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2011年9月 6日 (火)

オーストラリアの鉄道地図 I

オーストラリア南岸のアデレード Adelaide と北岸のダーウィン Darwin の間2979kmを連絡する長距離列車「ザ・ガン The Ghan」が走り始めたのは、2004年2月4日だった。列車の名称は、鉄道が整備されるまで内陸部の輸送手段であったラクダを追うアフガン人 Afghan cameleer にちなんでいる。大陸縦断列車の運行が可能になったのは、それまで内陸のアリススプリングズ Alice Springs 止まりだった鉄道が、2003年9月にダーウィンまで延長されたからだ。同国本土のすべての州都が初めて鉄路で結ばれるとあって、新線の完成は国を挙げての慶事とされた。今回と次回に紹介する2種類の全国鉄道地図も、沸きあがったブームのさ中に製作されたものだ。

Blog_australia_railmap1
(左)2004年初版 (右)2007年第2版

そのうち内容の充実度がより高いのは、「オーストラリアの鉄道旅行 Rail Journeys of Australia」というタイトルが付けられたヘーマ Hema 社の地図だ。ヘーマ社は同国の大手地図出版社で、道路地図、市街図、旅行地図など膨大な種類を刊行しているが、鉄道を主題にしたものは珍しい。サイズ横70cm×縦100cmで両面刷という限られた紙幅にもかかわらず、ここにはオーストラリア鉄道網の情報が満載だ。

Blog_australia_railmap1_detail
2007年版表紙を一部拡大

メインは縮尺1:5,500,000(550万分の1)の全国図で、ベースに使われたのはおそらく同社の汎用図だろう。地勢表現は省略されているが、そもそも鉄道地図の要件ではない。その代わりに地名や道路網はかなり詳しく、区間距離や舗装の有無が示され、余白に小さな字で地名索引まで備えている。

鉄道路線の表示は黒の細線が基本で、それに広軌(1600mm)は青、標準軌(1435mm)は赤、狭軌(1067mm)は緑という軌間別の色を重ねている。色帯は、旅客も扱う線区を太く、貨物のみを細くしているので、旅客列車が走る範囲が一目瞭然だ。中距離列車が設定されている路線がほぼニューサウスウェールズ州とヴィクトリア州に限られているのもこれでわかる。

Blog_australia_railmap1_legend
全国図の凡例

一方、基本の細線の色が黄に変えられているのは、観光用鉄道(保存鉄道)Tourist Railways を表している。重ねられた配色の基準は一般路線と同じ青、赤、緑なので、軌間もすぐに判断できる。しかし、驚くべきことに情報はこのレベルにとどまっていない。該当路線のすべてに番号が振られ、その番号に対応して、余白に鉄道名、所在地名、動力・形態(蒸気、ディーゼル、トラムなど)、距離、軌間、連絡先電話、ウェブサイトを明記したリストが添えられているのだ。掲載対象は、運行している保存鉄道だけでなく、鉄道博物館やミニチュア鉄道 Miniature Railways も網羅している。その数は保存鉄道93か所、鉄道博物館70か所、ミニチュア鉄道47か所(現行版による)に及び、イギリスの伝統を受け継ぐ同国の鉄道趣味の浸透ぶりを実感する。

さらに図郭の外には、「大いなる列車旅行 Great Train Journeys」と題した特別記事がある。ザ・ガンをはじめインディアンパシフィック(シドニー Sydney ~パース Perth)、ジ・オーヴァーランド The Overland(メルボルン Melbourne ~アデレード)のような有名な長距離列車が写真つきで紹介され、通過ルートは、先ほどの地図上に示された太い縁取りで容易にたどることができる。長く単調な旅の車中では、今どの辺を走っているのかと知りたいときがある。いわゆる正縮尺で描かれ、平原の中間駅まで載っているこの地図なら、乗客のふとした問いにも確実に答えてくれるに違いない。

このように全国図は、丁寧な編集によって愛好家をも唸らせるのだが、縮尺の制約上、大都市近郊の路線網や運行経路を描ききることは不可能だ。そのニーズに対しては、裏面に配置された区分図が役に立つ。こちらには地域ごとに分けた16面の路線図を集めてあり、いずれも路線網を水平、垂直および斜め45度の直線に単純化した、いわゆるスキマティックマップ(位相図)で表現されている。これらはすべて「オーストラリア鉄道地図 Australian Rail Maps」というウェブサイト(「オーストラリアの鉄道地図 III-ウェブ版」で詳述)で公開されているものなので、最新情報を知るためにそちらと併用するのがいいだろう。

大陸縦断鉄道の全通をきっかけに誕生したヘーマ社の鉄道地図は、愛好家のみならず、長距離の旅行者から通勤通学者や市内観光を楽しむ人まで、あらゆる鉄道利用者に恩恵をもたらす。盛りだくさんなその内容からして、オーストラリアの鉄道百科と形容してもあながち大げさではない。それを裏付けるように地図は、国際地図小売業協会 International Map Trade Association (IMTA) の2004年大会で、その年世界で最も優れた地図に与えられる金メダルを受賞している。

現在、流通しているのは2007年3月の第2版で、価格は12.95豪ドル(1ドル80円として1,036円)だ。欧米の主な地図商で扱っているが、日本のアマゾン経由でも買えるようだ。もう一つの全国鉄道地図については次回。
(2006年8月31日付「オーストラリア大陸縦断列車と鉄道地図」を全面改稿)

■参考サイト
ヘーマ社  http://www.hemamaps.com.au/
オーストラリア鉄道地図  http://www.railmaps.com.au/
グレートサザン鉄道Great Southern Railway  http://www.gsr.com.au/
 ザ・ガンをはじめとする長距離列車の運行会社。日本語サイトあり

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