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2011年9月25日 (日)

ニュージーランドの鉄道地図

ニュージーランドの鉄道はわが国のJR在来線などと同じ1067mmの狭軌で、北島、南島合わせて4128kmの路線網がある(下注1)。最盛期の1953年には総延長が5656kmだった(下注2)というから、すでに3割ほど縮小したことになる。今も北オークランド線 North Auckland Line をはじめ、いくつかの路線が存廃の岐路に立たされているので、数年先にはこの数値がさらに何百kmの単位で減ってしまうかもしれない。

*注1 CIA - The World Factbookによる(データは2010年現在)
https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/geos/nz.html
*注2 キウィレール KiwiRail 公式サイトの "History of Rail" による
http://www.kiwirail.co.nz/

Blog_nz_railmap1

印刷物となった同国の鉄道地図では、当時のニュージーランド国鉄 New Zealand Railways Corporation (NZRC) が刊行した1枚ものの路線図がある。北島と南島の2面に分かれていて、各々上部に、1980年代に使用された国鉄のロゴが大きく掲げられている。地図は、国の測量機関である土地測量局 Department of Lands and Survey(当時)の手になるいわゆる官製図だ。手元に1983年第3版がある。

縮尺は約120万分の1で、5色刷り。水部のみ描かれたベースマップの上に、現役の鉄道が赤の太線、廃止・休止線が緑の太線、主要道路がオレンジの細線で記されている。表示された駅の数もけっこう多いが、古い地形図と照合すると必ずしも全駅ではなさそうだ。あるいは編集当時の営業駅だけを示しているのかもしれない。主要都市については余白に挿図があり、ウェリントン Wellington やオークランド Auckland 市内の小駅も読み取れる。図郭の下には駅名索引が完備されている。

Blog_nz_railmap1_detail
インヴァーカーギル周辺

廃止・休止線を完全に描くというのは、公式地図ではあまり例を知らない。南島インヴァーカーギル Invercargill 周辺には、内陸の炭鉱と海港を結ぶために中小路線のネットワークが発達していたことがよくわかるし、この縮尺では小さくなって目立たないが、改良事業により別線に切替えられた区間(下注)の旧線さえ律儀に図示されている。

*注 北島ウェリントン郊外のタワフラット迂回線 Tawa Flat deviation(1937年)、同じくフェル式勾配線を置換えたリムタカトンネル Rimutaka Tunnel(8.8km、1955年)、北東部プレンティ湾 Bay of Plenty へ直通するカイマイトンネル Kaimai Tunnel(8.9km、1978年)など。

しかし、電化や複線といった鉄道施設に関する基本データは示されず、せっかくの大判図が単純な路線網一覧にとどまっているところが惜しまれる。その後、ニュージーランド国鉄は改組を経て1993年に完全民営化されたため、この鉄道地図もいつしか絶版になってしまった。

Blog_nz_railatlas1

イギリスの専門出版社であるクエールマップ社 Quail Map Companyからも、以前「ニュージーランド鉄道・軌道地図帳 New Zealand Railway and Tramway Atlas」というA5判のミニ地図帳が刊行されていた。同社は、路線網を詳細に描いた専門家や愛好家向けの鉄道地図を各種製作しており、これもその一つだ。

廃線を含む全線を描く方針は先述の図と同じだが、こちらは、範囲を市内軌道から地方の貨物用軌道いわゆるブッシュトラムウェー Bush tramway や鉱山軌道 Mineral tramway にまで拡大した、徹底さが売りものだ。単線・複線、電化(直流1500Vと交流25000V)の別、橋梁やトンネルの諸元、駅の種別(旅客・貨物扱い)とキロ程、標高、それに区間ごとの開通年月日などインフラに関するデータが実に詳しく記載されている。各都市のトラムについても別途、ルートの街路名や開通・廃止年月日が盛り込まれた地図がある。駅と列車交換所の名称索引が完備された48ページの貴重な基礎資料なのだが、残念ながら1993年12月に第4版が刊行されたきり改訂がなく、すでに版元切れとなっている。

Blog_nz_railatlas1_legend
地図帳の凡例

ウェブサイトで見られる鉄道地図には、以下のものがある。
Blog_nz_railmap_hp1 全国版としては、「オーストラリア鉄道地図 Australian Rail Maps」の Other Countries のくくりに、ニュージーランド編がある。

