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2011年7月 9日 (土)

オーストラリアの地形図-連邦1:250,000ほか

ジオサイエンス・オーストラリア Geoscience Australia の刊行する地形図(区分図)には、前回紹介した1:100,000のほかに、1:250,000と1:1,000,000(100万分の1)がある。

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連邦1:250,000 ウロンゴン付近
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) , 2011. License: CC-BY 4.0

1:250,000は、全土をカバーする最大縮尺の地形図で、面数は513面。図郭は1:1,000,000の図郭を縦横とも4分割(計16分割)したもので、経度1度30分、緯度1度をカバーする。ただし、海岸線などでは、隣接図郭を取り込んだ拡大版も50面ほど作られている。Sydney Special のように、図名の後ろに "special" が付いているのがそれだ。また、タスマニア州は全域を4面でカバーする独自仕様で、同州測量局が刊行している(下注)。

*注 タスマニア州の1:250,000図については「オーストラリアの地形図-タスマニア州 I」参照。

1:250,000も通常折図で販売されるので、用紙の左側に表紙がデザインされている。1:100,000の赤帯に対して、1:250,000は青帯で識別される(タスマニア州刊行図を除く)。

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1:250,000地形図表紙
(左から)Sydney(JOG)1989年、Melbourne(NTMS)1984年、Sydney Special(デジタル)2004年、Tasmania North East(タスマニア州)2010年

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索引図(シドニー周辺)
青字が1:250,000図名、紫字は "Special"のつく拡張版

地勢表現は50m間隔の等高線による。わが国の1:200,000地勢図が100m間隔であることと比較しても、地形の描写精度は高い。実際、大分水嶺山脈のような山地を含む図葉では、等高線がほとんど隙間もないほど、ぎゅうぎゅう詰めに描かれる。ただ残念なことに、以前はあったぼかし(陰影)が、1998~2003年に実施されたデジタル図化版への切替えに伴って省かれてしまったため、地勢は格段に読取りにくくなった。デジタルファイルの容量を減らす目的かもしれないが、これは明らかに改悪だろう。

道路網の表現も、このときの図式改正で味わった失望の理由の一つだ。道路の記号は新旧とも、くくりのない赤色の実線を用いるが、旧版では、舗装道だけに原色を充て、未舗装道は網掛けで薄めた色を使っていた。こうすることで幹線道路が強調され、地図にメリハリがつくからだ。ところが、デジタル図化版ではどちらも原色が使われ、未舗装道は破線で表現されることになった。その結果、錯雑感が強まると同時に、ぼかしの省略と相まって、視覚的な奥行きが感じられないものになってしまった。

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1:250,000凡例の一部

地図記号の話のついでに、オーストラリアの地形図で特徴的な地図記号といえば、何だろうか。筆者なら空路に関するものをあげたい。道路網の赤に対して空港・着陸施設は紺色と、対比を意識した配色になっているし、記号の形状も具体的に滑走路の配置や方向を表したものだ。さらに、飛行時に注意を要する送電線も同じ紺色で強調されている。

航空図に似たこれらの記号は、1:250,000地形図の一部が、標準軍用地形図である JOG(Joint Operations Graphic、直訳すると共同作戦図)として整備されてきたことに関係がある。1988年に全土の地形図整備事業が完了したとき、1:250,000全544面(当時)のうち、軍の測量機関だった王立オーストラリア測量隊 Royal Australian Survey Corps が製作したものが3割を占めていた。そうしたJOGの航空情報に関する記号が、民生図(下注)にも引き継がれている。飛行機が一般的な交通手段であるこの国ならではのことだ。

*注 軍用のJOG(1501シリーズ)に対して、NATMAPやAUSLIGが刊行した民生用は NTMS(National Topographic Map Seriesの略)と呼ばれる。デジタル図化以前は、表紙に配されたサンプル図を見れば、JOGかNTMSかが判断できた。

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(左)JOG図の例 SG56-15 Brisbane
(右)NTMS図の例 SJ55-2 Wangaratta
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) , 2011. License: CC-BY 4.0

1:250,000地形図は、1:100,000図から編集されていることもあって、概観図というイメージがある。しかし、等高線精度のおかげで細かい地形も表現できるし、東西150km、南北110kmという収載エリアがクルマによる小移動の範囲にも適合する。わが国の20倍の国土面積があるオーストラリアでは、これでちょうど手軽さと詳しさのバランスがとれた縮尺だといえるだろう。

1:1,000,000は国際図図式によるもので、1面で経度6度、緯度4度のエリアをカバーする。地勢表現は等高線(200m、そのあと500m間隔)と段彩に加えて、ぼかしもかけられる。経緯度で区切った図郭を図式どおり忠実に守っているため、ほとんど海が占めるような図葉も存在する。その点であまり一般向けとは言えないのだが、わが国土地理院の地図もそうであるように、この図郭はオーストラリアのすべての地形図図郭の基準となっている。

1:1,000,000は、1975年に全土49面の刊行が完了したものの、1983年以降、更新が行われていない。そのため、在庫切れとなる図葉が相次いでいたが、その後もとの印刷図からの複製が作られて、すべての図葉が入手可能になった。

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1:1,000,000国際図 Melbourne
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図の一部を拡大
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) , 2011. License: CC-BY 4.0

これらの官製地形図はデジタルデータでも無償提供されていて(ダウンロード方法は「官製地図を求めて-オーストラリア」参照)、クリエイティブ・コモンズ表示4.0国際ライセンスに従い、著作権表示をすれば二次利用も可能となっている。使いでのある地形図が、自由に利用できるパブリックドメイン(公有物)とされているのは、アメリカ、カナダなどと並んでオーストラリア連邦の地形図の大きなアドバンテージだ。

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1:1,000,000地形図表紙
(左)旧図 SK55 Tasmania 第2版 1981年
(右)新図 SJ55 Melbourne 2013年

【追記 2017.5.21】
1:1,000,000については、新たに編集されたオフセット印刷図が2012~13年に刊行された。これは、ジオサイエンス・オーストラリアの基本地理データベース(GEODATA TOPO-250K 第2シリーズ)をベースにして2006年に製作された新しい国際航空図 World Aeronautical Charts (WAC) シリーズ42面の汎用版だ。シリーズ名称も「一般参照(汎用)地形図 General Reference Topographic Map」とされ、図郭は旧版と同じで、オーストラリア全土(離島を除く)を50面でカバーする。

新旧の地図表現を比較するために、同じメルボルン周辺の図を下に掲げておこう。地勢表現では、等高線・等深線の刻みや段彩が踏襲されているが、ぼかし(陰影)は掛けられなかった。そのため、図の印象が平板になり、等高線の精度も旧版に比較すると少し甘いようだ。地図記号では、青色で強調される空港、飛行場、ヘリポートとともに、送電線、高塔、発電風車、煙突など高さのある地物の設定がある。いずれも航空図由来の特徴だ。また、市街地の交通網が省略されており、都市の情報はほとんど得ることができない。

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新1:1,000,000地形図の例(上図と同じ範囲)
© Commonwealth of Australia (Geoscience Australia) , 2017. License: CC-BY 4.0

1:250,000、1:1,000,000の印刷図(紙地図)は、ジオサイエンスやオーストラリア国内の地図商で扱っている。また、ジオサイエンスのウェブサイトで、旧図も含めてPDFまたはTIFFファイルの形でダウンロードできる。「官製地図を求めて-オーストラリア」参照。

■参考サイト
ジオサイエンス・オーストラリア  http://www.ga.gov.au/

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