2018年2月18日 (日)

ドイツの新しい1:250,000地形図

連邦地図・測地局 Bundesamt für Kartographie und Geodäsie(略称BKG)が担当しているドイツの小縮尺図体系が2017年から大きく様変わりしている。黄色い表紙で親しまれてきた区分図シリーズの1:200,000地勢図 Topographische Übersichtskarte がついにカタログから姿を消してしまったのだ。代わりに登場したのが、Übersicht(概観)の語をつけずに、単に Topographische Karte(地形図)と称する1:250,000で、全30面が一気に刊行された。

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1:250,000地形図表紙
(左)ベルリン Berlin  (右)ローゼンハイム Rosenheim いずれも2017年版

1:200,000図のルーツは19世紀に遡るが、第二次世界大戦後、1961年に当時の西ドイツを44面でカバーするシリーズとして再興され、東西統一後は旧東側にも範囲を拡げて、全59面の区分図シリーズ(のちに一部の図郭拡張で58面)になった。近年、1:100,000以上の地形図が、平板な印象の ATKIS図式(下注)に置き換えられていくなかで、1:200,000は、配色に変更が加えられながらも、銅版刷りの繊細さを残すドイツ地形図の特質をおよそ50年間護り続けてきた。

*注 公式地形・地図情報システム(アトキス)Amtliches Topographisch-Kartographisches Informationssystem (ATKIS) で使用される地図図式。

ドイツの1:200,000地形図ほか」の項でも述べたように、戦後まもない地形図体系の再編の際にも縮尺を1:250,000に変更する案が検討されたことがある。実際、英仏をはじめ西側諸国ではそちらが多数派なのだ。グローバル化時代に入ると、このことがシステム規格の決定に影響を与えることになる。欧州各国の地図作成機関等が参加する組織、ユーロジオグラフィクス EuroGeographics が汎ヨーロッパの地理情報データベースを構築するにあたり、採用した縮尺の一つが1:250,000だった。

ユーロリージョナルマップ EuroRegionalMap と呼ばれるこのデータベースには、各組織が、担当する地域の地理情報を共通仕様で提供する必要がある。そのためにドイツも ATKIS に1:250,000のデータを作成し管理している。縮尺が近似する1:200,000を、印刷図を維持するために更新していく積極的な理由は見出しにくい。さらに、ATKISからは印刷図の原稿も直接出力できるので、国内各州の測量局は、担当する1:25,000から1:100,000までの印刷図の大部分をすでにこの方式に移行させてしまっている。BKGが同様の転換策に踏み切るのは、実は時間の問題だったのだ。

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1:250,000地形図索引図

今回刊行された1:250,000地形図は、冒頭にも述べた通り、ドイツ全土を30面でカバーする全く新しいシリーズだ。地形図の裏面には、同じエリアのカラー衛星画像 Satellitenbildkarte が印刷されている。

折寸こそ旧図と同じ横10.8×縦24.0cmだが、表紙からして、色で縮尺の違いを示す従来方式(例えば1:200,000は黄色)ではない。人目を惹く風景写真を中央に配し、その下に都市や観光地の名が列挙され、収載されるエリアがすぐにわかるようになっている。英仏の例に倣って、利用者へのアピールを強化する作戦だ。

図郭は、旧1:200,000の経度1度20分×緯度48分に対して、新1:250,000では縮尺が小さくなり、用紙の横を一折り分長くしたことで、経度2度×緯度1度と切りのいい数値に収まった。

内容はどうだろうか。1:200,000(下図左)と1:250,000(下図右)で、同じエリアを並べてみた。場所は、バイエルン南東部のローゼンハイム Rosenheim からオーストリア国境の山岳地帯にかけてと、ベルリン Berlin 市街だ。色調はほぼ変わらないものの、一見して1:250,000のほうが、情報の取捨選択が徹底されていることがわかる。絵的にはシンプルで見易くなったと感じる一方で、残念ながら、省かれたものも多数ある。

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1:200,000図(左)と1:250,000図(右)の比較
ローゼンハイムからオーストリア国境の山岳地帯にかけて
© Bundesamt für Kartographie und Geodäsie, 2018
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同 ベルリン市街
© Bundesamt für Kartographie und Geodäsie, 2018

たとえば、ローゼンハイム図の下のほうにあるバイリッシュツェル Bayrischzell の町の周辺に注目すると、1:200,000に記された Hochkreut、Suderlfeld などの集落名、Seeberg、Maroldschneid などの山名や標高値が、1:250,000ではことごとく無くなっている。配置するスペースが縮小する分、割愛が生じるのはやむを得ないとはいえ、地名は場所を特定する手がかりだから、残念なことだ。

また、道路網や集落の表現も簡略化された。ベルリン図に見られるとおり、1:200,000では市街地の塗りに2色が使われ、中心街は濃いピンク、それ以外は薄いピンクと区別されていた。ところが1:250,000ではそうした配慮はなく、一様にピンクで塗られている。また、郊外では1:200,000で、胡麻粒のような黒抹家屋の記号を使って、集落の広がりや密度を表現していたものが、1:250,000では単に円で集落の中心を示すだけになった。道路網の省略もその延長線で、円と円の接続関係がわかれば十分という考えだろう。

注記文字は、サンセリフ(先端に飾りのない)タイプに変わった。日本語書体の明朝とゴシックの関係に似て、サンセリフは線幅がほぼ同じで視認性が良いことから、採用される傾向にある。1:200,000では注記文字は、水部の青を除いて一様に黒色が使われていたが、1:250,000では居住地名は黒、水部は青、自然地名は茶色、公園域は緑、軍用地はピンクと、細かく変えている。これにより、居住地名がまず目に飛び込んでくるようになった。反面、山の名などは埋もれてしまい、目を凝らして探さなければならないが…。

一方、等高線とぼかしを併用する地勢表現は踏襲された。等高線間隔は、旧1:200,000が平野部25m、山地50mだった。1:250,000も平地と低山地ではそれぞれ25m、50mだが、高山地では100m、急峻な山地では200mに拡げられている。そのため、バイエルンアルプスでも等高線は粗く引かれ、等高線の密度から地勢を想像することは難しい。また、写実的な崖記号が無粋なドットパターンに置き換えられ、砂地と間違えかねない。

ぼかし(陰影)は、メッシュ標高データから精細な画像が自動生成されているので、等高線の情報不足を補って余りある。ただ惜しいことに、配色にピンク系のグレーを充てたために、眠たげな印象を与え、等高線との区別もつきにくくなった。

新作というのに否定的な感想が多くて恐縮だが、それというのも、ドイツでは地形図のデジタル化に際して、アナログ時代に磨かれた地図デザインのセンスが十分尊重されなかったように思うからだ。作成プロセスの合理化を追求するなかで、伝統的な長所を生かす努力がやや疎かになっている。1:250,000もそれだけ見れば決して悪くはないのだが、前身の1:200,000と見比べると、多くのものを犠牲にしていることに改めて気づく。

この1:250,000の登場の陰で、従来の1:200,000地勢図は、2014年に南ドイツの10面が更新されたのが最後の刊行となった。かろうじて現在は、同じく2014年に刊行された地方図 Regionalkarte シリーズ 計13面(下注)のみがカタログに掲載されている。これは主要都市とその周辺を1:200,000図で概観するもので、裏面にはより広域を収める1:1,000,000(100万分の1)図が印刷された徳用版だ。果たして継続的に更新されるのか不明だが、このシリーズが残る限り、1:200,000図を手にする機会が消滅したわけではない。

*注 ハンブルク Hamburg、ブレーメン Bremen、ベルリン Berlin、ハノーファー Hannover、ライン=ルール Rhein-Ruhr(ドルトムント中心)、ケルン=デュッセルドルフ Köln-Düsseldorf、ハレ=ライプツィヒ Halle-Leipzig、ドレスデン Dresden、ライン=マイン Rhein-Main(フランクフルト中心)、ライン=ネッカー Rhein-Neckar(マンハイム中心)、ニュルンベルク=フュルト Nürnberg-Fürth、シュトゥットガルト Stuttgart、ミュンヘン München の13面(図郭は下図参照)

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1:200,000地方図
(左)ベルリン地方 Region Berlin  (右)ライン=マイン地方 Region Rhein-Main いずれも2014年版
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1:200,000地方図索引図
カラーの図郭が地方図、グレーの図郭は従来の1:200,000地勢図

1:250,000地形図と1:200,000地方図は、日本のアマゾンや紀伊國屋などのショッピングサイトでも扱っている。"Umgebungskarte 1:250.000"、"Regionalkarte" などで検索するとよい。

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2018年2月12日 (月)

地形図を見るサイト-ルクセンブルク

ベネルクス三国の一角を成すルクセンブルクでも、充実した公式地図サイトが構築されている。国の測量機関である地籍・地形局 Administration du Cadastre et de la Topographie (ACT) が、最新のデジタル地形図はもとより、旧来の1:5,000~1:250,000地形図、20世紀初頭からの旧版地形図、18世紀の測量原図、そして新旧の空中写真や地質図、それらにオーバーレイできる地図データなど、多様なコンテンツを自ら運営するサイトで提供しているのだ。加えて、ウェブデザインのスマートさと多言語に対応(下注)している点も注目に値する。

*注 公用語であるフランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語に加えて、英語表記もある。

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18世紀のフェラーリ図に描かれたルクセンブルク市街
深い渓谷と堅固な堡塁が街を護る

では、その地図サイト Geoportal(以下、英語読みでジオポータルと表記)の概要を見ていこう。
(記述は2018年2月現在の仕様に基づく)

Geoportal(ジオポータル)
http://map.geoportail.lu/

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初期画面

上の画像が初期画面だが、以下の説明は英語版で行うので、初めに言語選択をしておきたい。右上の地球を象ったアイコンをクリックして、EN(英語)を選択する。

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言語と背景レイヤーの選択

デフォルトでは、表示される Background Layer(背景レイヤー)は Road map(道路地図)になっている。背景レイヤーを入れ替えるには、画面左上のリストで、Topographic map B/W(地形図モノクロ版)、Topographic map(地形図カラー版)、Aerial imagery(空中写真)、Hybrid map(ハイブリッド地図)、White background(無地の背景)から選択する。

このうち、ハイブリッド地図というのは、空中写真(オルソフォト)に地名や主要道路網などを加えたものだ。上記以外の地図については、別途レイヤーとして選択して重ね表示できる(詳細後述)。

特定の地域の地図を表示するには、地名、住所、地番(Parcel numberという)で指定するほか、マウスで直接矩形を描いて選択する方法がある。

縮尺を変更するには、拡大縮小(+-)ボタンを使うほか、ダブルクリックでも行える。図上でダブルクリックすると、1段階ずつ拡大する。Shiftキー+ダブルクリックで1段階ずつ縮小する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

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テーマとレイヤーの選択

背景レイヤーの上に重ねる地図レイヤーを表示するには、まず地図のテーマを選択する必要がある。デフォルトは「THEME: MAIN」になっている。その右の CHANGE をクリックすると、選択肢(MAIN、TOURISM、ENVIRONMENTなど)が表示される。任意のテーマを選択すると、下位項目が順に表示されていく。

