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2017年3月27日 (月)

オーストラリアの地形図-クイーンズランド州

連邦制をとるオーストラリアでは、地形図の製作業務も連邦と各州が分担している。連邦が受け持つ1:100 000以下の小縮尺図は以前紹介している(下注)ので、今回から州が独自に製作する地形図を見ていきたい。初回はクイーンズランド州だ。

*注 「オーストラリアの地形図-連邦1:100,000」「オーストラリアの地形図-連邦1:250,000ほか」参照

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クイーンズランド州
地形図カタログ第3版
(2002年)表紙

オーストラリア大陸の東北部を占めるクイーンズランド Queensland は、同国第2の面積をもつ大きな州だ。日本からの直行便が飛ぶ州都ブリスベン Brisbane(現地の発音はブリズベン)やケアンズ Cairns のような拠点都市、ゴールドコースト Gold Coast やグレートバリアリーフ Great Barrier Reef といった海洋リゾートはよく知られている。

2017年現在、同州の測量業務を担当しているのは、天然資源・鉱山省 Department of Natural Resources and Mines だ。官製図にはお堅いイメージがつきまといがちなので、オーストラリアのいくつかの州では愛称を付して親近感の演出に努めている。クイーンズランドの場合は、亜熱帯の陽光が降り注ぐイメージから「サンマップ Sunmap」だ。

残念なことに、紙地図(オフセット印刷図)の新規発行はすでに全面停止され、ウェブサイトでの画像提供に移されている。だが、そこでは現行図だけでなく、旧版図も扱われているので、まずは基礎知識として、かつての紙地図の体系に触れておきたい。

手元に2002年5月発行の地形図カタログ第3版がある。それによると、州全域をカバーする最大縮尺は1:100,000だ。しかし、大鑽井盆地 Great Artesian Basin が広がる内陸部については、正式図ではなく測量原図の青焼き dyeline copy でのみ供給可能としている。1:100,000でそれだから、1:50,000より大縮尺図の整備範囲は推して知るべしで、人口が張り付く南太平洋岸の限られたエリアで作成されているに過ぎない。

縮尺体系はさまざまで、1:10,000や古い1:31,680(半マイル図、図上1インチが実長1/2マイルを表す)も若干数見られるが、一定量の面数があるのは、1:25,000と1:50,000だ。

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1:25,000地形図表紙の変遷(左から)
等高線地図 8064-32 Redlynch 1986年
写真図 9242-11 Toowoomba 1996年
等高線/写真図両面刷 8557-41 Bowen 2001年
デジタル等高線図 9242-11 Toowoomba 2010年

1:25,000 は州の整備計画のもとで製作されてきた。図郭は1:50,000のそれを縦横2等分しており、経度7分30秒、緯度7分30秒になる。ユニークなのは図葉によって地図の種類が異なることだ。製作年代に応じて、次に述べる3種のいずれかが入手できた。

1977年に標準地図の製作計画がスタートした当初は、等高線地図 Line Map、つまり一般的な地形図が作られていた。等高線間隔は5mまたは10mと、日本の1:25,000(10m間隔)と比べても遜色ない精度だが、その代わり、急傾斜地では主曲線を省略して計曲線のみにした。そのため、山がちの地域では地勢表現が大雑把になりがちだった。また、等高線に紅色を配したため、赤(朱色)や橙の道路記号とやや紛らわしい。その他の地図記号はおおむね連邦の1:100,000に準じていた。

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1:25,000地形図の例
大分水嶺の急斜面に臨むトゥーンバ市街
いずれも 9242-11 Toowoomba 図葉 (左)等高線地図 2010年 (右)写真地図 1996年
© The State of Queensland, 2017, License: CC-BY 3.0

次に登場したのが、写真地図またはオルソフォト地図 Image or Orthophoto Map だ。同州のそれは、カラー空中写真の上にUTMグリッド、等高線、交通網、行政界などの記号と地名を加えてあった。写真地図は、地表の様子がありのまま読み取れるという空中写真の利点を生かしつつ、写真には表現されない高度、境界、道路区分、地名といったデータを補うものだ。理想的な地図のように見えるが、実際に作業に用いるには、決して使いやすいものではない。情報量が多すぎて地表の様子を大掴みすることが難しく、また書込みが効かない(書込んだものが目立たない)からだ。

