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2015年4月19日 (日)

アイルランドの鉄道地図 I

Blog_ireland_map

アイルランド共和国の鉄道網を運営しているのは、国有のアイルランド鉄道だ。英語ではアイリッシュ・レール Irish Rail だが、正式にはアイルランド語で、イールンロード・エールン  Iarnród Éireann と称している。Iarnródは英語のIron Roadから来ていて、Iarnród Éireannはエール(アイルランド)の鉄道という意味をもつ。運行路線は首都ダブリン Dublin から放射状に広がり、内陸を貫通して沿岸の主要都市に達している。

一方、1922年のアイルランド共和国独立に際して袂を分かった北アイルランドでは、北アイルランド鉄道 NI Railways が鉄道事業を行っている。1990年代に極端な民営化が推し進められたイギリスで、唯一残る国有かつ上下一体経営の鉄道会社だ。首都ベルファストBelfastから延びる長短4方向の路線を維持する。

鉄道が盛んに建設されていた19世紀はまだ全島がイギリス領だったので、主要路線は1846年の鉄道軌間規制法(ゲージ法)で定められた1600mm(5フィート3インチ)軌間、いわゆるアイリッシュ・ゲージで統一された。最盛期であった1920年には、島全体に狭軌を含めて計5,500kmもの路線が存在したという。1950~60年代に不採算となっていた多くのローカル線が廃止された結果、路線規模は1/3にまで縮小した。

現在の運行形態は首都中心で、アイルランド鉄道はDARTなどの近郊通勤列車、50~80km圏の郊外列車、地方都市へのインターシティを走らせている。また、ダブリンとベルファストの首都間は、両鉄道が共同で、ユーロスターなみの設備をもつ「エンタープライズ Enterprise」号を投入している。

Blog_ireland_railatlas1

鉄道地図でもアイルランド島は、1つのくくりで扱われることがほとんどだ。単独の出版物になっているものでは、1997年にイアン・アラン出版社 Ian Allan Publishing から刊行された「ジョンソンのアイルランド鉄道地図帳・地名録 Johnson's Atlas & Gazetteer of the Railways of Ireland」(右写真)が知られている。これは、タイトルから窺える以上に、鉄道路線に関する百科事典のような書物だ。

内容は3部構成になっている。第1部の鉄道地図 Atlas は、縮尺約5マイル1インチ(1:317,000)で、全島を36ページの区分図によりカバーする。ダブリン、ベルファスト、コークの3都市圏については、別に詳細図がある。地図では、標準軌線を実線で、狭軌線を旗竿状の線で示すとともに、営業中の駅と廃止された駅をそれぞれ黒丸と白丸で描き分ける。また路線は、基本的に1922年(共和国独立の年)時点の運営会社を基準に色分けされている。さらに、平面交差(踏切)が名称つきで網羅され、特産のピート(泥炭)を運搬する軌道網が多数描かれるなど、ユニークな項目が満載だ。

第2部は地名録 Gazetteer だが、より正確に言うなら、鉄道に関する名称索引だ。第1部の鉄道地図に記載されたおそらくすべての名称を検索することができる。

第3部は路線目録 Route tables で、路線ごとに運営会社、軌間、沿革(開通、休廃止年を含む)といった基礎データを押えるとともに、駅、分岐点、平面交差、橋梁等についてキロ程、開業・廃止年などがテーブル形式で詳述される。

このように大変な力作の地図帳だったのだが、残念ながら絶版になってしまい、もはや古書店を当るしかなかった。

Blog_ireland_railatlas1_detail
「ジョンソンの鉄道地図帳・地名録」 表紙の一部を拡大
Blog_ireland_railatlas1_legend
同 凡例

2014年になって、久しぶりにアイルランド島に的を絞った鉄道地図帳が発表された。同じイアン・アラン出版社の「今昔アイルランド鉄道地図帳 Railway Atlas of Ireland Then & Now」だ。1920年の鉄道地図を復刻し、現在の路線図とページ見開きで比較するというユニークな体裁をとっている。これは次回「アイルランドの鉄道地図 II-今昔地図帳」で詳述する。

グレートブリテン島と合冊・併載になっているものは数種ある。下記リンクの記事を参照願いたい。

トーマス・クック社の鉄道地図 Railmap Britain & Ireland
 アイルランド島は縮尺1:1,000,000(100万分の1)。駅の表示は主要駅のみ。旅行地図の性格をもつため、長距離バスルートも記載。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/i_7b92.html

・イアン・アラン社の「Rail Atlas 1890」
 1890年当時(イギリス領時代)の全線全駅を表示。とうに廃止された路線が多数描かれた貴重な資料。ダブリンは拡大図あり。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/ii_6b6b.html

・M・G・ボール氏による「abc英国鉄道地図帳 abc British Railways Atlas」
 ポケット版の鉄道地図帳。アイルランド島は縮尺約1:1,670,000(167万分の1)で4ページを充てる。全駅表示。ダブリンは拡大図あり。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/10/iii_4389.html

・M・G・ボール氏による「ヨーロッパ鉄道地図帳」
 アイルランド島に1ページを割く。縮尺約1:2,220,000(222万分の1)。駅の表示は主要駅のみ。分冊版はイギリスと合冊で「Atlas of Britain & Ireland」となる。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2009/01/i-0b3a.html

・S・K・ベーカーBaker氏による「イギリス・アイルランド鉄道地図帳 Rail Atlas Great Britain & Ireland」
 アイルランド島は1:495,000で全線全駅を表示。コークCork、ダブリン、ベルファストは拡大図あり。数年おきに改訂版が出されるので、直近の状況がチェックできる。
 http://homipage.cocolog-nifty.com/map/2007/11/iv_6a46.html

(2009年7月5日付記事を改稿)

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