2017年4月25日 (火)

オーストラリアの地形図-西オーストラリア州

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南オーストラリアが英語で "South" Australia であるのに対して、西オーストラリアは "Western" Australia になる。名称はスワン川植民地 Swan River Colony を改称した1832年から使われていて、南(1836年)よりわずかながら先輩だ。州は大陸の西側1/3を占めている。面積253万平方kmで日本の約7倍、世界でも2番目に大きな行政区だそうだ。約260万人の人口の約8割が、州都パース Perth と周辺の都市圏に集中する。オーストラリアの輸出量の6割近くを算出するという大規模鉱業もそこに地域本部を置く。

地形図を所管しているのは西オーストラリア州土地情報局 Western Australian Land Information Authority だが、「ランドゲート Landgate」というブランド名で呼ばれることが多い。それ以前は土地情報省 Department of Land Information (DLI) で、さらに遡れば1829年創立の測量総局 Surveyor-General's Office を起源とする歴史ある組織だ。

筆者は2003年にDLIに地図事情を問い合わせたことがある。当時、州製作の地形図は縮尺1:1,000,000(R313シリーズ)9面で全域をカバーしていたものの、1:100,000や1:250,000はなく、連邦 AUSLIG(現 ジオサイエンス Geoscience)の刊行図が案内されていた。より大縮尺の1:25,000や1:50,000は、パースを含む南西岸をかろうじて固める程度の刊行状況だった。

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地形図索引図の一部

それに比べれば、近年のランドゲート製品の充実ぶりは目を見張るものがある。地形図はWA トポ(トポ Topo は地形(図)を意味する Topographic の略)と呼ばれ、広大な州全域を1:25,000、1:50,000、1:100,000のいずれかでカバーしている。ここ10数年で整備されてきたので、座標系はすべてGDA94に統一されている。

縮尺別に見ていこう。まず1:25,000の製作範囲は、人口が集中するパースメトロ(都市圏)Perth Metro やサウスウェスト(南西地区)South West が中心だが、それだけでなく内陸部にも相当数が点在している。おそらく人が活発に動いているエリアはすべてカバーしているのだろう。図郭は経度緯度とも7分30秒で、1:50,000のそれを縦横2等分したものだ。等高線間隔は10~20m。

次に1:50,000の範囲は、南西部の1:25,000エリアの外縁に加えて、天然資源開発が盛んな北西部にも拡大されている。AUSLIGの同縮尺図と整備範囲がほぼ重なるので、その成果を引き継いでいるのかもしれない。図郭は経度緯度とも15分で、1:100,000のそれを縦横2等分した範囲だ。それ以外のエリアでは、1:100,000が作成されている。

オフセット印刷図はすでに全廃されてしまい、現在は地理参照型PDFファイルか、オンデマンド印刷での供給になっている。PDFファイルはCDに焼いて送られてくる。パース近郊フリーマントル Fremantle の地図商はそのショッピングサイトで、印刷図でも自社にある大判プリンタで出力するから速く届けられる、と言っている。販売店にとっては収納スペースも在庫チェックも不要で助かるはずだ。にもかかわらず、1面あたりの価格が前者でも12.39豪ドル、後者で26ドルというのはいささか高く、利用者にはデジタル化の恩恵があまり届いていない。

ランドゲートの地形図は、同局公式サイトからリンクしている "Map Viewer" という地図サイト経由で直接発注できるほか、西オーストラリア州の地図商でも扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

なお、発注したサンプル図が届き次第、内容について記事を追加したい。

■参考サイト
ランドゲート Landgate  https://www.landgate.wa.gov.au/

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2017年4月16日 (日)

オーストラリアの地形図-南オーストラリア州

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キャンベラのある首都特別地域は別として、本土のすべての州・準州と境を接しているのは、南オーストラリア州 South Australia だけだそうだ。トリビアが示すとおり、同州は大陸の真ん中にあり、南はグレートオーストラリア湾 Great Australian Bight に面している。州人口の3/4以上が州都アデレード Adelaide とその周辺に集中し、ほかに小都市は点在するものの、それを除けばいくつかの低山地と乾燥または半乾燥の放牧地がどこまでも続く土地柄だ。

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1:50,000図の例
公園緑地に囲まれたアデレード中心街
6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0

南オーストラリア州の地形図作成は、環境・水・天然資源省 Department of Environment, Water and Natural Resources (DEWNR) が所管している。官製図の愛称は「マップランド Mapland」で、どこかのテーマパークと間違えそうな響きだ。

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1:50,000地形図表紙の変遷
(左)6028-I & PT 6128-IV Lincoln 1981年
(右)6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年

連邦ジオサイエンスが1:250,000や1:100,000縮尺図で州全域をカバーしている(下注)ためか、マップランドは作成範囲を絞っている。市販されている地形図は1:50,000のみで、それも主として沿岸部の比較的人口が多いエリアでの刊行にとどまる。手元にある2002年版と2016年版の索引図を比較してもエリア拡張の気配がないから、これはもう確定事項なのだろう。

*注 ただし内陸部(いわゆるレッドラインの内側)の1:100,000は、編集原図のコピーで頒布されている。

1:50,000の図郭は、1:100,000のそれを縦横2等分した経度15分、緯度15分の範囲だ。初版は1970年代後半に遡り、現在は1980年代後半から2000年代前半製作のものが出回っている(下注)。旧版は主として2ツ折りで青表紙がついていた。1990年前後から印刷方式がプロセスカラー(CMYKの4色)になり、3ツ折りで、表紙もカラーの風景写真を配したものに変わった。座標系は2000年を境に、それ以前の版は旧測地系 AGD66またはAGD84、以降は新測地系 GDA94 が適用されている。

*注 同州アンリー Unley の地図商サイトhttp://cartographics.com.au/ の記述による。

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地形図の図郭
中央に数字4桁がある太枠の図郭が1:100,000、それを縦横2等分した細枠が1:50,000の図郭

等高線間隔は10mで、日本の同縮尺図の20mと比べると精度は高い。それなら、対象となる一帯が緩傾斜地ばかりかというとそうでもなく、アデレード・ヒルズ Adelaide Hills を含むマウント・ロフティー山脈 Mount Lofty Ranges やその北に続くフリンダーズ山脈 Flinders Ranges の山腹は、結構な斜度がある。こうした場所は等高線でぎっしりと埋まることになる(下図参照)。

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1:50,000図の例
傾動山地の断層崖が続くアデレード・ヒルズの西斜面。アデレードメトロのブレア線がくねりながら上っていく
6628-3 & PT 6528-S Adelaide 2001年、6627-4 & PT 6527-1 Noarlunga 2001年
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0

地図記号にはさほど特徴的なものはないが、あえて挙げるとすれば、一つは道路の舗装区分だ。他州では未舗装道に薄赤やオレンジを充てるところ、マップランドは茶色にしているので、妙に実感がある。また、旧版では道路の分類基準が等級別(主要道、地方道等)ではなく車線数で、細線が1車線、太線が2車線以上を表していた。しかし現行図では、他州と同じように等級別に改められている。

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1:50,000の凡例(2001年)

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「マウント・ロフティー山脈エマージェンシーサービス・マップブック」表紙

上述のように単品の折図は更新中止になっているようだ。しかし別途、主要地域をまとめた地図帳シリーズが、「エマージェンシーサービス・マップブック Emergency Services Map Book」の名称で刊行されており、比較的新しい情報が入手できる。これは以前、CFSマップブック CFS Map Book と呼ばれていたもので、本来、地方消防隊 Country Fire Service (CFS) が実施している緊急業務を支援するための内部資料だが、一般にも販売されてきた。

マップランドのサイトによれば、現在8冊刊行されており、沿岸部の地域を1:50,000または1:100,000でカバーしている(ただし、西海岸 West Coast の一部は1:250,000)。例えば、アデレード周辺域は「マウント・ロフティー山脈編 Mount Lofty Ranges Emergency Services Map Book」に収録されており、人気の観光地カンガルー島 Kangaroo Island には「カンガルー島編 Kangaroo Island Emergency Services Map Book」がある。現地価格79豪ドル(1ドル85円として6715円)と少々値は張るが、地形図を1枚ずつ買うよりはずっと経済的だ。

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マップブックの図例
from "Mount Lofty Ranges Emergency Services Map Book"
© Department of Environment, Water and Natural Resources, State of South Australia, 2017, License: CC-BY 4.0

マップランドの地形図(オフセット印刷図)は、オーストラリア国内の主要地図商で扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

なお、前回のビクマップと同じく、マップランドでも地形図の閲覧サイトは作られていない。Map Finder というサイトがあるが、これは地図や空中写真の発注(有料)のためのものだ。上記のマップブックや最新地形図(プロッター出力)は、このサイトで入手できる。

■参考サイト
環境・水・天然資源省 Department of Environment, Water and Natural Resources (DEWNR)
http://www.environment.sa.gov.au/
Map Finder
https://apps.environment.sa.gov.au/MapFinder/

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2017年4月 9日 (日)

オーストラリアの地形図-ビクトリア州

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VICMAP印刷図索引図
2014年版表紙

古風な雰囲気の残る州都メルボルン Melbourne のゆったりとした美しい街並みが、人々がこの州に抱くイメージを規定する。ビクトリア Victoria(下注)は、オーストラリア大陸の南東部の一角を占める州で、面積こそ本土で最小だが、人口はニューサウスウェールズに次いで多い。

