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2014年2月16日 (日)

スイスの1:200,000地形図ほか

今回は、スイス官製地形図「ランデスカルテ Landeskarte」のもう一方のグループ「地勢図 geografischer Landeskarte」について簡単に記しておこう。広域の概観を表現するので地勢図と訳したが、具体的には1:200,000、1:500,000、1:1,000,000(100万分の1)といった小縮尺図のことだ。

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1:200,000表紙
(左)図番1 北西部 1972年初版 (右)図番3 南西部 2009年版

スイストポの紹介サイトによると、1:200,000は「バイクと自動車の運転者、鉄道旅行者および冒険家のための最も正確で明瞭に読み取れるスイスの総合地図」だ。全土を北西、北東、南西、南東の4面でカバーする。用紙は横117cm×縦76cmと、1:25,000などの「地形図 topografischer Landeskarte」グループ(78cm×57cm)に比べて大判で、実面積では東西200km×南北142kmの範囲を表すことができる。また、隣接図葉との間には、縦横とも8cm(実距離で16km)程度の重複が設けられている。

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1:200,000 リギ山付近 (図番2 北東部に収載)

縮尺からして地図に表されているのは、地勢・水部、都市・集落の分布、交通網、そして地名と標高点が主なものになる。

このうち地勢は、100m間隔の等高線で表され、立体感を強調する2色方式のぼかし(陰影)も健在だ。これにアップルグリーンの森林域が重ねられ、穏やかな美しさを醸し出している。一方、山岳地域では、ランデスカルテの特色である岩山や氷河の描写が同じように施され、あたかも精巧な地形模型を眺めているような感覚になる。初版の刊行が1971~76年と、ランデスカルテの中では遅かったので、製作に当たってそれまでに蓄積された技術や経験が十分に注ぎ込まれたであろうことは、洗練された図面の雰囲気からも見て取れる。

交通網の表現では、鉄道が赤の実線、道路網は高速道、主要道、地方道がそれぞれ橙、赤(ピンク)、黄に塗り分けられる。この仕様は初版から変わらない。「地形図」グループも今この図式に統一されようとしている(本ブログ「スイスの新しい1:25,000地形図」参照)が、ルーツはこの1:200,000なのだ。総描化されているとはいえ、集落の広がりも明瞭に読み取れる。

凡例によると、このほか城、教会・礼拝堂、城跡、洞窟、修道院、記念碑、原子力発電所、スタジアムなどの記号も用意されているが、図上ではほとんど目立たず、名称の注記もないので、旅行計画の資料としては役に立たないと思っておいた方がいい。

2014年2月現在、1:200,000の単価は14フラン(同1610円)だ。1:100,000などの「地形図」シリーズが16スイスフラン(1フラン115円として1840円)であるのに比べて、用紙が大きいのに価格は抑えられている。さらにスイストポの直販サイトでは、4面のセット販売で52フラン(同5980円)に割引かれる。

少ない面数で全土をつぶさに眺めることができ、かつ割安とあれば、利用しない手はない。実際、筆者も昔、まず1:200,000を揃えてスイスの地理感覚を養った記憶がある。加えて国境の外側についても、1:100,000より一回り広い範囲が図郭に取り込まれている。なじみのないフランスやイタリア領の土地まで、精巧なスイス様式で眺められるのもまた嬉しい。

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1:200,000道路地図表紙とサンプル図

1:200,000ではほかに、ドライバー向けに道路網を強調した「道路地図 Strassenkarte」版もある。こちらはスイス全土を東西に分割し、両面に印刷している。19.80フラン(同2277円)と高めの価格設定だが、1枚買えば済むところがポイントだ。ベースの地図図版は、等高線がないだけで、「地勢図」版と共通のものを使っている。テーマである主要道路網が赤色で特別に太く描かれ、2地点間の距離も付されている。駐車場、ガソリンスタンド、冬季の閉鎖個所などドライブ旅行の必要情報が盛り込まれ、官製図でありながら、見栄えはすっかり普通の道路地図だ。

さらに小縮尺の地図では、以下のものがある。1:300,000は「概観図 Generalkarte」と呼ばれ、正確にはランデスカルテの仲間ではない。内容は、上記1:200,000図を縮小して全土を1面に収めたものだ。ただし、等高線は省略されている。注記も2/3のサイズに縮小されているのでいささか読みづらく、あまりお薦めできるものではない。

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1:500,000表紙
(左)1976年版(1978年ジュラ州境追加) (右)2005年版

それに対して1:500,000は、同じように全土を1面でカバーするが、この縮尺で編集された正式のランデスカルテだ。無理な縮小がないだけで、ずいぶん読み易くなっている。もちろん2色方式のぼかし(陰影)と岩山や氷河の描写も、1:200,000と変わりなく施されている。初期の版は200m間隔の等高線が入っていたが、現行版では省かれ、その代り森林域の塗りが加えられた。等高線がないと、大きな氷河がどうしても間延びした印象になるのはやむをえない(右図の比較参照)。価格は12フラン(同1380円)と1:200,000よりさらにお得になっている。

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1:500,000ユングフラウ地域の新旧比較
(左)等高線入りの1976年版 (右)等高線なし、森林域付加の2008年版

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1:1,000,000表紙
(左)1994年版 (右)2012年版

「地勢図」グループの最小縮尺は1:1,000,000(100万分の1)だ。用紙サイズは1:500,000と同じ(91cm×57cm)で、実面積では実に740km×500kmの範囲が収まる。東はザルツブルク Salzburg、西はリヨン Lyon、北はシュトゥットガルト Stuttgart、南はボローニャ Bologna まで広くカバーするので、タイトルはむしろ「スイスとその周辺」とすべきところだ。眺めていると、例えばジュネーヴ Genève からは首都ベルンよりフランスのリヨンの方が近いとか、イタリアのミラノ Milano はスイス国境から南へわずか40kmといった、意外な位置関係も明らかになる。

この1:1,000,000は、ランデスカルテ整備計画の仕上げとして1993~94年に初めて刊行された(下注)が、この初版は、パリ、フランクフルト、フィレンツェ、ウィーンを含む大図郭に、別冊の地名索引が付属する特別版だった。しかし、現行の2012年版は上記のサイズに変更されるとともに、新1:25,000に先駆けて、数値地図モデル Digital Cartographic Models からの出力という新しいプロセスで製作された地図になった。価格は1:500,000と同じ12フランだ。

*注 初版のタイトルは、直訳すると「周辺諸国を伴うスイスのランデスカルテ Landeskarte Schweiz mit umliegenden Ländern」。

本稿は、参考サイトに挙げたウェブサイトおよびスイストポ発行の製品現物を参照して記述した。
下記画像はおのおの記載のウェブサイトから取得した。
・1:200,000表紙 2009年版: http://www.das-landkartenhaus.de/
・1:200,000道路地図表紙: http://www.swisstopo.admin.ch/
・1:500,000表紙 2005年版: http://www.eastview.com/
使用した地形図の著作権表示 (c) 2014 swisstopo.

■参考サイト
スイストポ 公式サイト http://www.swisstopo.admin.ch/

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