線を画した高品質な地図製品をユーザーに認識してもらうとともに、組織変更による影響を避ける目的で、1973年に初めて導入された。このアイデアは他州政府にもすぐに取入れられて、ビクマップ VICMAP(ビクトリア州)やサンマップ SUNMAP(クイーンズランド州)が誕生している。

州全域(離島のマッコーリー島 Macquarie Island を除く)をカバーする最大縮尺図は1:25,000で、全部で415面ある。タスマップの公式サイトによれば、このシリーズは「行政や産業用および一般用途の重要な資料である。環境管理、緊急事態管理、農場設計、鉱物探査に使われる。また、ブッシュウォークやマウンテンバイク、乗馬などのレクリエーションのユーザーにもおなじみである。」

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1:25,000地形図表紙
(左)旧版 4038 Cradle 第1版 1986年 (右)新版 5225 Hobart 第4版 2008年

図郭はUTM(ユニバーサル横メルカトル)座標系で区切るもので、1面に東西20km×南北10kmの範囲を収める。地図用紙としてはかなり横長になる。これに対して1:100,000の図郭は、経緯度で区切る国際図に準拠しているため、両者の間には全く整合性がない。デジタル図で主流になったUTM座標系の図郭を早くから採用した先見性に驚かされる一方、各縮尺間で図郭や図番が体系化されていないため、地図を選ぶときに不便なのも事実だった(下注)。

*注 次回紹介するが、新1:50,000でもUTM座標系の図郭が踏襲されている。

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1:25,000索引図
図中の青枠が1:100,000図郭で、1:25,000図郭とは合わない
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1:25,000図の例 5225 Hobart 2008年
© Tasmanian Government, 2017

1:25,000図は、全国をカバーする大縮尺基本図として、1970年代後半から整備が始められた。上の表紙画像で左側の黄色地のものは2003年以前の旧版で、旧測地系 AGD66に基づいている。右側のタスマニアのレリーフ地図を強調したデザインは、2003年以降の新版だ。測地系が新しい GDA94に切り替えられたため、旧版との間に生じるずれを埋める必要があった。それで図面には、上縁および右縁に隣接図との重複部分が設けられ、いわゆる裁ち落としの体裁が取られた。

等高線は日本の1:25,000と同じ10m間隔で、地形の詳細とともに、所有地や土地区画などの地籍情報も表示されている。地図記号では道路を、常用として維持されるものと、利用制限のあるものに分類するのがユニークだ。前者は実線の記号、後者は破線が用いられる。また、舗装の有無は赤と橙の色で区別する。キャラバンパークやキャンプ場と並んで、公共トイレ、ごみ箱設置場所の記号が定義されているのもおもしろい。

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1:25,000図の凡例

残念ながら1:25,000は更新停止の断が下されたため、オフセット印刷図の販売も在庫限りで終了する。品切れになった図葉はオンデマンド印刷で対応するとともに、デジタルファイルでの供給もすでに実施中だ。なお、1:25,000はタスマニア土地情報システム Land Information System Tasmania (LIST) のベースマップとして、ウェブサイトでの閲覧も可能になっている(次回詳述)。

冒頭でも述べたように、1:100,000と1:250,000も州が連邦に代わって製作していた。「タスマップと地図作成の歴史 History of TASMAP and Mapping」(タスマップ公式サイト)はその経緯について、「連邦が1:100,000縮尺を採用したとき、タスマニアには包括的な航空測量計画と地図作成能力があった。そこで、全国シリーズの中でタスマニアの全ての地図を編集し印刷するという協定に至った。1:50,000地形図シリーズに置換えられた2015年まで、タスマニアはこのシリーズの製作を継続した。タスマニアを完全にカバーする小縮尺図は縮尺1:250,000で提供され、現在も維持されている」と述べている。

1:100,000は、州全域を41面でカバーする(マッコーリー島を除く、下注1)。かつては北東沖のフリンダーズ島 Flinders Island と周辺島嶼が4面に分かれていたが、1面にまとめられた。標準図郭は経度30分、緯度30分の縦長判だ。等高線間隔は20mで、繊細なグラデーションのぼかし(陰影)が入れられ、植生を表す緑の塗りとともに、地勢が美しく浮かび上がる。連邦製作の1:100,000に比べても、描画技術は一段上だ(下注2)。

*注1 8512 Maria 図葉が索引図から消えたため、入手できるのは40面。
*注2 連邦1:100,000との比較については「オーストラリアの地形図-連邦1:100,000」も参照。

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1:100,000地形図表紙
1:25,000の4桁図番と混同されないように、タスマニア1:100,000の表紙には図番の記載がない(背表紙にのみ記載される)。
(左)Derwent 第5版 1987年 (右)South Esk 第5版 2007年
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1:100,000図の例 8315 Pipers 2000年
© Tasmanian Government, 2017

連邦図とタスマニア図の相違点は、他にもある。表紙デザイン、地図の折り方、そして折ったときのサイズもそうだ。連邦図の折り方には変遷があるものの、折った状態では横10cm×縦25cmの縦長サイズだ。一方、タスマニア図は、縦長の用紙を横5ツ折、縦4ツ折にするため、横11.5cm×縦17.5cmとコンパクトサイズになる。