*注 オルソフォトは、地表の高度差、あるいは写真の中心からの距離によって生じる歪みを修整した正射投影画像のこと。

その反省もあったのだろう。1990年代に、等高線地図と写真地図を両面刷りする形式に切り替えられた。1枚で2種の地図を見比べられるから徳用版だ。なお、等高線地図の等高線の色が変えられ、主曲線が灰色、計曲線が茶色になった。識別しやすいかどうかは別にして、線幅(線の太さ)でなく色で区別するという仕様は、世界的にも珍しいものだ。

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1:25,000地形図の例 キュランダとバロン・フォールズ 8064-31 Kuranda 2004年
© The State of Queensland, 2017, License: CC-BY 3.0

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等高線地図 凡例の一部。州作成図のなかでは最もカラフル

これに対して1:50,000 は、1:25,000整備計画以前に、軍の測量機関であった王立オーストラリア測量隊 Royal Australian Survey Corps が製作していたものだ。陸上交通路の重点防衛地域で実施された地図整備事業の成果物だが、一般にも供されていた。図郭は1:100,000のそれを縦横2等分した経度15分、緯度15分になる。1:25,000の製作範囲とおよそ重複しているので、縮尺は異なるものの、およそ1世代前の地表の状況を記録した地図と考えればいいだろう。

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1:50,000地形図の例
(左)港湾開発前の、マングローブが広がっていたブリスベン川河口
9543-3 Brisbane 1971年
(右)州境の峠を越える北海岸本線のループ線(スパイラル)
9441-2 Grevillia 1990年
© The State of Queensland, 2017, License: CC-BY 3.0

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地形図の図郭と付番方式
図郭は1:100,000(外側の黒の太枠)を縦横2等分すると1:50,000(赤枠)、同4等分すると1:25,000(黒の細枠)
図番は1:100,000に対して、1:50,000は枝番1桁(1~4)、1:25,000はそれに2桁目(1~4)を加える

クイーンズランドの旧版地形図は、広範なスキャニング作業により、現在はウェブサイトで自由に閲覧できるようになっている。

■参考サイト
クイーンズランド州旧版地形図 Historical topographic map series—Queensland
https://data.qld.gov.au/dataset/historical-topographic-map-series-queensland

使い方は次のとおりだ。

1.上記参考サイトの Data and resources(データおよびリソース)の見出しの下に列挙されているシリーズ名から見たいものを選択する。さまざまなシリーズが挙げられているが、代表的なものは以下の2種だ。

・25000 series 1965-2012—Queensland(=1:25,000多色刷等高線地図)
・25000 image series 1993–2003—Queensland(=1:25,000オルソフォト地図)

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旧版地形図シリーズをリストから選択

2.タイトルのリンクを選択すると上の画面になる。Download ボタンで、地形図の目録データ(csv形式)が取得できる。あるいは、Visualisation Preview ボタンで、同じ目録データがブラウザ上に表示される。

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目録データの取得

3.目録データの "jpg_linkage" の列で見たい図葉を選択し、(Windowsなら右クリックで)開き方を選択すると、高精度の地図画像が取得できる。

残念ながら、図葉選択に欠かせない索引図は周辺のページに見当たらなかった。次の QTopo(現行デジタル地図閲覧サイト)で、1:25,000の図郭を表示して確認するしかなさそうだ。

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目録データから画像にリンク

現行デジタル地図は QTopo と呼ばれるサイトで見ることができる。

■参考サイト
QTopo(現行デジタル地形図)
http://qtopo.dnrm.qld.gov.au/desktop/

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QTopo 初期画面

地図の閲覧では、地図画面左上のスケールバーを操作すれば拡大縮小ができる。また、画面上部の Print タブ、または左上の Click here to... を選択すると、印刷やPDF取得のオプションが見つかる。

1.Generated a Printable Map: 画面に表示した任意の範囲の地形図を印刷する。
2.Download a Standard MapSheet: 標準図郭の地形図PDFが取得できる。

また、各縮尺の地形図の図郭は次の方法で表示できる。

画面左下の Map Layers ロゴを選択する。左メニューに表示される Operational Layers を展開して、縮尺を選択する。1:100,000、1:50,000、1:25,000の選択肢があるが、画面にはいずれか1種しか表示できない。そのため、例えば1:25,000図郭なら、ベースマップをかなり拡大表示(表示縮尺 1:144,448 以上)しておく必要がある。

■参考サイト
天然資源・鉱山局 Department of Natural Resources and Mines
https://www.dnrm.qld.gov.au/

★本ブログ内の関連記事
 オーストラリアの地形図-連邦1:100,000
 オーストラリアの地形図-連邦1:250,000ほか
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 オーストラリアの地形図-南オーストラリア州
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