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2011年9月 9日 (金)

オーストラリアの鉄道地図 II

出版物としてのオーストラリア鉄道地図をさらにいくつか紹介しよう。

Blog_au_railmap2

一つは、前回のヘーマ Hema 社製と同じく、アデレード~ダーウィン間の大陸縦断鉄道全通を記念して刊行された全国鉄道地図だ。タイトルは「NATMAPオーストラリアの鉄道 NATMAP Railways of Australia」、連邦の測量局であるジオサイエンス・オーストラリア Geoscience Australia が2004年2月に刊行した。横112cm×縦78cmサイズの片面刷を折図にしてある。

NATMAPというのは、各州が独自に製作する地図と区別するために、連邦、すなわちジオサイエンスの地図群につけられた愛称だ(本ブログ「オーストラリアの地形図-連邦1:100,000」参照)。地形図の刊行元が作ったということから想像できるとおり、国勢地図帳の1ページになっても違和感がないような取り澄ましたスタイルが特徴だ。ヘーマ社製と対比しながらディテールを見てみよう。

ベースマップは、縮尺こそ1:5,000,000(500万分の1)で大差がないが、地図表現はかなり対照的だ。ジオサイエンスには地勢を表すオレンジ系のぼかし(陰影)が入って、大陸東岸の山がちな地形などが直感できる一方、ヘーマ社にはある道路網などは一切省かれ、地名の数も少なめだ。

Blog_au_railmap2_detail
ビクトリア州の部分
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia), 2004. License: CC-BY 4.0

鉄道路線の表示は、色で軌間を区分し、広軌(1600mm)が緑、標準軌(1435mm)は赤、狭軌(1067mm)は青を当てている(広軌と狭軌の配色がヘーマ社と逆)。そして旅客輸送も行う線区は太く、さらに列車頻度の高い都市圏は線の中心を白抜きして区別する。貨物のみの線区は細線だ。注目の長距離列車のルートは、州境をまたぐものに限って太い縁取りで目立たせている。また、都市圏については、拡大図が余白に挿図されている。ただ、縮尺が1:750,000のため、描けるのは近郊の路線網がせいぜいで、トラムが行き交う市内中心部などはとうてい不可能だ。

Blog_au_railmap2_legend
凡例

とはいえ、ベースをすっきりさせ、鉄道の記号を強調した効果で、図全体はヘーマ社よりずっと明解だ。全国路線図として見るなら役に立つし、たとえば教室の壁面に貼って、路線密度の地域間格差とか内陸部への拡張といったテーマで学習させるのには最適だろう。その代わり、旅の友にするには物足りない。心躍る長距離列車の紹介記事もなければ、市内観光に役立つ情報も皆無だからだ。保存鉄道の名称リストはあるものの、有名サイト31か所に絞られ、情報源へのアクセス方法も記されていないので、新たな発見は期待薄だ。

【追記 2017.8.2】

Blog_au_railmap5

2014年にジオサイエンスから、この鉄道地図の改訂版が刊行されている。

タイトルからNATMAPの冠が取れて、「オーストラリアの鉄道 Railways of Australia」になったが、体裁は2004年版とほぼ同じだ。軌間や貨客の扱いなど描かれる鉄道路線の区分基準も変化はない。ただし、見本図のとおり、描画色は全面的に見直されている。鉄道情報は2013年12月現在のものに更新されているので、旧版と比較すると、支線における貨物輸送の撤退や都市近郊旅客輸送の新たな展開など、この10年間の動向を読み取ることができる。

印刷図は他の刊行図と同様、ジオサイエンスのセールスセンター Geoscience Australia Sales Centre から入手できる。また、下記公式サイトでPDFファイルが無償ダウンロードできる。

■参考サイト
Geoscience - Data and Publication Search https://ecat.ga.gov.au/geonetwork/srv/eng/search
で、"Railways Map of Australia 2014" を検索する。表示されたメタデータの中に、File downloadのリンクがある。

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2014年版の同じビクトリア州の部分
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia), 2017. License: CC-BY 4.0