図名の付け方もおもしろい。連邦図は図郭内の主要地名を用いるオーソドックスな命名法だが、タスマニア図は都市や集落名ではなく、河川、湖沼、湾、山、岬、島といった自然地名を採用する。例えば、州都ホバート Hobart が載っているのは川の名から採った「ダーウェント Derwent」図葉で、都市はその河口にある。第二の都市ロンセストン Launceston も同じく川の名の「パイパーズ Pipers」図葉の範囲内だが、こちらはパイパーズ川の流域にはない。表紙の右上にその図葉に含まれる主要地名が列挙されているのは、直観的な図名でないことへの対策でもあるだろう。

連邦が1:100,000印刷図の改訂を停止したことに伴い、タスマニアも1:100,000の更新維持を断念した。

一方、1:250,000は、縮尺を連邦と揃えているものの、内容はタスマニアのオリジナル図と言い切ってよい。図郭からして連邦の標準を無視し、2倍近くある大判用紙を用いて、州全域をわずか4面でカバーする(マッコーリー島、キング島 King Island 等は挿図)。表紙デザインや折寸も独自なら、図式もほぼ独自仕様だ。

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1:250,000地形図表紙
(左)South East 第1版 1990年 (右)North East 第4版 2010年
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1:250,000索引図

等高線が100mと連邦図の50mに比べて粗いものの、ぼかしと段彩の組合せで補われている。かつては高度で色を分ける段彩だったが、現行版は色を緑から茶色へ連続的に変化させて、より滑らかな立体感を実現している(下図参照)。植生の表現は省かれており、地勢表現に徹する形だ。道路には道路番号とともに区間距離が添えられ、道路地図の機能も併せ持つ(下注)。注記は隣接図にまたがって配置され、4面を接合して大きな壁掛け図 Wall map にできるよう設計されている。

*注 1:100,000にも同じように区間距離が描かれている。

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1:250,000図の例
(上)North East 1980年(下)North East 2010年
© Tasmanian Government, 2017

ランド・タスマニアの発表によれば、1:250,000は今後も維持され、4年間隔で改訂されることになっている。またLISTでも無償のデジタル版として提供され、この点は連邦と歩調を合わせているようだ。

これが2015年以前の地形図体系だ。結局、既存縮尺では、1:25,000と1:100,000が廃止、1:250,000だけが存続ということになる。次回は、ランド・タスマニアが提案する地形図体系の今後の方向性について、新たに開発された1:50,000シリーズを含めて紹介したい。

■参考サイト
ランド・タスマニア  http://dpipwe.tas.gov.au/land-tasmania
タスマップ TASMAP  http://dpipwe.tas.gov.au/land-tasmania/tasmap

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 オーストラリアの地形図-連邦1:100,000
 オーストラリアの地形図-連邦1:250,000
 オーストラリアの地形図-ビクトリア州

2017年4月29日 (土)

オーストラリアの地形図-ノーザンテリトリー

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巨大な岩山で知られるウルル Uluru(英語名エアーズロック Ayers Rock)にカタジュタ Kata Tjuta(ジ・オルガズ The Olgas)、原生林と滝と断崖のカカドゥ Kakadu。大自然の中に彫り出された絶景は、オーストラリアの観光スポットとして必ず挙がる名だ。大陸縦断列車「ザ・ガン The Ghan」の運行に伴って、拠点都市ダーウィン Darwin やアリススプリングズ Alice Springs の地名を耳にすることも少なくない。これらはみなノーザンテリトリー Northern Territory(北部準州)の域内にある。

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ウルル(エアーズロック) 1:100,000特別図 Uluru-Kata Tjuta National Park 第2版 1996年 (×2.0)
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0

ノーザンテリトリーは、大陸中央部の北半分を占めている。連邦直轄地として1911年に領域が確定されたのち、短い南北分割期間を経て、1931年に再合併されて今に至る。1978年に自治権を与えられたが、日本の4倍近い面積に対して人口はわずか24万人だ。

地図作成はインフラストラクチャ・プランニング・ロジスティクス省 Department of Infrastructure, Planning and Logistics の所管とされている。2000年当時の古いデータで恐縮だが、域内の地形図の種類とカバーする範囲は以下の通りだ。

1:1,000,000:連邦 AUSLIG(現 ジオサイエンス Geoscience)所管、全域をカバー
1:250,000:連邦 AUSLIG 所管、全域をカバー
1:100,000:連邦 AUSLIG 所管、全域をカバー、ただし内陸部は編集原図のコピーを提供
1:50,000:連邦 AUSLIG 所管(製作は王立オーストラリア測量隊 Royal Australian Survey Corps)、北岸(主に南緯17度以北)およびスチュアート・ハイウェー Stuart Highway(=南北縦貫道)沿線で作成

他に1:25,000はダーウィン地域 Darwin Area、キャサリン Katherine、アリススプリングズおよびマリー川地域 Mary River Region で、1:10,000がダーウィンおよびアリススプリングズで作られているとされる。

