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2019年6月19日 (水)

グムンデンのトラム延伸 III-トラウンゼー鉄道

トラウンゼー鉄道 Traunseebahn

グムンデン・ゼーバーンホーフ Gmunden Seebahnhof ~フォルヒドルフ・エッゲンベルク Vorchdorf-Eggenberg 間 14.9km
軌間1000mm、直流600V電化(ゼーバーンホフ~エンゲルホーフ間)、直流750V電化(エンゲルホーフ~フォルヒドルフ・エッゲンベルク間)
1912年開通、1990年旧 ゼーバーンホーフへ延伸、2018年グムンデン路面軌道と直通化

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ポイントを転換して本線へ
フォルヒドルフ・エッゲンベルク駅にて

トラウンゼー鉄道 Traunseebahn は、正式にはグムンデン=フォルヒドルフ地方鉄道 Lokalbahn Gmunden–Vorchdorf という。名のとおり、トラウン湖畔のグムンデンと、その北東10km強にある田舎町フォルヒドルフを結ぶメーターゲージ(1000mm軌間)の電化路線だ。この地方の主要な交通企業であるシュテルン・ウント・ハッフェルル Stern und Hafferl 社が運行を担ってきた。

終点のフォルヒドルフ・エッゲンベルクでは、標準軌支線のフォルヒドルフ鉄道 Vorchdorferbahn(下注)に接続し、それを通じて、ランバッハ Lambach でウィーン~ザルツブルク間の幹線である西部本線 Westbahn にも連絡している。それで路線図では、西部本線からグムンデン方面に延びる支線のようにも見える(下図参照)。しかし、2回の乗換えを要するため、そのような利用は一般的ではない。路線の主な役割は、フォルヒドルフとその周辺からグムンデンに向かうローカル需要に応じることで、それが建設の目的でもあった。

*注 正式名はランバッハ=フォルヒドルフ・エッゲンベルク地方鉄道 Lokalbahn Lambach–Vorchdorf-Eggenberg。本ブログ「フォルヒドルフ鉄道-標準軌の田舎電車」で詳述。

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グムンデン周辺の鉄道路線の位置関係
オレンジがトラウンゼー鉄道
 

最初にこのルートで計画されたのは、グムンデンからフォルヒドルフを経てさらに東のペッテンバッハ Pettenbach に至る電化鉄道で、1895年のことだ。グムンデン路面軌道が前年(1894年)に開通しており、当然この軌道との接続が想定されていた。しかし、これは予備認可を得たものの、着工には至らなかった。

他方、フォルヒドルフでは、1903年に上述のフォルヒドルフ鉄道が開通し、1908年には同じ西部本線の沿線都市ヴェルス Wels と結ぶ路線構想も浮上していた。そのため、商圏の縮小を案じたグムンデン市が自ら鉄道建設に乗り出し、その結果、1912年3月に開業したのがトラウンゼー鉄道だ。初期の保有車両は電動車2両と付随車2両で、通常4往復、市の立つ日は5往復の列車が走った。

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かつてのトラウンゼー鉄道
グムンデン鉄道史の展示パネルより
 

グムンデン側の起点は、市街の川向うにあるトラウンドルフ Traundorf に設けられた。古い馬車鉄道(下注1)の終点から少し上手で、駅を出て間もなく、その馬車鉄道から転換された標準軌の国鉄ランバッハ=グムンデン地方線 Lokalbahn Lambach–Gmunden(下注2)と合流する。そして、エンゲルホーフまで2km足らずの間、両者は3線軌条でルートを共有した。

*注1 1836年にグムンデンに到達したブドヴァイス=リンツ=グムンデン馬車鉄道 Pferdeeisenbahn Budweis–Linz–Gmunden。ザルツカンマーグートの岩塩輸送を目的としていた。
*注2 ランバッハ=グムンデン地方線は1884年に国有化。当時はまだ馬車鉄道を継承した1106mm軌間だったが、1903年に標準軌に改軌された。トラウンタール線 Trauntalbahn の別称もある。

連絡する2本の鉄道がいずれも標準軌だったにもかかわらず、トラウンゼー鉄道が1000mm軌間とされたのはいうまでもなく、グムンデン路面軌道への乗入れに備えてのことだった。しかし、トラウン川への架橋と市街地横断という難工事を伴うため、延長計画はこの時代には実現しないままとなった。

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旧型車 ET23 112(1954年 SWS製)
 

国鉄ランバッハ=グムンデン地方線(以下、ÖBB線)は、1988年に旅客輸送を終了した。それを受けてトラウンゼー鉄道は1990年に、開業以来のトラウンドルフ駅から、ÖBB線の終着駅だったゼーバーンホーフ(湖岸駅)Seebahnhof に起点を移した(下注)。両線ともランバッハにつながっているので、代替輸送の役割を付与されたのだろう。当時まだÖBB線の貨物輸送が残っていたので、3線軌条の延長工事も併せて行われた。