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次に、州別の鉄道地図を2点取り上げよう。一つはニューサウスウェールズ州 New South Wales(以下、NSWと略す)で、オーストラリア鉄道歴史協会NSW支部 Australian Railway Historical Society NSW Division が2000年に刊行した「ニューサウスウェールズ鉄道地図 Rail Map New South Wales」だ。横87cm×縦69cmのサイズで両面刷りを折図にしてある。ベースとなる地図は白地図に近いもので、州界と水部、それに道路網(らしき細線)だけが記されている。

メインは州全図だ。鉄道と連絡バス road coach、隣接州の接続路線、それに保存鉄道が色で分けられている。実線に直交する短線を付したものは電化区間、細かい破線は工事線か予定線、粗い破線は休止線だ。裏面は都市近郊の拡大図で、シドニー Sydney、ニューカッスル New Castle、ウロンゴン Wollongong 中心部はさらに詳細図がある。列車の運行系統が示されておらず、デザイン的にもまことに味気ないものだが、ライトレールやモノレールも含めて州内の鉄道の全線全駅が記載されている点に、資料価値が見出せるだろう。

なお、表紙にある「レールウェーダイジェスト Railway Digest」の赤いロゴは、同支部が刊行する月刊の鉄道趣味誌の名称だ。鉄道地図もその関連で出されたものと思われるが、サイトにはそれに関する記述は見当たらなかった。すでに絶版になったものと見え、筆者が購入したイギリス、イアン・アラン Ian Allan 社のサイトからも消えている。

■参考サイト
オーストラリア鉄道歴史協会NSW支部  http://www.arhsnsw.com.au/

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もう一つはタスマニア州 Tasmania の鉄道地図帳だ。この部門の専門出版社であるイギリスのクエールマップ社 Quail Map Company が企画した「オーストラリア鉄道地図帳 Australian Railway Atlas」の第1巻として、2004年に刊行された。巻頭言によれば、州ごとに性格が異なるので、トラムやトロリーバスの地図も載せる余地を残せるよう、それぞれ別冊にしたという。まずは、比較的小さくまとまっているタスマニアから手がけたものと推測されるが、残念ながらその後、続刊はない。

このタスマニア編はA4判、34ページ(最終頁は空白)のカラー印刷で、地図15ページ、路線別データ(表題は Route Sections)12ページ、索引6ページなどから成る。地図は同社の一連の作品と同様、鉄道設備すなわちインフラをテーマに描いたものだ。軌間ごとに色分けしたうえ、濃い色を運行中 open の路線、薄い色を撤去済 lifted の路線に当てている。駅は旅客・貨物を扱うもの、いずれかを扱うもの、および休止駅が記号で区別され、駅名とキロ程が付されている。

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凡例の一部

州の主たる部分はいうまでもなくタスマニア島で、北海道の8割ほどの面積があるが、平地が少なく、総人口も50万人という規模だ。鉄道についても、一般旅客営業は1978年に州立鉄道が国鉄に統合されたときに廃止され、貨物輸送だけになっている。幹線は今も維持されているが、州政府の補助を得て運営されている状態だという。

しかし地図を見ると、その幹線からおびただしい産業用支線が分岐していて、かつて鉄道が木材や鉱石といった島の資源を盛んに港へ送り出していたようすが想像できる。州都ホバート Hobart と次に大きい都市ロンセストン Launceston には、トラムとその後継であるトロリーバスの路線網があったが(1960年代後半までに全廃)、これにも3ページが割かれ、市民の足として活躍していた時代をしのばせる。このように、地図帳には、工事用の臨時線路や特定の工場などへの引込線を除いて、およそタスマニアに存在したすべての鉄路の位置とデータが記録されている。過去に遡って全島の鉄道網の発達状況を一冊にまとめた意義は大きく、第1巻で途絶えてしまうのはあまりに惜しい。

価格は14.50英ポンド(1ポンド130円として1885円)。トラックマップス Trackmaps 社のサイトに、サンプル図があり、購入もできる。

■参考サイト
トラックマップス社 http://www.trackmaps.co.uk/
クエールマップ社  http://www.quailmapcompany.free-online.co.uk/

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