このうち連邦所管の地形図の多くはネット公開されているので、いつでも図上遊覧ができる。冒頭に挙げた地域を地形図で追ってみよう。

ウルルを描いた1:100,000図は、上に掲げた。この地域では、1:100,000区分図(5047 Mount Olga および 5147 Ayers Rock)が編集原図のコピーで頒布されているが、それとは別に特別図「ウルル=カタジュタ国立公園Uluru-Kata Tjuta National Park」が作られている。掲げた画像はその一部だ。ウルルの山体には濃いめのぼかし(陰影)がかけられ、ボリュームのある形状が浮かび上がる。西麓から頂上へ直登する登山道や、有名な夕景を眺める場所(図の左上に Sunset Viewing Areaと注記)も描かれている。

一方、カタジュタはウルルの西25kmに位置する。36個の岩山から成るといわれ、図上でもかなりの数の閉じた等高線が確認できる。同じ1:100,000特別図の一部だが、こちらは50%縮小で表示しているので、距離感覚にはご注意を。

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カタジュタ(ジ・オルガズ) 1:100,000特別図 Uluru-Kata Tjuta National Park 第2版 1996年
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0

トップエンド Top End(下注)にあるカカドゥ国立公園からは、ジムジム・フォールズ Jim Jim Falls とツイン・フォールズ Twin Falls の周辺の1:100,000地形図を切り出してみた。図右下はジムジム・フォールズの部分を2倍拡大したものだ。この一帯は比高200m前後の断崖が連なり、滝はそれを切り裂くように懸かっている。また、周辺を覆う薄緑のドットパターンは、密度が中程度の植生を表す。掲載範囲外には、植生の平均高2mという注記が見られる。

注:トップエンドは、ノーザンテリトリー北端の半島部分を指す。

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ジムジム・フォールズとツイン・フォールズ 1:100,000 5471 Jim Jim 1990年
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0

港町ダーウィンはノーザンテリトリーの州都で、最大の都市でもある。1:250,000旧図(1962年編集)では、湾に突き出した旧市街の傍らから、3フィート6インチ(1067mm)軌間のノース・オーストラリア鉄道 North Australia Railway(NAR、1976年休止)が内陸に延びる様子が描かれている。一方、新図(2004年版)の鉄道は、ザ・ガンが走る大陸縦断のアデレード=ダーウィン鉄道 Adelaide - Darwin Railway(図では ALICE SPRINGS DARWIN RLY と注記) だが、ダーウィン駅も通るルートもNARとは全く異なる。この図の範囲では、NARの廃線跡が道路として利用されているようだ。

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ダーウィンとその周辺 1:250,000 SD52-04 Darwin 1963年
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0
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ダーウィンとその周辺 1:250,000 SD52-04 Darwin 2004年
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0

アウトバックのど真ん中に位置するアリススプリングズは、アデレード=ダーウィン鉄道の中継基地であり、ウルル=カタジュタ観光の出発地としても知られる。旧図は1958~62年の編集で、1968年に赤色で訂補が入った版だ。地勢の概観は、等高線を用いずぼかし(陰影)のみで表現されている。鉄道は、かつてアデレードとこの町を結んでいた1067mm軌間のセントラル・オーストラリア鉄道 Central Australia Railway だ。

一方、下の新図(2002年版)の地勢表現は等高線のみなので、旧図とは見かけが大きく異なる。40年の間に市街地は拡大し、アデレード=ダーウィン鉄道(gauge 1435mm と注記)も登場したが、駅の位置は動いていないようだ。

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アリススプリングズとその周辺 1:250,000 SF53-14 Alice Springs 1977年(1958, 62年編集、1968年修正)
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0
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アリススプリングズとその周辺 1:250,000 SF53-14 Alice Springs 2002年
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0

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 オーストラリアの地形図-連邦1:250,000
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 オーストラリアの地形図-南オーストラリア州
 オーストラリアの地形図-西オーストラリア州

2017年4月25日 (火)

オーストラリアの地形図-西オーストラリア州

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南オーストラリアが英語で "South" Australia であるのに対して、西オーストラリアは "Western" Australia になる。名称はスワン川植民地 Swan River Colony を改称した1832年から使われていて、南(1836年)よりわずかながら先輩だ。州は大陸の西側1/3を占めている。面積253万平方kmで日本の約7倍、世界でも2番目に大きな行政区だそうだ。約260万人の人口の約8割が、州都パース Perth と周辺の都市圏に集中する。オーストラリアの輸出量の6割近くを産出するという大規模鉱業もそこに地域本部を置く。

地形図を所管しているのは西オーストラリア州土地情報局 Western Australian Land Information Authority だが、「ランドゲート Landgate」というブランド名で呼ばれることが多い。それ以前は土地情報省 Department of Land Information (DLI) で、さらに遡れば1829年創立の測量総局 Surveyor-General's Office を起源とする歴史ある組織だ。

筆者は2003年にDLIに地図事情を問い合わせたことがある。当時、州製作の地形図は縮尺1:1,000,000(R313シリーズ)9面で全域をカバーしていたものの、1:100,000や1:250,000はなく、連邦 AUSLIG(現 ジオサイエンス Geoscience)の刊行図が案内されていた。より大縮尺の1:25,000や1:50,000は、パースを含む南西岸をかろうじて固める程度の刊行状況だった。

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地形図索引図の一部

それに比べれば、近年のランドゲート製品の充実ぶりは目を見張るものがある。地形図はWA トポ(トポ Topo は地形(図)を意味する Topographic の略)と呼ばれ、広大な州全域を1:25,000、1:50,000、1:100,000のいずれかでカバーしている。ここ10数年で整備されてきたので、座標系はすべてGDA94に統一されている。

