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2015年7月 7日 (火)

新線試乗記-北陸新幹線、金沢延伸 I

2015年3月14日は、JR東日本とJR西日本が新幹線で直接手をつないだ日になった。この日、北陸新幹線が長野から金沢まで延伸開業し、両社は同じ形式の車両(E7系とW7系)を使って首都圏と北陸を結ぶ高速列車の運行を開始したのだ。いつもJR東海の新幹線を利用している者にとっては、ありえないことが実現したような新鮮な感覚だ。

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金沢駅のE7/W7系揃い踏み

PRの仕方も両社の個性がにじみ出る。JR東日本は、E7系を可愛いキャラクターに仕立てたアニメでほのぼの感を強調し、遠隔地の印象があった北陸に親しみ易さをアピールする作戦のようだ。一方のJR西日本はその北陸で、速く快適に首都圏まで直行できるようになったことを正攻法で訴えている。

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(左)JR東日本の「ウフフ!北陸新幹線」ポスター(東京駅にて)
(右)JR西日本の正攻法パンフレット

同じJR西日本の管内とはいえ、なにぶんここ関西では、全国放送で流される金沢のにわか景気を他人事のように眺めるか、これまで乗り換えなしに行けた富山が遠くなったなあ、と感想を漏らすのが一般の反応だが、鉄道ファンにとっては、名古屋市地下鉄桜通線延伸以来4年ぶりの新線開通だ。黙って見過ごすわけにはいかない。開通直後に春休みの旅行を兼ねて、家族で東京から北陸へ周遊したあと、再度現地を訪ねて在来線との接続状況を観察した。今回はそのうち長野~糸魚川間をレポートする。

ここ数日、春本番を思わせるぽかぽか陽気が続いている。3月22日、東京駅で10時32分発、北陸新幹線かがやき509号の客となった。「かがやき」は、終点金沢までに上野、大宮、長野、富山にしか停車しない最速達列車だ。この他、高崎以西が各駅停車の「はくたか」(一部の駅は通過も)、従来ある長野止まりの「あさま」、それに富山~金沢間のシャトル便「つるぎ」が設定されている。東京駅に発着する新幹線列車の名称だけでも十数種類になり、もはや覚えきれなくなってきた。

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座席前のポケットにJR2社の広報誌が仲良く並ぶ

きょうは3連休の2日目、開業からまだ1週間ほどだが、普通車指定席の1号車は、3列席側がおおかた空いている。上野や大宮で団体さんが乗り込んでくるのかと想像したが、それもなかった。初日は指定券が早々と売り切れて盛り上がりを見せつけた新線フィーバーも、少し落ち着いてきたようだ。

荒川を渡り、秩父の山並みを眺め、高崎の市街地ごしに浅間山を遠望したあとは、断続するトンネル区間に入る。1号車は電動機を持たない制御車(Tc)だからか、軽井沢前後の連続急勾配も気づかないまま通過してしまった。既開通区間では最長の五里ヶ峯トンネル(15,175m)を抜けると、早や空の広い善光寺平(長野盆地)だ。

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長野駅新幹線ホーム

1997年以来18年間、新幹線の終点だった長野も、今や途中駅になった。半ば定着していた「長野新幹線」の名ももう見かけない。富山までこの列車に乗り続けるので、ホームの様子を車窓から見送っただけだが、後日(大型連休中の4月30日)改めて下車すると、ちょうど善光寺御開帳の時期で、コンコースや正面玄関の軒先にはそれを知らせる大きな幕が下がっていた。駅前に出ると、黄色に赤絣のチューリップが特設の木枠に盛られて春風に揺れていたが、あれは富山と新幹線でつながった縁を表していたのだろうか。

■参考サイト
長野駅付近の1:25 000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/36.643000/138.188700

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長野駅
(左)コンコースに御開帳の垂れ幕(2015年4月撮影、以下4月)
(右)善光寺口を(富山の?)チューリップが彩る(4月)

いよいよ今回の開通区間に足を踏み入れる。長野の市街地ではもとの信越本線(現 しなの鉄道北しなの線)と並行するが、すぐに離れて、まだ冬枯れの果樹園や雪の飯綱山を眺めながら速度を上げていった。左側を新幹線の車両基地がかすめる。千曲川を渡ればすぐ高丘トンネル(6,944m)で、これと次の高社山トンネル(4,278m)の間に開ける夜間瀬川の谷では、信州らしいのどかな山里の風景が垣間見えた。

