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2011年6月12日 (日)

新線試乗記-名古屋地下鉄桜通線、徳重延伸

2011年3月27日、名古屋の地下鉄桜通線(さくらどおりせん)の延伸区間、野並(のなみ)~徳重(とくしげ)4.2kmが開業した。

名古屋駅前からまっすぐ東へ延びる50m道路の桜通直下に地下鉄が完成したのは、そんなに昔の話ではなかったような気がする。しかし、資料を見たら、桜通線の最初の区間、中村区役所~今池間が開通したのは1989年、もう22年も前だった。それから後も、名古屋市地下鉄の路線網は拡張を続けていて、桜通線も1994年に今池~野並間の第一次延伸を果たしている。それ以来終点だった野並から、このたびは久しぶりの再延伸となる。

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路線図

桜通線(6号線)の整備にはいくつかの目的が込められている。一つ目に、東西方向の動脈となっていた地下鉄東山線のバイパスとしての役割だ。東部丘陵地の住宅開発が進んだため、小断面で建設された東山線の小型車両は当時、輸送の限界に達していた。県のデータによると、1980(昭和55)年、同線最混雑区間1時間の乗車率は実に265%だ(下注)。桜通線は市内中心部で、東山線とわずか300~450mの距離を並行したあと南に折れ、今池駅で乗換ができるようになっている。このルート設定で、利用客の転移とそれによる東山線の混雑緩和がもくろまれた。

*注 愛知県公式HP「あいちの陸上交通」(6) 路線別混雑率 による。
http://www.pref.aichi.jp/0000008567.html

二つ目の目的は、JR中央線の東側に位置する千種区、昭和区、瑞穂区のエリアで、公共交通の南北軸となることだ。今池駅から、桜通線は市道環状線の地下をまっすぐ南下していく。名古屋の文教地区でもある三区の中心部を貫くとともに、東山線、鶴舞線、名城線の間の連絡路を形成している。

そして三つ目の目的が、市域南部の、大規模な土地区画整理事業で宅地化されたニュータウンの足となることだ。今回の延伸区間はまさにその使命を負っている。途中の相生山駅から地下鉄は初めて緑区に足を踏み入れるのだが、空中写真で見ると、この辺りのほぼ全域が開発の波に洗われてしまったことに驚く。緑区が、名古屋市16区で最も人口が多いというのもうなずける。その一方、鉄道については鶴舞線と名鉄本線の間の空白域のままで、公共交通はバスに依存していた。新線開通で、従来の野並でのバス・地下鉄乗継ぎに比べて、徳重~名古屋駅の所要時間は50分から35分に15分短縮され、トータルの運賃も何割か安くなった。地元にとっては、待ちに待った路線ということのようだ。

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桜通線6000形電車(中村公園駅にて)

4月のある日、桜通線の延伸区間に乗ってみることにした。金山から名城線で、桜通線との接続駅、新瑞橋まで行く。この駅、筆者などはいつも瑞穂(みずほ)区につられて、「しんみずはし」と読みそうになるが、正しくは「あらたまばし」だ。深いエスカレーターで桜通線ホームに降りると、赤帯を巻いたステンレス車が徳重の方向幕を掲げて入ってきた。昼間のこととて、車内はすいている。次の桜本町(これも「さくらもとちょう」ではなく「さくらほんまち」)を出ると、ゴロゴロと雑音を響かせながら左へ急カーブして、進路を東に変えた。ここから地上の道路は東海通に代わり、駅は鶴里、野並と続く。地形的には、両駅間で天白川が流れる低地を横断しているのだが、もとより地下なので気配も知れない。

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野並駅下車

新線の印象を脳裏に刻みこむには、線路が敷かれた土地の風景を見るのが一番だと思っている。地下線の場合、それには電車を降りるしかない。新規区間に踏み込むのは後回しにして、野並で下車した。沿線に目ぼしい名所旧跡があるわけでもないが、地図で興味を引かれた相生山に上ってみようと思ったのだ。

相生山は、東海通の北側に残された貴重な林地だ。東西に延びる3本の尾根のうち最も北のエリアがオアシスの森として保存整備されているのだが、それは次の楽しみとして、今日は東海通に沿う南の尾根道を歩いてみる。地図の読取りで開拓村の名残のように想像していたら、実物は、雑木林に囲まれた静かな住宅地だった。アップダウンの激しい小道の主として南側に、けっこう立派な邸宅が立ち並んでいる。道はその先で徳林寺というお寺の境内に入っていくが、本堂の正面にチベット仏教の八角の鐘楼が建てられようとしているのには目を疑った。この山には、どうも異次元的な雰囲気が漂っている。

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相生山の南尾根道

遅咲きの八重桜が風にそよぐ戸笠公園でしばし休憩してから、改めて地下鉄の駅へ向かった。最寄りはその名も相生山(あいおいやま)駅で、駅入口付近は道路の復旧工事がまだ完了しておらず、できたての路線であることを改めて意識する。ひどく深いホームに降りると、ホームドア(正確には、可動式ホーム柵)が設置されていた。桜通線では他の線に先駆けてホームドアを全駅に整備する計画で、新規開業の4駅は当初から設置済み、既存区間も順次工事を始めているそうだ。

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戸笠公園
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ホームドアが設置済み(相生山駅)

やってきた電車で、神沢、そして終点徳重とたどる。徳重駅の余裕のあるコンコースは、車庫や地上施設と一体的に設計施工された証しだ。地上に出ると、すぐ右手に広々としたバス発着場(交通広場)が設けられていた。鉄道延伸によって、路線網の重心が、野並の路上(車庫は現 鳴子北駅付近)からここに移ってきたのだ。隣接して公共施設ビルやショッピングモールもつくられて、すっかり地域の中心としての顔を整えている。

とはいえ、ここは里山を切り開き、計画的に築いたばかりの町だ。地域の特色を醸成させるにはまだ長い年月がかかるだろう。一介の風来坊に批評する資格はないが、緑区というのに緑が少ないし、相生山めぐりのほうがよほど心が騒いだな、と呟きながら、そそくさと地下鉄の駅に戻った。

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徳重駅ホーム
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徳重駅地上部 (左)交通広場 (右)駅前も真新しい

■参考サイト
名古屋市交通局 桜通線の延伸
http://www.kotsu.city.nagoya.jp/about/construction/sakuraline/
名古屋市交通局 2011年3月27日桜通線野並・徳重間開通
http://www.kotsu.city.nagoya.jp/sakuraline/
徳重駅付近の1:25,000地形図
http://maps.gsi.go.jp/#15/35.095100/136.997500
徳重駅付近のGoogleマップ
http://maps.google.com/maps?hl=ja&ie=UTF8&ll=35.0951,136.9975&z=17

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