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レイヤーリストの操作

レイヤーは複数選択でき、そのリストは MY LAYERS タブをクリックして見ることができる。MY LAYERS タブには、レイヤーの重ね順の変更、レイヤーの透明度の調節、レイヤーの追加/削除などの機能がある。

ここではベースマップにもなりうる地図・空中写真に絞って紹介しておこう。

地形図は、MAIN テーマ > GEOGRAPHICAL LOCATION(地理的位置)> Topographical mapsに格納されている。

同様に、空中写真は MAIN テーマ > LAND SURFACE(地表)> Orthophoto-images、
地質図は、MAIN テーマ > ENVIRONMENT, BIOLOGY AND GEOLOGY(環境、生物、地質) > Geology、
土壌図は、MAIN テーマ > ENVIRONMENT, BIOLOGY AND GEOLOGY(環境、生物、地質) > Soil mapsに、それぞれ分類されている。

地形図だけでも縮尺別に9種類のレイヤーがあるが、Automatical Topographical Map(自動地形図)を選ぶと、表示縮尺に応じて自動的にグラフィック(縮尺図)が変化していくので便利だ。そうではなく、グラフィックを固定して拡大縮小したいときは、その下に列挙されている Topographic map 1:250000~1:5000 から見たいものを選択する。

「Regional tourist map 1:20000 R(1:20,000地域別旅行地図)」は、かつて印刷版で刊行されていた旅行情報を付加した地形図で、末尾の R(régionale の頭字)は通常版と区別するための符号だった。Regional Mapsheets(地域図図郭)は、その図郭を表示する機能のことだ。

さらに興味深いのはその下にある Historical Topographical Maps(旧版地形図)という項目で、これを展開すると16種の古地図や旧版地形図のリストが現れる。

最も古い「Ferraris Map 1:20k 1778(1:20,000フェラーリ図、1778年)」は、18世紀後半に作成されたオーストリア領ネーデルラントの美麗な手彩色原図(冒頭画像はそのルクセンブルク旧市街、下注)だ。原図の縮尺は1:11,520だが、2013年の復刻本出版に際して作成された1:20,000の縮小画像が用いられている。

*注 現在のベルギー領部分は、ベルギーのサイト「カルテージウス Cartesius」などで公開されている。「地形図を見るサイト-ベルギー」参照。

次は20世紀に入り、1907年と1927年のJ・ハンゼン Hansen による1:50,000図がある。前者は粗いモノクロ複写だが、後者はカラーで原図の鮮やかさが再現されている。

次の「German War map 1:25k 1939(ドイツ戦時地形図、1939年)」は、第二次世界大戦中にルクセンブルクを占領したドイツが既存図から編集した1:25,000図だ。

そして、戦後の地図の空白期を埋めるために、キュマリー・ウント・フライ社 Kümmerly & Frey による1950年の1:150,000学習用地図が挿入されている。

本格的な地形図の復活は、フランス IGN の協力で作成された1954年の1:20,000で、1966年からは1:50,000も登場し、2000年までおよそ10年間隔で、その時点の最新図が収められている。

一方、空中写真は、戦後1951年撮影のものから利用できる。1994年まではシームレス化されていないので、各カットの撮影範囲を示す矩形が右の地図上に表示される。図上で見たい地点をクリックすると、左に写真のサムネールが現れ、それをクリックすることで実寸の画像ファイルが表示される仕組みだ。

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一般操作

ジオポータルで使える機能は他にもたくさんある。上の画像で、各アイコンの機能に日本語を添え書きしておいた。詳しくは画面右下にある HELP をご覧いただきたい。

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情報表示と印刷

たとえば、情報アイコンでは、表示縮尺や座標系を変更したり、カーソルを置いた地点の座標値や標高値の表示ができる。

また、印刷アイコンでは、PNG形式(画像ファイル)またはPDFファイルで地図のダウンロードができる。用紙の向きでは、"landscape" が横長、"portrait" が縦長の形式になる。また、印刷の縮尺では、たとえば1:50,000地形図が印刷対象であるとき、ここで1:50,000を選択すると等倍、1:25,000を選択すると2倍拡大したものが出力される。

なお、ジオポータル内のデータの利用について、利用規約(下注)には、利用者がインターネットを通じて行えることを列挙してあり、その中に「(ルクセンブルク大公国の公的機関を出処とする)地理製品、地理データおよび地理サービスを公開すること publier des géoproduits, géodonnées et géoservices (en provenance des instances officielles qui existent au Grand-Duché de Luxembourg)」も含まれている。

*注 利用規約(フランス語版) https://www.geoportail.lu/fr/propos/mentions-legales/ 引用した文言は 15.1 Généralités にある。

使用した地形図の著作権表示 © 2018 Administration du Cadastre et de la Topographie

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 ルクセンブルクの地形図

 地形図を見るサイト-ベルギー
 地形図を見るサイト-フランス

2018年2月 4日 (日)

地形図を見るサイト-ベルギー

北部のオランダ語圏と南部のフランス語圏、それに東部にはわずかながらドイツ語圏も存在するベルギーでは、政府組織のウェブサイトも、まず言語を選んでから入るようになっている。測量機関 NGI / IGN(下注)も例外ではない。

*注 オランダ語で Nationaal Geografisch Instituut (NGI)、フランス語で Institut Géographique National (IGN)、直訳すれば国立地理学研究所。

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Topomap Viewer で見るブルッヘ(ブルージュ)市街

NGI / IGN の作成している地図データは、Topomap Viewer(トポマップ・ビューワー)というサイトで公開されている。ここではデジタル地図や空中写真とともに、旧来の地形図(といっても1990年代に図式は一新されているが)を縮尺別に見ることができ、画像も鮮明だ。
(記述は2018年2月現在の仕様に基づく)

Topomap Viewer(トポマップ・ビューワー)
http://www.ngi.be/topomapviewer/

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初期画面で言語を選択

初期画面(上の画像)は言語の選択だ。英語版がないので、以下はフランス語版で説明するが、使用言語を宣言する際に利用規約の承諾まで要求されるのは、一般的な閲覧サイトにしてはものものしい。しかもその下には、規約を厳守せよ、特に複写は禁止、違反者には起訴も辞さない、と強い調子の警告文が続く。善良な市民をまるで犯罪予備軍のようにみなす態度には言葉を失う。

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利用規約の一部

とはいえ、異国から訴えられても困るので、コピーの扱いがどうなっているか、利用規約 Conditions d'utilisation にも目を通しておこう(上の画像)。知的財産権の項を見ると、利用者は参照、印刷、保存(下注)、リンクの第三者配布(=共有)の権利を有すると書かれている。複写には言及がないから、権利が認められていないことは確かだ。

*注 保存に関する原文は、"sauvegarder dans le marque-pages les données de Topomapviewer"(Topomapviewer のデータをブックマークにバックアップする)。しかし、本サイトには地図データのダウンロード機能はない。

一方、禁止条項では、「過度な方法で de manière excessive」複写し、複製することはできないとあって、一切不可という表現にはなっていない。厳密な法解釈はともかく、複写・複製については権利は主張できないものの、「過度でなければ」違反行為とまではいえない、ということかと思う。本稿でも画面のスクリーンショットを使っているので、権利関係は一応押さえておきたいところだ。

さて、この関所を通過すると、ようやくベルギー全図のデフォルト画面が現れる。国土の中央で横一文字に引かれたやや太い薄紫の線が言語境界線になる。

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ベルギー全図を表示したデフォルト画面

この画面で見えているのは CARTOWEB と称するデジタル地図で、拡大していくと、最終的に住宅が一軒ずつ判別できるまでになる。凡例(地図記号)を知りたければ、左メニュー上方のLEGENDEをクリックする。

左メニューには、表示可能な地図データの一覧がある。最上段の À superposer(オーバーレイ)は背景が透過処理されており、他の地図に重ねて用いるものだ。次の Photographies aériennes(空中写真)は、現在2013~15年撮影の最新オルソフォトのみ提供されている。

3番目の Carte de référence(参考地図)の中の Cartes classiques(直訳すると伝統的な地図)が、印刷版に使われている地形図になる。TOP10MAP(1:10,000)から TOP250MAP(1:250,000)まで4種類用意されている。名称の TOP は Topo(地形の)、10は縮尺1:10,000を意味している。印刷版ではこれ以外に1:20,000がある(下注)が、これは1:10,000図を単純に50%縮小したものなので、メニューにはない。

*注 1:20,000地形図は2016年から、独自のグラフィックを用いた1:25,000に順次置き換えられている。

使われる地図レイヤーは、表示縮尺に応じて自動的に切り替わるが、リストの上部にある"Mode automatique: l'échelle détermine la couche affichée(自動モード:縮尺により表示レイヤーが決まる)"のチェックをはずすと、レイヤーが固定化され、そのレイヤーの拡大縮小ができるようになる。ただし、複数の地形図レイヤーを同時に選択することはできないようだ。

レイヤーの選択を解除したいときは、そのサムネールの上でクリックする。

地図の拡大縮小は、地図画面左上のスケールバーを上下させる方法や、マウスホイールを使う方法がある。また、範囲を指定して拡大縮小するときは、上のメニューにある専用のボタンをクリックして行うほか、Shiftキーを押しながらマウスで矩形を描くのも可能だ。

また、上のメニューには「<」(前の画面、すなわち「元に戻す」)、「>」(後の画面)というボタンがある。閲覧サイトでは珍しい機能だが、前の画像をもう一度見たいと思うときはあるもので、覚えておくと重宝する。

これまで見てきたフランスやオランダのサイトとは違って、IGNのサイトはあくまで最新図が対象であって、旧版図の画像は用意されていない。どこかにないものかと探したところ、次のサイトが見つかった。

Cartesius(カルテージウス)
http://www.cartesius.be/CartesiusPortal/

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「カルテージウス」初期画面

これはベルギーと(ベルギーの植民地があった)中央アフリカの古地図、旧版地図、空中写真の膨大なコレクションを一挙公開するという意欲的なサイトで、NGI / IGN、王立図書館 Bibliothèque royale、国立古文書館 Archives de l’Etat、王立中央アフリカ博物館 Musée royal de l’Afrique centrale が共同で開設したものだ。近代測量以前の古地図はもとより、1770年代のフェラーリ図 Cartes de Ferraris(下注)から最近の地形図に至るまで、各時代の地図資料が見られる。

*注 フェラーリ伯により1770~78年に作成されたオーストリア領ネーデルラントの彩色地図。手描きの原図は縮尺1:11,520で275面あるが、それをカッシーニ図に合わせて1:86,400、25面に編集した銅版刷りの普及版も作られた。このサイトで表示されるのは、ベルギー王立図書館所蔵の1:11,520原図を1:20,000に縮小した画像。フェラーリ図の索引図は http://www.ngi.be/FerrarisKBR/ にある。

以下、英語版で説明するが、初期画面(上の画面)には Search と MyCartesuis の2つの入り口がある。前者では、膨大なコレクションから目的のコンテンツを地図上、あるいはキーワードで検索する。後者は、検索で見つけたコンテンツを利用者がいつでも呼び出せるように保存し、メモをつけたり、グループ化したり、公開したりできる(ユーザー登録が必要)。