*注 「ヴィクトリア」と書きたいところだが、オーストラリア観光局の表記に従って「ビクトリア」とする。

州の繁栄は、19世紀半ばに北中部のバララット Ballarat やベンディゴ Bendigo 周辺で起きた金の採掘ブーム、いわゆるゴールドラッシュによってもたらされた。渦中の地への玄関口として、ポートフィリップ湾 Port Phillip Bay に面するメルボルンやジーロング Geelong も急速に発展した。大陸第一の都市となったメルボルンが、オーストラリア連邦発足に際してシドニー Sydney と首都の座を争い、結局、双方痛み分けで内陸の小村キャンベラ Canberra に決まった話は有名だ。それでも首都が建設されるまでの約20年間、首都機能を果たしたのはメルボルンだった。

現在、ビクトリア州の地形図作成は、環境・土地・水・計画省 Department of Environment, Land, Water and Planning (DELWP) が所管している。州の略称が VIC なので、地図シリーズの愛称も「ビクマップ Vicmap」だ。もっとも最近は、地形図に限定せず、州の地図情報データベースの総称として使用されている。データベース全般の紹介は筆者の手に余るので、地形図に絞って紹介するが、それでさえ体系はなかなか複雑だ。

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1:50,000図の例
パッフィンビリー鉄道の終点ジェムブルック Gembrook 周辺
8022-S Neerim 2008年
© Department of Environment, Land, Water and Planning, State of Victoria, 2017, License: CC-BY 4.0

ビクマップの製品記述書によれば、ハードコピー・マッピング(印刷地形図)Hardcopy Mapping には、大別して2つのカテゴリーがある。一つ目は標準図郭の区分図シリーズで、1:25,000、1:50,000、1:100,000と3種類の縮尺が用意されている。

1:25,000は、かつて経度7分30秒、緯度7分30秒の縦長判だったが、後に、これを横2面接続した経度15分、緯度7分30秒(+隣接図との若干の重複)の横長判に改められた。便宜上、前者はシングルフォーマット、後者はダブルフォーマットと呼ばれる。1:25,000は北西部の平原や東部の山岳地帯では初めから整備の対象外だが、刊行済みのエリアでも更新間隔が最大6年とされているためか、いまだに両フォーマットが混在している。図番も、前者は6桁目が1~4、後者はN(北)かS(南)と異なる(例:7822-2-1、7822-2-N)。

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1:25,000地形図表紙の変遷(左から)
旧版(シングルフォーマット)7922-2-3 Lysterfield 1988年
旧版(ダブルフォーマット)8022-3-S Gembrook South 1993年
新版(ダブルフォーマット)7921-4-N Frankston North

1:50,000も2種のフォーマットがある事情は同じだが、すでに経度30分、緯度15分のダブルフォーマットで全面刊行が完了している。換言すれば、1:50,000が州全域をカバーする最大縮尺ということだ。図番は1:100,000のそれの後にNかSが付く(例:7822-S)。ただ、王立オーストラリア測量隊 Royal Australian Survey Corps (RASC) がかつて製作した1:50,000図(シングルフォーマット)も索引図に表示されているので、在庫のある限り並行販売されているようだ。

またこれらとは別に、国立・州立公園などで標準図郭に捉われずに自由に図郭を設定した「特別図 Special」もある。縮尺は1;25,000または1:50,000で、裏面には同じエリアのオルソフォト(正射写真)が印刷されている。

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1:50,000地形図表紙の変遷(左から)
旧版(ダブルフォーマット)7324-N Horsham-Murtoa 1991年
新版(標準図郭)8022-S Neerim 2008年
新版(特別図)Wilsons Promontry Special 2008年

これに対して1:100,000は本来、連邦の測量機関ジオサイエンス Geoscience の守備範囲であり、ビクトリア州域ではとうに完成済みだ。ところが、州は一部地域でオリジナル版を刊行し始めた。しかも連邦図(経緯度とも30分)に倣うのではなく、図郭を横2面接続したダブルフォーマット(経度1度、緯度30分)での提供だ。図番は、連邦のそれを単純に連結している(例:7722-7822)。想像するに連邦の印刷版更新が停止状態のため、州として必要な図葉を自らの手で維持する方針なのだろう。まだ刊行面数は少ないが、今後整備が進めば、連邦図は旧版の扱いになっていく。

ここまでが標準図郭シリーズの話だが、もう一つのカテゴリーというのは、オンデマンド出力の地形図だ。これは図面が汎用のA判プリンタに対応するサイズに調整されており、発注は専用サイトを通じてオンラインで行う。ユーザーはプロッター(実際はカラープリンター)出力された印刷図を受取ることもできるし、地理参照型PDFファイルでダウンロードすることもできる。縮尺はA0判が1:25,000、A3判とA4判が1:30,000になる。印刷する範囲も、標準図郭と任意の図郭を選択できるのが特徴だ。

実は標準図郭でも、近年は業務合理化のために、需要の少ない図葉がオフセット印刷ではなく、プロッター出力に移されてきている。そのため、2つのカテゴリーといっても、相違点
は結果的に、用紙サイズ(と縮尺)のバリエーションに収斂されてしまうのだが…。

オーストラリアでは2000年に、地図投影の基礎となる座標系が変更された。刊行図のうち2003年以前のものは旧測地系 AGD66 が、その後は新測地系 GDA94 が適用されている(下注)。縮尺、フォーマット、印刷方法に加えて、この測地系の区別があるため、それらを一枚に表現するビクマップの地図索引図(下図はその一部)は、かなり難解なものと覚悟しておく必要がある。

*注 ADG66はAustralian Geodetic Datum 1966、GDA94はGeocentric Datum of Australia 1994の略。

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地形図の図郭
黄枠は1:100,000ダブルフォーマット、青枠は1:50,000ダブルフォーマット、
赤枠は1:50,000特別図、緑枠は1:25,000ダブルフォーマット、
灰色の細線枠は1:25,000シングルフォーマットで現在はオンデマンド出力地形図の定形図郭

地図の図式は各カテゴリー・縮尺ともほぼ共通だ。ただ、地籍界が描かれるのは1:25,000だけで、道路網や街路名も縮尺が小さくなるにつれて適宜省略される。

地図記号には他の州にないものも見られる。たとえば、主要道では、道路地図のようなデザインの道路番号が付されている。鉄道関係では、トラムが発達するメルボルン市内を想定した併用軌道の記号がある。主要なトレール(自然歩道)には、図上で跡がたどれるように色三角の目印が置かれている。さらに地勢表現としてぼかし(陰影)が加えられ、見栄えの点でも他州とは一線を画している。

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1:25,000凡例の一部

このように意欲的な整備が進行中のビクマップだが、今のところウェブサイトでの提供は行われていない。VicmapTopoOnline と銘打ったサイトが存在するが、地形図閲覧サイトではなく、上述したオンデマンド出力の地形図を発注(有料)するためのものだ。画面に表示される地図は旧式の線画レベルで、あまりに物足りない。せめて地形図ファイルのダウンロードを無料化してくれると嬉しいのだが。

ビクマップ(印刷図)は、オーストラリア国内の主要地図商で扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

■参考サイト
環境・土地・水・計画省 Department of Environment, Land, Water and Planning (DELWP)
http://www.depi.vic.gov.au/

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2017年4月 3日 (月)

オーストラリアの地形図-ニューサウスウェールズ州

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NSW州地形図カタログ
2011年版表紙

ジェームズ・クック James Cook が英国軍艦エンデヴァー号で南太平洋のタヒチへ向かったのは1768年のことだ。表向きの目的は金星の太陽面通過の観測だったが、それとは別に未知の南方大陸を探索せよという密命も受けていた。彼はタヒチからニュージーランドに到達し、次いで西へ進んで、1770年4月に現在のオーストラリア大陸を「発見」した。

ニューサウスウェールズ New South Wales というのは、彼がこの探検航海の間に、大陸の東岸全体につけた地名だ。しかし、クックは命名の理由を書き残していないし、彼自身はヨークシャー生まれで、ウェールズ南部には縁がない。それどころか、サウスウェールズがウェールズの南部を意味するのか、それとも南半球のウェールズと言いたかったのかさえわからないのだ。

現在のニューサウスウェールズ州 State of New South Wales(以下 NSW)は、クックが最初に上陸した場所を含むオーストラリアの南東部を占めている。地形図を所管しているのは、州財務・サービス・イノベーション省 Department of Finance, Services and Innovation のもとにある国土・資産情報局 Land and Property Information (LPI) だ(下注)。広大な州域を独自の地形図群で完全にカバーしている。紙地図(オフセット印刷図)も、クイーンズランドのように刊行停止されてはおらず、州内のみならず他州の地図商経由でも問題なく入手が可能なのは嬉しい。

*注 州の地形図製作を所管していた旧 国土・資産管理局 Land and Property Management Authority (LPMA) が2011年に廃止され、LPIが業務を引き継いだ。

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1:25,000地形図表紙の変遷(左から)
旧版 8929-2S Mittagong 1981年、旧版 9130-3S Botany Bay 1987年
新版 8525-2S Perisher Valley 2001年、新版 9029-1S Appin 2012年