*注 別途、トラウンドルフ駅近くの本線上に、代替となるトラウンドルフ停留所が開設され、2014年まで使われた。

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グムンデンの路線網と駅の変遷
 

とはいえ、ゼーバーンホーフもグムンデン中心街から見れば川向うだ。また、終点のフォルヒドルフは人口7000人ほどの町に過ぎず、需要の掘り起こしには限界がある。それでトラウンゼー鉄道は最近まで、主に単行の旧形電車が1時間に1本走る程度の、のどかなローカル線だったのだ。

前回の続きで、路線の起点であり、路面軌道との接続点でもあるグムンデン・ゼーバーンホーフから、ルートに沿って変貌ぶりを見ていこう。

トラウンゼー鉄道のターミナルとなって以降も、ゼーバーンホーフは、ほとんどÖBB線時代のまま使われていた。1999年に訪れたときには3線軌条の標準軌側レールはもはや錆びていたから、貨物列車の運行も実質終了していたのだろう。その後、共用区間のÖBB線は2009年2月に正式に廃止され、トラウンゼー鉄道専用となった。

2014年の大改修で、ゼーバーンホーフの旧駅舎はホームもろとも撤去され、新たにトラウンシュタイン通りの北側に島式ホームと待合所が設置された。見かけも運行上ももはやターミナルではなく、中間電停だ。湖に突き出していた構内は、2018年10月現在、更地になっている。

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ゼーバーンホーフ電停
(左)広めのホームが敷地の余裕を物語る
(右)反対側はトラウン湖に臨む
  道路の先が旧駅跡で、現在は更地に
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1999年のゼーバーンホーフ(湖岸駅)
構内は3線軌条が敷かれていた
 

ゼーバーンホーフを後にすると線路は単線になり、右に左にカーブを切りながら、勾配を上っていく。枕木もメーターゲージ用に交換されたので、3線軌条を思い出させるものは残っていない。坂の途中にあったトラウンドルフ電停は廃止され、新たにシュロス・ヴァイヤー Schloss Weyer とレンベルクヴェーク Lembergweg の各電停が開設された。

旧 共用区間はエンゲルホーフ Engelhof で終わるが、同じようにÖBB線の駅とホームが撤去され、2面3線の中間ターミナルに再生された。日中10~20分間隔、毎時4本(土日は3本)のダイヤはここまでで、以遠では2本が間引かれて30分間隔(土日は1時間間隔)となる。西側の1面1線に、そのエンゲルホーフ止まりの列車が発着する。

ちなみに、ÖBB線の駅名はエンゲルホーフだったが、トラウンゼー鉄道の電停はそれと区別するためにエンゲルホーフ・ロカールバーン Engelhof Lokalbahn(ロカールバーンは地方鉄道の意)を名乗っていた。現在、電停や車内の表示はエンゲルホーフ・バーンホーフ(エンゲルホーフ駅)Engelhof Bahnhof になっている。

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エンゲルホーフを発つグムンデン駅行きトラム
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エンゲルホーフ電停
(左)2面3線の中間ターミナル、左1線は折返し用
(右)折返しホームに区間便が停車中
 

直進していたÖBB線(下注)に対して、トラウンゼー鉄道は右へ曲がり、トラウンシュタイン山を右手に仰ぎながら、畑と森の間を走っていく。木製の架線柱に直吊りのか細げな架線、線路の枕木も大半は木のままで、のどかな周囲の景色にしっくり溶け込んでいる。電停の設備だけは更新されているが、リクエストストップのため、乗降がなければ停まらない。

*注 2018年10月現在、駅構内の北端から先ではÖBBの線路が残されている。

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(左)中間の電停も改修済
(右)トラウンシュタイン山を仰ぎながら行く
 

やがて再び上り勾配となり、標高530mほどのサミットに達する。車窓右側にラウダッハ川 Laudach の谷が俯瞰でき、後はこれに沿って下っていくことになる。日中は、近くのアイゼンガッテルン Eisengattern 電停で列車交換が行われるが、倉庫の裏手のような殺風景な場所で、相手が到着すると合図もなく出発した。

坂を降りきったところでラウダッハ川を渡り、道路脇を進めば、左カーブの先にもう、フォルヒドルフ・エッゲンベルク Vorchdorf-Eggenberg 駅の留置された電車群が見えてくる。グムンデン駅から約40分、ゼーバーンホーフから25分の小旅行の終点だ。

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(左)アイゼンガッテルンで列車交換
(右)ラウダッハ川の谷を下る
 

フォルヒドルフ・エッゲンベルクは、運行を司るシュテルン・ウント・ハッフェルル社にとって重要な拠点になっている。十分広い構内にメーターゲージと標準軌の留置側線が何本も並び、側線からつながる車庫兼整備工場も二種の軌間に対応して、大型だ。貨車も含め、新旧さまざまな形式が留置されているが、トラムのホームから駅舎へ通じる通路はその側線を横断していくので、気兼ねなく観察ができる。

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フォルヒドルフ・エッゲンベルク駅構内
左側はメーターゲージ、右側は標準軌車両
 

標準軌の設備はいうまでもなく、この駅に接続しているフォルヒドルフ鉄道のためのものだが、真新しいグムンデントラムの連接車とは対照的に、こちらはまだ1950年代製の車両が現役だ。次回は、軌間は広いのに車両は旧形という、このフォルヒドルフ鉄道について詳述する。

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