■参考サイト
Australian Rail Maps  http://www.railmaps.com.au/
トップページ左メニューの "Other Countries" > "New Zealand"

本国版と同じデザインを用いて北島と南島の列車系統図がそれぞれ描かれ、主要都市オークランド、ウェリントン、クライストチャーチ Christchurch については拡大図がある。地図の特徴や記号の意味はオーストラリア編と変わらないので、詳細については「オーストラリアの鉄道地図 III-ウェブ版」の紹介記事を参考にしていただきたい。

ニュージーランドでは、2000年代初め(2001、02年)に思い切った長距離旅客列車の削減が図られた。北島ではプレンティ湾のタウランガ Tauranga、観光地ロトルア Rotorua、東岸ネーピア Napier、南島ではダニーデン Dunedin、インヴァーカーギル Invercargill といった主要都市でさえ、列車で行くことが不可能になった。その結果、このような列車系統図を描くと空白エリアが目立ち、見るからにさびしい図面になってしまう。公共交通が国内で最も充実しているウェリントンの拡大図だけが唯一カラフルな色の帯を連ねていて、救われる思いだ。

なお、現在(2011年9月)、「オーストラリア鉄道地図 Australian Rail Maps」の当該ページは、理由不明ながら閲覧不可になっている。幸いにもMapperyのサイトで各画像のコピーを見つけたので、そちらで地図の内容を確認していただきたい。

■参考サイト
北島 http://mappery.com/North-Island-Rail-Map
南島 http://mappery.com/South-Island-Rail-Map
ウェリントン http://mappery.com/Wellington-Rail-Map
オークランド http://mappery.com/Auckland-Rail-Map
クライストチャーチ http://mappery.com/Christchurch-Rail-Map

Blog_nz_railmap_hp2 列車のルートをスキマティックマップ(位相図)で描いた上記の地図に対して、ウィキペディアに上がっている鉄道地図は、路線網をいわゆる正縮尺で表示したものだ。これも北島、南島の2面に分かれている。路線は、線の太さで幹線と支線を区分し、線の色で closed(廃止)、mothballed(休止)、vintage(保存鉄道)、freight only(貨物専用)、in use(使用中=旅客輸送している)、proposed(予定線)といった内容を表している。

興味深いのは、最後に挙げた予定線の破線表示だ。特に南島北部の内陸を数多く横切っているが、これはクライストチャーチから北岸へ通じるルートが数十年もの間確定せず、何通りかの案が併存したことを反映している。他の予定線も同様に、構想自体がとうに過去帳入りしているものばかりだが、鉄道の歴史を遡ろうとする者には大変参考になる。

■参考サイト
ウィキペディア画像(直接リンク)
北島 http://en.wikipedia.org/wiki/File:NorthIsland_rrMap_v02.svg
南島 http://en.wikipedia.org/wiki/File:SouthIsland_rrMap_v02.svg

ニュージーランド国鉄の民営化は、度重なる運営会社の経営不振により失速した。最終的に国が買収することになり、2008年に国有企業キウィレール KiwiRail として再スタートを切った。キウィレールは現在、インフラ管理のほか、キウィレール・フレート KiwiRail Freight として貨物輸送を、トランツシーニック Tranz Scenic として長距離旅客輸送を、それに子会社トランツメトロ Tranz Metro によってウェリントン都市圏の通勤輸送を担うなど、同国の鉄道運営の大半を受け持つ。唯一、オークランドの通勤輸送だけが、国際交通企業ヴェオリア Veolia の手で行われている。

Blog_nz_railmap_hp3 キウィレール関係のサイト群をざっと見たが、残念ながらめぼしい鉄道地図は発見できなかった。関連して、ウェリントンの公共交通網のブランドであるメトリンク Metlink が、同都市圏全体の詳細な交通路線図を提供していたので、こちらを挙げておこう。この中に、上記トランツメトロの郊外路線や名物のケーブルカーも含まれている。

■参考サイト
メトリンク(ウェリントン都市圏公共交通網)
  http://www.metlink.org.nz/network-map/
 インタラクティブマップとは別に路線網図のPDFがあるが、3面に分割されている。
  http://www.metlink.org.nz/publications/
 もとの1枚ものが、このページの "Metlink network map" にある。ただし、凡例はついていない。

★本ブログ内の関連記事
 オーストラリアの鉄道地図 I
 オーストラリアの鉄道地図 II
 オーストラリアの鉄道地図 III-ウェブ版

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