操作マニュアルは40ページ以上もあって、本稿ではとうていフォローできないが、まずはSearch(検索)機能を使って、旧版地図を探し出すところまでを説明しよう。

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検索画面

Search をクリックして中に入ると、左に地図、右にキーワードを入力する画面が現れる。キーワードだけで検索するとヒット件数が多すぎる場合は、地図でエリア範囲を絞り込める。スケールバーで拡大縮小してもいいが、Shiftキーを押しながらマウスで範囲選択するほうが早い。

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検索範囲や語句、属性を入力

このとき、Intersection(左の地図に部分的にでも含まれる地図を検索)か、Overlapping(同 完全に含まれる地図を検索)か、Everywhere(全範囲を検索)かを選択できる。

例として、キーワードを"Carte topographique(仏語で地形図の意)" にし、縮尺で"Part of province, City and surrounding area(州、都市と周辺の一部)" を選んだ。これで縮尺が1:10,000~1:75,000の範囲になる。地図を Brussel / Bruxelles(ブリュッセル)周辺まで拡大しておき、検索ボタンをクリックした。

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検索結果

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サムネールの展開

結果は201件がヒットした。これで希望のものが見つかればよし、そうでなく検索結果を消去して条件設定をやり直すときは Filter Empty、検索条件を追加してさらに絞り込む場合は Extended filterをクリックする。

右下に表示されている検索結果のサムネールにカーソルを当てると、その範囲が左の地図に黄色で表示される。サムネールのテキストをクリックすると、解説が表示される。その "See map" を選択するか、サムネールの画像部分をクリックすると、MyCartesuis の画面に移って、高精度の地図画像が表示される。

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地図画像の表示

なお、英語版で上記の手順を実行したところ、いっこうに地図画像が現れなかったのだが、フランス語版で再試行すると短時間で表示された。もし英語版でサイトの反応が鈍いようなら、他の言語で試していただきたい。

使用した地形図の著作権表示 © 2018 IGN Topomapviewer

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 ベルギーの地形図
 ベルギーの地形図地図帳

 地形図を見るサイト-オランダ
 地形図を見るサイト-ルクセンブルク
 地形図を見るサイト-フランス
 地形図を見るサイト-ドイツ・バイエルン州

2018年1月30日 (火)

地形図を見るサイト-オランダ

2009年にオランダの官製地形図について少し調べたことがある(「オランダの地形図」参照)。それから早や9年、しばらくご無沙汰しているうちに、地形図サイトがすっかり様変わりしていた。

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「テイドライス」で見る1934年のデルフト
フェルメールの街がアップルグリーンの牧草地の中にくっきりと浮かぶ

オランダの国土測量はカダステル Kadaster(地籍局)という機関が担っているのだが、当時は historiekaart.nl(historiekaart は古地図の意)というサイトが提供され、グーグルの空中写真と対比しながら1829~1949年の1:25,000地形図を縦覧することができた。また、それとは別に、19世紀の軍用地形図を含むオランダの古地図が見られる watwaswaar.nl(Wat was waar は、何が真実だったのかの意)というサイトもあった。オランダはこうした古地図を収録した地図帳(アトラス)の刊行も盛んで、モニター画面と印刷物の両方で、19世紀前半から現代までさまざまな地形図を渉猟できたのだ。

ところが、今見ると上記のサイトはどちらも消えて、カダステルは新たに、時間旅行を意味する「Tijdreis(テイドライス)」という閲覧サイトを開設している。1815年に地形測量局 Topographisch Bureau が設立されて200年になるのを記念して、この間の国土の変貌を地図でたどるためのサイトだ。
(記述は2018年1月現在の仕様に基づく)

Tijdreis(テイドライス)   http://www.topotijdreis.nl/

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「テイドライス」初期画面

初期画面では、1925年のオランダ全図が現れる。時代的には戦間期で、南西部ゼーラント州 Seeland の陸化は完了し、ゾイデル海 Zuiderzee(現在のアイセル湖 IJsselmeer)の大規模干拓事業が始まった段階だ。地図は1929年から1:400,000行政区分図 Gemeentekaart(行政区分図)に置き換わり、1937年にはその図上にゾイデル海を締め切る大堤防 Afsluitdijk が現れるはずだ。

「テイドライス」のバナーや右上のiのアイコンをクリックすると、オランダ語の解説が表示される。「よくある質問 Veelgestelde vragen」が含まれているので、日本語に訳しておこう。

問:どのブラウザならアプリを最適に見られますか?
答:ブラウザの最新バージョンを使用することをお勧めします。このアプリは、Google Chrome と Mozilla Firefox で最もよく作動します。

問:初期の地図と現代の地図では位置の変動がありますが、どうしてですか?
答:クライエンホフ図 Kraijenhoff-kaart と郵便路線図 Postroutkaart の絶対位置は、相互間や他図との間で大きく異なります。差異は最大15kmに達することがあります。これは、地図作成の基準に適用される非常に単純な投影法に関係しています。加えて、縮尺が一定でないことが問題です。縮尺は、地図のデジタル統合によって改良されましたが、地図画像の歪みを正しく修正することはできません。この歪みは主に、曲がるべき緯線が直線で描かれているという事実から来るものです。クライエンホフ図の利用で重視したのは、地図相互間の良好な接続であり、歪みを解決することではありません。

問:このアプリではどの地図が見られますか?
答:いくつかの古い縮尺図が、このアプリの地図コレクションに使用されています。コレクションには1815~2015年の期間が含まれ、以下の地図シリーズの複数の版があります(下注)。

・小縮尺: 1810年郵便路線図 Postroutkaart、ネーデルラント全図 Algemene Kaart Nederland および行政区分図 Gemeentekaart
・やや中縮尺: クライエンホフ図 Kraijenhoffkaart
・中縮尺: 軍用地形図 Topografische Militaire Kaart (TMK) RD050(1:50,000)
・大縮尺: ボンヌ区分図 Bonnebladen および軍用地形図 RD025(1:25,000)

*注 1810年郵便路線図は、ナポレオン時代の道路網(郵便馬車ルート)を描いた古地図で、図上約13cmで徒歩10時間の距離を表す。
クライエンホフ図は、1798~1822年に作成(印刷は1809年~)されたオランダ最初の全国規模の地形図で、縮尺は1:115,200。
軍用地形図 TMK は、1850~64年に作成された石版単色刷り、縮尺1:50,000、全62面の地形図シリーズ。
ボンヌ区分図は、TMK完成後の1865年から作成された多色刷り、縮尺1:25,000の地形図で、1884年ごろに全土をカバーした。名称はボンヌ図法に由来。

問:地図はどのくらいの縮尺で表示され、どの投影法が使われているのですか?
答・地図は複数の縮尺で構成され、1:12,288,000(レベル0)から1:6,000(レベル11)までオランダの更新スケジュールに従ってデータが表示されます。使用している地図投影法は、国定三角図法 Rijksdriehoekstelsel です。

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地勢をケバで表現する1:50,000軍用地形図 (TMK)
レーネン Rhenen 付近
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手描きのタッチが味わい深い1:25,000ボンヌ区分図
ネイメーヘン Nijmegen 旧市街

このサイトは Esri のシステムを利用しており、操作は単純でわかりやすい。

特定の地域を表示するには、検索窓で地名(例:Amsterdam)を指定する。

地図を拡大縮小するには、左上の+-ボタンを使うほか、画面をダブルクリックしても一段階ずつ拡大する(shift+ダブルクリックは効かない)。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。Shiftキーを押しながらマウスで矩形を描けば、その範囲を拡大できる。

任意の時代を指定するのも3通りのやり方があり、一つは、時間バーの上にある年次のドロップダウンリストから選ぶ方法、二つ目はバー上のポインターをスライドさせる方法、そして三つ目はバー左端のグレー部分の任意の箇所をクリックする方法だ。

時代を連続的に変えるには、左上のプレイボタンをクリックする。画面は1年ずつゆっくりと進んでいくが、地形図の更新間隔は一般に数年おきのため、表示内容に変化のない期間も当然ある。

画面操作はこれだけだ。別の言い方をすれば、これしかできない。ただ地表の変化を眺めて楽しむだけなら問題は少ないが、資料として活用するには物足りなさが募る。たとえば、シームレス画像であっても、もとの地図の属性情報(縮尺、図名、作成年次など)は何らかの形で表示できるようにすべきだろう。画面に縮尺(スケールバー)の表示がないのも不親切だ。

また、画面解像度の関係で細かい注記文字が読めないため拡大しようとすると、自動的に大縮尺の地図に置き換わってしまう。結局、細部を確認できるのは、その時代で最大縮尺の地図(1:25,000など)だけになる。元のファイルがいくら高解像度で作成されていても、これでは宝の持ち腐れだ。フランスのように縮尺別のレイヤーに分けるか、詳細画像のダウンロード機能を付加すれば、この難点はカバーできると思うのだが(下注)。収載図はどれも高品質で絵画的にも美しいものばかりなので、仕様が改良・拡張され、より洗練されたサイトに進化する日を待ちたい。

*注 ダウンロードや印刷は別途有料サービスがあるため、それへの影響を懸念しているのかもしれない。

現行地形図を見るだけなら、公的な地理情報を一括している PDOK Viewer(PDOK=Publieke Dienstverlening Op de Kaart(地図での公共サービスの意))のサイトのほうが、同じ縮尺図を拡大縮小でき、画像も鮮明だ。PDOKは、カダステルをはじめ、社会基盤・環境省、経済省、水資源局 Rijkswaterstaat などが共同出資する公共企業体で、全国規模の地理情報をウェブサイトで提供している。

PDOK Viewer  http://pdokviewer.pdok.nl/

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PDOK Viewer 画面で、TOP25raster を表示

初期画面の左メニューが、閲覧できるデータの一覧(ABC順)だ。ツリーを下へスクロールしていくと、TOP10NL、TOP25raster などの地形図データが見つかるはずだ。ちなみに名称の TOP は Topografisch(地形の)、25は縮尺1:25,000、raster はラスタデータを意味する。左端の-をクリックして表示される下位項目(下注)にチェックを入れると、該当データが中央のビューワーに現れる。地図はレイヤーになっており、後述する方法で透明度を調整したり、重ね順を入れ替えたりできる。

*注 項目名の末尾にある tms (Tile Map Service), wmts (Web Map Tile Service), wms (Web Map Service) はウェブマッピングの仕様を示しているが、閲覧だけならどれを選んでも問題ない。画像をコピーするときは wms を使うとよい(tms, wmtsでは256×256 pixの小さなタイル単位になってしまう)。

注意すべきは、オランダ全土が表示されている初期画面では、チェックボックスがアクティブにならないものがあるということだ。各縮尺図は、表示できる画面縮尺に一定の範囲があり、それ以上でも以下でも選択ができない。+-のボタンかスケールバーで地図を拡大/縮小していくと、どこかの時点でチェックボックスがアクティブに転じる(色がグレーから黒に変わる)のが確認できるはずだ。

レイヤーの透明度を調整するには、左メニューの Actieve Lagen(アクティブレイヤーの意)の右の+をクリックし、該当レイヤーの透明度バーを適宜スライドさせる。