LPIが製作している中縮尺地形図には、1:25,000、1:50,000、1:100,000の3種のシリーズがある。それぞれ緑、青、赤の表紙で区別されるが、下図のとおり刊行エリアは明確に分けられ、重複はない。そのうち1:25,000の縮尺は、先述の地勢区分でいうと、およそ海岸平野から西部斜面までの、比較的人口が集中し、土地利用が密な地域に適用されている。それだけ地形図の需要が多く、精度も必要とされるためだろう。

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縮尺ごとの適用エリア

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1:25,000図の例
入江に沿ってシドニーの観光名所ハーバーブリッジやオペラハウスが見える
9130-3N Parramatta River 2002年
© Land and Property Information, NSW, 2017, License: CC-BY 3.0
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1:25,000図の例
カトゥーンバ市街地のへりに断崖の記号が続き、ブルーマウンテンズの展望台が多数並ぶ 
8930-1S Katoomba 2000年
© Land and Property Information, NSW, 2017, License: CC-BY 3.0

対する1:50,000の製作範囲はそれより内陸の西部平原一帯で、一部の例外を除き、連邦のレッドライン Red Line までだ。レッドラインというのは、連邦の1:100,000地形図整備計画で、地形図を刊行せずに編集原図のコピー頒布にとどめたエリアの境界を指す。ラインを越えると主として内陸の砂漠地帯なのだが、LPIはそこでも1:100,000を刊行しているので、結果的に、連邦が諦めた地形図刊行を州が代行した形になっている。かつて連邦ジオサイエンスの製品カタログにも、NSW州域の1:100,000は連邦では刊行しておらず、NSWで入手できると記載されていた。

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1:50,000地形図表紙(左から)
旧版 8225-I & IV Albury 1980年、旧版 8428-N Sebastopol 1985年
新版 8428-S Junee 2012年
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1:100,000地形図表紙 (左から)
旧版オルソフォト地図 7931 Willandra 1975年、 新版 7333 Menindee 2000年

次に図郭の切り方だが、前回紹介したクイーンズランドの同縮尺図と比べると、横が2倍の長方形になる。1:25,000の場合、1:100,000の図郭を横2等分、縦4等分するので、経度15分、緯度7分30秒の範囲をカバーする。1:50,000の図郭はその4面分、すなわち1:100,000の図郭を縦2等分したサイズになる。

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地形図の図郭と付番方式
図郭は1:100,000(赤枠)を縦2等分すると1:50,000(青枠)、それを縦横各2等分すると1:25,000(緑枠)
図番は1:100,000に対して、1:50,000はN(北半分)とS(南半分)、1:25,000は1~4とN・Sを加える

図式は、各縮尺でほぼ共通の設計だ。等高線間隔は1:25,000の場合、平地・中間地は10m、山地は20mとされている。そのため、日本の同縮尺図(等高線間隔10m)を見慣れた目には、山地の表現がかなり粗く感じられる。1:50,000の等高線は20m間隔だ。

等高線の色は、スポットカラー(特色)印刷だった時代は道路と同じ赤を使っていたが、今はプロセスカラー(CMYKの4色刷)化され、少し灰味を帯びたテラコッタ色が充てられている。森を表すアップルグリーンと掛け合わせると薄い茶色のようにも見え、違和感はない。

市街地は黄色のベタ塗りの上に、各戸の敷地を示す地籍界がこまめに描かれ、道路(街路)名も詳しく注記されている。さらに、教会(礼拝所)、学校、救急施設、警察などかなりの種類の公共施設がアルファベットの略号で表され、広場 playground や公衆トイレ toilets まで記載されている。地形図でありながら、市街図としても使えるものを目指しているのだろう。

一方、農場や牧場が展開する平原に目を向けると、農道にストックグリッド stock grid(家畜の逃走を防ぐために道路に設ける格子状の仕掛け)や渡渉地 floodway、目標となる構造物 landmark feature の例としてサイロ silo やヤード yards(家畜用の囲い場)など、特徴的な記号が現地の風景を想像させる。鉱山 mine の記号がつるはしの交差ではなく、片方がスコップ(ショベル)形になっているのもおもしろい。

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1:25,000凡例の一部

1990年代までNSW州独自のシリーズは、地形図か、そうでなければオルソフォト地図(1:50,000や1:100,000図の一部)のどちらかで供給されていた。これに対して2000年から、新たなシリーズへの置換えが始まった。新版は両面刷で、おもて面に地形図、裏面には同じエリアのカラー空中写真(オルソフォト)を配している。

クイーンズランド州の取組みに倣ったように見えるが、空中写真は地図仕様ではなく、画像の上に1kmグリッドと最小限の地名を加えただけの簡素な作りだ。実際のところ、このほうが純粋に地表の様子を読み取ることができてよい。とはいえ、その後グーグルマップなどの普及で空中写真が身近になり、新版登場のときに感じたありがたみはすっかり薄れてしまったのだが…。

なお、これらの地形図(印刷図)はオーストラリア国内の主要地図商で扱っている。「官製地図を求めて-オーストラリア」の発注の項を参照。

最後に、州全域にわたってLPI刊行の地形図データを閲覧することができる NSW Topo Map (MapServer) というサイトを紹介しておこう。

■参考サイト
NSW Topo Map (MapServer)
http://www.arcgis.com/home/webmap/viewer.html?url=http://maps.six.nsw.gov.au/arcgis/rest/services/public/NSW_Topo_Map/MapServer&source=sd

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NSW Topo Map (MapServer) 画面

これは、地理情報統合プラットフォーム ArcGIS を利用しており、シームレスな地形図ラスタデータがレイヤーとして表示される。内容は刊行図と同じもので、解像度が高く、2倍程度の拡大表示にも耐えられる。

初期画面は縮尺が小さいため、何が描かれているのか判然としないが、地図画面左上にある+ボタンで拡大していくと、次第に地形図画像が見えてくる。ArcGIS のベースマップには衛星画像も用意されているので、表示を地形図から衛星画像に切り替えれば、印刷図で試みられた仕掛けがいとも簡単に実現できる。

■参考サイト
国土・資産情報局 Land and Property Information (LPI)  http://www.lpi.nsw.gov.au/

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 オーストラリアの地形図-連邦1:250,000
 オーストラリアの地形図-クイーンズランド州
 オーストラリアの地形図-ビクトリア州
 オーストラリアの地形図-南オーストラリア州

2017年3月27日 (月)

オーストラリアの地形図-クイーンズランド州

連邦制をとるオーストラリアでは、地形図の製作業務も連邦と各州が分担している。連邦が受け持つ1:100 000以下の小縮尺図は以前紹介している(下注)ので、今回から州が独自に製作する地形図を見ていきたい。初回はクイーンズランド州だ。

*注 「オーストラリアの地形図-連邦1:100,000」「オーストラリアの地形図-連邦1:250,000ほか」参照

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クイーンズランド州
地形図カタログ第3版
(2002年)表紙

オーストラリア大陸の東北部を占めるクイーンズランド Queensland は、同国第2の面積をもつ大きな州だ。日本からの直行便が飛ぶ州都ブリスベン Brisbane(現地の発音はブリズベン)やケアンズ Cairns のような拠点都市、ゴールドコースト Gold Coast やグレートバリアリーフ Great Barrier Reef といった海洋リゾートはよく知られている。

2017年現在、同州の測量業務を担当しているのは、天然資源・鉱山省 Department of Natural Resources and Mines だ。官製図にはお堅いイメージがつきまといがちなので、オーストラリアのいくつかの州では愛称を付して親近感の演出に努めている。クイーンズランドの場合は、亜熱帯の陽光が降り注ぐイメージから「サンマップ Sunmap」だ。

残念なことに、紙地図(オフセット印刷図)の新規発行はすでに全面停止され、ウェブサイトでの画像提供に移されている。だが、そこでは現行図だけでなく、旧版図も扱われているので、まずは基礎知識として、かつての紙地図の体系に触れておきたい。

手元に2002年5月発行の地形図カタログ第3版がある。それによると、州全域をカバーする最大縮尺は1:100,000だ。しかし、大鑽井盆地 Great Artesian Basin が広がる内陸部については、正式図ではなく測量原図の青焼き dyeline copy でのみ供給可能としている。1:100,000でそれだから、1:50,000より大縮尺図の整備範囲は推して知るべしで、人口が張り付く南太平洋岸の限られたエリアで作成されているに過ぎない。

縮尺体系はさまざまで、1:10,000や古い1:31,680(半マイル図、図上1インチが実長1/2マイルを表す)も若干数見られるが、一定量の面数があるのは、1:25,000と1:50,000だ。

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1:25,000地形図表紙の変遷(左から)
等高線地図 8064-32 Redlynch 1986年
写真図 9242-11 Toowoomba 1996年
等高線/写真図両面刷 8557-41 Bowen 2001年
デジタル等高線図 9242-11 Toowoomba 2010年

1:25,000 は州の整備計画のもとで製作されてきた。図郭は1:50,000のそれを縦横2等分しており、経度7分30秒、緯度7分30秒になる。ユニークなのは図葉によって地図の種類が異なることだ。製作年代に応じて、次に述べる3種のいずれかが入手できた。