縮尺別に見ていこう。まず1:25,000の製作範囲は、人口が集中するパースメトロ(都市圏)Perth Metro やサウスウェスト(南西地区)South West が中心だが、それだけでなく内陸部にも相当数が点在している。おそらく人が活発に動いているエリアはすべてカバーしているのだろう。図郭はUTMグリッドで区切られ、経度緯度とも7分30秒相当の範囲を収める。1:50,000のそれを縦横2等分したエリアだ。等高線間隔は地勢に応じて10mまたは20mになっている。

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1:25,000図(暫定版 provisional)の例
2034-II-SW Perth 2011年
© Western Australian Land Information Authority (Landgate), 2017

対して1:50,000の整備範囲は、南西部の1:25,000エリアの外縁に加えて、天然資源開発が盛んな北西部にも拡大されている。AUSLIGの同縮尺図とほぼ重なるので、その成果を引き継いでいるのかもしれない。図郭はUTM区切りで、経度緯度とも15分相当だ。改訂頻度は、パース都市圏は毎年、地方の中心地では2~5年毎とされている。

1:25,000、1:50,000図のないエリアでは、1:100,000が作成されている。

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1:50,000図の例
2434-4 Kellerberrin 2014年
© Western Australian Land Information Authority (Landgate), 2017

地図記号はどうか。1:50,000図で見ていくと、道路の記号は他州とさほど変わらない。国道 National Highway、主要道 Main Road とそれ以外(Minor Road など)とが色で分けられ、舗装の有無は実線か破線で区別される。興味深いのはその後で、建物記号では、固有のデザインが充てられるのは教会 Church と電波塔 Communication Tower だけだ。他は、点または矩形の単純形で片付けられてしまう。注記を伴いさえすれば、記号に凝る必要はないということだろうか。水部記号では、乾燥気候でふだん水は涸れている non-perennial ものらしく、すべて破線が使われる。同じ理由で、植生の記号がまったくない。

一方、土地利用は色の塗り分けで示され、市街地はレモンイエロー、工業地域はライラック、公園やゴルフ場はアップルグリーンだ。ゴルフ場はさらにミントグリーンを使ってコースが明示されている(上記1:50,000図ではケラーベリン Kellerberrin 市街地北方の小山の周囲に見える)。

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1:50,000の凡例

ランドゲートは、オフセット印刷図を全廃してしまった。現在、供給方法は地理参照型PDFファイル(CD焼き付け)か、オンデマンド印刷になっている。パース近郊フリーマントル Fremantle の地図商はそのショッピングサイトで、印刷図でも自社にある大判プリンタで出力するから速く届けられる、と言っている。販売店にとっては収納スペースも在庫チェックも不要なので助かるはずだ。にもかかわらず、1面あたりの価格が前者で12.39豪ドル、後者では26ドルというのはいささか高く、利用者にはデジタル化の恩恵があまり届いていない。

ランドゲートの地形図は、同局公式サイトからリンクしている "Map Viewer" という地図サイト経由で直接発注できるほか、西オーストラリア州の地図商でも扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

■参考サイト
ランドゲート Landgate  https://www.landgate.wa.gov.au/
Map Viewer https://uat.landgate.wa.gov.au/bmvf/app/mapviewer/

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2017年4月16日 (日)

オーストラリアの地形図-南オーストラリア州

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キャンベラのある首都特別地域は別として、本土のすべての州・準州と境を接しているのは、南オーストラリア州 South Australia だけだそうだ。トリビアが示すとおり、同州は大陸の真ん中にあり、南はグレートオーストラリア湾 Great Australian Bight に面している。州人口の3/4以上が州都アデレード Adelaide とその周辺に集中し、ほかに小都市は点在するものの、それを除けばいくつかの低山地と乾燥または半乾燥の放牧地がどこまでも続く土地柄だ。

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1:50,000図の例
公園緑地に囲まれたアデレード中心街
6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0

南オーストラリア州の地形図作成は、環境・水・天然資源省 Department of Environment, Water and Natural Resources (DEWNR) が所管している。官製図の愛称は「マップランド Mapland」で、どこかのテーマパークと間違えそうな響きだ。

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1:50,000地形図表紙の変遷
(左)6028-I & PT 6128-IV Lincoln 1981年
(右)6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年

連邦ジオサイエンスが1:250,000や1:100,000縮尺図で州全域をカバーしている(下注)ためか、マップランドは作成範囲を絞っている。市販されている地形図は1:50,000のみで、それも主として沿岸部の比較的人口が多いエリアでの刊行にとどまる。手元にある2002年版と2016年版の索引図を比較してもエリア拡張の気配がないから、これはもう確定事項なのだろう。

*注 ただし内陸部(いわゆるレッドラインの内側)の1:100,000は、編集原図のコピーで頒布されている。

1:50,000の図郭は、1:100,000のそれを縦横2等分した経度15分、緯度15分の範囲だ。初版は1970年代後半に遡り、現在は1980年代後半から2000年代前半製作のものが出回っている(下注)。旧版は主として2ツ折りで青表紙がついていた。1990年前後から印刷方式がプロセスカラー(CMYKの4色)になり、3ツ折りで、表紙もカラーの風景写真を配したものに変わった。座標系は2000年を境に、それ以前の版は旧測地系 AGD66またはAGD84、以降は新測地系 GDA94 が適用されている。