レイヤーの重ね順を変えるには、該当レイヤーのサムネールを変えたい位置にドラッグドロップする。

メニューを畳むには、右上端の≫をクリックする(右側の凡例も同じ)。

地図をプリントする機能は見当たらず、ブラウザの印刷機能を使うか、コピーした画像ファイルから印刷するしかないようだ。なお、PDOKで公開されているデータ(地図画面に CC-BY の著作権表示があるもの)は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従って、無償かつ自由な使用が許されている。

最後に官製地形図そのものではないが、それをしのぐ完成度を誇るオランダ全土のデジタル地形図をお目にかけよう。上記PDOKビューワーのデータツリーにも名が挙がっている OpenTopo だ。閲覧はPDOKで試していただくとして、これを大サイズのJPEG画像でダウンロードできるサイトがある。

OpenTopo.nl http://www.opentopo.nl/

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OponTopo.nl 初期画面

提供される縮尺は6段階で、100pix/km(実長1kmあたり画素数100ピクセル)は1:100,000、200pix/kmは同 1:50,000、400pix/kmは同 1:25,000に相当するという。最大縮尺は3,200pix/kmで1:3,125相当と非常に詳細なデータが得られる。等高線は2.5m間隔(100pix/kmでは省略)と官製図と同等で、かつ地勢を表すぼかしが入り、地図記号もより多彩だ。地形はカダステルの Top10NL、建物は地方自治体、水路は水資源局 Rijkswaterstaat の公式データを使用し、OpenStreetMap と組み合わせているという。

カダステルの官製地形図と同じエリアを比べてみよう(下図参照)。まずアムステルダム中心部だが、左の1:25,000官製図では市街地がベタ塗りで埋められ、施設の注記は、著名な観光地でもある国立美術館 Rijksmuseum、計量所 Waag、アンネ・フランクの家 Anne Frankhaus、マヘレの跳ね橋 Magere Brug 程度だ。一方、右の OpenTopo では建物の平面形が読み取れ、主要施設の注記もかなりの量に上る。地図を携えて街歩きが可能なほど、情報が豊富であることがわかるだろう。

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官製地形図(左)と OpenTopo (右)の比較。アムステルダム旧市街

次は北海沿岸のリゾート、エフモント・アーン・ゼー Egmond aan Zee の周辺だ。海岸砂丘の複雑な起伏が、 OpenTopo では等高線を読まずとも、ぼかしによって直観的に、かつ詳細に確かめられる。官製地形図(1:25,000、1:50,000など)でもかつては砂丘にぼかしをかけていたのだが、1990年代に改訂された新図式で省かれてしまい、現在は等高線だけになっている。訴求力の点でどちらが勝るのかは敢えていうまでもない。

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同 エフモント・アーン・ゼー

使用した地形図の著作権表示 © Kadaster, 2018, © OpenTopo, 2018

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 オランダの地形図地図帳 I
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 地形図を見るサイト-ベルギー
 地形図を見るサイト-フランス
 地形図を見るサイト-ドイツ・バイエルン州

2018年1月25日 (木)

地形図を見るサイト-フランス

フランスの国土地理院であるIGN(イ・ジ・エヌ、Institut Géographique National)も、地形図を含む幅広いジャンルの地理情報をウェブサイトで公開している。

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「ジェオポルタイユ」で見る1:25,000地形図
遠浅の湾内に浮かぶモン・サン・ミシェル。中心が修道院 Abbaye 、東~南斜面に門前町

フランスは面積では西ヨーロッパ最大で、551,500平方km(海外領土・属領を含まず)と、スイスやドイツ・バイエルン州の約13倍もある。そのため、さすがに旧版地形図がすべて見られるわけではないが、18世紀のカッシーニ図、19世紀前半の参謀本部地図、20世紀中盤の1:50,000(IGN旧版)、そして現行図と、世紀単位で国土の発展を追うことができる(下注)。

*注 パリ首都圏については、さらに1818~24年の参謀本部地図と1900年図式地形図も提供されている。

サイトのもう一つの特徴は、フランス国内だけでなく、国外についても協力会社の地図でカバーしている点だ。そのために Esri や OpenStreetMap の世界地図が使われており、それに加えて、スイスとルクセンブルクの官製図もレイヤーとして選択できる。グーグルマップの浸透で、国境を越えて地図・空中写真を閲覧できるのは当たり前のように思われがちだが、国家測量機関のサイトではあまり例がない。IGNは以前から、紙地図でも民間地図会社と提携して、他国の旅行地図をIGNブランドで販売してきた。それと同じことをウェブサイトの世界でも実現しているわけだ。

それでは、IGNの地図閲覧サイト Géoportail(ジェオポルタイユ、地理ポータルの意)の内容を見ていこう。表記はフランス語のみのため、スクリーンショットには適宜日本語訳を付している。
(記述は2018年1月現在の仕様に基づく)

ジェオポルタイユ Géoportail
https://www.geoportail.gouv.fr/

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初期画面

初期画面(上の画像)が地図ではなく、説明文が並んでいるだけなので戸惑うが、検索窓を除いて、どの文字列をクリックしても、次に出てくる画面は同じだ。

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次画面(2回目以降は省略も)

次画面(上の画像)には簡単な操作説明がある。FAQを見るのでなければ、画面上のどこかでクリックする。これでようやく黒のマスクが取れて、フランス全土の空中写真が現れる。

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操作初期画面

各アイコンの機能は上の画像に書き加えたとおりだが、空中写真を拡大しても、土地鑑がない限りそれがどこなのか見当もつかない。それで空中写真を地図に取り換えることにしよう。

別の地図などにするには、左上隅のCARTES(地図)のアイコンをクリックして、メニューを表示させる(このときアイコンが90度回転する)。なお、メニューを消去するには、再度CARTESアイコンをクリックする。

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ベースマップメニュー。「すべてのベースマップを見る」をクリックすると右の画面に

FOND DE CARTE(ベースマップ)をすべて表示するには、Voir tous les fonds de carte(すべてのベースマップを見る)をクリックする。上の右画面のような一覧が表示されるので、任意のサムネールを選択する。

なお、選択したベースマップはレイヤーとして、削除の操作(方法は後述)をしない限り積み重なっていく。つまり、一度選択したものは、画面で見えなくても背後には残っているのだ。それで、重ね順を変更したり、透明度を調節すること(方法は後述)によって、再び表示させることができる。また、レイヤーのサムネールをダブルクリックしても、重ね順が一番手前に来る。

選択できるベースマップは以下の通り。

・Carte IGN:IGN地図、すなわち全土のベクトルマップ
・Parcelles cadastrales:地籍図。背景が透明のため、他の地図に重ねて表示が可能。
・Plan IGN:IGN地図(作業用)。家屋の輪郭や影を消し、作業に使いやすいようにしている。
・Carte topographique IGN: IGN地形図、市販されている1:25,000地形図と同じもの。
・Cartes IGN classiques:IGN地図旧図式
・Carte IGN (niveaux de gris):IGN地図グレースケール版。さまざまなデータをオーバーレイするときに用いるとよい。
・Carte France Raster:ラスターマップ
・Carte du relief:レリーフ地図
・Cartes 1950:1950年代の地形図、縮尺1:50,000。
・Photographies aériennes 1950-1965:1950~1965年撮影の空中写真
・Carte de Cassini:カッシーニ図。18世紀に作成された三角測量に基づく世界最初の地図。原図の縮尺は1:86,400
・Carte de l'état-major (1820-1866):参謀本部地図。19世紀の軍用地形図で、縮尺1:80,000
・Cartes géologiques:地質図
・Esri World Topographic Map
・Esri World Street Map
・OpenStreetMap monde

メニューを畳むには、tous les fonds de carte の見出しの左の "<" をクリックする。

用意されている地図データはこれだけではない。Données thématiques(テーマのデータ)の見出しの下に、Agriculture(農業)から Territoires et transports(国土と交通)まで並ぶ項目の中にも、多数の選択肢がある。

例えば Culture et patrimoine(文化と遺産)には、Guyane française(フランス領ギアナ図、1780年、下注)、Carte de l’état-major – environs de Paris(最初の参謀本部地図-パリ周辺、1818~24年)、Cartes topographique type 1900 – Paris et ses environs(1900年図式地形図-パリとその周辺)など、上のベースマップ一覧にはない古地図が挙がっている。

*注 フランス領ギアナは南米大陸の北東岸にあり、ベースマップをその位置にしないと表示されない、

International et Europe(世界とヨーロッパ)では、Suisse(スイス)や Luxembourg(ルクセンブルク)の地形図が見られ(下注)、Territoires et transports(国土と交通)> Transportsには、Routes(道路)、Réseau ferroviaire(鉄道網)のオーバーレイやCarte OACI-VFR(ICAO航空図)もある。

*注 ルクセンブルクの地形図作成は、戦後一貫してフランスIGNが協力しているので、ここに登場するのは不思議なことではない。本ブログ「ルクセンブルクの地形図」参照。

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レイヤー操作メニュー

次に削除や重ね順の変更など、レイヤーの操作方法は以下のとおり。

まず、右上にあるレイヤーアイコン(上図の左画面参照)をクリックして、選択中のレイヤーを一覧表示する。歯車アイコン(同 中画面)をクリックすると、図のようなマネージャが現れる(同 右画面)。上がレイヤーの透明度を変えるスライドバーで、下のアイコンは左から、レイヤーの非表示/表示、モノクロ/カラー、情報の表示、削除(=選択をやめる)といった機能だ。

また、レイヤーの重ね順を変更するには、レイヤーのサムネールを上下にドラッグドロップする。

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印刷画面

次は表示した地図の操作について。

特定の地域を表示するには、検索窓で任意の地名(例:Paris)、郵便番号(例:75004)、経緯度(例:48°51'10.8" 2°20'59.4")、同 座標値(例:48.853084 2.349864)などを指定する。

地図を拡大縮小するには、+-ボタンを使うほか、ダブルクリックでも行える。図上でダブルクリックすると、1段階ずつ拡大する。Shiftキー+ダブルクリックで1段階ずつ縮小する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

地図をプリントするときは、画面右上の印刷アイコンをクリックする。印刷する地図にタイトルやコメントを入力する画面が出るが、必要なければ空白のままで、Imprimer(印刷する)ボタンをクリックする。拡大縮小や印刷範囲の微調整といった機能は見当たらない。

その他詳しい使い方は、画面右上のヘルプアイコンからリンクしている。

スイスで提供されているような「地形図による時間旅行」ができるサイトは、「ルモンテ・ル・タン Remonter le temps(時を遡るの意)」の名称で別に作られている。2種類の地図・空中写真を並べて比較したり、ダウンロードしたりする機能が実装されているが、表示できるのは、IGN地図、1950年代の縮尺1:50,000地形図、1820~66年の参謀本部地図、18世紀のカッシーニ図、現行の空中写真、1950~65年の空中写真の6種類にとどまる。いずれもジェオポルタイユで見ることができるものばかりで、わざわざ別サイトにする意味は薄いように思う。