1977年に標準地図の製作計画がスタートした当初は、等高線地図 Line Map、つまり一般的な地形図が作られていた。等高線間隔は5mまたは10mと、日本の1:25,000(10m間隔)と比べても遜色ない精度だが、その代わり、急傾斜地では主曲線を省略して計曲線のみにした。そのため、山がちの地域では地勢表現が大雑把になりがちだった。また、等高線に紅色を配したため、赤(朱色)や橙の道路記号とやや紛らわしい。その他の地図記号はおおむね連邦の1:100,000に準じていた。

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1:25,000地形図の例
大分水嶺の急斜面に臨むトゥーンバ市街
いずれも 9242-11 Toowoomba 図葉 (左)等高線地図 2010年 (右)写真地図 1996年
© The State of Queensland, 2017, License: CC-BY 3.0

次に登場したのが、写真地図またはオルソフォト地図 Image or Orthophoto Map だ。同州のそれは、カラー空中写真の上にUTMグリッド、等高線、交通網、行政界などの記号と地名を加えてあった。写真地図は、地表の様子がありのまま読み取れるという空中写真の利点を生かしつつ、写真には表現されない高度、境界、道路区分、地名といったデータを補うものだ。理想的な地図のように見えるが、実際に作業に用いるには、決して使いやすいものではない。情報量が多すぎて地表の様子を大掴みすることが難しく、また書込みが効かない(書込んだものが目立たない)からだ。

*注 オルソフォトは、地表の高度差、あるいは写真の中心からの距離によって生じる歪みを修整した正射投影画像のこと。

その反省もあったのだろう。1990年代に、等高線地図と写真地図を両面刷りする形式に切り替えられた。1枚で2種の地図を見比べられるから徳用版だ。なお、等高線地図の等高線の色が変えられ、主曲線が灰色、計曲線が茶色になった。識別しやすいかどうかは別にして、線幅(線の太さ)でなく色で区別するという仕様は、世界的にも珍しいものだ。

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等高線地図 凡例の一部。州作成図のなかでは最もカラフル

これに対して1:50,000 は、1:25,000整備計画以前に、軍の測量機関であった王立オーストラリア測量隊 Royal Australian Survey Corps が製作していたものだ。陸上交通路の重点防衛地域で実施された地図整備事業の成果物だが、一般にも供されていた。図郭は1:100,000のそれを縦横2等分した経度15分、緯度15分になる。1:25,000の製作範囲とおよそ重複しているので、縮尺は異なるものの、およそ1世代前の地表の状況を記録した地図と考えればいいだろう。

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1:50,000地形図の例
(左)港湾開発前の、マングローブが広がっていたブリスベン川河口
9543-3 Brisbane 1971年
(右)州境の峠を越える北海岸本線はループ線(スパイラル)を構える
9441-2 Grevillia 1990年
© The State of Queensland, 2017, License: CC-BY 3.0

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地形図の図郭と付番方式
図郭は1:100,000(外側の黒の太枠)を縦横2等分すると1:50,000(赤枠)、同4等分すると1:25,000(黒の細枠)
図番は1:100,000に対して、1:50,000は枝番1桁(1~4)、1:25,000はそれに2桁目(1~4)を加える

クイーンズランドの旧版地形図は、広範なスキャニング作業により、現在はウェブサイトで自由に閲覧できるようになっている。

■参考サイト
クイーンズランド州旧版地形図 Historical topographic map series—Queensland
https://data.qld.gov.au/dataset/historical-topographic-map-series-queensland

使い方は次のとおりだ。

1.上記参考サイトの Data and resources(データおよびリソース)の見出しの下に列挙されているシリーズ名から見たいものを選択する。さまざまなシリーズが挙げられているが、代表的なものは以下の2種だ。

・25000 series 1965-2012—Queensland(=1:25,000多色刷等高線地図)
・25000 image series 1993–2003—Queensland(=1:25,000オルソフォト地図)

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旧版地形図シリーズをリストから選択

2.タイトルのリンクを選択すると上の画面になる。Download ボタンで、地形図の目録データ(csv形式)が取得できる。あるいは、Visualisation Preview ボタンで、同じ目録データがブラウザ上に表示される。

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目録データの取得

3.目録データの "jpg_linkage" の列で見たい図葉を選択し、(Windowsなら右クリックで)開き方を選択すると、高精度の地図画像が取得できる。

残念ながら、図葉選択に欠かせない索引図は周辺のページに見当たらなかった。次の QTopo(現行デジタル地図閲覧サイト)で、1:25,000の図郭を表示して確認するしかなさそうだ。

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目録データから画像にリンク

現行デジタル地図は QTopo と呼ばれるサイトで見ることができる。

■参考サイト
QTopo(現行デジタル地形図)
http://qtopo.dnrm.qld.gov.au/desktop/

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QTopo 初期画面

地図の閲覧では、地図画面左上のスケールバーを操作すれば拡大縮小ができる。また、画面上部の Print タブ、または左上の Click here to... を選択すると、印刷やPDF取得のオプションが見つかる。

1.Generated a Printable Map: 画面に表示した任意の範囲の地形図を印刷する。
2.Download a Standard MapSheet: 標準図郭の地形図PDFが取得できる。

また、各縮尺の地形図の図郭は次の方法で表示できる。

画面左下の Map Layers ロゴを選択する。左メニューに表示される Operational Layers を展開して、縮尺を選択する。1:100,000、1:50,000、1:25,000の選択肢があるが、画面にはいずれか1種しか表示できない。そのため、例えば1:25,000図郭なら、ベースマップをかなり拡大表示(表示縮尺 1:144,448 以上)しておく必要がある。

■参考サイト
天然資源・鉱山局 Department of Natural Resources and Mines
https://www.dnrm.qld.gov.au/

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2016年11月13日 (日)

イギリスの1:250,000地形図 II-歴史

1:250,000は、図上1cmで実長2.5kmを表す縮尺だ。しかし、そのルーツをたどれば、いわゆる「クォーターインチ地図 Quarter-inch Map」に行き当たる。これは図上1/4インチが実長1マイルに対応するもので、分数表示では1:253,440になる。

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1:250,000 クォーターインチ地図 第5シリーズD版
ハイランズ西部(1978年)の一部(×1.6)
© Crown copyright 2016

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クォーターインチ地図
第4シリーズ表紙
 1948年
image from The Charles Close Society site.

クォーターインチの初版刊行は、1888年のことだ。すでに1859年から1マイル1インチ図(1:63,360)をもとに編集作業が着手されていたのだが、情報量の不足から完成が遅れていた。しかもこの第1シリーズはデザイン、内容とも不評で、途中で改訂版である第2シリーズに切り替えられて、ようやく1918年に全土21面が揃った。

続いて1919年に始まった第3シリーズでは、精度の低いぼかし(陰影)に代えて、段彩を施した200フィート(61m)間隔の等高線が用いられ、道路網が太く強調された。下図でご覧のとおり、クォーターインチ図式の骨格はここで確立され、その後実に70年以上にわたって各シリーズに受け継がれていく。

1934年からの第4シリーズ全19面では、森林に緑色が配されるとともに、自動車旅行の一般化に呼応して、車内で扱いやすいように縦長の折図として販売されるようになった(右写真)。

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クォーターインチ地図 第3シリーズの例 図番4、右図は一部拡大(×2.0)
image from The Charles Close Society site.

現行版に直接つながるのは、第二次大戦後の1957年に始まる第5シリーズだ。というのも、ここで初めて他の欧米諸国に歩調を合わせて、縮尺が1:250,000に変更されたからだ(下注)。しかし、実際の縮尺の変化は小さかったので、シリーズの名称はクォーターインチ地図のままとされた。つまり、伝統的な測量単位(帝国単位)を名乗りながらも、中身はメートル系に置き換えられていたわけだ。全土を17面でカバーするこのシリーズは、1970年代まで改訂を加えながら刊行が続けられた。表紙のデザインは、他の縮尺と同様、途中で大きく変わったが(下写真)、1インチ地図の赤表紙に対して、青表紙とされた点は共通している。

*注 地図の縮尺表示には「1:250,000またはおよそ4マイル1インチ」と記された。

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クォーターインチ地図 第5シリーズ表紙
(左)A版、1962年 (中)C版、1966年 (右)D版、1978年

地勢表現には、さらに磨きがかけられた。段彩(高度別着色)は、低地では薄いミントグリーンだが、200フィートでクリームイエローに変わり、高度が上がるにつれて黄系から濃い茶系へと変化していく。それで、平地の多い図葉には爽やかな空間が広がる一方で、山地の卓越する図葉では険しい地勢が強調される。さらに、森林を表す明るいアップルグリーンの塗りが適度なアクセントを添える。

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クォーターインチ地図 第5シリーズの異版を比較。後の版ほど彩色の明度が向上する
(左)A版、クライド湾 1962年 (右)D版、ハイランド西部 1978年
© Crown copyright 2016

初期は暗めの色調だったが、版を重ねるごとに明度が上がり、美しい見栄えになっていった。実際に今年(2016年)、OS創設225周年を記念して出版された特別図「ハイランド西部 Western Highlands」で、第5シリーズ(D版、1967年、下注)がベースに採用されたことでも、その完成度の高さが窺える。

*注 同一シリーズ中の版 Edition の区別は長らく、Aから始まるアルファベットで(マイナーな改訂はアルファベットに数字を添えて、例:A2)、地図のコピーライト表示の近くに記されていた。ただし、2015年6月から、歴年表示のみに切り替えられている。