*注 同州アンリー Unley の地図商サイトhttp://cartographics.com.au/ の記述による。

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地形図の図郭
中央に数字4桁がある太枠の図郭が1:100,000、それを縦横2等分した細枠が1:50,000の図郭

等高線間隔は10mで、日本の同縮尺図の20mと比べると精度は高い。それなら、対象となる一帯が緩傾斜地ばかりかというとそうでもなく、アデレード・ヒルズ Adelaide Hills を含むマウント・ロフティー山脈 Mount Lofty Ranges やその北に続くフリンダーズ山脈 Flinders Ranges の山腹は、結構な斜度がある。こうした場所は等高線でぎっしりと埋まることになる(下図参照)。

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1:50,000図の例
傾動山地の断層崖が続くアデレード・ヒルズの西斜面。アデレードメトロのブレア線がくねりながら上っていく
6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年、6627-4 & PT 6527-1 Noarlunga 2001年
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0

地図記号にはさほど特徴的なものはないが、あえて挙げるとすれば、一つは道路の舗装区分だ。他州では未舗装道に薄赤やオレンジを充てるところ、マップランドは茶色にしているので、妙に実感がある。また、旧版では道路の分類基準が等級別(主要道、地方道等)ではなく車線数で、細線が1車線、太線が2車線以上を表していた。しかし現行図では、他州と同じように等級別に改められている。

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1:50,000の凡例(2001年)

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「マウント・ロフティー山脈エマージェンシーサービス・マップブック」表紙

上述のように単品の折図は更新中止になっているようだ。しかし別途、主要地域をまとめた地図帳シリーズが、「エマージェンシーサービス・マップブック Emergency Services Map Book」の名称で刊行されており、比較的新しい情報が入手できる。これは以前、CFSマップブック CFS Map Book と呼ばれていたもので、本来、地方消防隊 Country Fire Service (CFS) 、州立災害救助隊 South Australian State Emergency Service (SES) が実施している緊急業務を支援するための内部資料だが、一般にも販売されてきた。

マップランドのサイトによれば、現在8冊刊行されており、沿岸部の地域を1:50,000または1:100,000でカバーしている(ただし、西海岸 West Coast の一部は1:250,000)。例えば、アデレード周辺域は「マウント・ロフティー山脈編 Mount Lofty Ranges Emergency Services Map Book」に収録されており、人気の観光地カンガルー島 Kangaroo Island には「カンガルー島編 Kangaroo Island Emergency Services Map Book」がある。現地価格79豪ドル(1ドル85円として6715円)と少々値は張るが、地形図を1枚ずつ買うよりはずっと経済的だ。

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マップブックの図例
from "Mount Lofty Ranges Emergency Services Map Book"
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0

マップランドの地形図(オフセット印刷図)は、オーストラリア国内の主要地図商で扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

なお、前回のビクマップと同じく、マップランドでも地形図の閲覧サイトは作られていない。Map Finder というサイトがあるが、これは地図や空中写真の発注(有料)のためのものだ。上記のマップブックや最新地形図(プロッター出力)は、このサイトで入手できる。

■参考サイト
環境・水・天然資源省 Department of Environment, Water and Natural Resources (DEWNR)
http://www.environment.sa.gov.au/
Map Finder
https://apps.environment.sa.gov.au/MapFinder/

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2017年4月 9日 (日)

オーストラリアの地形図-ビクトリア州

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VICMAP印刷図索引図
2014年版表紙

古風な雰囲気の残る州都メルボルン Melbourne のゆったりとした美しい街並みが、人々がこの州に抱くイメージを規定する。ビクトリア Victoria(下注)は、オーストラリア大陸の南東部の一角を占める州で、面積こそ本土で最小だが、人口はニューサウスウェールズに次いで多い。

*注 「ヴィクトリア」と書きたいところだが、オーストラリア観光局の表記に従って「ビクトリア」とする。

州の繁栄は、19世紀半ばに北中部のバララット Ballarat やベンディゴ Bendigo 周辺で起きた金の採掘ブーム、いわゆるゴールドラッシュによってもたらされた。渦中の地への玄関口として、ポートフィリップ湾 Port Phillip Bay に面するメルボルンやジーロング Geelong も急速に発展した。大陸第一の都市となったメルボルンが、オーストラリア連邦発足に際してシドニー Sydney と首都の座を争い、結局、双方痛み分けで内陸の小村キャンベラ Canberra に決まった話は有名だ。それでも首都が建設されるまでの約20年間、首都機能を果たしたのはメルボルンだった。

現在、ビクトリア州の地形図作成は、環境・土地・水・計画省 Department of Environment, Land, Water and Planning (DELWP) が所管している。州の略称が VIC なので、地図シリーズの愛称も「ビクマップ Vicmap」だ。もっとも最近は、地形図に限定せず、州の地図情報データベースの総称として使用されている。データベース全般の紹介は筆者の手に余るので、地形図に絞って紹介するが、それでさえ体系はなかなか複雑だ。