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(左)車窓から雪の飯綱山を望む(2015年3月撮影)
(右)JR飯山線立ヶ花駅から新幹線第4千曲川橋梁、愛称「アップル大橋」が見える(4月)
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(左)心和む夜間瀬川沿いの山里風景(4月)
(右)千曲川を見るのもこれが最後、第5千曲川橋梁(菜の花大橋)(4月)

雪原の間をゆったりと流れ下る千曲川を再度越えると、飯山(いいやま)だ。いうまでもなくJR飯山線との連絡駅だが、もとの飯山駅はここから北へ300mの位置にあった。新幹線の上りホームの窓から旧駅跡が望めるが、乗降ホームも駅舎も撤去されて、すっかり更地と化している。線路と立体交差する都市計画道路の用地になってしまうらしい。旧駅舎は、お寺を模した玄関が特徴で、ホームには鐘楼を据える凝りようだったが、新幹線の駅はどれも巨大で機能本位で、風情や情趣などとはほとんど無縁だ。

再訪時はここで飯山線のキハ110系気動車に乗換えて、豊野経由で信越国境を越えた。千曲川に寄り添って走るこのローカル線の車窓は、昔乗ったときの記憶と変わらない。瑞々しい新緑の河岸を縫いながら、小さな無人駅にも丁寧に停まっていく。軽便鉄道を思わせるような急曲線が続くため、速度はしばしば40km/hに落ちてしまう。長野まで50分前後かかるこの在来線に対して、「はくたか」の所要時間はわずか12分だ。劇的な時間短縮効果によって、雪深い飯山の町はこれからどのように変化していくのだろうか。

■参考サイト
飯山駅付近の1:25 000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/36.845300/138.358800

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飯山駅 (左)正面 (右)ガラス面に街が映る
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在来線飯山駅 (左)旧駅舎は撤去済(4月) (右)キハ110系気動車が入線(4月)

新幹線はここから、五里ヶ峯を抜いて線内最長となった飯山トンネル(22,251m)に入り、一気に新潟県へ抜ける。列車は何事もなかったように闇の中を飛ばしていくが、トンネルは複雑な地質構造を通過していて、建設工事は非常に難度の高いものだったという。ルートが直線ではなく、西にたわんでいるのもそれと何か関係があるのだろう。飯山駅の標高は330m、トンネルの出口では約60mにまで下がる。軽井沢へ上る長い急坂は話題になったが、このトンネルでも同じ30‰の連続勾配が使われている。

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高田平野と矢代山地、手前は関川(3月)

かくして舞台は、山国から日本海に面した高田平野へ移る。周囲の田んぼは地肌が現れてきたが、左手に連なる矢代山地はまだみごとに雪化粧している。この地域の新たな玄関口となった上越妙高(じょうえつみょうこう)駅が近づいてくるころだ。

新幹線駅は、旧信越本線 脇野田駅の西120mの場所に計画された。これまでの例に倣えば、両駅の間に連絡通路を造ることになる。しかし、それで済まない問題が指摘されていた。信越線と新幹線は駅の南側で斜めに交差しているため、このままでは新幹線駅の東口で開発可能な土地がV字状の狭小なものにとどまってしまう。さらに、北方の高田市街と新幹線駅を結ぶ動線は、信越線を横断しなければならない。

この課題の解決策として採用されたのが、信越線の線路と駅をともに新幹線の西側に移設するという大がかりな案だった。そのためのルート変更は、延長1.7kmに及んだ。地図の上では、元来直線だった線路が、新幹線駅に沿って寄り道したような格好になっている。脇野田駅は先行して2014年10月19日に新しい場所に移り、その後、新幹線開業と同時に、第三セクターのえちごトキめき鉄道(えち鉄)上越妙高駅に名を改めた。

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上越妙高までJR東日本の管内

ここも再訪時に下車してみた。正面となる東口には杉材で編んだ巨大なドームが据えられ、新幹線改札や橋上の自由通路の天井には木製ルーバー、えち鉄の改札柵も昔の駅を思わせるがっしりした木組みと、木のぬくもりを意識したデザインが印象的だ。東口の片隅に、何の説明もなく丸型ポストが置かれている。聞くと、旧脇野田駅前にあったものだそうだ。その旧駅跡は目下造成工事中で、直江津方はまだ線路がもとのままに残っていた。