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ルートマスター表紙 1978年

長年親しまれたクォーターインチ地図だが、1978年に開始された新シリーズで、ついにその名が消える。新名称は、道を識る者というような意味の「ルートマスター Routemaster」とされた。形態の点で旧版と違うのは、地図が両面刷りになったことだ。全土を9面でカバーできるように図郭を拡張するかわりに、それを南北に2分割して、表裏に印刷している。用紙も、直前の旧版のおよそ横82cm×縦75cmに対して、123.5cm×48cmと著しい横長サイズに変わった。

これは縦の折返しをなくし、蛇腹状に畳んで扱いやすくする試みなのだが、ユーザーの反応は意外にも冷たかった。そこで、次の版では、同じ図郭のまま、片面刷りに戻されている。当然、用紙が約2倍大になるため、今度は、車中で使うにはかさばって困るという苦情が寄せられたそうだ。

地図図式にも目立った変化があった。実は第5シリーズでは高地の塗り色が濃くなりすぎて、小道や注記が見分けにくいという声が上がっていた。実際にはこの欠点は改版でかなり改善されていたのだが、ルートマスターではさらに思い切って段彩の色を薄くした。等高線の色も茶系から赤系に変えた。また、道路番号の文字はぼかしにかかる部分に白のマージンをつけるなど、細かい工夫もしている。その結果、両図を並べれば、まったく別の図のように見える(下図参照)。濃色の道路網が効果的に目に飛び込んでくる反面、地勢表現にメリハリが感じられなくなったのもまた事実だ。

なお、このルートマスター版を使って、OSブランドの地図帳「OSイギリス地図帳 Ordnance Survey Atlas of Great Britain」(1982年初版)、「OSイギリス道路地図帳 Ordnance Survey Road Atlas of Great Britain」(1983年初版)も制作されている。

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両者の印象の差は地勢表現の配色の大幅変更によるところが大きい
(左)クォーターインチ地図 第5シリーズC版 ウェールズ北部及びランカシャー 1966年
(右)ルートマスター A版 ウェールズ及びミッドランズ西部 1978年
© Crown copyright 2016

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トラベルマスター表紙 1993年

1993年からはシリーズ名称が、「トラベルマスター Travelmaster」に再び変更された。新名称には、ターゲットを旅行者一般に拡大する意図が込められたようだ。用紙寸法はそのままだが、図郭が一部変更されて、面数は8面に減っている。ただし、1:625,000の全国図がトラベルマスターの図番1に位置づけられたため、1:250,000図葉には2~9番が振られた。また、図面編集がデジタル化され、それに伴って図式も大幅に変更された。この図式が、多少手を加えながら、現在まで引き継がれているものだ。

2001年以降は、小縮尺図や旅行地図(集成図)が「トラベルマップ Travel Maps」の名でグループ化された。その上でシリーズごとの役割を改めて明確化するために、1:250,000は「ロード Road」と命名された(下注)。その際、図番が1~8番に振り直されたため、同じ図郭でもトラベルマスター時代とは1だけ図番がずれている。

*注 1:625,000全国図は「ルート Route」、旅行地図(集成図)は「ツアー Tour」と命名。

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OSロード 表紙 (左)2009年 (右)2016年

そして前回も触れたように、2010年1月の供給中止を迎えることになる。この背景には、当時のOSの組織内事情がある。1990年代に急速に進んだ地図のデジタル化で、広い作業スペースが不要になったため、OSは古い本部施設をたたんで、別の場所に移転する準備を進めていた。付随して、これまで200年以上内製してきた地図の印刷と出荷業務も、外部業者に委託する方針が決まる。ところがその際、見直しの対象に挙げられたのが小縮尺図で、費用対効果が低いとして、1:250,000と1:625,000全国図の刊行の取止めが発表されたのだ。

日本の1:50,000の例を引くまでもなく、印刷物としての地形図の供給見直しは世界的な趨勢だ。その中でむしろOSは、フランス国土地理院(IGN)などとともに、地形図に豊富な旅行情報を盛り込むことで、一般市民への浸透を積極的に図ってきた。そのパイオニアでさえ、時代の流れには逆らえなかったのか、と当時は残念に思ったことだ。それだけに、今回装いも新たに復活したOSロードには期待がかかる。この新地図が、車を運転する人にとどまらず、国土をくまなく知りたいと考える多くの層に受け入れられることを願いたい。

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新版では地勢表現(段彩とぼかし)が改善された
(左)トラベルマスターA版 イングランド南東部 1993年
(右)OSロード イングランド南東部 2016年版
© Crown copyright 2016

本稿は、Tim Owen and Elaine Pilbeam "Ordnance Survey: map makers to Britain since 1791", Ordnance Survey, 1992、参考サイトに挙げたウェブサイトを参照して記述した。

■参考サイト
イギリス陸地測量部(OS) http://www.ordnancesurvey.co.uk/
チャールズ・クロース協会 https://www.charlesclosesociety.org/
The Lez Watson Inexperience - Ordnance Survey Leisure Maps Summary Lists
http://www.watsonlv.net/os-maps.shtml

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 イギリスの1:250,000地形図 I-概要

2016年11月 6日 (日)

イギリスの1:250,000地形図 I-概要

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1:250,000
OSロード 表紙
図番6 ウェールズ及び
ミッドランズ西部

イギリス陸地測量部 Ordnance Survey(以下、OS)が刊行する地図のマーケティングは、伝統的に、対象となるユーザーごとに的を絞った形で展開されている。「OSロード Road」と通称されるように、1:250,000縮尺図には道路地図の性格が与えられ、ターゲットは自動車のドライバーだ。後で見るように地勢描写もしっかり施されているのだが、道路区分の強調、道路番号の明示、それにラウンドアバウトや急勾配など小縮尺にしては細かい情報も添えられるなど、ドライブ用途に傾斜した造りになっているのが特色だ。

ところがこのシリーズは、2010年1月限りで供給が中止されていた。今回このテーマを取り上げたのは、その消えた1:250,000が7年近い空白期間を経て、今年(2016年)9月に店頭に戻ってきたからだ。「ロード」の名称や、図郭・図番は中断前のものを引き継いでいるが、新版として最新情報が盛り込まれていることは言うまでもない。

それにしても、スマートフォンや携帯端末でデジタル地図が簡単に手に入る時代に、なぜいったん廃止した紙地図を復活させたのか。OSの担当者はこう語る。「デジタル地図は、A地点からB地点へ行く道を知るのにはすばらしいのだが、のんびり車を走らせたり、何か新しいものを見つけたりするときには制限がとても多い。OSロードを休刊してからも、紙地図の優れた点はテーブルの上に広げて学習したり計画を立てたりすることにあるのだという顧客の声を、私たちは絶えず耳にしていた」(下注)。

*注 Ordnance Survey News, 14 September 2016 " Ordnance Survey relaunches road maps" から翻訳引用

モバイル機器を使えば確かに便利だが、小さな画面で広域を見渡すには、縮尺を小さくせざるをえない。そうすると地図表現は概略になり、今度は細部を確認できなくなってしまう。地図ファンとしては、まだ紙地図は駆逐されるべきでないとしたOSの勇断を大いに喜びたいところだ。

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1:250,000 OSロードの一例 ウェールズ北部スノードニア周辺
© Crown copyright 2016

では、その新しい1:250,000「OSロード」の内容を見ていこう。名称の「ロード」というのは、もちろん道路(地図)の意味だ。しかし、アメリカの道路地図のように白地図に道路網と水系だけというのではなく、地勢が明瞭に描かれた「地形図」でもあり、交通網のほかにさまざまな旅行情報が入った「旅行地図」の性格も合わせ持っている。

地図記号は、各縮尺でほぼ共通のデザインが使われており、その点ではなじみやすいだろう。道路の重要度は、青・緑・赤・橙・黄という中塗りの色で表わされるが、主要道路については1:50,000などより若干幅を太くしてある。無骨な感もしないわけではないが、その効果で、道路網を図上で地勢表現などに煩わされずに、文字通りネットワークとして認識することができる。

さらに、道路番号に枠付きの大きな文字が使われ、サービスエリアは両車線/片車線、通年/期間限定と細かく分類されるなど、道路地図らしい配慮が随所に見られる。特に後者の分類は1:50,000などにはないものだ。興味深いのはラウンドアバウトで、この縮尺では省略されてもおかしくないところ、小さいながらもそれらしく描かれている。運転中のいい目印になるからだろう。

鉄道の記号については、標準軌がおなじみの太い実線だが、狭軌線は日本でいうところの私鉄記号ではなく、旗竿の塗りを省いた梯子のようなデザインが使われる。1:250,000図では最初からその形で、濃い段彩に紛れてしまわないための工夫だ。駅も律儀に表示されているので、都市やその近郊では赤い円(ライトレールは黄色の円)が集中して賑やかだ。ただし、駅名はごく一部を除いて、周辺の地名から推測するしかない。

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凡例 道路・鉄道の部

独立記号では、沖合にある発電用風車 Wind turbine の群が目を引く(一部は山地にも)。灯台も伝統的に描かれているが、今や目標物の地位を奪いそうな勢いだ。凡例には、太陽光発電施設 Solar farm という記号も登場している(ただし選択表示)。一方、陸上では、主に青色の記号で示されるさまざまな旅行情報が溢れている。修道院・大聖堂、水族館、ビーチをはじめ凡例に33個も並ぶ記号の列を見れば、旅行のヒントがいくつも掴めそうだ。

