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2015年6月28日 (日)

アイルランドの道路地図帳

鉄道路線が地方の観光地をカバーしていないアイルランドでは、レンタカーも個人旅行の有力な選択肢になる。日本と同様、車両が左側通行であることも、慣れない土地では安心要素だ。そこで、アイルランドに特化した道路地図帳をいくつか紹介しておこう。

アイルランド共和国の地図作成機関であるアイルランド陸地測量部 Ordnance Survey Ireland (OSI) が、北アイルランドの測量局(OSNI)との共同編集による「アイルランドOSI公式道路地図帳 Official Road Atlas Ireland」を刊行している。現行版は2015年第6版だ。

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OSI公式道路地図帳 表紙 (左)2002年第3版 (右)2010~11年版

スパイラル綴じで、サイズはA4判より天地が少し短い横22.5×縦27cm。メインの道路地図は縮尺が1:210,000(3.3マイル1インチ、下注)で、68ページに区分され、主要11都市については別途、1:85,000または1:30,000の縮尺で市街図が用意されている。そのほか、道路標識の一覧や主要都市間距離表、そして巻末に地名索引が付く。

*注 3.3マイル1インチは、図上1インチで実長3.3マイルを表す縮尺の意。以下の用例も同じ。

色分けによる道路区分や旅行情報の記号形状など道路地図の基本仕様は、同じ共同刊行物である1:250,000図に準じている(下注)。地勢を段彩で表現するのも同様だが、1:250,000図が低地に緑、高地に茶色を使っているのに対して、地図帳のほうは茶系に統一され、道路網を強調するためか、0~150mは淡いクリーム色でほとんど白地に見える。縮尺が1:210,000と中途半端なのは気になるが、地図に10kmグリッドが引かれているので、距離感を掴むのに支障はない。

*注 1:250,000図については、本ブログ「アイルランドの1:50,000と1:250,000地形図」参照。

道路地図らしい特色と言えるのは、区間距離の記載とともに、速度制限に関する表示があることだ。速度検出区間が赤で縁取られ、スピードカメラの設置場所も赤い記号でよく目立つ。交通安全局 Road Safety Authority(RSA)の協力がうたわれているので、抑止効果を狙った政府の施策の一環なのだろう。

この縮尺でも市街地の詳細は描ききれないので、市街図が補完の役割を果たすことになる。筆者が持っている2002年の第3版では大雑把で実用性の低いものだったが、現行版は改良が進み、太く描いた街路の上に大文字で街路名を書き入れるという、A-Z風のスタイルになっているようだ。

Blog_ireland_roadatlas2
コリンズ総合道路地図帳
2014年版 表紙

アイルランドの旅行地図」の項で紹介したコリンズ Collins も、3種の道路地図帳を刊行している。掲載されている地図はどれも洗練された配色が好ましく、OSI図のそれが野性的に見えるほどだ。3種のうち最も情報量が多いのが「アイルランド総合道路地図帳 Ireland Comprehensive Road Atlas」で、A4判160ページ、スパイラル綴じの冊子になる。

地図の構成は2段構えで、まずルートプランニング図 Route Planning Maps として、縮尺約1:570,000(9マイル1インチ)で全島を8ページで表す区分図が提示される。100mごと(ただし700m以上は同色)の段彩をかけたベースマップに交通網、行政界、地名が詳しく盛り込まれており、美的にも優れた出来栄えだ。

続いて島内の見どころ Places of interest の案内が写真と地図索引つきで7ページ、その後ようようメインの道路地図が来る。縮尺1:200,000(3.2マイル1インチ)で、全島を64ページに区分している。フォントも地図記号もサイズがやや大きめなので、一種のでか字版と見なせるだろう。道路網の描写はOSI版と同程度の詳細さだが、ラウンドアバウトや立体交差の記号があるのが、運転中の位置確認に効果を発揮しそうだ。区間距離がマイルとキロメートルの併記になっているのも実用的だ。一方、速度検出区間の表示は道路の中央に点線を並べるスタイルで、注意喚起という意味ではOSI図のほうが視覚的に勝っているように思う。

続く市街図は15都市を収載する。すべての街路に名を付したA-Z図スタイルで、余白に地名索引も付いている。とりわけベルファスト Belfast、コーク Cork、ダブリン Dublin、リムリック Limerickの主要4都市は拡大区分図とされ、路地の隅々まで明瞭に読み取ることができる。またこの4都市については、見どころ案内を含む旅行情報も提供されている。

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表紙の一部を拡大

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凡例

次に詳しいのは「アイルランド道路地図帳旅行版 Road Atlas Ireland Touring Edition」だ。これもA4判で、64ページのペーパーバック(並製本)になる。ルートプランニング図は縮尺が1:1,000,000で、全島を4ページに収める。一方、30ページを占めるメインの道路地図は1:330,000(5.2 マイル1インチ)と、総合地図帳より縮小されるが、却ってでか字感が解消され、筆者にはジャストサイズに映る。ただし、里道の描写は一部省略されているようだ。

市街図は11都市に減り、都市の見どころ紹介も割愛されているが、ガイドブックの役割をそれほど期待しないのであれば、価格を含めて3種のうちで最も実質的な地図帳と言えるだろう。

アイルランド ハンディ道路地図帳 Handy Road Atlas Ireland」は、扱いに便利なA5サイズ、64ページのペーパーバックだ。道路地図の縮尺は1:570,240(9マイル1インチ)になる。このレベルでは、地方道 Regional Road(北アイルランドではB級道路 'B' Road)に指定されていないような道路の描写はかなり省略されてしまう。1枚ものの旅行地図でもコリンズの場合、1:511,000(8マイル1インチ)とこれより大きく、敢えて区分図の地図帳を選ぶメリットは少ない。

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AAアイルランド道路地図帳
2012年第5版 表紙

イギリスのAA (Automobile Association) の出版リストにも、アイルランドの道路地図帳が2種載っている。「アイルランド道路地図帳 Road Atlas Ireland」はA4判104ページ、メインの道路地図の縮尺はライバルと同じ1:200,000だ。OSIやコリンズに比べて観光情報がこまめに記載されているが、地勢表現はなく、地名表記も少なめで、デザインは全体的に野暮ったい。実用性はともかく、見て楽しい地図とは言えない。

それに対して市街図は、街路索引を伴って各都市をコンパクトにまとめている。主要な通りや一方通行の表示が強調され、良好に読取れる。なお、街路名は一部記載が省略されている。高速道路については、路線ごとにインターチェンジやジャンクションの形状と接続道路を案内したページが用意されているのが興味深い。

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表紙の一部を拡大

もう1種の「グローブボックス版アイルランド地図帳 Glovebox Atlas Ireland」は、グローブボックス(車の助手席の前にある物入れ)に収まる大きさという意味で、横16.5×縦21.6cm、A5判よりやや大きい程度のコンパクトサイズだ。全80ページで、スパイラル綴じされている。メインの地図の縮尺は1:300,000で、地図表現としてはちょうどいい粗密度になる。

筆者は、デザインに長けたコリンズの「旅行版 Touring Edition」がやや優位なように感じるが、紹介した地図帳はそれぞれ特徴を持っている。大部分が日本のアマゾンでも購入できるとはいえ、現地に行く機会があるのなら、店頭で実際に手に取って吟味するのが一番だ。

■参考サイト
アイルランド陸地測量部オンラインショップ http://www.osi.ie/
AAオンラインショップ http://shop.theaa.com/store/

★本ブログ内の関連記事
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