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1:50,000図の例
パッフィンビリー鉄道の終点ジェムブルック Gembrook 周辺
8022-S Neerim 2008年
© Department of Environment, Land, Water and Planning, State of Victoria, 2017, License: CC-BY 4.0

ビクマップの製品記述書によれば、ハードコピー・マッピング(印刷地形図)Hardcopy Mapping には、大別して2つのカテゴリーがある。一つ目は標準図郭の区分図シリーズで、1:25,000、1:50,000、1:100,000と3種類の縮尺が用意されている。

1:25,000は、かつて経度7分30秒、緯度7分30秒の縦長判だったが、後に、これを横2面接続した経度15分、緯度7分30秒(+隣接図との若干の重複)の横長判に改められた。便宜上、前者はシングルフォーマット、後者はダブルフォーマットと呼ばれる。1:25,000は北西部の平原や東部の山岳地帯では初めから整備の対象外だが、刊行済みのエリアでも更新間隔が最大6年とされているためか、いまだに両フォーマットが混在している。図番も、前者は6桁目が1~4、後者はN(北)かS(南)と異なる(例:7822-2-1、7822-2-N)。

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1:25,000地形図表紙の変遷(左から)
旧版(シングルフォーマット)7922-2-3 Lysterfield 1988年
旧版(ダブルフォーマット)8022-3-S Gembrook South 1993年
新版(ダブルフォーマット)7922-2-S Monbulk South 2013年

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1:25,000図の例
ベルグレーヴ Belgrave 周辺 7922-2-S Monbulk South 2013年
© Department of Environment, Land, Water and Planning, State of Victoria, 2017, License: CC-BY 4.0

1:50,000も2種のフォーマットがある事情は同じだが、すでに経度30分、緯度15分のダブルフォーマットで全面刊行が完了している。換言すれば、1:50,000が州全域をカバーする最大縮尺ということだ。図番は1:100,000のそれの後にNかSが付く(例:7822-S)。ただ、王立オーストラリア測量隊 Royal Australian Survey Corps (RASC) がかつて製作した1:50,000図(シングルフォーマット)も索引図に表示されているので、在庫のある限り並行販売されているようだ。

またこれらとは別に、国立・州立公園などで標準図郭に捉われずに自由に図郭を設定した「特別図 Special」もある。縮尺は1;25,000または1:50,000で、裏面には同じエリアのオルソフォト(正射写真)が印刷されている。

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1:50,000地形図表紙の変遷(左から)
旧版(ダブルフォーマット)7324-N Horsham-Murtoa 1991年
新版(標準図郭)8022-S Neerim 2008年
新版(特別図)Wilsons Promontry Special 2008年

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1:100,000地形図表紙
7723-7823 Castlemaine-Woodend 2011年

これに対して1:100,000は本来、連邦の測量機関ジオサイエンス Geoscience の守備範囲であり、ビクトリア州域ではとうに完成済みだ。ところが、州は一部地域でオリジナル版を刊行し始めた。しかも連邦図(経緯度とも30分)に倣うのではなく、図郭を横2面接続したダブルフォーマット(経度1度、緯度30分)での提供だ。図番は、連邦のそれを単純に連結している(例:7723-7823)。思うに連邦の印刷版更新が停止されたため、州として必要な図葉を自ら維持する方針なのだろう。まだ刊行面数は少ないが、将来的には連邦図を置き換える存在になる。

仕様はいろいろな点で連邦図と異なる。等高線間隔は、地勢に応じて50mまたは100mとされ、連邦図(20m間隔)に比べるとだいぶ粗い。その代わりに濃いめのぼかしがかけられ、地勢を視覚的に強調しようとしている。植生関係では森林にアップルグリーンの塗りを充てているが、ぼかしとの競合を避けるためか、薄くてほとんど目立たない。

下に、マセドン山 Mount Macedon 周辺のビクマップと連邦図を並べてみた。連邦図のこのエリアは大半が軍測量隊による旧図(7823 Woodend図葉の部分)だが、等高線が稠密で注記も多いことがわかる。ビクマップでは敢えて1:100,000に、詳細表現よりも広域を概観する役割を持たせているようだ。

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1:100,000図の例
マセドン山 Mount Macedon 周辺  7723-7823 Castlemaine-Woodend 2011年
© Department of Environment, Land, Water and Planning, State of Victoria, 2017, License: CC-BY 4.0
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同じエリアの連邦1:100,000 7723 Castlemaine 1985年、7823 Woodend 1980年
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) 2017. License: CC-BY 4.0

ここまでが標準図郭シリーズの話だが、もう一つのカテゴリーというのは、オンデマンド出力の地形図だ。これは図面が汎用のA判プリンタに対応するサイズに調整されており、発注は専用サイトを通じてオンラインで行う。ユーザーはプロッター(実際はカラープリンター)出力された印刷図を受取ることもできるし、地理参照型PDFファイルでダウンロードすることもできる。縮尺はA0判が1:25,000、A3判とA4判が1:30,000になる。印刷する範囲も、標準図郭と任意の図郭を選択できるのが特徴だ。

実は標準図郭でも、近年は業務合理化のために、需要の少ない図葉がオフセット印刷ではなく、プロッター出力に移されてきている。そのため、2つのカテゴリーといっても、相違点
は結果的に、用紙サイズ(と縮尺)のバリエーションに収斂されてしまうのだが…。