ちなみに保存鉄道 Preserved railway の記号は、長い路線の場合、起終点駅のそばに置かれていることが多い。1:25,000の同じ記号では蒸機が右に向かっているのだが、本図では逆に左向きにされている。

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凡例 旅行情報の部

次に地勢表現だが、等高線と段彩(高度別着色)、それにぼかし(陰影)も駆使して実感あふれる仕上がりになっている。「クォーターインチ地図 Quarter-inch map」を名乗っていた時代の、メリハリのついたグラフィックを参考にしたのかもしれない。その等高線は、おもしろいことに200フィート(約61m)間隔だ。1:25,000図や1:50,000図ではもちろんメートル刻みなのに、1:250,000には昔の等高線が大切に保存されているのだ(単に全面改版した場合にかかるコストの問題かもしれないが)。標高点はメートル値のため、等高線の高度値はメートル換算で記載してある。

段彩も少々ユニークだ。ふつうは等高線に沿って塗り分けるのだが、ここでは200フィートから600フィートあたりの境界がぼかされて、平野から傾斜地がじわりと立ち上がる様子がうまく表現されている。また、陰影をつけるぼかしも比較的繊細なもので、等高線では表現に限界のある地形の起伏をつぶさに捉えている。

1:250,000は、1993年からの描画作業のデジタル化(「トラベルマスター Travelmaster」シリーズ)の際に、図式が一変した。それまではどちらかというと大人しい印象のグラフィックだったのが、新図式では、太い描線、サンセリフの文字フォントの採用で、見た目にも濃くごわごわした図柄になってしまった。ぼかしもスクリーントーンを切って貼り付けたような品質で、失望したものだ。最新版もその図式を継承しているのだが、地勢表現が改良された(下注)ことで、印象はかなりいい方に変わった。筆者も久しぶりに全面揃えようという気になっている。

*注 中断前のロード図が手元にないため、その時点で改良されたのかは定かでない。

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凡例 地勢の部
等高線間隔は200フィート(約61m)

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1:250,000 OSロード 索引図
8面で全土をカバーする

OSロードシリーズは、8面でイギリス全土をカバーする。各図郭は十分な重複があり、特に図番5「ミッドランズ東部及びアングリア東部 East Midlands and East Anglia」と図番8「イングランド南東部 South East England」は、いずれもグレーター・ロンドン Greater London を図郭に取り込むために大きく重なっている。

価格は5.99ポンド(1ポンド130円として779円)で、1:50,000などの中縮尺図(普通紙版8.99ポンド)よりお得な設定だ。日本のアマゾンや紀伊國屋書店などの通販サイトでも扱っているので、"OS Road Map"などで検索するとよい。

なお、OS公式サイトでは、1:250,000ラスタデータのTIFファイルも無料公開されており、ナショナルグリッド単位でダウンロードが可能だ(下記参考サイトのOS OpenData参照)。印刷物と同等の解像度とはいかないが、実用的には問題ないだろう。

次回は、1:250,000のたどってきた130年近い歴史について、旧版地図の画像を交えながら紹介してみたい。

■参考サイト
イギリス陸地測量部(OS) http://www.ordnancesurvey.co.uk/
OS OpenData https://www.ordnancesurvey.co.uk/opendatadownload/products.html
チャールズ・クロース協会 https://www.charlesclosesociety.org/

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 アイルランドの1:50,000と1:250,000地形図

2016年4月24日 (日)

フィリピンの地形図

西太平洋に面するフィリピン共和国 Republic of the Philippines は、ルソン島、ミンダナオ島を筆頭に7,100とも7,600とも言われる多数の島から成る。環太平洋火山帯に位置し、赤道にも近いことが、この国にしばしば台風、地震、噴火といった自然災害をもたらす一方で、豊かな天然資源や、世界でも有数の生物多様性をはぐくんできた。

そのフィリピンの公式測量機関「国土地図・資源情報局 National Mapping and Resource Information Authority (NAMRIA) 」のサイトでは、国土をカバーする地形図体系の紹介とともに、地形図画像が多数公開されている。断片的な情報で恐縮だが、サイトの記述をもとに同国の地形図事情を追ってみたい。

■参考サイト
NAMRIA - Topographic map(紹介ページ)
http://www.namria.gov.ph/products.aspx
NAMRIA - Topographic map Download(画像ダウンロード)
http://www.namria.gov.ph/download.php

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1991年に大噴火を起こしたルソン島のピナトゥボ山、噴火口にはカルデラ湖が生じている
1:50,000地形図(PNTMS、JICA協力図) Mount Pinatubo 2007年版の一部

NAMRIAは、環境・天然資源省 Department of Environment and Natural Resources に属する行政機関だ。戦後フィリピンが改めてアメリカから独立を果たしたとき、米軍が担っていた測量・地図作成業務は、フィリピン沿岸測地測量局 Philippine Coast and Geodetic Survey (PC&GS) が引継いだ。組織は当初海軍に属していたが、後に国防省の内局となって、Bureau of Coast and Geodetic Survey (BCGS) と改称される。大統領令に基づき、国民に提供する地図の製作を目的としてNAMRIAが設立されたのは、ようやく1988年のことだ。

同国の地形図体系は、縮尺の小さい順に1:250,000、1:50,000、1:10,000、1:5,000とあるが、全土をカバーしているのは前2者にとどまり、改訂の進捗も十分とは言いがたい。

では、縮尺別に見てみよう。

まず1:250,000は全55面で、東西1度30分、南北1度の横長図郭だ。地勢表現は100m間隔の等高線とぼかしによる。サイトが提供している画像は解像度が低すぎて、注記文字を含めて詳細が全く判読できない。紹介文には「フィリピン沿岸測地測量局 Philippine Coast and Geodetic Survey、(米国)陸軍地図局 Army Map Service (AMS)、(米国)工兵隊 Corps of Engineer、米国沿岸測地測量局 US Coast and Geodetic Survey、公共道路局 Bureau of Public Highwaysその他の機関からの情報をもとに製作された」とあるので、1950年代のAMSによるS501シリーズを転用したものと推測できる。

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1:250,000地形図 Manila

AMS製作の原図は、テキサス大学ペリー・カスタネダ図書館地図コレクションで精細画像が提供されている(下記参考サイト)。上のマニラ図葉の一部に相当するAMS図を下に掲げた。両者を見比べると、未舗装道や市街地の色が違うようだが、注記文字の位置・書体、ぼかしの掛け方などはそのままだ。NAMRIA画像の低解像度に対する欲求不満は、これで十分解消できるだろう。

■参考サイト
University of Texas at Austin, Perry-Castañeda Library
Philippines 1:250,000 Series S501
http://www.lib.utexas.edu/maps/ams/philippines/

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AMS 1:250,000地形図 ND51-5 Manilaの一部

1:50,000については、数種のシリーズが混在している。最初に製作されたのが、711シリーズ(S711)だ。JICAの資料(下注)によれば、全842面。もともとAMSによって1947~53年撮影の航空写真から作られたもので、1970年代初めに全土をカバーしたとされる。AMS標準の5色刷で、日本の1:50,000と同じく、東西15分×南北10分の横長図郭だ。地勢表現は20m間隔の等高線による。

*注 JICA「フィリピン国国土総合開発計画促進に関する地図政策支援行政整備調査 第1編」2008年3月

サンプルとして、サトウキビ畑に製糖鉄道が張り巡らされていたネグロス島バコロド Bacolod, Negros 付近と、ルソン富士の異名をもつ円錐形のマヨン火山 Mayon Volcano の図葉を掲げておこう(下図)。とりわけ前者は、記号や書体にAMS様式が色濃く感じられる。

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ネグロス島バコロド付近
1:50,000地形図(S711)3652-III Bacolod、3651-IV Murciaの一部
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マヨン火山 1:50,000地形図(S711)3759-IV Ligaoの一部

次の701シリーズ(S701)は、1979年撮影の航空写真によるS711の修正版だ。ただし現物を見ていくと、新たに描かれた(改測)図葉もあるようだ。製作されたのはルソン島のみで、上記JICA資料によれば151面ある。図郭が東西15分×南北15分の単位に切り直されたため、S711の図郭とは一致しない。

サンプル(下図)に挙げたのは、旧市街が世界遺産に登録されているルソン島北西岸のビガン Vigan 付近と、同じく世界遺産のコルディリェーラの棚田群のあるルソン島北部のバナウエ Banaue。それに、小火山や火口湖が点在するルソン島中部のサン・パブロ San Pablo を加えた。前2者はAMS様式だが、後者はむしろオーストラリア官製図の雰囲気を持っている。画像では図歴が欠落しているため、正確なところはわからないのだが。

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ビガン付近 1:50,000地形図(S701)7078-II Viganの一部
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コルディリェーラの棚田群のある一帯
1:50,000地形図(S701)7276-IV Lagaweの一部
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サンパブロ付近 1:50,000地形図(S701)7271-II San Pabloの一部