ルモンテ・ル・タン Remonter le temps
https://remonterletemps.ign.fr/

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「ルモンテ・ル・タン」2種の地図比較画面

なお、ジェオポルタイユのデータの使用については、利用規約に次のとおり記されている。
http://www.geoportail.gouv.fr/mentions-legales より抜粋、和訳)

「10.スクリーンショットと印刷

IGNのコンテンツのみがスクリーンショットまたは印刷物に含まれる場合、各データレイヤーの情報に反対記述がない限り、IGNは次のとおり再使用を許可する。

・A4サイズおよび解像度150dpi(約1230×1750ピクセル)に限定した、直接または間接的に経済的利益を与えない用途での印刷

・最大サイズ1000×1000ピクセルかそれと同等または約100万ピクセルの1個または複数個の画像に限定した、サイト、ブログ、共有プラットフォームその他、インターネットユーザーが登録なしで参照可能なウェブアプリケーションへの挿入。あらゆる公表物には、GéoportailのロゴとIGNのロゴまたは「© IGN」と年次の記述を添えなければならない。ただしこの記述では、公表サイトとジェオポルタイユの間で混同が生じないように、スクリーンショットの出処を示すべきである。

それ以外のIGNデータの使用はすべて、IGN代理店網から入手できるライセンスの対象となる。」

使用した地形図の著作権表示 © IGN, 2018

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 地形図を見るサイト-ドイツ・バイエルン州

2018年1月18日 (木)

地形図を見るサイト-ドイツ・バイエルン州

通販サイトで商品の発注や代金決済が手軽に行えるようになった今でも、外国の地形図を印刷物で入手するには、ある程度の手数と時間を伴う。一方で、より手軽に地形図にアクセスできるように、ウェブサイトで閲覧やセルフ印刷のサービスを提供する測量機関も増えてきた。本ブログでも、先にスイスとニュージーランドのサイトを紹介した(本稿末尾にリンクあり)が、ほかにも同じような仕組みを整えているところがある。ドイツ・バイエルン州もその一つだ。

ドイツの地形図概説 II-連邦と州の分業」 でも紹介したように、ドイツの官製地図作成は、小縮尺(1:200,000以下)が連邦政府、中・大縮尺図(1:100,000以上)は各州政府という分業体制がとられていて、ウェブサイトもそれぞれにある。中でもバイエルン州の測量局(下注)が開いているサイト「バイエルンアトラス BayernAtlas」は、使い勝手がよく、内容的にも充実している。

*注 かつてはバイエルン州測量局 Bayerisches Landesvermessungsamt という単純明快な名称だったが、現在は任務の高度化を反映して「デジタル化・広帯域・測量局 Landesamt für Digitalisierung, Breitband und Vermessung(略称 LDBV)」と称する。

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「バイエルンアトラス」で見る現行1:25,000地形図
ワグネリアンの聖地バイロイト。南に旧市街、北に祝祭劇場 Festspielhaus が建つ丘

バイエルン Bayern(正式名:バイエルン自由州 Freistaat Bayern)は、ドイツの面積の2割に当たる広い州域(70,549平方km、北海道の面積の85%に相当)を有している。その上、オーストリアとの国境にはアルプスの山岳地帯が横たわり、地勢の面でもダイナミックさが際立つ。それだけに、見ごたえのあるサイトで、地形の詳細を余すところなくチェックできるのはうれしいことだ。

同サイトは、スイスの「連邦ジオポータル Geoportal des Bundes」で使われているシステムをベースにしているので、画面デザインや操作方法はよく似ている。ただ、英語表記の説明も選択できるスイスとは異なり、ドイツ語表記しかないのが難点だ。そこで本稿では、スイスのサイト紹介と重複するのを承知の上で、主な使い方を日本語訳を加えながら記すことにしたい。
(記述は2018年1月現在の仕様に基づく)

バイエルンアトラス BayernAtlas
https://geoportal.bayern.de/bayernatlas/

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初期画面

初期画面(上の画像)では、バイエルン州全域が「ウェブカルテ Webkarte」のカラー版で表示されている。ウェブカルテというのはベクトルマップで、右端の拡大縮小(+-)ボタンを使って、最終的に家1軒の形と家屋番号がわかるところまで拡大できる。実用的にはこれで十分だが、残念ながら等高線や植生の種類などは省かれており、そこが地形図との違いになっている。ウェブカルテは背景図として扱われており、他の地図と入れ替えたり、この上に別の地図レイヤーを重ねたりできる。

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背景図選択

背景図を入れ替えるには、画面右下の Hintergrund(背景)をクリックする。背景図は、Kein Hintergrund(背景なし=白地の画面)、Webkarte S/W(ウェブカルテのモノクロ版)、Historische Karte(古地図)、Topographische Karte(地形図)、Luftbild + Beschriftung(空中写真+注記)、Webkarte(ウェブカルテのカラー版=初期画面)の6種から選択できる。

このうち、「Historische Karte(古地図)」は、1817~1841年に作成されたバイエルン王国最初の近代測量成果である縮尺1:25,000の「測量原図 Urpositionsblätter」902面のシームレス画像が表示される。それ以外の旧版地形図は、背景図ではなくレイヤーで重ねることになる(後述)。

「Topographische Karte(地形図)」は、現行地形図のピクセルマップ(ラスタデータ)で、1:200,000以下は連邦の測量局BKG作成の図が使われている。

「Luftbild + Beschriftung(空中写真+注記)」には、画像に注記文字が埋め込まれている。注記のない空中写真はレイヤーで選択できる(後述)。

特定の地域の地図を表示するには、地名、郵便番号、経緯度、UTM座標などで指定するほか、マウスで直接矩形を描いて選択する方法がある。

・地名/郵便番号で検索
 →検索窓に、表示したい地名(例:Augsburg)または郵便番号(例:86150)を入力。候補が表示された場合はその中から選択

・経緯度で検索
 →検索窓に、経緯度(経度 緯度の順、48°22'03" 10°53'54")、同 座標値(例:48.36728 10.89829)などを入力

・マウスで直接選択
 →地図上でShiftキーを押しながらマウスで任意の範囲をドラッグする(矩形を描く)

地図を拡大縮小するには、+-ボタンを使うほか、ダブルクリックでも行える。図上でダブルクリックすると、1段階ずつ拡大する。Shiftキー+ダブルクリックで1段階ずつ縮小する。また、マウスホイールを使うと、連続的に拡大縮小できる。

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テーマの選択

背景図の上に重ねる地図レイヤーを表示するには、まず地図のテーマを選択する必要がある。レイヤーはテーマ別にまとめられているからだ。テーマは左メニューに表示されており、デフォルトは「Freizeit in Bayern(バイエルンでの休暇)」になっている。この下部項目にレイヤーが列挙されている。

地図のテーマを選択するには、初期画面で「Freizeit in Bayern」の見出しの右にある「Thema wechseln(テーマを選択)」のリンクから、選択肢(下の画像)を表示させる。

レイヤー表示の例として、ここでは「旧版地図」と「注記のない空中写真」を取り上げる。

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さまざまなテーマを選択できる

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旧版地形図を表示

・旧版地図(図郭表示→PDFダウンロード)
 テーマ「Geobasisdaten(地理基礎データ)」の従項目に「Historische Karten(旧版地図)」がある。2018年1月現在で提供されているのは1:25,000地形図 Historische Topographische Karten 1:25 000(下注)のみだ。表示される索引図の中から任意の図郭をクリックすると、その図葉の刊行年次リストとPDFファイルへのリンクが表示される(上の画像)。

*注 バイエルンの1:25,000地形図は、1902年にラインプファルツ Rheinpfalz(ライン川左岸にあったバイエルン王国の飛び地で、第2次大戦後はラインラント・プファルツ州の一部となる)で、1920年からライン川右岸のバイエルン rechtsrheinischen Bayern でも開始され、1960年に全558面が完成した。リストには2008年までに作成されたものが表示される。

・注記のない空中写真
 「Freizeit in Bayern(バイエルンでの休暇)」の従項目の「Basiskarten(基本図)」に、Luftbild(空中写真)を選択する。

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複数の地図の対比、透明度バーを使う

複数の地図や空中写真を画面上で対比させるときは、2通りの方法がある。まず、地図や空中写真を先述の手順で複数選択しておく。

・透明度バーを使う
 →左メニュー下部の Dargestellte Karten(表示する地図、上図②)で、上記テーマで選択したレイヤーの一覧が表示されるので、右の歯車マーク(上図③)をクリックし、Transparenz(透明度)バー(上図④)をスライドさせて、各層の透明度を調整する。重ね順は右側の矢印をクリックして変更できる。

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同上、左右に並べて表示

・左右に並べて表示
 →左メニューの Erweitere Werkzeuge(拡張ツール)> Vergleichen(対比)で左右に並べて表示できる。境界線はスライド(左右に移動)できる。

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地図の印刷

地図をプリントするときは、左メニューのDrucken(印刷)から必要事項を選択する。Orientierung(印刷の向き)は、Hochformat(縦長)か Querformat(横長)で、Maßstab(印刷の縮尺)の意味するところは、印刷対象となる地図本来の縮尺ではなく、紙に印刷したときの縮尺のことだ。たとえば1:50,000地形図が印刷対象のとき、ここで1:25,000を選択すると2倍に拡大したものが出力される。

選択後、Drucken(印刷する)をクリックする。生成されたPDFファイルを保存し、アドビリーダー等を使ってプリントする。

その他詳しい使い方は画面右上の Hilfe(ヘルプ)にある。

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時間旅行バーの表示

「時間旅行 Zeitreise」

スイスのサイトと同じく、各時代の旧版地形図による「時間旅行」機能も提供されている。
左メニューにある Thema wechseln(テーマ変更)のリンクから、Zeitreise(時間旅行)を選択すると、画面上部に「時間旅行バー」が表示される。バーには1850年代から現在までの目盛が振られている。ポインターに記されている数字は年次で、その時点で最も新しい改訂年次の地図が画面に表示される。

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年次の選択

表示地図の年次を変更するには

・ポインターをスライド
 →ポインターをバーの上で左右にスライドさせる。動かす都度、地図が入れ替わる。

・ポインターの年次を手入力
 →年次の個所をダブルクリックで選択して、任意の年次を手入力する。

なお、年代(特に古い年代)によって旧版図が存在しない場合は、最も近い年代の図(または別の縮尺図の拡大版など)が表示される。

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地図の縮尺や改訂年次などを知る

表示地図の縮尺や改訂年次などを知るには、図上でクリックする。Objekt-Information(主題情報)として、シリーズ名称・縮尺、Blattnummer(図番)または Blattname(図名)、Herausgabejahr(改訂年次)、Ausgabeart(版の種類、Normalausgabe=通常版、Schummerungsausgabe=ぼかし付加版、Farbausgabe=カラー版など)が表示される。

また、その下の行に "Karte als PDF" のリンクが出る場合は、当該図のPDFファイルをダウンロードすることができる。

時代順に地図を自動で切替えるには、時間旅行バーの右端にあるプレイボタンをクリックする。

異なる年次の地図を同時に表示するには、上記「複数の地図や空中写真を画面上で対比させるとき」の機能を使用する。

「バイエルンアトラス」では、ドイツ全土をカバーする既知の地形図体系とは別に、バイエルン王国(第一次世界大戦後は州)が独自に整備した19世紀前半の縮尺1:25,000「測量原図 Urpositionsblätter」や、縮尺1:50,000「バイエルン王国地形図集成 Topographischer Atlas des Königreiches Bayern」など、貴重な古地図(旧版地形図)も公開されており、興味は尽きない。1:50,000旧版など未作成のPDF化が完了した暁には、スイスのそれに匹敵するすばらしいウェブ・アーカイブになることが期待される。