オーストラリアでは2000年に、地図投影の基礎となる座標系が変更された。刊行図のうち2003年以前のものは旧測地系 AGD66 が、その後は新測地系 GDA94 が適用されている(下注)。縮尺、フォーマット、印刷方法に加えて、この測地系の区別があるため、それらを一枚に表現するビクマップの地図索引図(下図はその一部)は、かなり難解なものと覚悟しておく必要がある。

*注 ADG66はAustralian Geodetic Datum 1966、GDA94はGeocentric Datum of Australia 1994の略。

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地形図の図郭
黄枠は1:100,000ダブルフォーマット、青枠は1:50,000ダブルフォーマット、
赤枠は1:50,000特別図、緑枠は1:25,000ダブルフォーマット、
灰色の細線枠は1:25,000シングルフォーマットで現在はオンデマンド出力地形図の定形図郭

地図の図式は各カテゴリー・縮尺ともほぼ共通だ。ただ、地籍界が描かれるのは1:25,000だけで、道路網や街路名も縮尺が小さくなるにつれて適宜省略される。

地図記号には他の州にないものも見られる。たとえば、主要道では、道路地図のようなデザインの道路番号が付されている。鉄道関係では、トラムが発達するメルボルン市内を想定した併用軌道の記号がある。主要なトレール(自然歩道)には、図上で跡がたどれるように色三角の目印が置かれている。さらに地勢表現としてぼかし(陰影)が加えられ、見栄えの点でも他州とは一線を画している。

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1:25,000凡例の一部

このように意欲的な整備が進行中のビクマップだが、今のところウェブサイトでの提供は行われていない。VicmapTopoOnline と銘打ったサイトが存在するが、地形図閲覧サイトではなく、上述したオンデマンド出力の地形図を発注(有料)するためのものだ。画面に表示される地図は旧式の線画レベルで、あまりに物足りない。せめて地形図ファイルのダウンロードを無料化してくれると嬉しいのだが。

ビクマップ(印刷図)は、オーストラリア国内の主要地図商で扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

■参考サイト
環境・土地・水・計画省 Department of Environment, Land, Water and Planning (DELWP)
http://www.depi.vic.gov.au/

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 オーストラリアの地形図-タスマニア州 I
 オーストラリアの地形図-タスマニア州 II

2017年4月 3日 (月)

オーストラリアの地形図-ニューサウスウェールズ州

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NSW州地形図カタログ
2011年版表紙

ジェームズ・クック James Cook が英国軍艦エンデヴァー号で南太平洋のタヒチへ向かったのは1768年のことだ。表向きの目的は金星の太陽面通過の観測だったが、それとは別に未知の南方大陸を探索せよという密命も受けていた。彼はタヒチからニュージーランドに到達し、次いで西へ進んで、1770年4月に現在のオーストラリア大陸を「発見」した。

ニューサウスウェールズ New South Wales というのは、彼がこの探検航海の間に、大陸の東岸全体につけた地名だ。しかし、クックは命名の理由を書き残していないし、彼自身はヨークシャー生まれで、ウェールズ南部には縁がない。それどころか、サウスウェールズがウェールズの南部を意味するのか、それとも南半球のウェールズと言いたかったのかさえわからないのだ。

現在のニューサウスウェールズ州 State of New South Wales(以下 NSW)は、クックが最初に上陸した場所を含むオーストラリアの南東部を占めている。地形図を所管しているのは、州財務・サービス・イノベーション省 Department of Finance, Services and Innovation のもとにある国土・資産情報局 Land and Property Information (LPI) だ(下注)。広大な州域を独自の地形図群で完全にカバーしている。紙地図(オフセット印刷図)も、クイーンズランドのように刊行停止されてはおらず、州内のみならず他州の地図商経由でも問題なく入手が可能なのは嬉しい。

*注 州の地形図製作を所管していた旧 国土・資産管理局 Land and Property Management Authority (LPMA) が2011年に廃止され、LPIが業務を引き継いだ。

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1:25,000地形図表紙の変遷(左から)
旧版 8929-2S Mittagong 1981年、旧版 9130-3S Botany Bay 1987年
新版 8525-2S Perisher Valley 2001年、新版 9029-1S Appin 2012年

LPIが製作している中縮尺地形図には、1:25,000、1:50,000、1:100,000の3種のシリーズがある。それぞれ緑、青、赤の表紙で区別されるが、下図のとおり刊行エリアは明確に分けられ、重複はない。そのうち1:25,000の縮尺は、先述の地勢区分でいうと、およそ海岸平野から西部斜面までの、比較的人口が集中し、土地利用が密な地域に適用されている。それだけ地形図の需要が多く、精度も必要とされるためだろう。

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縮尺ごとの適用エリア

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1:25,000図の例
入江に沿ってシドニーの観光名所ハーバーブリッジやオペラハウスが見える
9130-3N Parramatta River 2002年
© Land and Property Information, NSW, 2017, License: CC-BY 3.0
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1:25,000図の例
カトゥーンバ市街地のへりに断崖の記号が続き、ブルーマウンテンズの展望台が多数並ぶ 
8930-1S Katoomba 2000年
© Land and Property Information, NSW, 2017, License: CC-BY 3.0