ここまではシリーズ名からも明らかなように基本は軍用地図なのだが、1988年からは、NAMRIAによる民生用地形図の計画がスタートする。その成果が、フィリピン全国地形図シリーズ Philippine National Topographic Map Series の頭字をとったPNTMSと呼ばれるシリーズだ。地形図は、空中写真や衛星写真はもとより、マニラ周辺では作成済みの1:10,000地形図なども資料にして編集されている。図郭はS701を踏襲したが、図番体系が変更されている。地勢表現は20m間隔の等高線で、適宜5~10m補助曲線が用いられた。

このシリーズは全部で672面の予定だそうだが、索引図を見る限り、まだ126面しか完成していない。そしてこの中には、日本のJICA(国際協力機構)が実施した国土総合開発計画促進のためのパイロット・プロジェクトで作成された中部ルソン地方 Central Luzon の地形図24面も含まれている。

サンプル(下図)には、首都マニラの南で、日本人にはモンテンルパとして知られるムンティンルパ・シティ Muntinlupa City と、マニラの北に接するマロロス・シティ Malolos City 付近を取り上げた。前者が計画的な道路パターンに市街地のアミを掛けただけの無愛想な図面であるのに対して、後者は独立家屋や施設の記号を多用して丁寧かつ鮮明に描かれている。前者はNAMRIAのオリジナル、後者はJICAが協力した(日本が提供した)24面の一つで、技術力の差は覆い隠せない。冒頭に掲げたピナトゥボ山の図も、JICAの協力図だ。

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ムンティンルパ・シティ
1:50,000地形図(PNTMS)3229-IV Muntinlupa Cityの一部
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マロロス・シティ
1:50,000地形図(PNTMS)3130-I Malolos Cityの一部
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1:50,000地形図(PNTMS) 3130-I Malolos City (全体)

1:50,000はこのように、一応全土をカバーしているものの、製作年代も図化精度もまちまちで、とりわけルソン島以外ではまだ、50年も前に作られた米軍由来のS711が大半を占めるという状況だ。

1:250,000と同様、これらもNAMRIAのサイトで画像公開されている(下注)。用意された索引図の画像があまりに小さいため、或る程度土地鑑がないと、目的の図葉にたどり着くのに苦労する。しかし、画像自体は、細かい注記文字も読み取れる解像度で、実用に耐えうるものだ。もちろん、交通網や市街地などの人工景観については、現況とかなり差異が出ていることを覚悟しておく必要があるが。

*注 S711、S701の旧シリーズにもNAMRIAのクレジットが挿入されているから、単純に旧図をスキャンしたものではないようだ。

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1:50,000地形図(PNTMS、JICA協力図)の凡例

1:10,0001:5,000は一部の都市域で作成されているにとどまる。NAMRIAによれば、1:10,000はマニラ首都圏(メトロ・マニラ Metro Manila)と隣接地域、イロコス・ノルテ Ilocos Norte、ラ・ユニオン La Union、バギオ・シティ Baguio City、スービック Subic、レガスピ Legaspi City、サンボアンガ・シティ Zamboanga City の各都市、また、1:5,000はバコロド・シティ Bacolod City、イリガン・シティ Iligan City、イロイロ都市圏 Metro Iloilo、セブ都市圏 Metro Cebu、カガヤン・デ・オーロ Cagayan de Oro の都市域だ。地形図そのものの画像は公開されていないが、下記サイトにデータが使われている。

■参考サイト
フィリピン・ジオポータル http://www.geoportal.gov.ph/
 上部メニューのModule > Map Viewer

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1:10,000地形図 3229-IV-6 Alabang

使用した地形図の著作権表示 (c) 2016 NAMRIA.

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2016年4月10日 (日)

台湾の地形図-經建版

現行の台湾の官製地形図は、1985年に刊行が始まった。正式名称は中華民國臺灣地區地形圖だそうだが、通常は「經建版」地形図と称している。經建(経建)というのは経済建設の略称で、それまで軍事用の位置づけだった地形図を再編集して、民間による利用を可能にしたものだ。所管しているのは内政部地政司だが、製作は内政部の直轄機関である國土測繪中心 National Land Surveying and Mapping Center (下注)が行っている。

*注 國土測繪中心は、直訳すれば国土測量センター。

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1:100,000經建版地形図 宜蘭 (見本図)
画像は國土測繪中心サイトより取得

第二次大戦後、台湾では数種の地形図シリーズが作られたが、經建版以前はいずれも軍用の扱いだった。手元の1:50,000に関する資料によれば、まず1955~64年にかけて米国陸軍地図局(AMS)の協力のもとに「譯註美版臺灣五萬分一地形圖」108面が作製された(下注)。二番目が1966~71年の製作で、図郭を現在の縦長形に改めた「老五萬系列新製五萬分一地形圖」、三番目が、その改訂版として1980~84年に作られた「新五萬系列新製五萬分一地形圖」だ。

*注 この譯註美版1:50,000については復刻書も刊行されている。本ブログ「台湾の旧版地形図地図帳 II-光復初期」参照。

第四のシリーズに相当する經建版は、1975年に整備が開始された平地丘陵1:5,000、山地1:10,000の台灣地圖像片基本圖(航空写真基本図)をもとにして作製された。すでに数回改訂が実施されており、地図を公開している「台灣百年歴史地圖」のサイトではそれぞれ第一版、第二版のように呼んでいる(下注)。

*注 「台灣百年歴史地圖」のサイトについては、本ブログ「台湾の地形図-ウェブ版」参照。

同サイトによれば、縮尺別の作成時期は以下のとおりだ。

1:25,000
第一版 1985~1989年
第二版 1992~1994年
第三版 1999~2001年
第四版 2003年、北部地区のみ

1:50,000
第一版 1990年~1991年
第二版 1996年~
第三版 2002年、北部地区のみ

1:100,000
第一版 2003年、北部地区のみ

どの縮尺も最終版が2000年代前半と古いが、國土測繪中心は別途、2015年までの製作面数を公表しているので、その後も改訂が続けられているようだ。なお、各縮尺の作成時期は、百年歴史地圖と國土測繪中心のサイトで記述に食い違いが見られる。

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1:25,000 第一版 南崁、桃園
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1:50,000 第二版 淡水、桃園
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1:100,000 第一版 台北縣、桃園

經建版地形図は黒、茶、赤、青、緑の5色刷、1面の図郭は1:25,000が東西・南北とも7分30秒、1:50,000が同15分、1:100,000が同30分だ。韓国も同じ仕様で、戦後これらの地域で地図の整備を支援したアメリカの影響が強く表れている。

縮尺が大きくなるほど表現が詳細になるとはいえ、上図でご覧のとおり、どの縮尺も見た目は良く似ている。地勢表現は等高線のみで、間隔は1:25,000が10m間隔、同様に1:50,000が20m、1:100,000は40m。初期の版では、急傾斜地で等高線の間引き(省略)が行われていた。

地図記号はどうか(下図参照)。まず、道路(中国語では公路、以下同じ)はくくりのない赤の実線を使い、線の太さで国道、省道、県道、その他の道路を区別する。これなどはアメリカ式というよりカナダやオーストラリアで採用されている、より簡略化された形状だ。なお、2003年(民国92年)以前の図式では、実線が舗装(硬面路)で、破線が未舗装(鬆面路)を表していたが、未舗装道が少なくなったからか、2007年(民国96年)図式からは区別がなくなった。

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2003年以前の版の凡例
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2007年以降の版の凡例

鉄道(鐵路)は、実線に短線を交差させる形の日本でいう私鉄記号を基本とする。森林鉄道や製糖鉄道などの軽便鉄道(輕便鐵路)は、短線を片側へ交互に突き出す記号が使われる。おもしろいのは都市鉄道(捷運路網)や高速鉄道(高速鐵路=台湾新幹線)で、凡例のとおり他国では見かけないユニークなデザインだ。

市街地(房屋區)は赤のアミをかけるだけで、小集落でも独立家屋の記号を使わずに済ませている場合が多い。学校の記号も、四角の上に三角旗を立てた形がいかにもアメリカ式だ。四角の中に大・中・小と書かれており、日本の記号よりもわかりやすい。他に浄水場(水廠)、ガソリンスタンド(加油站)といった珍しい記号も設けられている。

土地利用の記号は、2007年図式で大きく変わった。従来青色を充てていた水田が緑色に置換えられ、さらに乾田(旱田)と水田に区別されるようになった。沼沢・湿地、緑地、果園のデザインも変更された。氾濫原(易氾濫區)、サトウキビ畑(蔗田)の記号が廃止されたのは、治水の完成や産業構造の変化を反映しているのだろう。

民生用として作られた經建版には、軍用施設が描かれていない。下図は、台湾の空の玄関口、桃園国際空港(図では中正國際機場と表記)付近の1:50,000だが、空港の南、大園郷/蘆竹郷の境界線が走る田園地帯は、周囲からぽっかりと浮き出ており、いかにも怪しげだ。事実ここは空軍基地で、滑走路を含めて全体が水田に改描されている(下注)。

*注 最新の民間道路地図には、桃園空軍基地の名称や滑走路が堂々と描かれているので、存在はもはや機密ではないようだ。

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空軍基地の改描例 1:50,000第三版 淡水

ウェブ公開されている各版を眺めているうちに、気づくことがあった。ふつう時代が下るにつれ、測量精度の向上で地図の描写がより正確になっていくものだが、經建版はその法則に当てはまらない。たとえば、縮尺別の比較に使った桃園市付近では、市街地の南東209mの三角点がある丘陵が、1:50,000の第三版では水田の記号で覆われている(下図の円内)。常識的にこの傾斜地を水田化することはありえず、空中写真で照会するまでもなく、樹林か緑地の誤りだ。