使用した地形図の著作権表示 © Landesamt für Digitalisierung, Breitband und Vermessung, Bayern, 2018

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 地形図を見るサイト-ニュージーランド

2017年7月 2日 (日)

地形図を見るサイト-ニュージーランド

前2回で紹介したニュージーランドの地形図は、ウェブサイトでも広範に公開されており、居ながらにして表情豊かな大地を図上旅行することが可能だ。サイトには、地形図をシームレスに閲覧するものと、図葉単位で画像ファイルをダウンロードするものがある。

NZ Topo Map(最新地形図の閲覧)
http://www.topomap.co.nz/

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日本の国土地理院に相当するニュージーランド土地情報局 Land Information New Zealand、略称 LINZ は、現行Topo50(1:50,000)、Topo250(1:250,000)シリーズの閲覧サイトを設けている。初期表示されるのは地形図(Topo50)のレイヤーだ。検索窓(上図①)で地名を入力するか、画面右上の+ボタン(上図④)で表示を拡大していけばよい。また、その下の50と250と記されたボタン(上図⑥)で、Topo50/Topo250の表示を切り替えることができる。

レイヤーの追加は、画面右上のドロップダウンリスト(上図②)で行う。日本語環境では、「None」(下層レイヤーなし)、「地図」(グーグルマップ)、「航空写真」が選択できる。ただし、レイヤーを選択しただけでは表示は変わらない。左側のスライドバー(上図③)を使って、レイヤーの透過度を調節する必要がある。

スマートフォンユーザーには、同名のアプリ(NZ Topo Map)も用意されている。地図閲覧は同じように無料だが、ダウンロードは有料になる。

MAPSPAST(旧版地形図の閲覧)
http://www.mapspast.org.nz/

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地形図表示画面
Sourced from NZMS 1 Maps S14 Motueka and S20 Nelson. Crown Copyright Reserved.

このサイトでは、旧版地形図をシームレスに閲覧することができる。ユニークなのは、1949年から2009年まで各10年代の最終日現在の「最新図」を提供する、と謳っている点だ。もちろん、その時点で刊行されていた最新図という意味であり、地図の表示内容が最終日の状態を表しているわけではない。現在閲覧できるのは、

・1959年  NZMS 1シリーズ(1:63,360、1マイル1インチ地図)
・1969年  NZMS 1 シリーズ
・1979年  NZMS 1 シリーズ
・1989年  NZMS 1シリーズおよびNZMS 260シリーズ(1:50,000)
・1999年  NZMS 260シリーズ
・2009年  Topo50シリーズ(1:50,000)
・最新  Topo50シリーズ(1:50,000)および空中写真

の7世代だ。

なお、NZMS 1シリーズが全土をカバーしたのは1975年なので、1959年と1969年の時点では主として山地で未完成(白紙)のエリアがある。1949年時点(NZMS 1初版)の作業は未着手とされているが、その代わりに1949年時点の1:63,360地籍図(NZMS 15)がある。地籍図は、1899年、1909年、1919年時点のNZMS13シリーズもあり、イギリス自治領時代の国土の状況を知る手がかりとして貴重だ。

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初期画面

閲覧画面の主な機能は次のとおり。

・ベースマップ(地図レイヤー)の切替え
 →画面左上のレイヤーボタン(上図②)で表示されるリストから選択
 (今のところ、複数レイヤーの選択はできない模様)

・座標系の切替え
 →画面左上の設定ボタン(上図③)で表示されるリストから選択(座標値は画面右下に表示されている)

・特定地点の図歴表示
 →画面左上の図歴表示ボタン(上図④=表示中の図歴、または⑤=すべての図歴)を選択したうえで、図上の任意の地点をクリック

Map-chooser(最新地形図のダウンロード)
http://www.linz.govt.nz/land/maps/linz-topographic-maps/map-chooser

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LINZはTopo50とTopo250について、紙地図だけでなく、画像ファイル(TIFFファイル、GeoTIFFファイル)、データファイル(シェープファイル)も無償で提供している。これらは本サイトから図葉ごとにダウンロードできる。初期画面のニュージーランド全図に表示されているのは、Topo250の図郭だ。任意の図郭をクリックすると、その図郭に含まれるTopo50の図郭の一覧と、Topo250の画像およびデータファイルへのリンクが表示される。

University of Auckland - NZ Cartographic and Geospatial Resources Repository(旧版地形図のダウンロード)
https://gdh.auckland.ac.nz/

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オークランド大学 University of Auckland のニュージーランド地図・地理空間資源リポジトリ NZ Cartographic and Geospatial Resources Repository では、旧版地図の画像ファイルがシリーズ別、図葉・年代順に整理され、一般利用に供されている。同国で刊行されてきたおよそすべての図葉が網羅され、地図ファン垂涎の一大コレクションになっている。

初期画面では、4つのカテゴリーが表示される。

・New Zealand Mapping Service (NZMS) series maps
 NZMSと呼ばれる地籍図、地形図、航空図等の旧シリーズ

・Land and Survey (L&S) series maps
 L&Sと呼ばれる上記以外の地図資料

・Topographic (Topo) series maps
 Topo50、Topo250等、新シリーズの地形図

・Digital Topographic (Topo) data
 上記新シリーズのデータファイル

1番目のカテゴリーが、いわゆる旧版地形図(NZMSシリーズ)だ。2009年以降に製作されたNZ Topoシリーズは3番目のカテゴリーに属する。また、そのデータファイルは4番目のカテゴリーにある。

リンクから次の画面に入ると、サーバのディレクトリ一覧が表示されてしまい、いささか困惑するのだが、ともかくこのサブディレクトリに、各シリーズ名のついたフォルダ(例:NZMS 001)が格納されている。官製地図のシリーズ名については、次の表を参考にしていただきたい。

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主なニュージーランド官製地図シリーズ

たとえば、NZMS 001のフォルダを選択すると、次はファイル形式別のフォルダだ(geotif:GeoTIFFファイル、jpg:JPEG画像ファイル、tif:TIFFファイル)。ここでたとえば jpg を選択すると、次の画面で各図葉のファイルが現れる。ファイルの命名例は次のとおり。

NZMS001_Index-NI_1943.jpg:
 NZMS 1シリーズの索引図(Index)、北島編(NI=North Island)、1943年版

NZMS001_N1-2_1954.jpg:
 NZMS 1シリーズの地形図、図番N1-2(N1とN2の接合図)、1954年版

したがって、見たい図葉にたどり着くには、あらかじめ索引図で図番を調べておく必要がある。地図画像は300dpiでスキャンされており、細部まで確実に読み取ることができる。

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ニュージーランドの1:250,000地形図ほか

前回紹介した1:50,000のほかにも、ニュージーランドにはいくつかの地形図シリーズがある。縮尺の大きいものから順に紹介していこう。

1:25,000

1:25,000(NZMS 2 シリーズ)は、1マイル1インチ地図である NZMS 1 と重なる時期に、ごく一部の地域で製作されたに過ぎない(下注)。製作期間も1942年から1960年代半ばまでで、少し間が空いて1972年に出た S83-5 Burnham 第2版が最後の更新となった。その後は刊行されていない。

*注 これとは別に、北島のオークランド Auckland では仕様の異なる NZMS 2A シリーズ(1940~51年)が、同じくワイオウル Waiouru では NZMS 2B シリーズ(1940~59年)が刊行されていた。

図郭は、NZMS 1 のそれを縦横3等分した東西15km×南北10km、地勢表現は50フィート間隔の等高線による。NZMS 1 と異なり、密集していない市街地に黒抹家屋の記号が使われており、建物の並び方を読み取ることができる。街中に点々と置かれた赤色は郵便局の位置を示し、Pt の注記も Post Office with Telephone の略だ(下注)。また、街路にかなりの密度で張り巡らされた市電の線路も、鉄道ファンとしては興味深い。NZMS 1 では併用軌道の記載が省略されてしまうから、貴重な図化資料といえる。

*注 凡例によれば、Pt は電話のある郵便局 Post Office with Telephone、PT は郵便・電話局 Post & Telephone Office、P のみは郵便局、t のみは電話局を示す。

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25,000図の例 ウェリントン市街(1952年8月初版)
Sourced from NZMS 2 Map N164/2 Wellington. Crown Copyright Reserved.

1:250,000

1950年代からの歴史をもつ1:250,000は、現在も更新が維持されている。初代シリーズは NZMS 18 で、1958年から1982年にかけて製作された。図郭は東西180km×南北120kmで、26面で全土をカバーした。地勢表現は、500フィート間隔の等高線にぼかし(陰影)を併用しているが、NZMS 1が未整備だったために等高線が描かれないエリアも散見される。

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250,000図表紙
(左)旧表紙 Christchurch 1982年版 (右)新表紙 Auckland 1997年版

1969年のメートル法採用をきっかけに、ニュージーランドでは1977年から新たなシリーズへの切替えが始まった。1:50,000の NZMS 260 シリーズに対して、1:250,000には NZMS 262 のシリーズ名が与えられた。図郭は東西200km×南北150kmに拡大され、18面で全土をカバーする。1985年に刊行が完了し、その後1998年まで更新が続けられた。

等高線間隔は100mで、ぼかし(陰影)も掛けられているが、NZMS 18 と同じ事情で、1:50,000の整備が間に合わずに等高線が省かれた図葉がある。その代替として、ハイライト(光の当たる側)に橙色、シャドーに灰色を置いて陰影を強調する2色法が試みられた。ここに自生林 Native Forest を表す青みを帯びた緑のアミが加わると、美的にも優れた図ができあがる。

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250,000図の例 トンガリロ山群
1980年初版は等高線がなく、2色陰影法で地勢を表現する
Sourced from NZMS 262 Map 6 Taranaki. Crown Copyright Reserved.
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同 1987年第2版で等高線が入れられた
Sourced from NZMS 262 Map 6 Taranaki. Crown Copyright Reserved.

地図記号は1:50,000のそれを簡略化したもので、デザインは共通だ。小縮尺で実形が表せなくなるためか、空港・飛行場には専用記号が設定されている。さらに国際空港 International airport には赤の、地方空港 Domestic airport には黄色の、それぞれ塗りが加わる。地物の記号でも、各種電波塔、送電線、灯台など、飛行中の目標または障害物に関わるものが取り上げられているのが興味深い。

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Topo250表紙
Auckland 2015年版

このNZMS 260 は、2009年にニュージーランド測地系2000に基づく NZ Topo250 へ一斉に切り替えられ、現在はこのシリーズが流通している。Topo50 と同じくA1判で縦長化されたので、図郭は東西120km×南北180kmとなり、それに伴い、面数は31面に増加した。

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1:250,000の3世代比較 オークランド
(左)NZMS 18 1977年版 マイル・フィート表示、道路は橙1色、注記はセリフ書体で、海に等深線が入る
(中)NZMS 262 1997年版 メートル表示、国道は赤、注記はサンセリフに
(右)Topo250 2015年版 地図表現はNZMS 262を踏襲、ぼかしは薄目に
Sourced from maps of NZMS 1 Wellington, NZMS 260 Wellington and Topo50 Wellington. Crown Copyright Reserved.