対する1:50,000の製作範囲はそれより内陸の西部平原一帯で、一部の例外を除き、連邦のレッドライン Red Line までだ。レッドラインというのは、連邦の1:100,000地形図整備計画で、地形図を刊行せずに編集原図のコピー頒布にとどめたエリアの境界を指す。ラインを越えると主として内陸の砂漠地帯なのだが、LPIはそこでも1:100,000を刊行しているので、結果的に、連邦が諦めた地形図刊行を州が代行した形になっている。かつて連邦ジオサイエンスの製品カタログにも、NSW州域の1:100,000は連邦では刊行しておらず、NSWで入手できると記載されていた。

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1:50,000地形図表紙(左から)
旧版 8225-I & IV Albury 1980年、旧版 8428-N Sebastopol 1985年
新版 8428-S Junee 2012年
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1:100,000地形図表紙 (左から)
旧版オルソフォト地図 7931 Willandra 1975年、 新版 7333 Menindee 2000年

次に図郭の切り方だが、前回紹介したクイーンズランドの同縮尺図と比べると、横が2倍の長方形になる。1:25,000の場合、1:100,000の図郭を横2等分、縦4等分するので、経度15分、緯度7分30秒の範囲をカバーする。1:50,000の図郭はその4面分、すなわち1:100,000の図郭を縦2等分したサイズになる。

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地形図の図郭と付番方式
図郭は1:100,000(赤枠)を縦2等分すると1:50,000(青枠)、それを縦横各2等分すると1:25,000(緑枠)
図番は1:100,000に対して、1:50,000はN(北半分)とS(南半分)、1:25,000は1~4とN・Sを加える

図式は、各縮尺でほぼ共通の設計だ。等高線間隔は1:25,000の場合、平地・中間地は10m、山地は20mとされている。そのため、日本の同縮尺図(等高線間隔10m)を見慣れた目には、山地の表現がかなり粗く感じられる。1:50,000の等高線は20m間隔だ。

等高線の色は、スポットカラー(特色)印刷だった時代は道路と同じ赤を使っていたが、今はプロセスカラー(CMYKの4色刷)化され、少し灰味を帯びたテラコッタ色が充てられている。森を表すアップルグリーンと掛け合わせると薄い茶色のようにも見え、違和感はない。

市街地は黄色のベタ塗りの上に、各戸の敷地を示す地籍界がこまめに描かれ、道路(街路)名も詳しく注記されている。さらに、教会(礼拝所)、学校、救急施設、警察などかなりの種類の公共施設がアルファベットの略号で表され、広場 playground や公衆トイレ toilets まで記載されている。地形図でありながら、市街図としても使えるものを目指しているのだろう。

一方、農場や牧場が展開する平原に目を向けると、農道にストックグリッド stock grid(家畜の逃走を防ぐために道路に設ける格子状の仕掛け)や渡渉地 floodway、目標となる構造物 landmark feature の例としてサイロ silo やヤード yards(家畜用の囲い場)など、特徴的な記号が現地の風景を想像させる。鉱山 mine の記号がつるはしの交差ではなく、片方がスコップ(ショベル)形になっているのもおもしろい。

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1:25,000凡例の一部

1990年代までNSW州独自のシリーズは、地形図か、そうでなければオルソフォト地図(1:50,000や1:100,000図の一部)のどちらかで供給されていた。これに対して2000年から、新たなシリーズへの置換えが始まった。新版は両面刷で、おもて面に地形図、裏面には同じエリアのカラー空中写真(オルソフォト)を配している。

クイーンズランド州の取組みに倣ったように見えるが、空中写真は地図仕様ではなく、画像の上に1kmグリッドと最小限の地名を加えただけの簡素な作りだ。実際のところ、このほうが純粋に地表の様子を読み取ることができてよい。とはいえ、その後グーグルマップなどの普及で空中写真が身近になり、新版登場のときに感じたありがたみはすっかり薄れてしまったのだが…。

なお、これらの地形図(印刷図)はオーストラリア国内の主要地図商で扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

最後に、州全域にわたってLPI刊行の地形図データを閲覧することができる NSW Topo Map (MapServer) というサイトを紹介しておこう。

■参考サイト
NSW Topo Map (MapServer)
http://www.arcgis.com/home/webmap/viewer.html?url=http://maps.six.nsw.gov.au/arcgis/rest/services/public/NSW_Topo_Map/MapServer&source=sd

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NSW Topo Map (MapServer) 画面

これは、地理情報統合プラットフォーム ArcGIS を利用しており、シームレスな地形図ラスタデータがレイヤーとして表示される。内容は刊行図と同じもので、解像度が高く、2倍程度の拡大表示にも耐えられる。

初期画面は縮尺が小さいため、何が描かれているのか判然としないが、地図画面左上にある+ボタンで拡大していくと、次第に地形図画像が見えてくる。ArcGIS のベースマップには衛星画像も用意されているので、表示を地形図から衛星画像に切り替えれば、印刷図で試みられた仕掛けがいとも簡単に実現できる。

■参考サイト
国土・資産情報局 Land and Property Information (LPI)  http://www.lpi.nsw.gov.au/

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 オーストラリアの地形図-連邦1:250,000
 オーストラリアの地形図-クイーンズランド州
 オーストラリアの地形図-ビクトリア州
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