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植生の誤描 (左)1:50,000第二版 淡水、桃園 (右)同 第三版 淡水、桃園
円内の丘陵に水田の記号がある

台湾最大の湖、日月潭を一周する環湖公路の全通は、1:25,000第三版で初めて登場する。よく見ると、新設ルートはまるで等高線と合致せず、急斜面をジェットコースターさながらに登り降りしている(下図の矩形内)。等高線のほうが甘いという可能性は考えにくいので、道路を描く位置の問題だ。こうした等高線に従わない道路描写は、山岳地帯で散見される。参照した道路資料が大雑把だったのか、でなければ製図がずさんかのどちらかだ。

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道路の誤描 (左)1:25,000第一版 日月潭 (右)同 第三版 日月潭
矩形で囲んだエリアの道路が等高線と合致しない

また、阿里山森林鉄道(鐵路)の有名な獨立山ループでは、1:25,000の第一版から駅(獨立山車站)の位置を誤っていた(下注)のだが、第三版ではそれに加えて、ループの二段目と三段目のつなげ方に誤りがあり(下図の矢印)、さらに獨立山頂直下を貫いているはずのトンネル(第十二號隧道)も省かれている。第三版はトンネルの描き方自体も無骨で、全体に技術水準が落ちているように感じる。

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鉄道の誤描 (左)1:25,000第一版 竹崎 (右)同 第三版 竹崎
右図では矢印の地点で線路が交差し、獨立山頂直下のトンネルがない

*注 獨立山車站の正位置は第9号隧道と第10号隧道の間。下図参照。
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國土測繪中心の案内によれば、經建版地形図は現地の地図販売所で入手できるものの、残念ながらいまだに外国へは持出し禁止とされているようだ。しかし昨今の台湾では、民間会社から意欲溢れる旅行地図や地図帳が多数出版されている。どれも地形図としての精度を保ちつつ、はるかに多くの情報量を盛り込んでいて(下注)、官製地形図の出る幕はほとんどないというのが実情だ。

*注 詳細は本ブログ「台湾の1:25,000地図帳」「台湾の1:50,000地図帳」参照。このほか、1枚ものの山岳地図もレベルが高い。

■参考サイト
內政部國土測繪中心 https://www.nlsc.gov.tw/

★本ブログ内の関連記事
 台湾の地形図-ウェブ版
 台湾の1:25,000地図帳
 台湾の1:50,000地図帳

 香港の地形図
 マカオの地形図

2016年4月 2日 (土)

台湾の地形図-ウェブ版

100年にわたる台湾の国土の発展状況を、新旧の地形図でつぶさに観察できるサイトが開設されている。収録されているコレクションは、戦前(日治時期)の実測図・編集図から、米軍による空中写真を使った修正測量図、そして戦後、台湾政府による「經建版」地形図に及ぶ。台湾を対象に作られた公式地形図をおよそ網羅しており、どれも貴重で、興味の尽きない一級資料ばかりだ。

1.台灣百年歷史地圖
http://gissrv4.sinica.edu.tw/gis/twhgis.aspx

一つは、中央研究院人文社會科學研究中心地理資訊科學研究專題中心(中央研究院人文社会科学研究センター地理情報科学研究専門センター、略称GIS專題中心)の「台灣百年歷史地圖」だ。このサイトでは、1890年代から2003年までの間に作成された膨大な地形図画像が扱われている。グーグルマップに同期させてあるので、位置の特定や拡大縮小などの操作も感覚的に使いやすい。

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初期画面

まず、ポップアップ画面の「進入百年歷史地圖系統」のリンクから、初期画面に入る。初期画面には、見慣れたグーグルマップが表示されている。
左メニューの「図階」(上図矢印)をクリックすると、収録されている地図群の一覧が表示される。

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図階を開いた状態

図階リストから、見たい地図名称を選択する(上図②)。
なお、表は8ページに分かれており、例えば1980年代以降の經建版地形図は4ページ目にある。画像レイヤーの読込みには少し時間がかかるかもしれない。

あとは、地図画面右下のズームボタン(+-)を操作して、適切なレベルまで画像を拡大するだけだ。また、地図名称の右にある「圖例」というのは、凡例(地図記号一覧)を意味する。

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重ね表示

これらの地図は、グーグルマップと重ね表示して比較することができる。混合比率は、地図名称を選択して表示される透明度バーで調整する(上図③)。

各地形図とも必ずしも全土をカバーしているわけではなく、特に戦前のものについては山地などで未測地域が散見される。収録されている地形図を以下、縮尺別にまとめておこう。

1:20,000
・日軍攻台戰鬥地圖 1895(明治28)年
・日治二萬分之一台灣堡圖(明治版) 1898(明治31)~1904(明治37)年
・日治二萬分之一台灣堡圖(大正版) 1921(大正10)年~

1:25,000
・日治二萬五千分之一地形圖 1921(大正10)~1928(昭和3)年
・日治二萬五千分之一地形圖(航照修正版) 1944(昭和19)年
・美軍二萬五千分之一地形圖 1944年 *美軍=米軍
・二萬五千分一經建版地形圖(第一版) 1985~1989年
・二萬五千分一經建版地形圖(第二版) 1992~1994年
・二萬五千分一經建版地形圖(第三版) 1999~2001年
・二萬五千分一經建版地形圖(第四版) 2003年

1:50,000
・日治五萬分之一蕃地地形圖 1907(明治40)~1916(大正5)年
・日治五萬分之一地形圖(總督府土木局) 1920(大正9)年
・日治五萬分之一地形圖(陸地測量部) 1925(大正14)~1944(昭和19)年
・美軍五萬分之一地形圖 1944年
・臺灣五萬分一地形圖 1955~1964年
・五萬分之一經建版地形圖(第一版) 1990年~
・五萬分之一經建版地形圖(第二版) 1996年~
・五萬分之一經建版地形圖(第三版) 2002年~

1:100,000
・日治十萬分一臺灣圖 1904(明治37)年~1905(明治38)年
・臺灣十萬分一地形圖 1987年~
・十萬分之一經建版地形圖(第一版) 2003年

1:200,000
・日治臺灣假製二十萬分一圖 1897(明治30)年
・二十萬分一帝國圖 1932(昭和7)~1934(昭和9)年

1:300,000
・日治三十萬分之一台灣全圖(第三版) 1924(大正13)年
・日治三十萬分之一台灣全圖(第五版) 1939(昭和14)年

1:500,000
・五十萬分之一輿地圖 1936(昭和11)年

2.國土測繪圖資網路地圖服務系統
National Land Surveying and Mapping Information Web Map Service System
http://maps.nlsc.gov.tw/

台湾の測量局である内政部國土測繪中心(和訳すれば内務省国土測量センター)も、台湾に関するデジタル地図を表示できるサイトを用意しており、その中に主要な地形図シリーズの画像が含まれている。データは上記「台灣百年歷史地圖」と同じものだ。

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初期画面

まず、「進入地圖」と書かれた画像をクリックして、初期画面に入る。
初期画面は、基本圖層(ベースマップ)に通用電子地圖(デジタル地図)が表示されている。ここで、右上メニューの「圖層設定」(上図矢印)を選択する。

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額外圖層<全部展開>をクリック

これで図層(レイヤー)のメニューが表示される。
メニューにある「基本圖層」はベースマップのことで、電子地圖/正射影像(オルソフォト地図)/Taiwan e-Map(英語版電子地図)/空白底圖(白紙画面)が選択できる。
その下に、表示可能な図層のリストと透明度バーが表示されている。これを使ってもいいのだが、9ページに分割されていて、ページ繰りが面倒だ。その手間を省く別のポップアップメニューが用意されている。赤い帯の「額外圖層<全部展開>」(上図矢印)をクリックする。

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圖資列表で圖層を選択

「圖資列表」のポップアップメニューで、必要な地図(複数選択可)にチェックマークを入れる(上図矢印)。

地図の拡大縮小は、画面左のズームバーを操作する。
任意の地点の拡大は、画面上部の「框選放大(ルーペに+の印)」を選択してから、地図上で任意の地点をクリックする。
任意の地域の拡大は、Shiftキーを押しながらマウスで表示範囲をドラッグする(矩形を描く)。
図層の重ね表示は、図層を複数選択(チェックマーク)して、透明度バーで調整する。「台灣百年歴史地圖」では重ね表示の相手がグーグルマップに限られているが、こちらは地形図同士の重ね表示もできる。

収録されている地形図シリーズは以下の通りだ。

・日治臺灣堡圖(明治版1904)
・日治臺灣堡圖(大正版1921)
・日治二萬五千分一地形圖
・日治五萬分之一地形圖(陸地測量部)

・美軍五萬分之一地形圖

・臺灣二萬五千分一地形圖(經建1版)
・臺灣二萬五千分一地形圖(經建2版)
・臺灣二萬五千分一地形圖(經建3版)
・臺灣二萬五千分一地形圖(經建4版)

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 台湾の1:25,000地図帳
 台湾の1:50,000地図帳
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