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500,000図表紙
North meets South 1988年版

1:500,000

大判用紙を使用し、かつ地図の方位を適宜傾けることによって、1:500,000(NZMS 242 シリーズ、下注)はわずか4面で全土をカバーする。1面に、東西400km×南北500kmという広大な面積が収まる。図名は土地鑑がないとややわかりにくいが、実質的に、Further North=北島北部、The North=北島主部、North Meets South=南島北部、The South=南島南部と考えるといいだろう。

*注 NZMS 242 としてはもう1面、フィジー諸島 Fiji Islands 図葉があった。

前身は1949~73年に刊行された NZMS 19 シリーズ(全7面)で、1976年から NZMS 242 に切り替えられた。後には Coast to Coast というシリーズの愛称もつけられている。1996年の測量事業再編で、1:500,000以下の小縮尺図が更新対象から外されたため、現在、公式サイトでダウンロードできるのはそれ以前の版だ(下注)。

*注 1:500,000は1995~96年版が最新になる。

地勢表現には、300m間隔の等高線(低地では150mのラインも)、段彩(高度別着色)、繊細なぼかし(陰影)の3種の手法が駆使されている。その効果を妨げないように植生表現では、自生林にアミではなく、より隙間の多いパターンが使われている。また、居住地名の注記は、読み取りやすいボールド体(太字)で強調される。ニュージーランドの地形図はどれも美しいのだが、中でもこれは出色の出来栄えと言えるだろう。この図版を利用して、航空図(NZMS 242A)も製作されている。

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500,000図の例 サザンアルプス中央部(1996年部分修正版)
Sourced from NZMS 242 Map 4 the South. Crown Copyright Reserved.

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1,000,000図表紙
South Island 1989年版

1:1,000,000(100万分の1)

1:1,000,000(NZMS 265 シリーズ)は、1980~89年の間に製作され、北島と南島の2面がある。この縮尺では等高線が省かれ、段彩とぼかしで地勢が表される。段彩は、海の深度にも用いられている。残念ながら、ぼかしは粗く、また暗めのトーンのため、山地はともかく、平野部がひどく沈んで見える。せめて道路網や市街地に明色を配すればよかったのだが、前者は薄茶色、後者は黒のアミで、アクセントにもなっていない。1島が1面に収まるという長所はあるものの、地図表現は1:500,000に劣ると言わざるを得ない。なお、裏面には、地名索引が印刷されている。

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1,000,000図の例 クライストチャーチ周辺(1989年版)
Sourced from NZMS 265 Map of the South Island. Crown Copyright Reserved.

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2,000,000図表紙
New Zealand 1996年版

1:2,000,000(200万分の1)

北島と南島を1面に収める1:2,000,000は、シリーズ名 NZMS 266 として1984年に製作され、1986年と1996年に改訂版が出た。地勢表現は段彩と繊細なぼかしによるが、地色が明るいので、上に載る道路網も容易に識別できる。市街地に黄色を配したのも効果的だ。また、文字サイズが小さくなるものの、自然地名も豊富に盛り込まれている。総合的に見て1:500,000を凝縮したような完成度を保っており、ニュージーランドの地理的な全体像を知りたいというときにお薦めできる地図だ。

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2,000,000図の例 南島中央部(1996年版)
Sourced from NZMS 266 Map. Crown Copyright Reserved.

最後に、ニュージーランドの地形図の入手方法だが、紙地図(オフセット印刷図)は、ニュージーランド国内の主な地図商で扱っている。地図商のリストは、「官製地図を求めて-ニュージーランド」にまとめている。また、LINZの特設ウェブサイト等では、閲覧およびデータダウンロードが可能だ。これについては、次回詳述する。

なお、ニュージーランドの官製地形図は、クリエイティブ・コモンズ表示3.0国際ライセンスに従い、旧版と現行版にかかわらず無償利用が可能となっている。その際、LINZは次の著作権表示を付すことを求めている。
"Sourced from [product name]. Crown Copyright Reserved"

■参考サイト
Land Information New Zealand (LINZ)  http://www.linz.govt.nz/

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2017年6月24日 (土)

ニュージーランドの1:50,000地形図

ニュージーランドは、2つの大きな島と周辺の小島から成る国だ。北島は本州の約1/2、南島は同じく約2/3の広さがあり、雄大な自然美で冒険好きの人々を惹き付けてきた。代表的な景観を挙げれば、北島ではトンガリロ国立公園やタラナキ山(エグモント山)に代表される際立った風貌の火山群、南島では背骨を成すサザンアルプスの氷河や、西岸の険しいフィヨルドだろうか。変化に富んだ地形はまた、それを写し取る地図に対する興味をも刺激し続ける。

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南島、ミルフォードサウンド
Photo by Wikikiwiman at English Wikipedia.

同国の地形図はかつて土地測量局 Department of Lands and Survey(1987年から、測量・土地情報局 Department of Survey and Land Information)が製作していた。1996年の組織改革により、同局はニュージーランド土地情報局 Land Information New Zealand、略称 LINZ に再編され、その際、測量事業部門が切り離されて、新設の国有企業 テラリンク・ニュージーランド有限会社 Terralink New Zealand Ltd に移管された。1998年からはさらに競争入札で民間委託されるなど事業の扱いは二転三転したが、2007年にLINZの直営に戻されて、現在に至る。

LINZは、ウェブサイトでの全面公開や二次利用の許諾など地図利用の制限緩和を進めるかたわら、採算的には厳しい紙地図(オフセット印刷図)の供給も維持している。多様なニーズに応えようとするニュージーランドの地形図事情について、3回にわたり紹介したい。

ニュージーランドの本格的な地形図作成は、まだイギリスの自治領だった1930年代に始まる。軍事戦略問題を研究する帝国防衛委員会 Committee of Imperial Defence が、全国の詳細な地形図の開発を政府に求めていた。その背景には、アジア・太平洋圏への進出拡張を図る日本に対する強い警戒があった。

航空写真測量による最初の1マイル1インチ地形図(略してワンインチマップ 1 inch map と呼ばれる)は、1939年に刊行されている。これはイギリスの方式に倣った、実長1マイルを図上1インチで表す縮尺図だ。分数表記では1:63,360とされる。NZMS 1(下注)と呼ばれたシリーズは、1947年の国家独立後も作成が続けられ、1975年に360面で全土をカバーした。更新はその後も1989年まで行われた。

*注 NZMS は New Zealand Mapping Service の略。ニュージーランドの政府刊行地図は「NZMS+シリーズ連番」の形で体系化されている。1マイル1インチ地形図は、図郭が東西45km×南北30kmの範囲、地勢表現は100フィート間隔の等高線とぼかし(陰影)による。

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1マイル1インチ地形図の例 南島カイアポイ Kaiapoi 周辺
Sourced from NZMS 1 Map S76 Kaiapoi. Crown Copyright Reserved.

同国では1969年にメートル法が採用されたが、そのときはまだ、NZMS 1が南島のフィヨルド地方で完成していなかった。そこで、当面このシリーズで全土を覆うことが優先されたという。しかし並行して、メートル法による新しい地形図の研究も進められた。NZMS 1の完成から間もない1977年には、縮尺1:50,000による新シリーズ NZMS 260 の刊行が開始されている。これは1997年に296面で全土をカバーし、2007年まで更新が続けられた。

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NZMS 260シリーズ表紙
(左)旧表紙 Wellington 1986年部分修正版
(中)Topomapロゴ入り Taumarinui 1987年版
(右)新表紙 Te Anau 2000年版

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Topo50表紙
Wellington 2014年版

NZMS 260は足掛け30年間使われたなじみ深いシリーズだったが、2009年9月に、デジタル編集技術の進歩と新測地系採用を反映したNZ Topo50 シリーズ451面に切り替えられた。縮尺は同じく1:50,000だ。地域座標系NZGD49を使用していたNZMS 260に対し、Topo50は、世界測地系WGS84に基づくニュージーランド測地系2000 New Zealand Geodetic Datum 2000 (NZGD2000) で投影されている。そのため、両者はグリッド位置がずれており、互換性がない。

ニュージーランドでも昨今、利用の大勢はオンラインに移行しているが、冒頭で述べたように、新シリーズ Topo50 でも紙地図の供給が継続されたことは注目すべきだろう(下注)。しかも図郭は、NZMS 260が東西40km×南北30kmの横長判なのに対して、Topo50は汎用のA1判を縦長に使っている。東西24km×南北36kmとカバーする面積が小さくなり、その分、面数は25%も増加した。

*注 対照的に、官製旅行地図(ハイキング地図)の印刷版は廃止された。旅行地図は稿を改めて紹介の予定。

在庫管理の手間がかさむにもかかわらず小判化を断行した理由は明らかでないが、表紙に記されている「エマージェンシー・サービス使用 Used by New Zealand Emergency Service」という語句が一つのヒントになる。南オーストラリア州などでも見られるように(下注)、消防や災害救助といった公共分野では紙地図の需要があり、それに応える形で刊行が維持されているようだ。紙寸や折りをコンパクトにしたのも、現場に向かう狭い車内での扱いやすさを考慮した可能性がある。

*注 南オーストラリア州ではエマージェンシー・サービスの名を冠した地図帳が刊行されている。「オーストラリアの地形図-南オーストラリア州」参照。

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Topo50およびTopo250索引図の一部
Topo250(1:250,000、黒枠の範囲)の図郭を縦横5等分したのがTopo50の図郭(緑枠)

では、1:50,000の仕様を詳しく見てみよう。地勢表現は、20m間隔の等高線にぼかし(陰影)が併用されている。等高線は茶色ではなく道路の塗りと同じ橙色で、サザンアルプスなどに見られる氷河と万年雪のエリアでは青に変わる。平野部では10mの補助曲線も用いられる。

地勢を際立たせるぼかしの技法は、1960年代にNZMS 1シリーズの図式改訂で初めて採用されたものだ。NZMS 260までは比較的濃いアミで立体感が強調され、見栄えがしたが、Topo50ではやや控えめになった。色彩では、植生のミントグリーンに、道路記号の塗りとして鮮やかな赤と橙が加わる。この2色の帯は明瞭なアクセントとなって図を引き立てている。

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同国最高峰クック山 Mt. Cook
NZMS260では、氷河が青の等高線とぼかしで美しく描かれる
Sourced from NZMS 260 Map H36 Mount Cook. Crown Copyright Reserved.
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北島東岸マウント・マウンガヌイ Mount Maunganui、陸繫島と砂州上の市街地
Sourced from NZMS 260 Map U14 Tauranga. Crown Copyright Reserved.