えち鉄の新駅は、地平の島式ホーム1面2線というシンプルなものだ。直江津行きの普通列車を待っていたら、隣の2番線にE653系を使った新潟発の特急「しらゆき」が入線して、客を降ろした。ここが終点だが、引上げ線はないので、普通列車が到着しても停車し続けている。時刻表を見ると折返し営業運転ではなさそうだし、まずは車内整理のためにどこかへ回送されるのだろう。新たな乗継ぎルート開拓の舞台裏では、さまざまなやりくりがあるようだ。

■参考サイト
上越妙高駅付近の1:25 000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/37.081700/138.248200

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上越妙高駅 (左)西口の展望デッキ (右)東口の杉材を編んだドーム
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えち鉄上越妙高駅 (左)木材を多用した改札口 (右)特急しらゆきが到着
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在来線のルート変更
(左)新井方から見た切替え地点。旧線は直進していた(4月)
(右)新幹線東口の旧線跡は造成中。新井方を望む(4月)

在来線の直江津~糸魚川間は、頸城トンネル(11,353m)を筆頭に長大トンネルが連続する。これは1960年代に、日本海縦貫線の輸送力増強とともに、多発していた地滑り災害を回避する目的で実施された路線改良の結果だ。一方の新幹線は、より内陸部を通過している。トンネルは8本を数えるが、山間の明かり区間はシェルターですっぽり覆われているため、視覚的には、長大トンネル2本(高田+松ノ木+桑取+峰山および新木浦+高峰+中浜)の後に、短いトンネルが1本(梶屋敷駅の裏山を抜ける金山トンネル)来る。防音壁が高くてわかりにくいのだが、最後のトンネルを出ると、家並みの向こうに日本海が300m以内まで近づいている。まもなく糸魚川(いといがわ)だ。

再訪時はここで日が傾いてきたので、一夜の宿を取った。駅併設の施設はなかなか充実している。正面玄関の北口(日本海口)には、以前から特産の翡翠製品を展示販売するヒスイ王国館がある。新設の南口(アルプス口)では、鉄道ファンには楽しいジオパルという展示施設が造られた。実はその開館時間に間に合わせようと、早めに乗継ぎの旅を切り上げたのだった。

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糸魚川駅
(左)アルプス口とレンガ車庫のファサード。シャッターの奥にキハ52が
(右)ホームに金沢行きが入線

地質関連の展示もあるにはあるが、メインは鉄道ものだ。大糸線で走行していた気動車キハ52が、懐かしい朱色とクリーム色に復元塗装され、休憩室代わりに置かれている。キハが載るレールは建物の外まで延長されて、かつて駅構内にあり、ここへ移設保存されたレンガ車庫のファサードをくぐる。

隣の部屋は、立派なレイアウトコーナーで、Nゲージ、HOゲージ、それにプラレールも揃っている。Nゲージは7m×6mの広さで10線、糸魚川の市街地を正面に置き、右が親不知、左が頸城トンネル、中央を占めるアルプスの背後は東京という設定だ。HOゲージのほうは、10m×2mの縦長サイズで4線。テーマは姫川を遡る大糸線で、模型のキハ52が走行音つきで走る。人物や景観など細部の造り込みも丁寧で、たいへん見ごたえがあった。

ところが残念なことに、この気合いの入れように応じる肝心の観客がいない。筆者が滞在中に入ってきたのは、地元の母子連れとおぼしき1組のみ。実は駅のコンコースからしてひっそりしているので、人が流れてこないのも当然なのだ。開業1か月の大型連休でこれだと、ふだんはより厳しい状況と想像する。せっかく手間をかけたレイアウトが、宝の持ち腐れになってしまわないようにと願うばかりだ。

次回は、糸魚川から終点金沢へ向かう。

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(左)えち鉄糸魚川駅遠望 (右)駅近くにC12が静態展示されていた
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ジオパル内部 (左)国鉄色のキハ52 (右)Nゲージの糸魚川市街

■参考サイト
糸魚川駅付近の1:25 000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/37.043300/137.861300

眺め-北陸新幹線-(前面車窓) http://www.jreast.co.jp/nagame/
JR東日本-meets新幹線 http://www.jreast-shinkansen.com/
JR西日本-北陸新幹線 http://hokuriku-w7.com/

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