地図記号では、まず道路の路面状態を3種に分類するのが目を引く。通常は舗装か未舗装かの2パターンしかないが、ここではアスファルト sealed、マカダム舗装 metalled(砕石舗装のこと、さらにタールで固める場合もある)、未舗装 unmetalled と分けている。また、1車線橋梁 one lane bridge、渡渉地 ford などの記号もあって、原野を貫く一本道といったアウトバックの典型風景を彷彿とさせる。

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Topo50凡例 道路・その他

鉄道記号は、複線に旗竿形、単線に太い線が充てられて、やや違和感があるが、路線そのものが少なく、かつ複線区間は北島の都市部に限られている。そのほか、パイプライン pipeline(地中 underground と地上 above ground の別あり)、送電線 power line(鉄塔 on pylons と電柱 on poles の別あり)、電信線など、線状に延びる施設が細かく分類されているのも特色だ。

水部には、青と赤の×印を用いた冷泉 cold spring/温泉 hot spring の記号がある。また、大型の赤い×印が噴気孔 fumarole、それを〇で囲むと地熱採取孔 geothermal bore を表す。いずれも、活発な火山活動を前提にした記号だ。

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Topo50凡例 水部・植生

Topo50は1インチ地図から数えて3代目のシリーズだが、各シリーズの間で地図表現はどのように変化してきたのか。同じウェリントン Wellington 図葉から、都市と郊外(海岸、山地)のエリアを抜き出してみた(下図参照)。それぞれ左/上は1インチ図であるNZMS 1、中央がNZMS 260、右/下がTopo50だ。

NZMS 1とNZMS 260は、用いられる縮尺や単位(マイル・フィート/メートル)だけでなく、見た目もかなり異なる。特に目立つのは市街地の表現だろう。NZMS 1では、密集していない市街地で、道路と総描家屋をひとまとめにしたような特異な描き方をするが、NZMS 260では灰アミに変わる。実はどちらもイギリス流で、本家の図式改訂が持ち込まれた形だ。また、注記フォントは、セリフ書体(先端に飾りのある)からサンセリフ(飾りのない)になり、鉄道や道路など交通路の記号は太く強調されて、図上での視認性はかなり良くなった。

これに比べて、NZMS 260からTopo50へは、地図デザインも記号も軽微な変更にとどめられ、親和性が高い。ただしよく見ると、都市図ではTopo50 のほうが施設の注記(Schs=学校、Hosp=病院、Substn=変電所など)が充実している。郊外図でも、ウェリントン図葉では海岸の崖(海蝕崖)や山地の沢など、Topo50のほうが情報量が多く、目立たないところで改良の手が加えられているようだ。

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ウェリントン市街
(左)NZMS 1 1974年版 (中)NZMS 260 1983年版 (右)Topo50 2016年版
Sourced from maps of NZMS 1 Wellington, NZMS 260 Wellington and Topo50 Wellington. Crown Copyright Reserved.
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テラウィティ岬 Cape Terawhiti 周辺(ウェリントン西方)
(上)NZMS 1 1974年版 (中)NZMS 260 1983年版 (下)Topo50 2016年版
Sourced from maps of NZMS 1 Wellington, NZMS 260 Wellington and Topo50 Wellington. Crown Copyright Reserved.

次回は、1:50,000以外の縮尺図を紹介する。

■参考サイト
Land Information New Zealand (LINZ)  http://www.linz.govt.nz/

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 ニュージーランドの1:250,000地形図ほか
 地形図を見るサイト-ニュージーランド

 オーストラリアの地形図-連邦1:100,000
 オーストラリアの地形図-連邦1:250,000

2017年5月13日 (土)

オーストラリアの地形図-タスマニア州 II

タスマニア州の第一次産業・公園・水・環境省 Department of Primary Industries, Parks, Water and Environment が2015年4月に作成した「タスマップ地形図作成 将来の方向性 TASMAP Topographic mapping Future directions」というパンフレットがある。その中でタスマップ(下注)の将来の方向性について、次の5項目が提案されている。

*注 現地の発音はタ「ズ」マップだが、タスマニアの慣用表記に合わせて、本稿ではタスマップと記す。

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「タスマップ地形図作成 将来の方向性」表紙

1.新たに1:50,000地形図シリーズを導入する
2.新たに1:50,000タスマニア マップブックシリーズを導入する
3.1:25,000、1:50,000、1:100,000、1:250,000基本図シリーズのデジタル版を導入する
4.1:25,000および1:100,000地図シリーズの現行版を保管し、今後改訂を行わない
5.1:250,000シリーズ、国立公園・観光・レクリエーション地図、タスマニア市街地図帳の保守・製作を継続する

この方針が出された背景には、オンラインマッピングやドライビング・ナビゲーションの急速な普及と技術的進化がある。その影響下で人々は、地図上の情報が常に最新であることを期待し、そのことが紙地図需要の低迷に拍車をかける一因になっている。地図製作・供給の現場はいずこも、この状況にどう対処していくべきかという共通の悩みを抱えているのだ。

前回紹介したタスマップの1:25,000地形図は全415面あるが、製作後の経過年数は平均20年で、40%は25年以上放置されている。1:100,000図40面でも、平均経過年数は10年だ。そして地形図は、点数が多い割に大して売れない。例えば、タスマップ1:25,000図で年間販売実績が100部を越えるのは、わずか14面に過ぎない。

それなら紙地図はもう不要かというとそうではなく、タスマニアでは例えば、エマージェンシーサービス組織や、人里離れた奥地を歩くブッシュウォーカーらに、まだ根強い需要があるという。それが紙地図の全面廃止ではなく、縮尺シリーズの整理という穏当な結論につながったようだ。

2015年の方針のなかで最も興味を惹かれるのは、1:50,000地形図シリーズを新たに導入するという点だ。縮尺1:50,000は、従来のタスマップの地図体系にはなかった。更新停止となる1:25,000図と1:100,000図の「最良の機能を結合して、より良質で適切な製品を提供する」というコンセプトで開発された1:50,000地形図とは、どのような中身なのか。さっそく、タスマップの販売サイトを通じて現物を取り寄せた。

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1:50,000地形図表紙
(左)TQ08 Wellington 第1版 2015年 (右)TM06 St Clair 第1版 2015年

上記パンフレットによれば、1:50,000地形図は80面で州全域(離島のマッコーリー島 Macquarie Island を除く)をカバーする。2015年に刊行がスタートしたが、優先的に1:25,000図が在庫切れのエリアや、需要が大きいエリアの図が刊行されていて、2017年3月現在の刊行面数は23面となっている。

図郭は1:25,000と同様にUTM座標区切りで、1面で東西40km×南北30kmのエリア(面積1200平方km)を収める。用紙寸法を拡大した効果もあって、これで1:25,000図(200平方km)の6倍の面積が描けることになり、その分、面数が減ってストックの維持コストも軽くなるはずだ。

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1:50,000索引図の一部(2017年3月現在)、緑の図葉が刊行済

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1:50,000の凡例

既存の1:25,000図と、内容を比べてみよう。地図表現では、配色に目立った変化はなさそうだ。等高線間隔は日本の1:50,000と同じ20mになったが、ぼかし(陰影)が付されているので、それがない1:25,000より地勢を感じ取りやすい。ただし、1:100,000図の明瞭なぼかしに比べれば控えめだ。植生は、1:25,000で8種に分類されていたものが4種に簡素化された。森林 Forest と低木林 Scrub の高さで2種に分け、ほかに植林地、果樹園・葡萄園を区別する。

地図記号では、市町村界 Local Government Area boundary がグレーの太線で存在を主張しているのに気づくが、これは1:25,000図式の踏襲だ。1:50,000ではさらにこの線に沿って市町村名が付された。建物関連では警察署、消防署、救急施設、州立エマージェンシーサービス、病院、郵便局といった公共サービス関連の記号がカラフルなデザインで目を引く。上述のように、こうした組織内での利用が意識されているのだろう。

業務用としてはともかく、個人の山歩きなどには使えるだろうか。セント・クレア湖 Lake St Clair 周辺の図を見てみると、主要な登山道は名称ともども網羅されていた。山小屋の場所と名称も記されている。少なくともタスマップが従来出している旅行地図(下注)に描かれる対象物は、きちんと転載されているようだ。なお、旅行地図のような耐水仕様の用紙ではないので、野外での本格的な使用には注意が必要だ。

*注 参考にしたのは、タスマップ刊行の "Lake St Clair Day Walks" 2016年版。

ところで、1:100,000もそうだったが、図名に必ずしも主要地名は使われない。明確な命名基準は知らないが、図郭の中央近くにある自然地名を用いることが多いようだ。州都ホバート Hobart が載る図葉は「ウェリントン Wellington」で、これは町の背後にあるピークまたは山地 range の名だ。その北隣の図葉「グリーン・ポンズ Green Ponds」は、目を凝らして探すとジョーダン川 Jordan River 支流の小河川の名だった。

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1:50,000図 市街地の例 TQ08 Wellington 2015年 表紙を拡大
© Tasmanian Government, 2017
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1:50,000図 山地の例 TM06 St Clair 2015年 表紙を拡大
© Tasmanian Government, 2017

方針の第2項目にあるとおり、1:50,000は1枚物の折図のほかに、地図帳(マップブック Map Book) としての刊行も予定されている。州全域を301図に分け、3分冊で刊行されるという。マップブックはすでにビクトリア州、南オーストラリア州で実例があるが、上記パンフレットでは2007年製作の旧版を置き換えると書いているので、企画自体はタスマニア州が先鞭をつけていたのかもしれない(下注)。

*注 残念ながら筆者は2007年版を実見したことがない。

一方、既存の1:25,000図と1:100,000図は、オフセット印刷としては在庫限りとなるが、直販サイト TASMAP eShop(下記参考サイト)でオンデマンド印刷による販売が継続される。また、これらを含むタスマップの各縮尺図は、同じ直販サイトでデジタルファイルのダウンロード販売も行われている。これにはGPSデバイスやGISソフトで使えるGeo TIFFファイルと、グーグルアース等で開くKMZファイルの2種類がある。オンデマンド印刷の価格が55オーストラリアドルときわめて高価なのに対して、ダウンロードの価格は1件当たりわずか2ドルだ。

*注 ちなみにオフセット印刷図は9.95ドル(2017年5月現在)。

■参考サイト
TASMAP eShop  https://www.tasmap.tas.gov.au/

また、タスマップには地図閲覧サイト LISTmap(タスマニア土地情報システム Land Information System Tasmania、下記参考サイト)も用意されている。ここでは、ベースマップとしてデジタル地図のほかに、1:250,000図と1:25,000図のラスタ画像を表示できる。画像はやや鮮明さに欠けるが、読図には支障がない。

■参考サイト
LISTmap  http://maps.thelist.tas.gov.au/

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LISTmap 初期画面
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地形図画像は右上の Basemaps ドロップダウンリストの "Scanned Maps" を選択
ちなみに "Topographic" はデジタル版地形図
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左端のスケールバーで縮尺を大きくすると、1:250,000画像が表示される
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さらに縮尺を大きくすると、1:25,000画像が表示される

★本ブログ内の関連記事
 オーストラリアの地形図-タスマニア州 I

 オーストラリアの地形図-連邦1:100,000
 オーストラリアの地形図-連邦1:250,000
 オーストラリアの地形図-ビクトリア州

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